心情面は書いていますし、基本は変わらないつもりですがコメディ要素が強くなっています。
そして、現段階ではこれに登場してきた彼の視点が次話となっています。
それが書けても、次は前回の主人公視点での伏線をたてた二人組の視点を書きたいと思っています。
次の主人公視点はもう考えてあるのですが・・・・
本当にストーリーが進むのが遅くてすみません。
赤き星が落ちた日、私はあの日の記憶を全て思い出した。
華琳様に仕え、策を捧げ、多くの仲間たちと共に三国を統一まで導いた輝かしい日。
しかしその日、あの男は消えた。
宴の途中、風によって伝えられた事実に私はいない相手に罵声を浴びせることも出来なかった。
原因がわからない。理由がわからない。
しいて心当たりをあげるなら、秋蘭を失いかけた時の体調不良だがそれも繋げるような明確なものがない。
ただ一つ、記憶を戻ってから揺るがずにある思い。
私の使える力の全てを使って、魏へ、華琳様へ、完全な勝利を捧げること。
そして、完全な勝利とは私たちが『誰も欠けることなく、笑むこと』。
原因がわからないのならば、現状がわからないのならば、私が出来る全てを行うこと。
もう、絶対にあいつを失ってなんかやらないんだから!
「というわけで、愚弟。
アンタ、水鏡女学院に行くから付き合いなさい」
私はそう言って目の前で正座をする愚弟・荀攸 真名は
「何が『というわけ』ですか!?
っていうか! 『女学院』の時点で男である僕が入れるわけがないでしょう!? というよりも、入りにくいですよ!?
ついにボケましたか! 姉上!
歳ですか? 歳なんですね?! 姉上という名称で呼べと言う叔母上!!」
私の前にいるのは甥である荀攸がそう叫ぶが、言葉の途中に非常に不愉快な単語が混じっていたわね。
右手に持った革製の鞭を振るって、首をこっちに持ってくる。
「何か言ったかしら? 愚弟。
年齢に関することを言ったような気がしたんだけど、それは父上か、母上、もしくは姉上に文句を言ってもらいたいものね?
私だってほぼ同年齢の甥っ子なんて持ちたくなかったわよ!」
太ももを踏みつつ、鞭で縛り上げる。
「理不尽だー!!
僕だってこんなに年が近くて、体のどこもかしこも成長してない叔母なんて御免ですよ!」
・・・・・へぇ、アンタそんなこと思ってたんだ。
ちょっと本格的なお仕置きが必要みたいね。
※大変悲惨かつ、残酷な光景が広がっています。しばらくお待ちください。
華琳様は好きって言ってくれたもの・・・ それにあいつだって。
「り、理不尽・・・・・だ」
足でしっかりと愚弟を押さえつつ、私は別の事を考えていた。
そういえば前聞いた話では今頃、風たちは趙雲とともに行動しているのだったかしら?
趙雲は確か・・・・ 幽州で一時期客将をしていたわね。となると、風たちもともに行動しているか、別に行動をしているかのどちらか。あの二人になら、この方面は任せて大丈夫ね。
荀家の情報網では既に陳留の刺史が天の使いを拾ったっていうことはわかっているのだから、これがあいつとみて間違いない。それならば陳留の心配はもうしなくていい。
三羽烏も、季衣も、流琉もまだ村の方で手一杯でしょうね・・・・ まぁ、あの子たちも馬鹿ではないから、今頃何かしらの対策を作っているかもしれないけれど。
一つ、疑問があるとするなら黄巾の乱が起こってしまっていることだけど、これは本人たちに会ってからどうとでも出来るわね。華琳様たちと再会する機会を得たと思えばいいわ。
あとは霞の動き、ね。どう動くつもりなのかしら? 霞はどうも私では動きが読めないのよね・・・・ 風か、稟なら読んでくれるんでしょうけど。これも出会ってからね。
樹枝がいる時点でこの世界が、かつてと全く同じではないことがわかっている。ならば、再会するまでのこの時間を、私たちがどう有効活用するかにかかっている。
おそらくそれは、全員同じ気持ちだろう。そして、彼女たちが動いていることを信頼できる。各々、得意分野で動いているだろうことが簡単に想像できてしまう。
かつての私だったらありえない考え、それをさせたのはおそらく・・・ あいつだろう。
「姉上、そろそろ降りて下さい・・・」
足元から聞こえたその声に、私は思考の海から這い上がる。
「私がさっき言った言葉に、大人しく頷くのならね」
「どうでもいいですけど、最近、何をそんなに必死に動いているんですか?
