Fate/world end ~ソラノハテとリクノハテ~   作:神駆

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ACT.4

 

 

 倉庫街での戦いの翌日。キャスターはまたも街をぶらついていた。だが、その存在は昨夜よりも薄く感じられる。

 

「はぁ。やっぱり限界が近いのかなぁ。早くマスター見つけないと……」

 

 自らのマスターである龍之介を喰らって以来、スキルである魔力生成で魔力を補い、現界を保ってきたキャスターであったが、単独行動スキルを持つアーチャーならいざ知らず、流石に限界が近づいてきたようである。キャスター自身の見立てでは、あと一日持つかどうか。とりあえず一般人に暗示をかけマスターにするという方法もあるのだが、それは最終手段。まだ余裕があるのだからと、キャスターは魔術的素養のある人物を探していた。

 

 魔術的素養さえあれば、キャスターである自らの能力を活かし、即興の魔術師にすることも可能である。だが、これが本当にただの一般人であればそうはいかない。魔力を節約したい身であるキャスターにとって、一々暗示をかけるのは危険なことなのである。

 

 それに、魔力生成も無闇に使うことのできないものである。その特性上、魔力生成の対象は跡形もなく消えてしまう。それに、対象物によって摂取できる魔力量にも差があるのだ。多用すればするほど他のサーヴァントに見つかる可能性は高くなっていく。

 

「都合よくいないかなぁ……」

 

 だが、現実とはそこまで甘くないのである。かれこれ朝からずっと繁華街をうろついているのだが、発見できたのはライダーとそのマスター。彼ら以外にはいなかったこともないのだが……。

 

「うーん、あの子がそうじゃなければなぁ……」

 

 キャスターが思い出しているのは、つい先ほど見つけた少女のことだ。まだ幼いながら、魔術を使用しているであろう魂の匂い。一度はマスターにしようかと思ったものの、読心術を掛けた結果、あの大きな屋敷の所有者遠坂の娘であることが分かり、無理だなあと諦めたのだ。

 

 と、ここでキャスターが何かに反応する。どうやら次の候補が見つかったようだ。

 

「よし! 行こう!!」

 

 キャスターは次の候補がいる方角へ駆けて行った。

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

「なあ、ライダー。今のってキャスターだよな?」

 

「ん? そうであったか?」

 

 キャスターが駆けて行く数時間前。ライダーとウェイバーは繁華街へと赴いていた。

 

 朝、宅配便を使いTシャツを手に入れたライダーは意気揚々と外出しようとしていた。当然、ズボンは穿いていない。それを断固阻止すべくウェイバーはズボンを買いに行くことになるのだが、肝心のサイズが分からない。そのため、霊体化したまま着いて来てもらうという行動に出るしかなかったのだ。

 

 現在、ズボンを無事に購入してもらったライダーはマスターであるウェイバーの制止を無視して実体化し、歩いていた。当然、このような大男が冬木市にいるということはなく、先日のセイバーとアイリスフィールの時と同様市民の注目を集めてしまった。となれば、敵のマスターやサーヴァントに見つかっていると考えるのが普通であろう。事実、ウェイバーはそれを恐れていた。だが、当のライダーはそんな心配どこ吹く風。悠々と街を歩き、ウェイバーの金でいろいろなものを買っていた。

 

 そんな中見つけたのがキャスターだった。

 

「なあ、追わないのか?」

 

「追う必要はあるまい。余とてこんな昼間からキャスターと争う気にはなれん。周りが焦土と化してしまうではないか」

 

 なるほどライダーの言にも一理ある。昨夜のキャスターが使用した魔術を見るに、この繁華街くらいであれば確実に消し飛ばすことが可能であろう。それに対抗するには、ライダーもそれ相応の技を出す必要がある。場合によっては宝具もだ。そうなればライダーの言った通り、この辺りは焦土となるだろう。

 

 そこまで考え付いたウェイバーは、キャスターの行った方角を見ながら、溜め息を吐くのだった。

 

「おーい、坊主。余はこれを食してみたい」

 

