短編集 らき☆すた~変わる日常IF、色々な世界~ 作:ガイアード
「・・・ごめんなさい、慶一さん。私、帰るね!」
そう言って私は、慶一さんに、大好きなあの人に拒絶の言葉を投げつけて、その場を後にした。
「ゆたか!待て!!」
そう私を呼び止める慶一さんの声が聞こえたけど、私はその呼びかけにも振り返らずに走って行った。
そして、その後に慶一さんが私を追いかけて来る事もなく、私は失意のままに自宅(泉家)へと戻って行くのだった。
事の起こりは私と慶一さんとの何度目かのデートの時。
私はここ最近、緊張からかデート中に体調を崩す事がよく起きていた。
そのたびに心配してくれる慶一さん。
そして、そのたびに慶一さんに対して罪悪感を募らせてきた私。
慶一さんが私を思ってくれればくれるほどに、迷惑をかけてしまう自分が嫌で、そして、そのたびに落ち込み、自分を責める日々。
そんな日々はいつしか私の心を負の感情で埋め尽くしてしまうほどになっていた。
そして、今回こそは、と意気込んだ私だったけど、またしても私は慶一さんの前で体調を崩し、それが引き金となって、溜まりに溜まっていた鬱積がついに爆発する事となった。
そして・・・・・・・
冒頭の台詞を叩きつけて私はその場を後にして、泣きながら家へと帰ったのだった。
家に帰った私は、こなたおねえちゃんやそうじろう叔父さんに見つからないように気をつけながら自分の部屋に飛び込み、ベットに顔をうずめて声を殺して泣いていた。
そして、泣きながら私は慶一さんと出会ってから今までの事を思い出していた。
私の恋人である森村慶一さんとは、私が中学3年の時、私が道路で気分を悪くして道路でうずくまっていた所を助けてくれたのが出会うきっかけだった。
その時の私は、慶一さんの好意に無理をして拒絶していたけれど、そんな私の拒絶を意にも介さないように私をお姫様抱っこで抱き上げて、私を気遣いながら公園のベンチまで運んでくれた。
私はそんな慶一さんの行動に戸惑いつつも、気分の悪さから意識を失ってしまっていたようだった。
そんな私を優しく寝かせ、そして介抱してくれた事で私は意識を取り戻す事ができた。
そして、そこで交わした会話が慶一さんと交わした最初の会話だった。
私は今でも忘れていない。
あのきっかけがあって、私は慶一さんと知り合えた。
そして、あのきっかけは、私を陵桜へと導いてくれ、そして、色々な事があって、私は慶一さんと恋人同士に成る事ができた。
今にして思えば、本当にあの出会いは私にとっての運命だったと思える。
でも、付き合うようになってから私は、事あるごとに慶一さんに迷惑をかけた。
慶一さんは優しいから、私が体調を崩しても優しく介抱してくれた。
でも、その一方で、その優しさがいつも私を苦しめた。
もっと慶一さんと楽しみたい、もっと慶一さんと普通にデートがしたい。
そう思っているのに、結果はいつも肝心な所で私が体調を崩して慶一さんに迷惑をかけている。
私はそれが、たまらなく嫌だった。
と同時に、こんなに迷惑をかけてしまう私を慶一さんがどう思っているのかを考えると、不安が増すばかりで、ここ最近はまともに慶一さんの顔すら見る事もできずにいた。
そして、今回、こうやって私はそれまで溜め込んできた鬱積を爆発させてしまい、私は慶一さんから逃げた。
突き放し、怖くなって離れたのだ。
あの時、駆け出す私を慶一さんが呼び止めてくれたけど、そんな慶一さんの顔を見るのが怖くて私は振り返らずに走ったのだ。
(きっと・・・そんな私に慶一さんも愛想をつかしちゃったよね・・・。)私は心のなかでそう考えつつ、どうしようもない状況とそして、行動に私は悲しくなって、涙を流していた。
