この素晴らしい錬金術師に祝福を   作:リアム・フォン・スミス

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 約四ヶ月も開けてすいませんでした!!!
 言い訳はしないです!!!申し訳無い!!!


書籍二巻
二度目の死?1


「……金が欲しいっ!」

 

 

 めぐみん成分を充分補充した数日後。

 冒険者ギルドでつまみを摘まみながらカズマの心からの叫びと愚痴を聞いていた。

 カズマは両手で頭を抱えながらテーブルに顔を伏せていた。

 それをアクアは当然と言ったように返した。

 

 

「そんなの誰だって欲しいに決まってるじゃないの。もちろん私だって欲しいわよ。……というか、甲斐性が無さ過ぎでしょう? 仮にも女神であるこの私を、毎日毎日馬小屋なんかに泊めてくれちゃって、恥ずかしいと思わないんですか? 分かったら、もっと私を贅沢させて。もっと私を甘やかして!」

 

 

 こいつは本気でこんな事を言っているのだろうか? だとしたら迷惑極まりないんだが……。

 頭を伏せていたカズマがゆっくりと頭を上げ、口を開いた。

 

 

「……お前は、俺がどうして金が欲しがっているのかが分からないのか?」

 

「元引き篭りの汚れた頭の中なんて、清く正しくも麗しい私に分かるわけないでしょ? 引き篭もれるだけのお金が欲しいとか、そんなところじゃないの?」

 

「借金だよ」

 

 

 カズマが一言呟くと、アクアがびくりと震えて目を逸らした。まさか忘れていたんじゃ無いよな? でもこいつの知力、平均より結構低いらしいし、まさかな。

 

 

「借金だよ! お前が作った借金のせいで、毎回、請けたクエストの報酬から大半が、借金返済のために天引きされていくんだぞ!? そろそろ冬だ! 今朝なんて、馬小屋の藁の中で目が覚めたらまつ毛が凍ってたんだ! 他の冒険者は既に宿屋で部屋を借りて寝泊まりしてんだぞ! 本格的な冬にでもなったらどうすんだよ、馬小屋の寝床じゃ凍え死ぬわ! はっきりいって、魔王を倒して帰るどころの話じゃ無いんだよ!」

 

 

 そう、借金である。

 実は、前に魔王軍幹部のベルディアが襲撃してきた際に、ベルディアを弱体化させる為にアクアが喚んだ洪水が街の門、及び壁を破壊したのだ。

 その弁償総額、三億四千万エリス。ベルディア討伐の報酬三億エリスを差し引き、借金総額四千万エリスである。

 流石に俺もそんな額をぽんと出せる訳も無く、請けたクエストの報酬の半分が借金に宛てられているのだ。

 そして半分になった報酬を五人で分ければ日々の飯にありつけるかどうか。宿屋に泊まるなんて夢のまた夢である。

 まぁ俺はある程度貯金があったから宿屋に泊まれてるんだけどね、めぐみんも一緒に。

 ダクネスがどうしてるか分からないが、カズマとアクアは未だに馬小屋生活を続けているのだ。

 それに冬のクエストの報酬は高いが、難易度が高いものばかりで、俺でも危険なクエストは少なくない。

 そんなクエストをほぼ駆け出し冒険者のカズマ達や俺が請けるなんて自殺行為だ。

 すると、アクアがばんとテーブルを叩き、カズマに反論をし始めた。

 

 

「だってだってしょうがないじゃないの! あの時の私の超凄い活躍が無かったら、この街は滅ぼされていたのかも知れないのよ!? 感謝こそされ、借金背負わされる謂れはないんじゃないかしら! 不当な請求だわ!」

 

「こら止めろ、受付のお姉さんを困らすな! ……そもそも、一応は高額な賞金だって貰っただろうが。……差し引きでマイナスになったってだけで。街を守るために街の一部を壊しましたじゃ、流石にお咎め無しって訳にもいかないんだろ」

 

 

