星河スバルは■■である   作:3はずっとブライノイズでした


原作:流星のロックマン
タグ:未来捏造
ウォーロックが、相棒について語るだけの小話。

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星河スバルは■■である

 相棒――その言葉を知ったのは、いつだろうか……暇つぶしに見てたテレビからだろうか、気が付いた頃には胸の中でストンと落ち着いてた。

 その為か、使い始めはオレからだった。電波体であるオレと、人間であるスバルは、異なった生命体だ。そんなオレ達の関係に、正しく当てはまる言葉だろう。

 

 それでも最初の頃は、正直言って奴らへの復讐しか頭になかった。そして、それが果たせるなんて思っていなかった。そういう存在を敵に回したのだ……確かに戦わなければ、地球は破壊し尽されるとしても、オレがしたことは良いことでは無い。

 父親を喪い、心を閉ざした少年を、都合のいい言葉で騙す――成程、悪い宇宙人らしい行為だ……これじゃ、あいつらのことを笑えないぜ。

 

 そうして始まったオレ達の関係が続き、何処かでくたばるだろうと思っていたオレの予想を超えて……そして罪悪感なんてものを覚えてしまったオレが、真実を語ろうと決意した時は、復讐の相手が待つ決戦の地だった。

 ただ勝つことだけを、復讐を果たすことを考えているのなら、全てが終わった後で良かったのに……オレは赦されたいと思って、真実を話したのだ。

 

 そして結果、オレは復讐者にはなれず……生まれ育った星に帰ることも無かった訳だ。

 

 復讐の相手と、生まれ故郷の三賢者には「スバルを送り届ける義務がある」って言ったが……本心を言うなら、オレは借りを返したかったんだ。

 まあスバルに言ったところで「そんなのないよ」と言われそうだからそのつもりは無ぇけどよ……。

 

 ただ、オレは信じてしまった――あの時に出会った男と、スバルの信じる心を。

 

 オマエが戻ってくるまで、スバルのことはオレが守ると――。

 

 いや、やっぱり違う。カッコつけた……オレは楽しいと思ったんだ。スバルと一緒にすごす毎日が、楽しくて面白くてたまんないんだ。

 だから相棒として、これからも一緒に暴れてやろうぜ……なんて言ったら、慌てて否定されそうだ。まあ暴れるのは程ほどにして、しばらくは大人しく見守っているさ――。

 

 

 

 でも運命ってやつは、オレ達を見つけてしまったらしい……病室で寝ている相棒を見ながら、オレは一連の流れを思い出していた。

 

 古代遺産“ムー”を巡る戦い――まさか地球にも電波体がいるとは驚きだ。そして成り行きとは言え、オーパーツなんてオレの手に余る代物を身体の中に埋め込まれた時は……いや、あんまり怖いとは感じなかった。

 戦ったのはオレ達だけじゃない。復讐者でしかなかったオレでは無く、そしてスバルも孤独を抱えて閉じこもる弱虫じゃ無い……危なかっしい時もあったが、乗り越えてしまえば笑い話だ。

 ちゃんと蹴りをつけて……平行世界の因縁も終わらせた頃には、夏休みは数えられるほどの日数しか残っていなかった訳だが……まあ、流石に事情を話せば考えてくれるだろう。勿論、話せることは入院したと言う話だけだ。オレは構わないが、スバルは隠しておきたいそうだ。この辺の理屈は、未だに良く分からねぇ……。

 

 いや、まだ残っている――結局、アイツとの因縁に決着はついていない。

 

 絆を信じるスバルとは真逆の……自分だけで強くなると決めた戦士に、オレ達は出会ってしまった。水と油、絶対に分かり合うことなんてできない程の拒絶……幾度もぶつかり合ったが、未だに敵のままだ。

 