あの赤い星が落ちてきた辺りから変ですよ? ついでにあの赤き星の天の使いが陳留に降り立ったとか聞いた頃から」
愚弟のくせに鋭いわね。さすが私と同じ血が混じっているだけはあるわ、その洞察力だけでも華琳様への良い土産となるわね。
「いつか話すわ。
とりあえず、水鏡学園に行くけれどついてくるわよね?」
現状では、いつになるかはわからないけれどね。
「あぁもう、理不尽だーー!!
行きます! お供させていただきます!!
そのかわり、ちゃんと責任とってくれるんですよね!?」
「えぇ、取ってあげるわよ」
持てるだけの多くの利を、魏へと持ち帰るためにね。
「準備はしてるんですか?
馬は? 食料は? 水は?」
「してあるにきまってるじゃない。
あとは私たちが乗るだけよ」
「僕が頷くこと前提でしたよね?! というか、頷かせるつもりでしたね?! 姉上!?」
私はそれには答えず、用意しておいた手荷物を持って外へと足を向けるが、訂正のために一度だけ振り返る。
「一つだけ間違っているわね、樹枝」
「えっ?」
「頷かなくても、気絶させて連れて行くつもりだったわよ?」
「り・ふ・じ・ん・だーーーーーーー!!!」
愚弟の叫びを背に聞きながら、私は馬車へと入って女学院に着いてからの策を脳内で描いていた。
「それで姉上、これからどうするんですかぁ?」
水鏡女学院を前にして、私にそう問いかけてくる。この子は何をいまさら言っているのかしら?
「普通に入るわよ?」
「えっ? 入るって・・・・・ あぁ、僕が護衛としてお供するんですね」
何を言っているのかしら、最初に説明したっていうのに頭から抜けたのかしらね。
「いえ、違うわよ。アンタはこれを着るの」
そう言って差し出したのは女学院の制服、服の色は個々の好みによって注文する物だったからとりあえず真名を意識して緑にしたけれど。あとは胸に詰め物でもさせておきましょう。化粧は・・・・・ こいつ普通に女顔だから、最低限しかいらないわね。
「何で持ってるんですか!? ってそこじゃない!
姉上? 今、なんとおっしゃいました?」
「アンタが、これを、着・る・の・よ?」
愚弟を指さし、制服を指さし、ゆっくりと伝わるように言う。
「・・・・・えっ?
で、ですが、僕は男ですよ?! 絶対にばれますよ!? 顔とか、体格とかでばれますって!!」
・・・・こいつ、自覚ないのかしら?
というか最近、私兵の一部(男)がこいつを変な目で見ているのだけど。
「大丈夫よ、アンタ女顔だから大した違和感もないわ。
化粧も必要最低限しかいらないし、体格に合わせて胸に詰め物でもすれば完璧ね」
「嫌ですよ!
というか、母上もそうですがおばう・・・ 姉上もどうしてそんなに僕に女装させたがるんですか!?」
あぁ、姉上もしていたのね。
姉上、昔から『男の子じゃなくて女の子が欲しかった』ってぼやいていたものね。私は単純に面白いからだけど。
まぁ、樹枝がこれだけ美形だったのが幸いね。姉上が面白がっている程度で済んでいるし、女の子だったら下手すれば籠の鳥になっていたわね。
「あなたにそれだけの才能があるっていうことよ」
適当に返事をしつつ、これからの事をもう一度脳内で想像する。
「理不尽だーー!! というか、そんな才これっぽっちも嬉しくないですよ!?」
・・・・うん、これで行けるわね。あとはどう相手に操縦されないか、ね。相手にも利益がある内容かつ、私の最終目標はこちらの最大の利。
「叔母上!