その後、私は自分の携帯の電源を切り、そのまま泣き寝入りしてしまったのだった。
こなたside
玄関の方で慌しい音が聞こえて、私はおとーさんでも帰ってきたかな?と思っていたのだが、どうも足音はゆーちゃんのようだった。
ゆーちゃんの部屋のドアの慌しく開閉する音が聞こえ、私はその様子のおかしさに首を傾げていた。
そうこうしているうちに私の携帯が着信を告げたので、ディスプレイを確認してみると、慶一君からの電話だった。
私は一瞬どうするべきか悩んだけど、とりあえず電話にでてみたのだった。
「もしもし、慶一君?愛しの彼女をほっておいて私なんかに電話してていいの?」
と、嫌味交じりに慶一君に言うと、慶一君は相当慌てた声で
「こなたか!?なあ、こなた。ゆたかは帰って来てるのか!?」
そう話していたので、私は何だか不審に思い、慶一君に
「どうしたの?慶一君。何だか慌ててるみたいだけど?」
そう言って事情を尋ねた。
慶一君は何とか落ち着きを取り戻すと、慌てていた理由を私に説明しはじめた。
「ああ、実はさっきゆたかとデートしてたんだが、その途中でゆたかが気分を悪くしてな、いつものようにゆたかを優しく介抱してやってたんだけど、なんか突然ゆたかが泣き出して、”私、帰る!”って言ってその場から走り去ってしまったんだよ。俺も唐突に起きた事だったからゆたかを引き止める事ができなくてな。ゆたかは帰る、って言ってたから、ひょっとしたら家かな?って思ってな、お前に電話してみたんだ。」
そう説明する慶一君に私は少し不機嫌になりつつ
「事情はわかったけど・・・だったらゆーちゃんの携帯に直接電話すればいいじゃん?何でわざわざ私の携帯にかけてきたのさ。」
そう言うと、私の言葉を聞いた慶一君は電話口で軽くため息をつくと
「それはとっくにやってみたよ・・・。でも、何故かゆたかの携帯の電源が切れているみたいでな、繋がらなかったんだ。仕方なく、ゆたかと一緒に住んでるお前に連絡を取ってみた、という訳さ。」
その慶一君の言葉に私は
「・・・なるほどね。そういう事か。とりあえず、ゆーちゃんは家に帰って来てるみたいだからちょっと様子見てきてあげるよ。慶一君、そのままで待っててくれる?」
そう言うと、慶一君は「わかった、頼む。」そう返事をしたので私は携帯を一時保留にし、ゆーちゃんの部屋へ様子を見に行った。
ゆーちゃんの部屋のドアをノックしてみたが、中から返事は返って来ない。
仕方ないので、ゆーちゃんに「中に入るよ?」と声をかけて部屋の中へと入っていく。
部屋は電気がついてない状態で真っ暗だったので、私は部屋の電気をつけて周囲を見渡してみた。
すると、ベットに突っ伏したまま眠っているゆーちゃんを見つけた。
私はとりあえずゆーちゃんをゆすって起こしてみる事にした。
「ゆーちゃん、起きて?慶一君から電話だよ?ゆーちゃん。」
そう声をかけつつ起こそうとしてみたが、ゆーちゃんは起きる気配がなかったので、仕方なく私は自分の部屋に戻ると携帯を手にとって保留を解除し
「あ、もしもし、慶一君?ゆーちゃんすっかり眠り込んじゃってて起きないよ。とりあえず慶一君から電話あった事は伝えておくからさ、そっちは後でって事で。それと、ちょっと慶一君に聞きたいんだけど、今日のデートで何かあったの?」
ゆーちゃんの事はひとまず置いておいて、今回のような事になったきっかけってなんなのかと思い、慶一君に聞いてみた。
「いや、いつものようにデートして、そして、ゆたかが気分を悪くした。だから、いつものように俺はゆたかを介抱していただけなんだよな。だから、何らいつもと変わった事はなかったぞ?」
と、慶一君は私の質問にそう答えてくれた。それを聞いた私は、更に慶一君に突っ込んだ質問をぶつけてみた。
