真・恋姫✝無双 魏国 再臨   作:無月

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サブタイトルがどんどん微妙になってる気がします・・・・
内容には沿ってると思うんですが、サブタイトルはもうチョイ考えないといけないかなーと思う最近です。

明日はこの続きか、顔良スカウト編を書きたい。
もしくは視点変更。


黄巾の乱
12,再会と出会いと弟分


「冬雲兄者、こちらの準備は整いました」

「・・・・・・」

 隊の整列した、あとは部隊の装備も出来た。最近は俺の隊って形で任された部隊も、賊討伐の実践を何度か経験しているから動きも悪くない。

 黄巾の賊の影響がこれでいくら減っているかはわからないが、何も出来ないよりはマシだと思いたい。

 それに俺たち四人の交代制のおかげもあってか、疲労の影響はみられていない。

 あぁ、それにしても白陽は平気かな・・・・

 まだ、戻ってきてないことが気にかかるが、無事だといいんだが。

「兄者?」

 突然肩に触れられ、俺は反射的に腕を掴んで、膝を軽く曲げて投げる体勢に・・・ なりかけたところでそれが誰だかを気づき、何とかやめることができた。

樟夏(しょうか)か・・・・ 悪い、考え事してた」

「呼び止めを気づかれず、肩に触れた瞬間投げかけられる世。無常だ・・・・

 かまいませんが、まだ慣れませんか? この呼び方は」

 そこに居たのは俺を『兄』と呼び、ある種の尊敬の念を抱いてくれている曹子廉。真名はさっき俺が呼んだ樟夏で、髪は長く伸ばした髪をまっすぐに降ろしていた。

 しかし、あの世界と繋がっていないとわかっていても、あの有名な曹魏の四天王が勢ぞろい。しかも俺がその一人として、ここに居ることが何だか不思議な気分になってくる。

 しかも、冗談で言った四季が揃ってるし。

 つーか秋蘭は絶対知ってたよな? 出来ればその時教えてくれてればあんなに驚かずに済んだんだがなぁ。

 春蘭は・・・・・ きっと、素で忘れてたな。絶対に。

「正直、慣れないし、何だかこそばゆいな」

 俺は頭を掻いて笑い、傍に来ていた兵たちの装備を見る。渡された書類の内容に軽く目を通しつつ、間違いがないことを確認した。

「慣れてください、兄者。

 それにあなたにその名をつけられた時点で、あなたは・・・・」

「おっと、足が滑った」

 突然秋蘭によって横合いから迫りくる鋭い蹴りを、俺はその場で跳んで避ける。避け損ねた樟夏の腹部に見事命中し、その場で悶絶する。

 風が切る音がするぐらいの威力だったけど、大丈夫か?

「おぉっと、手が滑ったーーー!」

 と言いながらも、すごい勢いで突進してくる春蘭を俺はどうしたものかと考えていると秋蘭が横から俺だけを引く。悶絶していた樟夏にもちろん避けることなど出来る筈がなく、軽く吹き飛ばされていく。

 って、駄目じゃん?!

「二人とも?!  何やってんだ!?

 出陣前に樟夏に怪我をさせる気かよ!」

 そう言いながら俺は樟夏の元へと駆け寄るが、樟夏は立ちあがりながら大丈夫だというように手で遮ってくる。

「二人の連撃に慣れていますので、大丈夫です。兄者。

 あぁ、だが世は・・・・・ 無常だ」

 そう言って一筋の涙をこぼしながら、俺にはわからない遠いどこかを樟夏は見ていた。

「いやぁ、すまんすまん。そこで躓いて、踏ん張りが利かなくなってな」

 朗らかに笑いながら、そう言う春蘭には・・・・何だろう、この懐かしさ。

 俺もかつて、こんな良い笑顔で自分が理不尽な暴力をされたことがあった気がする。

「すまないな、樟夏。

 だが一つだけ忠告しておこう。

 秘めたる乙女心を男は気づいても、語るべきではないな。ましてや・・・ 当人が気づいていないのなら尚更な」

 ?? 何を言ってるんだ? 秋蘭は?

