☆ 魔法少女育成計画 -Fratricide Side- が始まる少し前のお話です ☆

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第1話

「駄目っす!」

 

今日のお菓子はチョコレートケーキだった。

シュガースポット的には、自信作と並べたもので、

ぜひとも味わってほしかったのだが、

獅子神破沙羅がそれを口にしようとした瞬間、

せれなが立ち上がってそれを食い止めた。

 

「グルルルルル」

 

制止がかかった瞬間、お預けされた獣のように、

獅子神破沙羅はうなり続けた。

せれなは、そんな彼女の眼前から、チョコレートケーキを

さっと奪ってしまう。

 

「ばさらんは、これ、食べちゃ駄目っす!」

 

勿論、納得行かないのが獅子神破沙羅(ししがみばさら)だ。

がおがおと吠えて、尻尾をブンブン振るわせ、

牙をむき出しにして抗議している。

 

「あのー、何でまた?」

 

せれなは、別に、横暴な娘ではない。

こうやってお茶会に並んだお菓子を、独り占めしたい、という

人間ではないのだ――多分。シュガースポットの気分にもよるが、

食べさせてあげようと思えば、いくらでも作れるわけだし。

 

「やだ、たべたい。ばさらもたべたい!」

「駄目駄目駄目ーっす! 他のお菓子はいいっす!

 でもチョコだけは駄目駄目ーっす!」

「ええと、じゃあ、アップルパイでもつくりましょうか?」

「それでお願いするっす! これは私が適切に処理するっす!」

 

せれながチョコケーキを食べた。

その瞬間、獅子神破沙羅は飛びかかった。

 

「ばうばうばうばうばう!」「ぎゃーーーーー!!!」

 

 

            ☆     

 

 

「ウー、だって、しかたねーじゃねーですか、ねえ?」

 

 その日の夜、レナが家に戻ると、愛犬のサラが、人のベッドの上で、

 気持ちよさそうにふがふがと鼻を鳴らして眠っていた。

 満足げに腹を膨らませて、ダラリと舌がはみ出している。

 

「……犬にはチョコ駄目なんスよね、魔法少女だったら、どうなるんでしょ」

 

 多分大丈夫だとは思うのだ、なにせ「せれな」の時にどか食いしても、

 山吹レナの体重は増えたりしない。

 そもそも新陳代謝の度合いも違うし……諸々を考えると、

 魔法少女の時に摂取した食物は、本体に影響を与えないと思う。

 

 ……でも、犬だし、何があるかわからないし。

 

 ベッドの横に腰掛けると、サラの頭を軽く撫でた。

 ふが、と鼻を鳴らしたが、またすぐに心地よさそうに、

 口をもちゃもちゃさせるだけだった。

 

 最近は、こうして殆ど寝ているだけだ。

 恐らくもう永くはないのだろう。かなりの老犬だ。明日逝ってもおかしくない。

 それでも、サラは幸せそうだ。毎日美味しいお菓子を食べて。

 魔法少女になってまで、レナのそばで、【姉】として、守ってくれている。

 

 そりゃあ最初は驚いたが、生まれたときから過ごしている家族なのだ。

 尻尾の動かし方も、警戒の仕方も、興味の向いたものに対する仕草も、

 まるっきり同じなのだ、気づかない訳がない。

 

 だけど、サラは自分から、レナに己のことを告げなかった。

 だから、レナも知らないままでいようと思う。

 

「いけない、いけない」

 

【妹】として、飼い主として、家族として。

 お疲れ様、大丈夫だよ、今までありがとう、と。

 笑って見送ってあげなくてはならない……その日は近い。

 そう思っているのに、その少し先の未来を想像すると、どうしても涙がにじむ。

 

「ふが」

 

 人の気も知らず、サラはもう一度幸せそうに、ぺろりと舌なめずりをした。




魔法少女育成計画 -Fratricide SideⅡ- の通販特典の短編です

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