「そのいつものように、をしている時に何か言ったりしたとか、いつもと違う態度を取ったとかそういう事は?」
そう尋ねる私に慶一君は
「いや、そんな事もなかったな。いつもと一緒、何ら変わらず、だ。だから、突然にゆたかが泣いてあの場から立ち去った理由がわからなくて困惑してたとこなんだ。」
本当にどういう事かわからない、慶一君はそう言う感じだというのが何となくわかった。
「そっか・・・うーん・・・とりあえず私がゆーちゃんに後でそれとなく聞いてあげるよ。だから、慶一君ももどかしいかもしれないけど、ゆーちゃんから連絡行くまで待っててくれないかな?」
そう言うと、慶一君はしばし無言で考え込んでいるようだったが、やがて私に
「・・・わかった。こなたに任せるよ。あ、そうだ、こなた。ゆたかに伝えて欲しい事があるんだ。明日は夕方5時頃から○○公園で来るのを待っているから、って。ずっと来るのを待ってるから、そう伝えてくれ。」
その言葉に私も慶一君に
「わかったよ。伝えといてあげる。伝言はそれだけでいい?」
一応念のため他に伝える事がないかどうかを慶一君に確認すると、電話の向こうで慶一君が少し慌てたような声で
「あ!それと、もう1つ。出来る事なら日付が変わるまでには来て欲しいと、それを追加で頼む。」
そう言うのを聞いて私は伝言をメモに書き記すと
「了解、任せてー。でもさ、もし、ゆーちゃんが慶一君の指定どおりに来なかったら、慶一君はどうするつもりなの?」
ちょっと気になった事を慶一君に尋ねてみた。
慶一君はそんな私の問いに少し落ち込んだような声で
「・・・その時は、俺はゆたかにとって必要な人間じゃなかったんだと・・・そう思って諦めるつもりだ。」
その言葉に私はドキリとしつつ
「あ、諦めるって・・・それって・・・別れる、って事?」
おそるおそる慶一君に聞いてみると、慶一君は少し辛そうな声で
「・・・出来る事なら、そうしたくはないけどな・・・でも・・・覚悟はしなきゃならないかもしれないな・・・。」
私はそんな慶一君の言葉を聞きながら、電話の向こうで凹んでいる慶一君を想像しつつ
「と、とにかくさ、まだ破局と決まった訳じゃないんだし、すぐにそんな結論出さないでよく考えた方が良いと思うよ?何にしてもゆーちゃんには慶一君の伝言伝えとくから、こっちは私に任せて?」
そう声をかけると慶一君は私に
「・・・そうだな、ちょっと思いつめすぎてたかもしれないな・・・。こなた、伝言の方は任せるよ。俺もよく考えてみる。じゃあ、これで切るな?」
そう言うと私は慶一君に
「うん。じゃあね?慶一君。」
そう言ってとりあえず通話を終えたのだった。
ゆたかside
あれから、慶一さんとケンカ同然に別れてきて泣き寝入りしてしまった私は、いつもの目覚ましの音で目を覚ます事となった。
寝ぼけ眼で時間を確認し、そして自分の格好に目をやると、昨日の服装のままでいる事がわかり、私は思わず苦笑していたのだった。
昨日の事を思い出しながら、心は沈む私だったが、とりあえず着替えを済ませて朝食を摂る為に1階のキッチンへと降りていった。
そして、そこには朝食の準備をしているこなたおねーちゃんが居たので、私はおねーちゃんに朝の挨拶をした。
「おはよう、こなたおねーちゃん。何か私に手伝える事、あるかな?」
そう言うと、おねーちゃんは私の声に気付いて私の方を向くと
「おはよ、ゆーちゃん。ねえ、昨日はどうしたの?慶一君とのデートの途中でいきなり帰ってきたみたいじゃん。慶一君も慌ててゆーちゃんに連絡取りたくて私の携帯に電話してきたくらいだったんだよ?」
その言葉と、慶一さんが私を心配するあまりにこなたおねーちゃんに電話した事に驚きつつ、昨日の事を思い出して凹みながら