「三人とも、準備は終わったのかしら?」

 華琳が来たことにより、四人がその場で軽く姿勢を正す。

「はい、華琳様。

 四部隊とも整列を終え、あとは・・・・」

「糧食だけってところだな」

「うむ!」

 秋蘭がそう答え、視線を向けたので俺が言葉を引き継いだ。春蘭がそれに対して頷き、俺たちの高揚を感じ取った樟夏が首をかしげているが、俺たちの口元から笑みは消えない。

「そう・・・・ それはそうと冬雲、あなたの武器はそれでいいのかしら?」

 俺は衣服と同じような色に揃えられた鎧と、とりあえず差してある一般兵と同じ剣を見た。

「あぁ、とりあえず当分はこれでいいさ。

 一応、どんな武器も一通り使えるしな」

 あくまで仮のもので、真桜と再会したら作ってもらうつもりではある。それも遠くはないし、今は焦るほどのことじゃない。

「しかし兄者、使いやすい得物があるならば用意いたしますが?」

 そう言ってくれる樟夏の武器は偃月刀を小型化し、さらに逆側にも刃をつけたもの。一度触らせてもらったが、その芯にはさらに鎖が通っており中距離から近距離までの戦闘が出来る代物だった。

「いや、いいさ。

 何度か賊討伐にも行ったし、多少使い慣れたこれを使うよ」

「そうね。

 後々どうにかしないといけないことだから、しっかりと考えておくようになさい。

 全体の準備を終わったのなら、私たち全員で糧食の件を確認に行くわよ」

 華琳はきっと俺が考えていることが察しているのだろう、より具体的に想像しておくように釘を刺された。

 華琳が歩き出したことにより、俺たちもその背に続いて歩き出す。

「どんな武器をお考えなのですか? 兄者」

 華琳の横に春蘭、秋蘭が並び俺たちはその後ろに並んで続くと樟夏が俺に問うてきた。

「そう、だな。樟夏には教えとくか。

 もしかしたら用意する時、協力してもらうかもしれないし」

「私に出来ることなら、協力を惜しみませんよ。兄者」

 ・・・・・人たらしは曹家の血だと、最近つくづく思う。

 普通にこういうこと言うあたりが、人間として好まれる部分だよなぁ。

「出来ないことの方が少ないと思うけどな?

 華琳の実弟ってことに捻くれも、驕りもしないで努力する樟夏だしな」

 そんな弟分の頭を軽く撫でながら、俺は笑った。

「冬雲」

 突然華琳に呼ばれ、俺はすぐさま駆け出す。

「そんなことを自然と言ってくれるあなただから、ですよ」

 最後に樟夏からそんな言葉が聞こえたが、俺にはよく意味がわからなかった。

 

 

「どうかしたか?」

「あなたが最初に会っておあげなさい」

 俺がそう尋ねると華琳が足を止め、それに続いて三人の足もとまる。

「そりゃ俺は嬉しいけど、まずは華琳の方が桂花は喜ぶんじゃないか?」

 桂花は本当に華琳が好きだったし、しかもここから見える限りじゃ・・・・

 えっ? あれは鳳統さん? あと、顔良さんだっけ? あと、あれは誰だ?

「・・・・・俺を実験台にするんじゃないよな?」

「ふざけてないで、さっさと行きなさい。

 本当は、わかっているんでしょう?」

 華琳の呆れたような言葉に俺は苦笑して、頷く。

 でも、華琳の方が喜ぶっていうのは嘘でも、冗談でもなく、本気なんだけどなぁ。

「だけど、俺よりも華琳の方が・・・・」

「冬雲・・・ いいから行ってやれ」

「でもな、秋蘭・・・・」

「まだ言うか! この馬鹿が!

 とっとと、行ってこんかーーーー!!」

 秋蘭の呆れたような声の後に、春蘭の怒声と突然の背後から蹴り飛ばされた。俺はそれに成す術もなく、吹っ飛ばされて無様に地面を転がっていき誰かの足にぶつかって止まる。

「誰だかわからないけど、すまん!

 これはわざとじゃなくてだな・・・」

 俺が起き上がりながらすぐさま謝罪の言葉を並べようとすると、見上げた先には彼女が居た。

「アンタ・・・・・」

 俺が会いたかった十五人のうちの一人、罵倒の中には常に気遣いと優しさを含ませた天邪鬼。

 『王佐の才』とすら呼ばれた、魏の猫耳頭巾の名軍師だった。

「よっ、久しぶり」

 伝えたいことは山のように、おそらく桂花が問いたいこともたくさんあるだろう。だけど、まず口から出たのはそんなどこにでもある言葉だった。

「アンタなんか、アンタなんか・・・・・」

 拳と体を震わせて、俺は次に振ってくるだろう罵倒を待っていた。

 緑と青の中間のような色をした瞳が揺れ、その中に俺が映っていることが嬉しかった。

 だって俺は、桂花の優しさを知っている。

 秋蘭が定軍山で死ぬかもしれない時、城壁で心配そうにあの方角を見つめていたことを。

 倒れていく俺への、あの必死な声を俺は忘れたことなんてない。

「会いたかったよ、桂花」

 俺がそう言った瞬間に桂花は堪えきれなくなったかのように、抱きついてきて

「うわあああぁぁぁぁーーーん」

 泣かれた。

 俺はそれにどうしていいかわからず、とにかく桂花が落ち着くようにと頭を軽く撫でようと手を伸ばした。

 

「姉上が泣いたあぁぁぁーーーー?!