 考える度に、傷つく度に、これでいいのかとオレは思う……オレだけなら構わない。戦うことを生業にしていたのだ。最後に勝てれば、万事良しだ。

 それでも……相棒は違う。本当なら守られるべき立場の筈だ。でも、今はこの星を守るヒーローとして戦っている……青き戦士“ロックマン”として。

 

 だからこそ、人間達は知るべきだと思うんだ。みんなから感謝されるべき戦士が、今こうして、傷だらけで眠っていることを……だけど、スバルは絶対にそれを望まない。

 そこまでして守りたいものは何なんだ。ただ聞けばいいのに、オレは聞けずにいた……何処かで分かっていたのか、だから踏み込めなかったのか……。

 

 静かな病室の窓には、青い空が広がっている。その向こうは、無限に広がる宇宙だ。その何処かで彷徨っている筈のアイツに、助けを叫ぶ。

 

“早く戻ってこい……じゃないと、スバルは――!”

 

 そんなオレらしくない願いが、複雑な形で叶うことになると……この時は、まだ知らなかった。

 そして……スバルの運命は、もう決まっていたのだと気付くべきだったんだ。

 

 

 

 紅い流星“メテオG”――その最深部で、彼は戦っていた。

 

 地球を飲み込もうと迫る存在を相手に、途方も無い時間を一人で戦っていた……その事実に納得すると同時に、オレは親子としての姿を重ねてしまった。

 ああ、今なら理解できる。共に戦いを繰り広げてきたオレだから分かる。人間の力を、大切なものを守ろうとする想いが、これ程の強さになるのだと……。

 

 恐れることは無く、ただ純然たる決意を持って、オレ達は紅い流星を破壊した――。

 

 

 

 それから少しの間、オレはスバルと別れることになる。相棒を待つ人間達の想いが、帰り道を創り出した。それは奇跡と言うべきものだ……絶対に帰らせると、オレは決意した。

 まあ当然、スバルは嫌だと言った。帰りたいのと同じくらいに、別れを惜しんでくれた。それだけで胸が熱くなれたのは、きっとスバルのおかげだろう。だったら尚更、その礼は果たさなければいけねぇ……。

 

 幸いなことに、話し相手には困らない。赤黒の双頭竜に呑まれた筈の彼は、何事も無かったかのように隣にいる。積もる話もあるんだ……少しくらい帰るのが遅くなってもいいだろう?

 

 ただ、約束はできなかった。地球に向けて流れていくスバルを、安心させられるような言葉は言えなかった。それは帰る保証がねぇから……いや、そうじゃねぇ。

 オレも、大吾も、此処でくたばる程やわじゃねぇ……時間をかければ、いつかは帰れる。

 

 躊躇ってしまった――オレは、帰ってもいいのかって。

 

 星河スバルの闘う目的は、父親を取り戻すことだ。その目的は果たされた……いや、これから果たされる。あの時のオレは、あくまで協力してもらうための条件として利用していたが……それを抜きにしても、スバルがこれ以上闘う必要は無くなった訳だ。

 オレは独りでも生きていける。今までの電波体とは少し変わってしまったが、オレ自身の身体だ。誰よりも分かってる。

 

 そんな考えが浮かんだが、結局のところオレは流されるままに地球に……スバルの所に帰ることになった。

 妙な素振りをしたその瞬間に、オレの首根っこを大吾が掴んだんだ。久しぶりの再会で、そもそも最初の頃だって、会話なんて僅かだったのに、お見通しと言いたげに捕まった。

 そんな強引な……彼らしい優しさに、オレは断れなかった。甘えてしまった訳だ。

 

 

 

 これはオレだけの後悔であって、誰かのせいでは断じて無い。

 

 それでも、オレは別れるべきだったと思い続ける……地球に、スバルの元に、帰るべきでは無かったと――。

 

 

 

 一枚の写真が手元にある。

 

輝くような笑顔を見せている家族写真……いや、オレだけは苦しそうな顔だ。大吾の回した腕に絞められたおかげで、オレだけ妙なことになっている。

 まあ、それを無視すれば、何処にでもある家族の光景だ。それは何よりもスバルが求め、そして掴み取った未来だ。

 

