真・恋姫✝無双 魏国 再臨   作:無月

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サブタイトルが・・・ これでいいのかな?

投稿出来るかはわかりませんが、明日もこれの続きを書く予定です。



あっ、日刊ランキングに載ってましたね。
読者の皆様あってのもの、本当にありがとうございます。
そして、これからもどうかよろしくお願いします。


13,問いかけと再会 そして 成長

 糧食を減らす等のことを説明され、俺たちは行軍の真っ最中だった。

 先頭は春蘭、そこからいつでも援護が出来るよう中距離の樟夏、その後ろに秋蘭。そして後ろには斗詩が配置され、その間に挟まれるように華琳、桂花、雛里となる。

 ちなみに俺は、華琳たちの傍に配置されている。

 信頼されているととるべきか、まだ戦力としてわかっていないからここなのかは不明だ。

 まぁ、俺としては華琳たちの表情がよく見えるから嬉しいんだけど。

 しかし、意外と大所帯になってるなぁ。

 俺はいまだに気絶している荀攸を背に乗せ、申し訳ないが手首を俺の腰のあたりで縛って乗せている。

 桂花には『そんな奴、馬で引き摺っていいわよ!』なんて言われたけど、そんなこと出来るわけないだろ・・・・

 樟夏は『私の馬に乗せましょうか』と言ってきてくれたが、やはり気絶までさせたのは俺の隊だし責任をとるべきは俺だろう。

 かといって、彼の愛馬だというのどちらかに縄でくくりつけるとか・・・・・ いつかの自分を思い出させるから勘弁してほしい。

 というか、女性を乗せてるわけでもないのに視線が刺さるのは何故だろうか?

 いや、正しくは俺の後ろ、か?

「樹枝、あとで覚えておきなさい」

「むぅ・・・ なんだかもやもやしてくる」

「姉者、それは正しい思いだ。何も案ずることはない」

「羨ましいでしゅ・・・ 樹枝さん」

「・・・・ずるいですよ、樹枝さん」

 ・・・・・あっちこっちから聞こえてくる、この声は何だろう?

「冬雲」

「うん? どうかしたか? 華琳」

 俺は振り向くと、華琳は有無を言わさぬ表情をしていた。

 何故?!

「今度の視察の時に、あなたを連れて行くことにするわ」

「あぁ、俺でいいならいいが・・・・」

 まぁ、近隣の村とか見て回るだろうし、その機会はいくらでもあるだろうなぁ。

 だけど、何で今それを・・・・

「馬は一頭で」

「はいっ?!」

 続いた言葉に俺はおもわず奇声にも近い声を出して振り返ると、乗っていた馬が耳元であがったその声に対して不満そうに鼻を鳴らす。

「あら? 嫌なのかしら?」

 挑発するように俺を見てくる目は、答えなんてわかりきっているという顔でそれがまた華琳らしかった。

「嫌なわけないだろ? 俺が華琳たちと過ごすことで嫌なことなんて、あるわけがない。

 なんだか次の視察が、楽しみになってきたなぁ」

 視察だし、帰り道ぐらい近くの川とかでのんびり過ごすのはいいかもしれない。

 もしくは市に寄って、華琳に似合うものを物色するのも楽しいだろうな。

 そう考えると頬が自然と緩んでくる。

「フフッ、仕事は仕事でしっかり手伝ってもらうわよ? 冬雲」

「わかってるよ、そっちも手を抜くつもりはないさ」

 俺たちは互いに見つめ合い、微笑みあう。

 あぁ、幸せだなぁ。

 おっと、そうだ。

「その時はみんなにも何か買おうと思うんだけど、みんなは何がいい?」

 俺がそう笑ってみんなを見ると、全員の顔が瞬間的に音を立てて赤くなる。

「みんな? どうかしたか?」

 俺がきょろきょろと全員を見ると、樟夏だけが俺を見て苦笑いをしていた。

「兄者・・・・ 自覚がないことは時として良い場合と悪い場合が・・・」

「『男が語るべきではない』と言った筈だが、お前は学習するということを知らんらしいな? 樟夏。

 飛ぶといい、真横に」

 何かを言いかけた樟夏が、駆け寄った秋蘭の蹴りによってその宣言通り真横へと飛んでいく。が、それを待機していた樟夏の部下が途中で受け止め、樟夏の馬が傍まで駆け寄って元の隊列に戻る。

「ならば、今度は私だな!