 僕に理不尽を敷いては傍若無人に振舞い、言うこと聞かなかったら鞭を振るうあの姉上が?!

 男嫌いの女性至上主義、『無能な人間、特に男は塵芥』と言い切る姉上が男に縋り付いて泣くだなんて嘘だぁーー?!」

 が、その直前に桂花の泣き声と同じくらい大きな声が響き、おもわず視線がそちらを向く。

 そこには先程確認した男性が居て、どことなく顔つきが桂花に似ていることにようやく気づいた。ということは、桂花の血縁者か?

 そうして驚いていると、周りの兵たちが一斉にその男性を取り囲んで襲い掛かった。

 って! お前ら、何やってんの?! しかも、俺の顔見知りばっかだし?!

「曹仁様の再会らしき場面を台無しにしてんじゃねーよ! このボケがぁ!!」

「そうよそうよ! なんてことしてくれてんのよ!! アンタ!」

「みんな、一斉に動いて! 取り押さえるのよ!」

「猿轡噛ませろ!」

「誰か! 太い縄を持ってきて!!」

 鍛錬のおかげかな、連携が堂に入ってきたなぁ。

「あわわぁぁー?! 凄い連携でしゅ!」

「雛里ちゃん、感心するのはわかるけど。今はそこじゃないと思うよ・・・」

 わーい、天然で言葉を噛むんだね。鳳統さん。

 そして、確か武将だった筈だけど、意外と冷静なんだね。顔良さん。

 この二人はなんだか、見ているこっちがほんわかしてくる組み合わせだなぁ。うん、寒い日に傍に居ると温かくなりそう。

 

 って、現実逃避してる場合じゃない! 止めないと!

 そうして俺が動き出そうとするのが腕の中に居る大切な人(桂花)がいたことを思い出して、行動をやめる。見ると、桂花が物凄い形相で睨んでいた。

 何だろう、さっきも感じたこの懐かしさ。

 あぁ、桂花に落とし穴に落とされてた頃の俺って、こんな顔向けられてたっけ?

「桂花、あれは誰なんだ?」

「弟よ、正確には歳の近い甥だけど。

 それにしても・・・・・ どうしてくれようかしらね? 私とアンタの再会を邪魔してくれたのは」

 苦笑しながら俺が聞くと、桂花も溜息をつきながら答えてくれる。が、それは途中から悪鬼羅刹も真っ青の表情となっていた。

「勘弁してやれって、あんだけやられてるんだから」

「アンタは! 私との再会が邪魔されたのをどうとも思わないわけ?!」

 猫耳の頭巾を揺らして怒る桂花の頭を撫でて落ち着かせながら、俺は桂花を離さない。

 どうすればこの思いは伝わるのか、言葉の不便さが嫌になる。

 華琳たちと再会した時もそうだったが、愛しさが溢れてとまらない。ずっと、こうして抱きしめていたいくらいだった。

「そりゃ少しは怒ってるけどさ、あれだけボロボロにされてる奴に追い打ちなんてかけらんないだろ。

 それに・・・」

 桂花をもう一度優しく抱きしめて、その耳元で囁いた。

「怒ることがどうでもよくなるくらい、桂花とまた会えたことが嬉しいんだよ」

「・・・・馬鹿」

 頭巾に隠れて見えない顔、その中でわずかに見えた桂花の赤くなった頬を見逃さない。

 あぁ、可愛いなぁ。本当に、どうしてこんなに可愛いんだろう。でも、指摘したらそれすら隠すだろうから、指摘はしないけど。

「だけど、することもしないとな? 桂花。

 それにしてもあの二人を連れて来たのか、さすが王佐の才。我らが魏の猫耳軍師様」

「アンタに言われなくてもわかってるわよ!

