NEW GAME!~とある社員の日記~   作:とある社員

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○月×日△曜日

 今朝出社したら八神からいきなり涼風さんの歓迎会に参加しないか、と誘われた。当然、キャラ班に所属する涼風さんと営業の俺に接点は無く、そもそも他の部署の歓迎会に参加する事自体に問題があると判断した俺はその誘いを断った。

 

 会社の経費でアルコールが飲める事は正直に言って羨ましいがだからこそ、キャラ班や葉月さんのチームですらない営業の俺が参加するのは問題があるだろう。まあ、二次会とかに誘われた所で顔を出すかどうかは悩む所ではあるのだが。

 

 何故かモーション班である篠田さんも混じっていたが定時になると退社していくキャラ班のメンバーを横目に自分の机に戻って打ち合わせに使用する書類を制作していると葉月さんから声を掛けられた。

 

 要件を尋ねてみると涼風さんの歓迎会に少しだけ顔を出すから一緒に来ないか、というお誘いだった。

 

 涼風さんの歓迎会については八神に誘われた時に断っているので同じ理由で葉月さんの誘いも断ったら、君はそういう所が真面目になったね、と苦笑された。それと同時にチラチラとこちらを見ながらわざとらしくアルコールの入った女性陣だけだと色々危ないだろうなー、と言ってきた。

 

 そもそも何故、あまり関わりの無い涼風さんの歓迎会に参加させたがるのか、葉月さんの意図が読めず、怪訝そうな表情を浮かべているとその理由を教えてくれた。なんでも涼風さんが遠山と八神の仲は別にして、俺と遠山、俺と八神が殆ど事務的な会話しかしていない事を気にしていたらしい。

 

 会社は仲良し小好しをする為の場所ではないので普段関わらないなら事務的な会話になるのは当然なのだが、涼風さんは同期がいないので同期という存在に淡い幻想を抱いているようで俺たちの関係性を気にしていたとか。

 

別に業務時間外なら雑談もするし、涼風さんの知らない所で時間が合えば同期会もたまには開く、八神となら何度もサシで飲んだりするので涼風さんの心配は全くもって見当違いである。とはいえ、まさか一回りも歳が違う女の子にそんな心配されていた事に苦笑が漏れる。

 

 まあ、ある意味でお金の出所である場所のトップでもある葉月さんの誘いを断るのも悪いだろうし、会社のお金で酒が飲めるなら悪くない。

 

 小さくため息を吐いた後、打ち合わせの書類を切りの良い所で片付けると少し顔を出すだけなら、と葉月さんに答えて一緒に涼風さんの歓迎会が行われている居酒屋へ向かう。

 

 葉月さんと共に涼風さんの歓迎会に顔を出すと責めるような八神の視線が突き刺さるが気付かないふりをしてそのまま歓迎会に参加する。

 

 とはいえ、この会の主役は涼風さんであり、会話の主役も涼風さんである以上、特に深い関わりのない自分は静かにしていて、涼風さんから質問をされた時に答える程度だった。

 

 その中で比較的滝本と仲が良い事に驚いていた涼風さんは何故、仲が良いのか尋ねられた時に俺が元々、モーション班で篠田さんの席が元々俺の席だった事を教えたら大げさに驚いていた。

 

 同時に滝本より上の立場で俺がモーション班から営業になった事情を知っている人間の表情が微妙に強張った事を察した飯島さんが話を逸らした事でその話が深く聞かれる事は無かった。もう終わった事だし、気にしていないのだが、まあ、あまり突かれても良い思い出ではないので飯島さんには感謝している。

 

 葉月さんが歓迎会を抜けるタイミングで同じように抜けようとしたら、送り狼かい、と茶化されてしまい、帰るタイミングを失った俺は結局、ラストオーダーまで付き合う事になった。その後、変な酔い方をしている八神と遠山に捕まった涼風さんの助けを求める視線を受けて結局、二次会にも付き合った。

 

 その中で八神と遠山が良い感じに酔い潰れてきた頃、涼風さんが昔の事について尋ねてきた。あの時に流れた微妙な間の意味をまだ若い涼風さんは理解出来なかったようだ。

 