「・・・なんでもないよ・・・。こなたおねーちゃんには関係のない事だよ・・・。」
そんな私の言葉にこなたおねーちゃんは軽いため息をつきつつ
「そりゃーね、私には関係のない事かもしれないよ?でもさ、やっぱり可愛い義妹が泣いて帰って来たとなったらやっぱり心配するよ?慶一君にも理由を聞いてみたけど、結局わからずじまいだしさ。」
そう言い、そんなおねーちゃんの言葉に私は少し苛立って
「別にこなたおねーちゃんには関係ないよ!付き合ってるのは私と慶一さんなんだから2人の問題の事におねーちゃんに口出しして欲しくない!」
そう言葉を叩きつけたが、私はすぐに”はっ”となって自分の言葉に後悔はしたけど、どうする事も出来ずに俯いた。
そんな私にこなたおねーちゃんは優しい声で
「・・・そっか、ごめんね?ちょっと気になったし、私も2人の事認めてたからさ、やっぱり上手く行ってないってのを聞くと何とかしてあげたい、って思っちゃうんだよね。まあ、何にしても私の口出しが余計だと言うのなら仕方ないね。でも、とりあえずは、私は慶一君からの伝言をゆーちゃんに伝えておくよ?」
そう言うこなたおねーちゃんに私は、慶一さんからの伝言というのが気になって
「慶一さんから伝言?」
と、短くこなたおねーちゃんに聞き返していた。
こなたおねーちゃんはその言葉に1つ頷くと
「今日の夕方に○○公園でゆーちゃんを待ってる、って。ゆーちゃんが来るまでずっと待ってるって。そして、出来る事なら日付が変わる頃までに来て欲しいって言ってたよ?」
慶一さんの言う○○公園の名前を、私はどこかで聞いた事があったような気がして、しきりにそのことを思い出そうとしていた。
と同時に、何故日付が変わる頃までに、なのかが気になった。
そんな風に考え事に没頭し始めた私に、こなたおねーちゃんは更に私にとって衝撃的な事を伝えてきた。
「ゆーちゃん、あのね?慶一君は今の伝言どおりにゆーちゃんが来てくれなかった場合、ゆーちゃんと別れる事も考えているって言ってたよ?ゆーちゃんは、そんな慶一君の決意のようなものを聞いてどう思う?」
その言葉に私はふっと現実に引き戻されて
「・・・え?わ、別れる、って慶一さんが・・・言ってたの?」
私の言葉にこなたおねーちゃんも困った顔で頷きながら
「うん。まあ、それも視野に入れてるみたいだね。はっきりと口にはしなかったけどね。それで?ゆーちゃんはどうするの?どうしたい?」
そう聞いてくるこなたおねーちゃんに私は、困惑の表情で
「・・・わからないよ・・・でも・・・私・・・慶一さんにひどい事言っちゃったもん・・・。きっと行ったって・・・許してなんかくれないよ・・・。」
そう言葉を紡ぎ出すと同時に、またも涙が滲んできた。
「私、どうしたらいいんだろう・・・わからないよ・・・どうしたらいいか、わからない・・・。」
そんな私の言葉を聞いて、こなたおねーちゃんはしばらく何事かを考え込んでいたみたいだったけど、ふいに私に
「・・・ねえ、ゆーちゃん。慶一君の事は好き?」
そう尋ねて来たので、私はその問いに慌てつつ
「・・・うん・・・好きだよ・・・。だから私、慶一さんと付き合う事にしたんだもん・・・。」
それでも自分の素直な気持ちをこなたおねーちゃんに答えると、おねーちゃんは
「そっか。それじゃさ、ゆーちゃんは慶一君の事を信じてる?」
私の気持を聞いた後に、次にそんな質問をしてくるおねーちゃんに私は困惑しつつも
「・・・それは・・・・・・。」
そこまで言って、私はその後の言葉を続ける事が出来ない事に愕然としていた。
そんな私の葛藤を見つつ、こなたおねーちゃんは
「ゆーちゃんは慶一君を信じられないの?慶一君はゆーちゃんを信じていたよ?こんな状態になった今でも慶一君はゆーちゃんを信じてる。ゆーちゃんは慶一君が好きなんだよね?だったら、どうして、そんな慶一君を信用してあげられないの?」