聞いてますか? 聞いてませんね!? その目は」
「叔母・・・・?」
私は鋭く愚弟を睨み付ける。
「うるっさいわね! アンタ、ここまできたなら諦めなさい!
大体、私がアンタを姉上から引き受けたのだって社会勉強なのよ!
多くの事を経験し、聞き、学ばせることが姉上に私が任せた理由なのよ!!」
私だって面倒だったわよ! 私自身の勉強の片手間に、弟の躾までしなきゃならないのよ!?
「母上ーー!? そんなこと、聞いたこともありませんよ?!
というか、こんな経験嫌だー!! 理不尽だー!!!」
・・・・面倒になって来たわね。
私はそう思い、気絶用の鞭を振り上げた。
「僕、もうお婿に行けない・・・・」
馬車の隅でしくしくと泣く愚弟を縄でくくり、そのまま引きずり始める。
「ちょっ?! 熱い! 熱いぃぃーーーー!?
歩きます! 歩きますから、引きずらないでぇーー?! 服が、服が焦げる!!」
あらっ、結構余裕あるわね。自分じゃなくて服の心配が出来るんだもの。
「なら、とっとと歩きなさい」
「ふと思ったのですが、姉上って結構怪力・・ いえ、何でもありません」
私は何か余計な事を言おうとした愚弟を、睨み付けて黙らせる。
はぁ・・・・ こいつのせいで脳内での予測が数回しか出来なかったわね。まぁ、何とかするからいいのだけれど。
あの時、何が原因かは私にはまだわからない。
だけど、可能性があるとするなら何度か衝突した劉備陣営との関係だろうというのが私の予想。
仮に外れていたとしても、衝突は避けられないだろう陣営の戦力を減らしておいて損はない。
臥龍と鳳雛、劉備の智の翼。その片翼を奪ってみせる。
「荀氏の方ですね? 話は伺っております。
ではこちらにどうぞ」
丁寧な対応の女子生徒に連れられ、私たちは水鏡塾の師である司馬微の私室へと通される。
向かう途中に樹枝が何かをぶつぶつと私に言ってきたが、放っておいた。
「ようこそおいでくださいました。荀彧殿」
私へと微笑みを向けて、迎え入れたのは白の髪を長く伸ばした、穏やかそうな女性が座るように促してくる。
「本日の話はこちらの生徒を斡旋したいとのことでしたが、どういうことでしょうか?
これまでどこであっても前例のないことで、大変喜ばしい事ですが突然のことで戸惑っているのがこちらの本音でしてね」
微笑みと共にいきなり斬りこんできた。
『こちらの利しかないこの交渉の、そちらの利は何だ?』と直接聞いてきた。
「私が仕官するにあたって、士官先への手土産として優秀な人材が欲しかったのよ」
これは事実だ。ただし、私が手土産として持っていきたい最終的な場所は違う。
「袁紹殿の所ですか、確かに家柄、土地、材として申し分ありませんね。
ですが、その先は? 今、世は乱れ始めていますからね。大切な生徒たちを預けられるほど、あなたは考えているのでしょうか?」
「勿論、その先の士官先も保障するわ。荀氏はこれからもこちらの支援を強める事でしょう。
それに乱れた世でこそ、ここで培った才が試されるものじゃないかしら?
それともこの塾に通う者たちは乱世を生き抜くことは出来ないと?」
「姉上?!」
愚弟が非難めいた言葉で私を呼ぶが、私はにやりと笑って司馬微を見つめた。
この程度、春蘭相手に何度もしてきたもの。もっともあいつとの喧嘩じゃ、こんなに頭をひねる必要はなかったけれど。
「フフッ、そこまで言われてしまったら、こちらも拒むことは出来ませんね。
あなたに人材を提供しなければ水鏡塾は世間にこの程度と、認識されてしまいますからね。
ならばこちらからは、最高の人材を提供いたしましょう。
朱里と雛里、
司馬微の言葉に私たちを案内した生徒が動き、しばらくして三人の少女が入ってきた。
一人は茶の制服、柔らかそうな黄の髪、赤紫の瞳の少女。
一人は青の制服、長く伸ばした紫の髪、若草色の瞳の少女。
一人は赤の制服、一本に編みこまれた赤の髪、白の瞳の少女。
「我が水鏡塾が誇る三人の教え子です。
『臥龍』の諸葛孔明。
『鳳雛』の鳳士元。
そして『麒麟』の徐元直。
どれがよろしいですか?」
「あー、先生。何の話か大体察しはつきましたけど、あたしは無理っすよ?