 いつもの日常に戻れると、誰もが思っていた。少なくともオレは、そう信じていた。これまでと同じように、時々は困っている誰かの為に、相棒と共に暴れるくらいの……呆れる程に平和で、穏やかな日々が待ってると……。

 

 

 

 地球の奴らが、オレ達を知ってしまった……その意味を知ったのは、すぐだった。

 

“救世の戦士”

“この星の守護者”

“最新にして最強の英雄”

 

 ありとあらゆる事件に、オレ達の姿があった。WAXAを……その上にいる政府の奴らからの頼みを、スバルは断らなかった。

 そりゃあ当然だ。困っている人がいて、助けられる力があるなら助けたいと思うのがスバルだ。そんで思いっきり暴れられるなら、オレに文句は無ぇ。

 電波変換したオレ達の持つ力は絶大だ。それを持ってすれば、ほとんどの事件は解決する。ウイルス駆除から、暴走電波体に、人命救助……果ては、ブラックホールを住処にしていた凶悪電波体まで、オレ達で解決していった。

 

 そして、ある日……オレは気付いた。

 

 “星河スバル”でいる時間よりも、“ロックマン”でいる時間の方が多くなっていた。この星で、事件の無い日は絶対にない。それがウイルスによるものなのか、悪意を持った人間の仕業かの違いはあるが、その始末を付けるのがオレ達だ。

 スバルの生活に支障が出ていることに気付いた頃には、もう人々はロックマンの力を当然のものとして認識していた。助けを求める人間達の瞳に映っているのは、ただの男の子では無くて、相棒の電波体であるオレでも無く、ロックマンの姿になってしまった。

 

 無性に腹が立った。オレ達は便利屋じゃない。お前達の為に戦っている訳じゃねぇのに、それを自分達の為だと信じていることに、違うと突きつけたかった。

 当然のように、相棒はそれを止めた。困り顔で、嬉しそうに――それでも僕は、いいんだ――と、誇らしげに笑った。

 

 事件の絶えない星と同じように、争いの絶えない宇宙だった――相棒に出会ってからの毎日は、オレを飽きさせない。強い奴らとの戦いは当然、一緒に飛び回った広い宇宙も、家の中だけで終わってしまった休みだって、オレは楽しかったんだ。

 

 次第にオレ達の周りに……他の誰かが見つからないことに気付いてしまった。

 

 繋がりが途切れた訳じゃない。ブラザーのキズナリョクは以前よりも高い値を示している。それを盲信する気は全くねぇが、心の拠り所になっているのも事実だ。

 けど、大きくなってくにつれて……傍で支える繋がりは、離れても想い続ける繋がりに形を変えていた。今でも戦い続けているのは、“人工電波変換体”と“ムーの遺志を継ぐ者”だけだ。

 それぞれが夢に向かって道を選んだ。ハープもオックスも、パートナーを支える道を選び取った。再び戦いの場に戻ることは無い……そういう事態になる前に、オレ達で終わらせるからな。

 

 そうして……相棒に聞けないまま、やがてオレの不安は掻き消されてしまった。

 

 

 

 戦って、戦い続けて――。

 

 沢山の言葉を受け取って、“ありがとう”と言われても、戦い続けて――。

 

 地球に戻ることが少なくなったと思えば、どこか別の星で再会するようになって――。

 

 オレは今更だと知りながら、相棒に聞いてみた。

 

 

 

「なあ、妙なこと聞くけどよ――」

 

 地球に似た星だった。大自然の中で、夜空には星々の輝きが映っている……いつか相棒と出会った展望台を思い出す。

 相棒は無言を貫くが、別に拒まれていない。続きを待っているんだって、分かってる。

 

「――後悔してないか?」

 

 僅かに身体が動いた。出会った時よりも大きくなった所で、そう簡単に面影は消えないに決まっている……微かに息を吸う音が聞こえたから、オレは待った。

 