その言葉に私は再び自分の中の心の闇が湧きあがってくるのを感じて、気付いたら私はおねーちゃんに自分の心の闇を吐露していた。
「私だって信じたいよ!慶一さんの事好きだから!でも、私は!この体の所為でいつも慶一さんに迷惑をかけてきたんだよ!?慶一さんの負担になって来たんだよ!?私は嫌なんだよ!慶一さんにこれ以上迷惑かけるの嫌なの!!好きだからこそ、慶一さんの負担になる事がつらいんだよ!!そう思っているうちに私は!それでも優しい慶一さんが本当は私を疎ましく思い始めているんじゃないかって考えちゃって怖いんだよ!!どうしようもなく、怖いの!!信じたいのに、怖いんだよ!!」
そこまでぶちまけて私は、涙が止まらなくなっている事に気付きつつも、どうしようもできずにいた。
そんな私の心の闇を知ったこなたおねーちゃんは
「ゆーちゃんは慶一君が好きなんだよね?そして、慶一君もゆーちゃんの事が好き。だから2人は付き合った。ゆーちゃんは慶一君を信じて慶一君の気持を受け入れたんでしょ?そして、慶一君もそうだよ。ゆーちゃんを信じたからゆーちゃんの気持を受け入れてくれた。そんな慶一君がゆーちゃんを嫌いになる事なんて絶対にないよ。だから、ゆーちゃんも慶一君の事を信じなよ。よーく思い出してみなよ。ゆーちゃんが慶一君にどうして惹かれたのかを。ゆーちゃんがどうして慶一君と付き合いたいと思ったのかをさ。それをよく考えた上で慶一君の伝言にどう応えるか、決めなよ。大丈夫、どんな答えであっても慶一君はきっと受け入れてくれるから。」
そう言って私に、慶一さんの事をもう一度考えてみて欲しいと言った。
私はそんなこなたおねーちゃんの言葉を聞いて、もう一度、慶一さんの事を考えてみようと思った。
朝食を済ませて私は自分の部屋に戻り、慶一さんの事や伝言の事に関して色々と考えてみるのだった。
慶一side
ゆたかへの伝言をこなたに託し、俺は待ち合わせ場所である○○公園に来てゆたかを待ち始めていた。
(ゆたか・・・今日は大切な日なんだ・・・頼む、お前が覚えていてくれているなら、今日の日を覚えていてくれているなら、ここに来てくれ・・・お願いだ・・・。)
そう心の中で考えながら、俺は公園にゆたかがやってくるのをじっと待ちつづけていた。
ゆたかside
あれから数時間が過ぎて、私はいまだにこなたおねーちゃんから言われた事を考え続けていた。
(・・・慶一さんと出会ってから今まで、慶一さんはずっと私に優しかったよね・・・。私はそんな慶一さんをずっと見てきた。でも、優しいだけじゃなく、慶一さんにはどこか信頼できる何かを感じていたっけ・・・。いつも私に気を使ってくれて、そして、暖かく包み込んでもくれた。
どんな時でも慶一さんは私にいやな顔なんてしなかったよね・・・。むしろ積極的に私を助けてもくれた。
!?そうだ、あの時も慶一さんは私に
「ゆたか、覚えておけよ?お前は決して1人じゃない。お前の姉さんや親友のみなみ、そして、その周りにいるみんなに、後、俺も。お前の周りにはお前を気にかけてくれる、助けようとしてくれる人がいる。けど、その人達はな、お前の事を思っているからこそお前に手を差し伸べてくれるんだ。だから、相手の事を思うなら、差し出された手になるべく応えてやれ。時にはそういう事もやり難い事もあるかもしれないが、それは決して恥ずかしい事じゃないんだからな?」
そんな風に言ってくれたっけ・・・。
そうか・・・そうだよ・・・あの時から慶一さんはずっと私の為に手を差し伸べてくれた。
それは、決して打算的な物じゃなくて、慶一さんの優しい気持そのものだったはずだよ!