 まぁこんな事を言っているカズマだが、ギルドの外ではよくアクアのような愚痴を吐いているんだがな。

 そこんところはやっぱりカズマだなあと思うが、そろそろ何とかしないとカズマとアクアはヤバイんじゃないだろうか。カズマが言っていたように、本格的な冬が始まったら、それこそ凍え死ぬだろうし。

 

 

「なによ! カズマなんて、散々敵から逃げ回った挙げ句に私が弱らせたデュラハンから、スティールで首もぎ取っただけじゃないの! もっと私を称えてよ! 敬ってよ! 褒めて褒めて、甘やかしてよ! ギルドの皆で、流石ですね女神様っていって尊敬してよ!」

 

「この構ってちゃんのクソバカが! 黙ってりゃ調子に乗りやがって! ああ、お前の活躍で何とかなったって認めてやるよ! じゃあ、あの時の報酬も手柄も借金も、全部お前一人の物な! その調子で借金も一人で返してこい!」

 

「わあああ待って! ごめんなさい、調子に乗ったのは謝るから見捨てないで!」

 

 

 とうとうカズマが切れて本音をぶちまけた。流石にアクアの事は擁護出来ないな。俺もこんなこと言われたら見捨てるだろう。

 こんなやり取りをしているとめぐみんとダクネスも来たようだ。

 めぐみんと同じベッドで寝ていたのだが、今日は寝起きが悪く俺一人だけ先に冒険者ギルドに来ていたのだが。こんなことになるなら一緒に寝てれば良かったと思ってる。

 

 

「全く、朝から何を騒いでいるのだ。皆見て……いないか。既にギルドの連中も、お前達に慣れてきたのか……」

 

 

 流石に毎日毎日こんなに騒いでいたら他の冒険者も慣れるわ。周りなんてまたやってるよ的な目で見ながら、酒のつまみにしてるしよ。

 

 

「三人とも早いですね。何か、良い仕事はありましたか?」

 

「他の奴等がこんな状態だったらそんなの関係無いだろ。掲示板を見に行った奴なんて片手で数えれる程しか見てないし、クエスト請けた奴なんて一人も見てないし……」

 

「それもそうでしたね。大金が入ったからって、だらしな過ぎませんか? 冒険者でしょうに。それにしても、セツナは今日は早いですね。いつもは一緒に行ってたのに」

 

「めぐみんの寝起きが悪かったしな。起こすのも悪いし、先に出たんだよ。あ、寝顔は可愛かったぞー」

 

「なっ//」

 

 

 ニヤニヤしながらそう言うとめぐみんは顔を赤くし、隠すように俯いた。

 そんな感じでめぐみんで遊んでいると、カズマ達がクエストを一枚だけ剥がして持ってきた。

 何々、雪精の討伐? 一匹十万エリスってメチャクチャ高額じゃないか。難易度もそこまで高くないし、何で誰も受けないんだ?

 

 

「今日はこれを請けることにした。弱いらしいし俺達でも出来るだろ。それに報酬も美味しいしな。ある程度準備したら向かうぞ」

 

「わかったんだが、ダクネスの様子がおかしくないか?」

 

「俺もそう思うが、今は金だ! 少しでも稼いで宿屋に泊まってやる!」

 

「俺とめぐみんは宿で寝泊まりしてるがな」

 

「金あるんなら俺も泊まらせてくれよ!?」

 

「野郎なんかと同じ部屋で寝てたまるか。それにお前金貸しても戻ってきそうにないし」

 

「ひでえ!?」

 

「それよりもさっさと行くぞ」

 

 

 俺は準備は出来ているので、カズマに準備を速く済ませるように言う。

 やっぱりカズマは突っ込みが似合ってるな。俺がボケているわけでは無いがな。

 ちなみに俺は防寒具として、温度調整がされる魔道具のコート等を着ているので寒くはない。

 というかめぐみんにも着せている。めぐみんが風邪をひいたら大変だしな。

 カズマは野郎だし、アクアはアホだし、ダクネスはドMだし。三人には要らないよね?

 


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