「ないよ……これまでも、これからも」

 

 記憶よりも低く聞こえた声音に、こうやって話すのは久しぶりだなと頭の片隅で思った。言葉の中に滲み出る強い決意を感じて……それでもオレは、言わなくてはならない。

 

「そうか……けどよ、オレは後悔してるぜ」

 

 相棒は何も言わない。もしかしたら驚いているかもしれねぇが、顔を覗く気は起きなかった。一度言い出せば、燻っていた想いが溢れ出してきたんだ。

 

「オレは戦うことしか知らなかった……でも、今は違う。そうじゃない生き方を知ってるし、沢山見てきた。それが当たり前であって、オレ達のそれは違うんだってな」

 

 オレは戦士として生まれ、育てられたはずだ……だから、今の生き方を悪いとは全く思わない。誇らしいと思っている。戦いに生きる者として、最高の栄誉と共にあるのだ。

 だけど相棒は違った生き方がある筈だった……彼の戦いは、地球を救った時に終わるべきだったんだ。父親を取り戻して、ありふれた家族の息子として、人間らしく生きるべきだった筈だ。

 

「お前は戦いに向いてなかった――いや、向いているからこそ、戦うべきじゃなかったんだ。お前の優しさが、強さが……そしてオレが、お前の未来を変えちまった」

 

 もしもの未来を考える気は無いが……考えた所で、ろくでもないと分かっても、それでもオレは思ってしまう。

 仲間に囲まれて、両親に見守られた相棒が……みんなが笑っている姿――例えそこに、オレがいないとしても、相棒にとって幸せな未来だと思うのだ。

 

「オレはお前と別れるべきだったんだ。メテオGを破壊して地球を救い、父親を取り戻した時に……ああ、今更言った所で意味無ぇのは分かってるさ。これは聞いて欲しかっただけの我儘で、オレしか得にならねぇことだ」

 

 沈黙がオレ達を支配した。どうしてこんな話をしたのか、オレ自身も分からねぇ……此処が地球に似ていたからなのか、あの頃を思い出してしまったからなのか……それなら呆れて、何も言えねぇ。

 気の遠くなるような時間が流れていった……電波化したオレ達に、寿命の概念は存在しない。もうオレ達の帰りを待つ奴らは、彼方に逝ってしまった。

 

「“大切なものなんかいらない。失くすのが怖いなら、最初から無ければいい”――そう、僕は思っていた」

 

 オレに背中を向けたまま、相棒は静かに立ち上がった。

 

「今は大切なものが沢山できた。絆の力を知った。どんなに離れていても、僕が忘れない限り、絆は僕達と繋がっているって信じてる」

 

 それが強がりじゃなくて、本心からの言葉だとオレは分かってる。

 

「……でも、失うことが怖いのは、今も変わらないかな」

 

 おどけて言った相棒が、俺の方に振り向いた。出会った頃の面影を残していても、顔付きは父親を彷彿させて……いや、それ以上の強さを伝えてくる。

 もう少年じゃねぇ、戦士と称されても無理は無い程に、相棒は大きくなった。

 

「だから僕は、守る為に戦う。それに――」

 

 右腕を突き出して、放った言葉を、オレは絶対に忘れない。

 

「――ウォーロックに会えたことを、後悔なんかしないよ!」

 

 

 

 結局、相棒は何もかもを救うのだろう――。

 

 優しさも、強さも、全て自分以外の為に使うのだ。

 

 これからも、変わらずに……。

 

 いつか、足を止める時が来たとして……その時、オレは傍にいるのだろうか?

 

 願わくは、幸せなものであってほしい。

 

 

 

「分かってんのか――それは英雄の生き方だぞ、スバル」

 

「うん……僕は、僕達は、ロックマンだから……!」

 

 

 

 青き流星の英雄……その名は、ロックマンと云う。

 


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