「また!? もうお金無くなっちゃうじゃないか!!」

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

「あ、いたいた!」

 

 キャスターは先ほど感じた気配を追って繁華街を走っていた。5分ほど走ったところで、その気配を目で捉えることにキャスターは成功する。

 

 そこにいたのは、先ほど見かけた遠坂の娘と同じぐらいの年齢であろう少女。振り向いたその顔は、大人しめな印象を受ける。だが、キャスターは見つけたという興奮以上に驚いていた。

 

「似てる……。ソラに……」

 

 ソラというのが誰だかは不明ではあるが、キャスターの生前、そういう人物がいて、それなりに親しい人物だったのだろう。

 

 キャスターはそのことを意識しながらも、話し掛けることにした。

 

「ねえ、君。魔法、使ってみない?」

 

「魔法?」

 

「うん。あ、ボクはリクっていうんだ。君は?」

 

「私は……コトネ。ねえ、魔法って本当?」

 

「うん。じゃあ見せてあげるね! transitus(転移)

 

 キャスターが呪文を唱えると、少し身体が引っ張られるような感覚になり、次の瞬間には先ほどまでいた場所から移動していた。

 

「はい、これが魔法。今のは一瞬で場所を移動するものだね。どう? 信じてくれた?」

 

「うん。……私にも使えるの? リクちゃん」

 

「使えるよ。君には魔術的素養があるからね」

 

「まじゅつてきそよー?」

 

 急に出てきた難解な言葉にコトネは首を傾げる。

 

「そ。まあ、そんなに難しく考えることはないよ。あ、それにさっきは言わなかったけど、こんな髪形でも、ボクは男の子だからね」

 

「ええーーーっ!!」

 

 どうやらコトネにとって魔法の存在よりもそちらのほうが驚きだったらしい。確かにキャスターの容姿は女の子のそれだ。艶のある黒い髪は腰まで届くほど長く、背丈や中性的な顔立ちも相まって女の子にしか見えない。

 

「やっぱり勘違いしてたんだね。ま、慣れてるけどね。さて、もう一回聞くよ? 魔法使いになりたい?」

 

「うん! なりたい!」

 

「よし分かった。じゃあ、目をつぶってて」

 

 キャスターに言われたとおり目をつぶるコトネ。その間にキャスターは足を踏み鳴らし魔術陣を作り上げていく。

 

Contactus ambiens rejectio(周囲との接触を拒絶).」

 

 コトネにとって聞き覚えのない言葉が耳に入る。それがいかにも魔法らしくてコトネの胸は自然と高鳴っていく。一方のキャスターは今までにないほど真剣な顔で魔術陣を作り続けていく。

 

Claudebant dolor(痛覚遮断)Existens aperta-circuitu(既存回路開放)Committitur portandis magicae circuitu(魔術回路移植開始)…………Complementum(完了)Satus reprehendo(起動確認)…………Non problema(問題なし)Finem(終了).」

 

 最後に一際大きな音を出して足を踏み鳴らすと、コトネの意識がなくなる。

 

「さて、あとは目を覚ましたらOKかな」

 

 一仕事終えた体のキャスターは意識を失っているコトネを少し空中に浮かせると、その身体の下の地面に新しい魔術陣を描いていく。今度は足を踏み鳴らす訳ではなく、宝石を融かしたものを使い魔術陣を描く。

 

 そうしている内にコトネが目を覚ます。初めは何が起こったのかわからないような顔をしていたが、徐々に思い出してきたのだろう。コトネの顔は興奮に染まっていく。

 

「ねえ、リクくん。もうこれで私も魔法使いなの?」

 

「うん。でも最初は簡単な魔術しか使えないけどね。ボクみたいに場所を移動するような魔術はたくさん練習しないと」

 

「やっぱりそうなんだー」

 

「当然。じゃあ、魔法使いとしての初めての魔法を使ってみようか。頭の中に浮かんでくるのを唱えてね」

 

 コトネはそう言われて、自然と目を閉じる。そして、口を開き詠唱を始める。

 

Dico(告げる).

