リハビリ兼ねて書いてるとこあるから遅筆許して。あとブラックラグーンは待って。7割は次話書けてるから。
あと漫画版を全巻持ってる作者が書いてますので、アニメオンリー予定勢の方には色々とネタバレあります。ご注意を。てかとりあえず全巻買って読んでからアニメを見ましょう最高ですから(義務教育)
ではよろしくお願いいたします。
前日譚
陸圧の瞑想を、霊穴を揺るがす衝撃が破った。
すわ何事か、と思考の海にも揺らぎが走るが、陸圧は努めて気を静める。ようやく瞑想三日目に入ったものを、ここで途切れさせては悔いが残る。それに、先だって師に自制心の無さを懇々と指摘された手前、少々のことで修行を途切れさせたくはないものである。
呼気ひとつで平静を取り戻した直後、ずずんと揺れて陸圧の尻が浮いた。
なんのこれしきと、座して目を開かぬ陸圧だが、そこにもうひと揺るぎ。
むむむと唸りはするが、意地でも瞑想を続け、ずずん、ずん、ずずずずずん、ずんずんずんごごごごごばきばきがらがらごろがらばきずん――
無理。
「うるせええええええええええええええええーーーーーーーッ!!」
陸圧はキレた。珍しく人が真面目に動かずいたものを、どこの馬鹿が邪魔したのか。見つけてとっちめずにはいるまいぞと決意した。
唯人の咆哮ではない。陸圧のそれは音波の壁であり、音響の津波だ。それは一連の揺るぎを遥かに凌駕する、物理的殺傷力だ。先ほどからの揺れ程度では収まらず、二度、三度と地響きを引き起こし、ついには霊穴の土台に亀裂を走らせる。
貴重な霊穴に重大な損害を負わせたことは欠片も意識にない。匂いをひと嗅ぎ、耳を澄ませ、目を走らせる。
(…東だな、だがこいつは…元始のジジイ? なぜだ?)
匂いには特になにもないが、分厚い太鼓を引っ叩くような低音と、引っ切り無しに続く破砕音が東の方角から響いている。目を向けると、不自然に歪曲して捉えられない空間があった。明らかに元始天尊のスーパー宝貝、盤古旛の重力場によるものだ。
陸圧の視力は千里眼の域に達し、紫外線から赤外線までほぼ全ての光線を選択的に捉えることができる。が、あくまで視力の域は出ない。光線そのものが重力で歪められていれば、場の内部の実像を捉えることはできない。
しかし、なぜ元始天尊が暴れているのかは陸圧にとって重要ではない。元始天尊が暴れているという事実が重要なのだ。
「ジジイ…マジメニシュギョウセンカなんて怒鳴りつけやがって…テメエが邪魔しやがるとは良い度胸じゃねえかっ!」
怒りに燃える陸圧が地を蹴って飛び出すと、その反動で、霊穴のあった浮島が粉々に散華した。西崑崙には珍しく良質な霊穴ではあったが、そんなものを気に留める陸圧ではない。
目指すは騒ぎの元凶たる老仙人。魂魄までとはいかずとも、数か月は身動きできぬ程度にボコろうと決めて、浮遊する岩石を飛び移る。
十数回も飛び移り、陸圧が着地したのは宝貝合金でできた島だ。鋳鉄や鍛鉄ではなく、自然に生まれた合金の塊である。どのようにしてできたのか、いつからあるのか、知っている仙道はいない。ただ気付けばそこにあり、珍しい島だねとたまに話に出ることもある、そんな名もなき島だった。
陸圧が西崑崙に住まい、「足場島」とあだ名されるまではの話だが。
「待ってろやクソボケっ!!」
そう、その島こそは、陸圧が全力で蹴っても
幾度となく蹴られて半分ほどの大きさまで削れてしまった哀れな足場島は、今回もその役割を果たした。陸圧の身体は風を追い越し、騒動の元凶まで飛んで行く。
飛んでいた時間は僅か数十秒、距離にして数キロ。
その間に少し頭の冷えた陸圧が思索していたのは、このバカ騒ぎを起こしたのが何者であるかという一点だ。
揺れの原因が元始天尊であることは既にわかっている。地続きでない浮島に、数キロもの距離を通して揺れが伝わる程の出力となれば、スーパー宝貝でなくては困難だ。また、発生源では重力場が歪み、陸圧の目をもってしても状況を窺い知れないとなれば、これはもう盤古旛、それも完全に御している使い手の仕業だ。となれば、元始天尊を除いて他におるまい。
しかし、その宝貝の矛先が一体誰に向いているのか? 金鰲島の連中が攻め入ってきたのか? ならばなぜ十二仙が加勢している様子が見られないのか?