 当然でしょ? 私は荀文若、華琳様の筆頭軍師なのよ?」

 俺の腕の中をすり抜けて、得意げに笑う桂花に一瞬見惚れる。

 彼女の栗色の髪が日に照らされて輝き、それはとても綺麗で、愛おしい光景だった。

「ハハッ、そうだったな。

 あぁ、そうだ。改めて名乗らせてくれよ、桂花。

 姓は曹、名は仁、字は子孝。真名は冬雲。

 それが俺のここでの、みんなと共に生きるための名を、受け取ってくれ。桂花」

 俺がまっすぐと見つめるその先で、桂花は俺がこれまで見たこともないような幸せそうな笑みを見せてくれた。

 自惚れかもしれないが俺がここに居ることが、ここに居られることがわかったそれだけが何よりも最高の知らせだとその笑みが教えてくれるようだった。

「受け取ってやるわよ、冬雲。

 今のアンタが華琳様の傍に居ることがふさわしいかどうかを、私がしっかりと見定めてやるんだから!」

 強気な言葉が桂花らしさを引き出してくれる。

 それでいて『もっと向上しろ』『努力しろ』『結果を見せろ』と俺に促してくれる。

「あぁ、しっかり見ててくれよ」

 華琳の元へと駆け出す桂花の背へとそう呟いてから、すっかり簀巻きにされて転がっている彼に近づいた。

 あーぁ、完全に気絶してるよ・・・ どうすんだ、まったく。

「みんな、気遣いとか、気持ちは嬉しいけどやり過ぎだ・・・

 背を預ける相手を傷つけてどうする!」

 俺のことで怒ってくれたことは嬉しい。だけど、気絶はやり過ぎだ。

 俺たちは、軍は、個が生みだし、全となるもの。その中で仲間同士の諍い、禍根なんてもってのほかだ。

 全体の動き、連携が乱れれば軍なんて簡単に崩壊する。蟻の穴からも堤は崩れる、そんなことはあってはならない。

『すみませんでした!』

 一糸乱れぬ声は叱り飛ばす俺へと向けられたものだ。だが、向けるべき相手が違う。

「謝る相手が違うだろ! 彼が目覚めたら、全員ちゃんと謝罪をしろ。

 それから罰として、帰還後俺たちの隊はいつもの筋力鍛錬を行うぞ!!」

『はい!』

 叱り飛ばし、厳しい言葉を言いはするがやっぱり俺は

「だが、俺のことで怒ってくれた気持ちの礼として、そのあとは俺の奢りで酒家に行くぞ。

 今日非番の奴も呼んで来いよ? 飲み損ねましたなんて、あとから聞かないからな!」

『どこまでもついて行きます! 曹仁隊長!!』

 嬉しかった分だけの礼はちゃんとしたかった。

「あわぁー・・・ 凄いでしゅ」

「本当だね、これは好きになっちゃうよね」

 そう言う二人は簀巻きの荀攸を担ごうとしていた。

「俺の隊がやったことだから、俺が担ぐよ。

 悪いな、突然こんなことしちゃって・・・・ あぁ、俺の名は曹子孝、真名は冬雲だ。

 まぁ、『赤き星の天の使い』の方が有名かな?」

 俺がその手から彼を受け取り、背へと担ぐと二人の顔が・・・・ どうして赤いんだろう? しかも鳳統さん、顔良さんの背中に隠れちゃうし。

 俺のこの仮面、怖いか? でも、真桜と再会したら、別のにしてもらうつもりなんだよなぁ。

「あわわっ、姓は鳳、名は統、字は士元。真名は雛里でしゅ。

 どうぞ末永くよろしくお願いしましゅ!」

「いきなり告白しちゃうの?! 雛里ちゃん! それなら私も!

 姓は顔、名は良、字はなくて、真名は斗詩です。私もどうか末永くよろしくお願いします!!」

 二人そろっていきなりそんなことを言ってきて、俺は嬉しいが正直戸惑いの方が大きかった。俺、何もしてないよね?

「ちょ!? 嬉しいけど、二人とも早まらないでくれ!

 二人とも可愛いんだから、俺なんかよりもっと素敵な男がこれから・・・

「「あなたがいいんで(しゅ)!!」」

 そう言ってくれる二人を何とか宥めながら、苦笑を浮かべる樟夏と秋蘭、いつも通りだとでもいうように受け入れている華琳に、こうなることを予測していた桂花と当然だと何故か得意げにしている春蘭たちを追いかけた。

 




やっと最初の時から考えていた、荀彧との再会を書けました。
まぁでも・・・・ 本当は季衣とも再会させたかったんですけどね。
それは文字数とキリの良さの関係で、次話になってしまいました。

感想、誤字脱字報告等々お待ちしております。

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