 少し悩んだ後、涼風さんにフェアリーズストーリーを知っているのか尋ねてみると目を輝かせて、子供の頃にプレイしてイーグルジャンプに就職するきっかけになったと教えてくれた。

 

 それならフェアリーズストーリー2について、どう思ったか尋ねてみるとかねがね好意的な意見が返ってきた。それならと思い、涼風さんにフェアリーズストーリー2の制作中に起きた事を教えてあげた。

 

 結論から言えば俺と八神で胸倉を掴み合う大喧嘩を起こしたのだ。

 

涼風さんはかなり驚いていたが当然ながら女性の胸倉を掴んで揉めるなど思い切りセクハラ行為であり、そんな人物が男女比率が偏っている葉月さんのチームに居られる訳もなく、俺は会社を退職しようとしたのだが、葉月さんがかなり強く引き留めてくれたおかげで営業として働く事になった。勿論、喧嘩になる程度には八神にも問題があった訳で同期の俺まで自分のせいで退職したら八神に対してある意味で止めになってしまうと葉月さんは危惧していた訳だ。

 

 まあ、そこまで詳しく涼風さんに教えていないがその大喧嘩のせいで俺は葉月さんチームから追放、八神はADから降格という処分が会社から罰せられた。

 

 だいぶ驚いている涼風さんに八神にとっても苦い記憶なので詮索しないように注意しつつ、言いたい事を伝える。

 

 子供が楽しむ為のゲームをいい歳した大人が喧嘩するほど真剣になって作っている。仕事の楽しさや面白さを忘れないのはいいがそれと同時に仕事に対して、真剣に取り組んで欲しい。その心を忘れなければきっと良い作品が生まれてくる筈だから。

 

 その言葉を聞いて目を輝かせる涼風さんの態度が気恥ずかしくてグラスに残っていたアルコールを一気に飲んで、酔い潰れている八神と遠山を起こしておくように伝えると会計を済ませて店を出る。

 

 店を出た後、普通に財布を開いた涼風さんの頭にチョップして、後輩は大人しく奢られているように、と伝える。

 

 その後、涼風さんに荷物を持ってもらい、前後不覚になっている二人に肩を貸して会社まで戻ると各々の机があるブースに放り込み、帰宅する。

 

 涼風さんは大丈夫なのか心配していたが、俺には会社へ連れて行く以外の選択肢は無いので仕方ない。体調を崩すかどうかは自己責任だ。

 

 

○月×日△曜日

 遠山に社内メールで頼んでおいた広報用に使用するキャラデザの資料を取りに行くと八神が滝本と飯島さん、涼風さんを叱っていた。遠山から資料を受け取りつつ、その光景を眺めていると原因は遅刻して道端で転んだらしい。

 

 その原因を聞いた八神は涼風さんの事を心配した後で事情を詳しく聞かないで叱った事を謝っていた。

 

 性格が悪いのかもしれないがそのまま話が流れていきそうになっていた事に驚きつつ、俺の言う事では無いがそもそも遅刻しそうな時間に家を出てくるな、という釘を刺しておいた。

 

 三人とも反省していたようなので今後は大丈夫だろう。

 

○月×日△曜日

 当然ながらイーグルジャンプには葉月さんチームの他にもいくつかのチームがゲーム制作を行っている。そのうちの一つである花ちゃんチームの進捗状況を確認する為に顔を出して話していた途中、雑談の中で少し俺の営業の比重が葉月さんチームに傾いているんじゃないか、という指摘を花ちゃんから受けた。

 

 確かに古巣であり、営業の道具として八神のサインをよく使わせてもらっている関係から比重が偏っていたかもしれない。まあ、営業の中でも得意不得意があるのは当然であるが、そもそも営業と制作チームは犬猿の仲になりやすい。

 

 制作現場の実情を身を以て知っている、それは俺の営業の武器になりえるものだからこそ、制作チームとの些細な対立の火種になるようなものは見逃せない。

 

 普段、そういう事を言わない花ちゃんから受けた指摘に心当たりのある俺は指摘してくれた事に感謝してお礼を言った。

 

 

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