 Tu es tantum sub(汝の身は我の下に), fate est in tua fistula(我が運命は汝の剣に).

 Sequitur in loco ad sanctum Grail(聖杯のよるべに従い), hanc(この意), si hac administratione(この理に従うのなら),secundum(我に従え).

 Si fatum(ならばこの命運), relinquo tua fistula(汝が杖に預けよう)

 

Accipere sacramentum in nomen applicatur ad triae(キャスターの名に懸け誓いを受ける).

 Puteus admittere ut principaliter(貴女を我が主として認めよう).」

 

 一通り唱え終ると、先ほどキャスターが描いていた魔術陣が光を放つ。それが収まるころには、二人の間に、繋がりが出来ていた。

 

「何か変な感じがするよ? これが魔法?」

 

「うん。まあ、詳しいことは言えないけど、ボクとコトネちゃんの間に繋がりが出来たんだ。一時的に、だけどね」

 

「一時的?」

 

「うん。ボクもずっとこの街に居られるわけじゃないからさ、ボクがこの街を離れたときにはその手にある繋がりは切れちゃうんだ」

 

 そう言いながらキャスターはコトネの手を指差す。コトネが示された場所を見てみると、盃を囲む二本の剣と杖で出来た三画の模様が手の甲に浮かび上がっていた。

 

「これが、繋がり?」

 

「そう。あ、そだ。これプレゼントね」

 

 そう言ってキャスターがコトネに渡したのは、一冊の本だった。題名も何も書いていない、古ぼけた本。中を開いてみても、何も書かれていない。そのことを抗議しようと口を開くも、キャスターが説明を始めたので、仕方なく黙ることにする。

 

「まず、これを開くときには、周囲に誰もいないことを確認すること。魔法っていうのは隠しておかなきゃいけないものだからね」

 

「うん」

 

「で、開く前にはこう唱えること。……claudere(閉じよ)

 

 キャスターがそう唱えてから本を開くと、先ほどまで何も書かれていなかったページに次々に文字が浮かび上がっていく。

 

「最初はあんまり読めるページは多くないけど、レベルが上がれば読めるとこも増えていく仕掛けになってるんだ」

 

「うん。じゃあ、ママにも内緒だし、リンちゃんにも内緒にしなきゃいけないんだね」

 

「そうそう。秘密でね。さて、ボクももうそろそろ家に帰らなきゃね。コトネちゃん、さっきの場所まで移動するよ」

 

 ここに来た時と同じように転移魔術を使い元居た場所に戻る。そこで二人は別れを告げ、家路に着く。

 

 一人になったキャスターは、コトネのことを頭の中で整理していく。

 

「(コトネちゃん、まあ、今のままじゃ魔術師とは言えないけど、将来は結構いい魔術師になりそうだなぁ。魔術回路も多かったし。それにしても何でソラに似てるんだろう?)……ねえ、アサシンさん、出てきたら?」

 

 人通りのないところでキャスターは立ち止まり、何もない方向へ向けて声を発する。

 

 すると、あっという間に複数の人影が現れていく。どれも髑髏の仮面を被っている。すなわち――アサシン。

 

「キャスター風情が、自らの陣地ではないところで我らアサシンに勝てるとでも?」

 

「ふふふ。今のボクは機嫌がいいんだ。このまま何もしないで帰ってくれるなら、何もしないであげるよ?」

 

 キャスターのあからさまな挑発に、アサシンの一体は耐えきれず、先制攻撃を仕掛ける。

 

「ハッ。何を言うかと思えば、その程度か。我らアサシン、キャスター風情には負けぬわ!!」

 

 そう言ってアサシンは手に持った短剣をキャスターへと投げつける。だが、それをキャスターは舌打ちだけで防御魔術を発動し完璧に防ぐ。

 

「あはは。じゃあ、みんな死刑」

 

 キャスターは目を瞑り、詠唱を始める。それを好機と見たキャスターは一斉に襲い掛かるも、悉く防御魔術に防がれる。

 

「じゃあさよなら」

 

 

 そして―――

 

 

 

 

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