あの時から慶一さんはずっと変わらずに私の側に居てくれたじゃない!?
どうして忘れちゃってたんだろう、私・・・。
慶一さんはずっとあの時から、私に手を差し伸べてくれてた。
私の心ごと抱きしめていてくれた。
だから、私はそんな慶一さんを信じたはずだよ?好きになったんだよ?ずっと一緒に居たいって、そう思ったはずだよ?)
そこまで考えた時、私はふいに時計をみてみると、時間は夜の10時00を示していた。
そして、私はこなたおねーちゃんから受けていた慶一さんからの伝言を改めて思い出して
(まだ、時間がある。謝らなくっちゃ!慶一さんを疑った事を、嫌な思いさせちゃった事を!私、慶一さんとお別れしたくないよ・・・。だから、ちゃんと謝るんだ!あ、でも・・・どうして、慶一さんは○○公園と時間のの指定をしたのかな・・・?うーん・・・!?そうか、今日は・・・そして、あの公園は・・・行かなくっちゃ!)
そう考えて私はすぐさま出かける準備をすると、慌てて玄関へと向かった。
その際にこなたおねーちゃんと鉢合わせをし、私に気付いたこなたおねーちゃんは
「・・・答えは出たんだね?今から行くの?」
という問いかけに私も力強く頷くと
「うん。私にとって慶一さんがどういう人かがよくわかったから。だから、私、慶一さんに私の気持を伝えてくる。そして、謝ってくるよ。」
そう言うと、こなたおねーちゃんはにっこりと笑って
「そっか。それならよかったよ。頑張ってね?ゆーちゃん。」
そう言ってくれたので、私も笑顔で頷いて
「うん。ありがとうね?こなたおねーちゃん。」
そう返すと、こなたおねーちゃんは
「いいってことさー。可愛い義妹の為だからね。ほら、時間がないよ?早く行った行った。」
その言葉に私も頷きで返すと、すぐに家を出たのだった。
こなたside
散々悩んでいたゆーちゃんだったけど、どうやら答えが出せたみたいで安心した私だったが、同時にちょっとだけ寂しい気持を感じて
(・・・結局こうなったよね・・・慶一君がゆーちゃんと別れると言った時には少しだけ期待もしちゃったけど、だめだね、私は・・・。まだ慶一君に未練が残ってるみたいだよ・・・でも、今度はちゃんと2人を応援するよ。だから、ちょっとだけそんな風に考えた私を許してね・・・。)
そう心の中で考えた後、自分の部屋に行って少しだけ泣いた私だった。
慶一side
あれからずっと、ゆたかを待ちつづけてきた俺だったが、時計を確認するたび、不安に押しつぶされそうになりながら、それでもゆたかを信じて俺はここで待ちつづけていた。
(ゆたか、頼む・・・。俺は・・・このままお前と別れるのはやっぱり嫌だ・・・。俺が悪い所があるんだったら直すから、だから、ゆたか・・・俺にもう一度チャンスをくれ・・・。)
一縷の希望にすがりながら俺はこの場に留まり続けた。
そして、時計が夜中の11:30を回る頃、息を切らせてゆたかが公園へとやってきたのが見えた。
俺は、その場から立ち上がり、「ゆたか!」と声をあげて呼んだのだった。
ゆたかside
約束の時間に間に合うように私は、この弱い体に鞭打って必死で走って○○公園を目指していた。
出掛けにこなたおねーちゃんに後押しされた私は、私を応援してくれたこなたおねーちゃんの気持に応えるためにも、なんとしても慶一さんと話さなくちゃと思っていた。
そして、息を切らせながら公園に飛び込んだ私に、私が来たことに気付いた慶一さんが「ゆたか!」と私を呼んでくれたのが聞こえたので、私は息を整えながら慶一さんの側へと行った。
そして、私を見るなり慶一さんは私を抱きしてめて
「ゆたか、よかった・・・。来てくれて、嬉しいよ。」
そう言ってくれたのを聞いて私は思わず涙を流しながら