董卓様のところに行くって決めてるんで、あたし戻りまーす」
そう言って出ていくのは『麒麟』と称された徐庶だったが、とりあえず彼女が董卓陣営に行くという情報が手に入っただけでも良しとしよう。
『片翼をもぐ』ということが成功すれば、私にはどちらでもいいのが本音。どちらも使えるだろうということは戦場でわかりきってもいる。
それならと思い、愚弟を思いっきり蹴り飛ばす。
「あでっ!?」
「はわわわ?!」
「あわわわわ?!」
よし、決まりね。
「『鳳雛』をいただいていくわ」
「どういう決め方ですか!?
ついでに僕を蹴り飛ばした理由を答えて下さい! このクソ叔母ぁ!!」
「おばぁ、ですって?」
睨み付け、おもわず蹴り飛ばした足をそのままに愚弟の背へと強打させる。数度愚弟へ蹴りを入れつつ、胸の詰め物がずれるようにする。
「女学院に入れるためにこんな格好をさせたけど、これは男なのよ。
騙すようなことをして、申し訳ないわね」
「・・・それは構いませんが、大変言い難いのですが本当にその、本当にその方は男性なのですか?」
司馬微が問うこともわかるが、偽ってもしょうがない。というか、倒れている樹枝が静かに涙を滂沱させてるわね・・・
「えぇ、一応男よ。
武官としては中の下、文官としては上の下と言ったところかしら?」
でも、女顔であることは私のせいではないし、制服が予想以上に似合ったのは偶然よね。
「姉上えぇぇーー」
あっ、実力を認めるようなことを間違えていってしまったわね。
・・・・まぁ、たまにはいいわよね。荀家の人間にとってそれくらい当たり前だし、私が実力を認めている者しか、そうは言わないもの。
「それを聞いて安心しました。
それでは雛里、準備はしてありますね?」
「あわわ、頑張りましゅ。
姓は鳳、名は統、字は士元。真名は雛里と申します。
よろしくお願いします」
「私の姓は荀、名は彧、字は文若。真名は桂花よ。
こちらこそ、よろしくお願いするわ」
手を伸ばされたので、手を取り軽い握手を交わす。挨拶をしろという意味を込めて、愚弟を蹴り上げる。
「いちいち蹴り上げないでください!」
「この場で鞭を出すわけにはいかないでしょう? だから、蹴りよ。
良いから名乗りなさい。樹枝」
「理不尽すぎる!?
姓は荀、名は攸、字は公達。真名は樹枝です。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いしますでしゅ」
こうして改めてみると自分で女装させといてなんだけど、男には見えないわね。まぁ、いいわ。
「すぐに出発したいのだけれど、準備は大丈夫かしら?」
「は、はひ! 水鏡先生には前もって言われていたので、あとは取りに行くだけでしゅ」
私の言葉もすべて予測済み・・・・と言ったところね。
そう思い司馬微を見るが、来た時と変わらない微笑みを作るばかりだった。
まだまだ上がいることを実感する。だがそれは、立ち止まる理由にならない。上がいるなら、這い上がっていくだけ。
華琳様と、あいつのために、私は、私たちは強くならなくちゃいけない。
もう二度と、あの日々を失わないために。
「感謝するわ、司馬微」
「いえいえ、こちらこそ感謝しています。
引きこもりがちの生徒を、外に連れ出す機会をいただけるのですからね。お互い様と言ったところでしょう。
それに私も、結局身内には甘いのです」
背を向け、最後に言われた言葉の意味がわからなかったが気にせず、二人を連れて歩いてゆく。
さぁ、次は顔良ね。
次の人材を確保しに、私は旅路へともどった。