結論は出ない。答えもわからない。ならばひとまずは駆け付けるのみ。
重力場の外延部に到達する寸前で重力は解除され、陸圧は手近な島に着地し、その目を元始天尊に向けて――
「……なにやってんだ、ジジイ」
そして彼は見た。
血に染まり落ち行く朋友、その朋友を墜とすは我が師。
なにが起きた。なぜ崑崙が教主と、その腹心が見たくもない殺し合いを演じている。陸圧の心中に浮かんだ疑問は、地に吸い込まれていった無二の親友を見て消え去った。
我が朋友、得難き親友、無二の友、強き者、正義の心を燃やす者。その名を燃燈道人という。
たった今、元始天尊が地に堕とした男の名だ。
そして、陸圧が自分の命よりも大切に思う者の名だ。
「陸圧か。なぜ血相を変えておる」
いけしゃあしゃあと、その禿頭を撫でながら元始天尊が嘯く。
騒ぎを遠巻きに眺めていた十二仙も駆け付けてきたが、陸圧の目には入らない。彼の血走った眼には、目の前の憎むべき男しか見えない。
「なぜ、だと? それは俺のセリフだジジイ。なぜ燃燈を――」
はっとなった陸圧は下界を見下ろす。陸圧の目は、豆粒ほどまで小さくなった燃燈の姿を、まだ見ることができた。
元始天尊を問いただすなぞ後でも良い。燃燈は見るからに重傷で、意識があるかも危うい。無防備な状態でこの高さから墜落すれば、いかな仙道でも死あるのみ。
救わねば。
「――させぬよ」
救い出すべく、一歩踏み出そうとした陸圧の身体が、100倍の重力で地面に縫い付けられた。
ただ重力を100倍にしただけではない。それでは陸圧を縫い付けている島まで砕き、結果的には彼を自由にしてしまう。だから元始天尊は重力を球状に展開し、陸圧を重力場の目に据えることで、さながら牢獄の如き拘束を実現させた。陸圧の身体を折り砕くまではいかずとも、身動きの一切を封じている。
恐るべきは盤古旛、そして担い手たるに相応しき元始天尊。仙骨が生み出すパワーだけを見れば燃燈や竜吉公主に及ばずとも、宝貝の扱いにかけては崑崙で右に出る者がない。
その程度のことは陸圧とてわかっていた。
だが、その元始天尊がなぜ燃燈を――なぜ自分を――
「ふざ、け、ん、じゃ……なんっで、だよ、ジジイ……!」
陸圧は政治がわからぬ。彼は一本気であった。難しい事情を友情や愛情より優先させる理由などわからないし、知りたくもなく、納得するつもりすらなかった。
だから、なんだかんだ愚痴りつつも慕っていた師が、この世で最も大切な親友を殺した理由だって、どうしてもわからなかった。考えたくもなかった。
それでも、なぜ、と言わずにはいられなかった。
「何故か。燃燈が十二仙の長としての立場を忘れ、ワシに意見しおったからじゃ。自分こそが正しいと思いあがり、手前勝手な正義とやらを、武を以て押し通そうとしたからじゃ。ワシはそれを止め、思いあがったあやつを誅した。それだけのことじゃよ」
いっそ冷淡と言っても良い口調で、元始天尊は切り捨てた。
かつての愛弟子を、今の腹心を不本意ながら打倒したという心は、そこからは読み取れず――ただ、従わぬ路傍の草をむしり取ったかのような無機質な語調で――
「もう眠っておれ陸圧。悪いようにはせぬ。――重力集中」
言うが早いか、首元と頭部に尋常ならざる圧力がかかり――
陸圧の意識があったのはそこまでだ。
これが現在まで崑崙に伝わる大事変、『陸圧事変』である。
その日を境に消えたひとりの仙道は、その名を語ることすら禁じられ、現在では知る者は少ない。
しかし、陸圧は忘れない。
牢に繋がれ、能力の一切を封じられ、元始天尊への謝罪を諭されても彼は揺るがない。
かけがえのない友が奪われ貶められたことを、彼はずっと忘れない。
獄に繋がれて三百年が経つ頃、ついに歯車が動き出す。
「あなたが陸圧ちゃんねん?♡」
「――誰だ」
歴史の歯車が回る時、彼の炎も燃え上がる。
祝融が現身の如き力を持つ、万夫不当の武仙。名を陸圧。
彼が歴史に名を記されるのは、もう少し後のことである――
ググるのかったるい皆様のための解説こーなー
・陸圧
フジリューがベースにしてる、安納版の封神演義に出て来た仙人。詳しく書くとネタバレるけど、まあ小説版ではいたがマンガ版ではいなかったキャラと思ってれば大丈夫です。
どうせ原作から改変しまくるし無問題。
・重力集中
はい、早速ですが強化してます。
いや元始天尊さんの限界が単なる重力千倍なわけないっすよ。この時代は封神フィールドの負担もないしね! というわけで重力場の中での細かな力場移動を可能としました。
なんのこっちゃわからん人はとりあえず、フジリューの漫画版を全巻買って読むように。
・祝融
中国神話の火の神様。この物語には全く関与せず、形容詞として使われるのみです。まあ詳しく知りたい方はググるか中国神話読んでくだせえ。ここ書くと字数が…