「・・・ごめんね?慶一さん。私、慶一さんに迷惑ばっかりかけちゃってるから、私を気遣ってくれる慶一さんが私の事を疎ましく思うようになっちゃったんじゃないか、っていつしかその優しさを疑うようになってたの。でも、こなたおねーちゃんに私の悩みをぶつけて、そして、慶一さんの事を改めて考えた時に気付いたんだ。慶一さんはいつだってちゃんと私の為に偽りのない気持をぶつけてくれてたんだ、って。その優しさも、心も本物だったんだって・・・。だから私はそんな慶一さんに謝りたくて、こなたおねーちゃんから伝言を受け取ってここに来たんだよ?」
そんな私の謝罪を聞いた慶一さんは私をそのまま抱きしめながら
「そっか・・・。俺も実はずっと悩んでたんだ。ゆたかに俺は何か悪い事しちゃったんじゃないか、って。知らないうちにゆたかを傷つけていたんじゃないか、って。でも、それを聞いてわかったよ。俺達はお互いにすれ違ってしまっていたんだな。お互いに言いたい事を押し込めて、そしてそれがゆたかの鬱積を溜め込む結果になったんだな。なあ、ゆたか。今後は俺にお前の素直な気持をぶつけてくれ。お前に言いたい事があるなら、俺はそれさえも受け止めてみせるから。」
その言葉に私は嬉し涙を流しつつ
「うん。これからも我侭言っちゃうかもしれない、体調崩して迷惑かけちゃうかもしれない。それでも私は慶一さんと一緒にこれからも居たいから、だから、私も我慢せずに言うね?そして、慶一さんの言いたい事も受け止めるよ。」
そう言ったのだった。
そして、そうしてしばし抱き合っていると、慶一さんがおもむろに携帯を開いて時計を確認していた。
私はその行動に頭にハテナマークを飛ばして見ていたのだが、やがて時間を確認し終わると私に
「なあ、ゆたか。覚えているか?この公園。」
その言葉に私も頷いて
「うん。覚えてるよ?私と慶一さんが初めて出会って介抱してもらった場所だよね?」
そう答えると、慶一さんは頷いて
「そうさ。そして、もう1つあったよな?」
その言葉に私は顔を赤らめながら
「・・・うん。ここは、私と慶一さんが初めて出会って、そして、お互いに告白して私達が付き合うきっかけになった場所、だよね?」
その答えに慶一さんも満足気に頷くと
「そうだよ。その通りだ。そして、今日はそんな俺達2人の記念日でもある。だから、俺は今日はお前に渡したい物があったんだ。」
そう言うと、慶一さんは自分の懐から小さな箱を取り出して、その箱から取り出した物を私の人差し指に嵌めてくれた。
「あ・・・慶一さん、これは?」
驚きつつ、私は慶一さんにこの指輪の事を尋ねると、慶一さんは顔を赤くしながら
「今日の記念日のプレゼント、って奴さ。ほら。」
そう言って慶一さんも自分の指を見せてくれた。
その指には私とおそろいの指輪が嵌められていて、私はそれを見た時またも嬉しさで涙をながした。
「ゆたか。お前とこれからも一緒に居たいから、これはその前約束みたいなもんだ。なあ、ゆたか・・・。俺達、大学でたら本当の意味で一緒になろう。」
そんな慶一さんの言葉に私は泣きながら再度慶一さんに
「・・・嬉しいよ・・・でも、いいの?私で・・・また迷惑かけちゃうかもしれないよ・・・?」
そう答えると、慶一さんは笑いながら
「構わないさ。お前の苦労も、俺が一緒に、これからも背負ってやる。俺はお前が好きだからな。お前と一緒に居たいんだ。」
その言葉に私は泣きながら慶一さんに抱きついて
「・・・私も。大好き!慶一さん。これからもずっと一緒に居ようね?私はこれからも慶一さんを信じるからね?」
そう言ってお互いに笑いあい、そして、唇を重ねあわせる私達だった。
こうして、この場においてお互いの思いを確認しあった私達は、この先の未来が確かな事を確信するのだった。
そして、大学を卒業した慶一さんと私は、その後も幸せに暮らしていったのでした。