 飛んで行けえぇぇーーーーー!!」

 戻った瞬間に春蘭による拳が振るわれ、先程と同様に軽やかに飛んでいく。しかしそれにも部下たちが走り、樟夏を拾っていた。

 部下に愛されてるなぁ、樟夏。

 って、違う!

「またか! 二人とも!!」

「・・・・はっ?!

 理不尽な同朋がいる気配がする!」

 それを眺めていたら背中から、不思議な第一声がした。どうやら意識が戻ったらしい。

「よかった、やっと意識が戻ったか。

 すまん、彼の馬を連れてきてくれ」

 俺は彼へと笑いかけながら、腰の縄を外して解放する。近くにいた部下の一人に指示していると、視線を感じてそちらを見る。

 アレ? 桂花と斗詩、雛里の目が怪しく光ってる気がする。

「ちょうどよかったわ、ちょっと吹き飛んできなさい」

「そうですね、元はと言えば樹枝さんが気絶しなければよかったんです」

 桂花が鞭をならして、獲物を見つけた肉食獣の笑みをしていた。

 正直、昔より怖さ倍増してないか? いや、そんな桂花も好きだけどな?

 武なんてまったくしてなかったのに、護身術として覚えたのか。だとしたら、実戦では必要ないくらい俺が守れるようにならなきゃな。

 斗詩、その大槌って片腕一本で持つものじゃないよね? 馬上で振り回せるものでもないよね?!

「意識覚醒したばかりなのに、理不尽だーーーーーーー!!」

 そんな声と共に荀攸が吹き飛んでゆくが、俺はおもわず叫ぶ。

「曹仁隊! 一班、行け!!」

『了解です!』

「二班は樟夏と彼の治療の準備だ、馬上でも出来る程度でいいからな」

『既に出来ております!』

 すまん、俺に出来ることはこの程度だ。

 内心で合掌しつつ、もう一人増えただろう弟分に謝罪する。

 あっ、樟夏と彼がなんか話してる。

 固い握手を交わしてるみたいだし、友達になれたならよかった。

 男は少ないからなぁ、今度一緒に飲みにでも行くとするか。

「男同士の友情・・・・・ あわわわわ」

 ・・・・・何だろう。

 これは俺、初めてだからどうすればいいかわからない。

 いや、知識としては知ってるんだ。知識としては。

 だけど、男がこれを口に出したら格好の餌を持っていくだけな気がして・・・・

 そのなんていうか、本当にすまん。

 無力な俺を許してくれ、二人とも。

「興味深いわね、雛里。

 それについては一度是非、読ませてほしいわ」

「はひ!」

「華琳?!」

 腐の汚染が広まったら、ただでさえ肩身の狭い男たちが死ぬぞ?!

 俺が言いかけたことを何か察したのだろうが、その目は政を行う王の目だった。

 まだ、王じゃないのに考えは最初から王だったよな・・・ 華琳って。

「良い商売になりそうじゃない?

 ただし、冬雲を出演させたら(出したら)どうなるか。わかっているわね?」

「勿論でしゅ!

 冬雲さんは私たちの王子様ですから!!」

「桂花もいいわね?」

「はい、華琳様!

 愚弟が華琳様のお役に立つのならば、どうぞ如何様にでもお使いください!!」

 ・・・・・無力な兄を許してくれ、二人とも。

 目からつたう熱いものを、俺は止めることが出来ずに目を逸らす。

「やっと、戻って来れた・・・・

 改めて名乗らせていただきます」

 俺たちの横に並び、華琳と俺、春蘭、秋蘭を見る桂花とよく似た髪色をした青年。瞳の色は桂花よりも緑が濃く、はっきりと開き、全部を見ようとしてるようだった。

 体は文官をしてるだけではこうは鍛えられない、それは彼が武官も兼任出来ることを表していた。

「姓は荀、名は攸、字は公達。

 ですが、真名を名乗る前に曹操様に一つお聞きしたいことがございます!」

「いいわよ、言って御覧なさい。荀攸」

 華琳はその真剣の声音に俺へと視線をやり、足を止める。

 俺はそれに従って、行軍を止めさせる。おそらく、前方へはもう灰陽(かいよう)が伝達しに行っていることだろう。

「あなた方は、一体どこを目指しておられるのですか?

 姉の行動も、陳留刺史であるあなたの行動も、全てが赤き星が落ちてから急激すぎる。

 まるで何かに備えているかのように、僕には映りました。

 あなた方は一体どこを目指し、何を成そうとなさっているのですか?!」

 流石、最初に華琳を試すような真似をした桂花の甥だなぁ。

 いろんなことをちゃんと気づいているし、肝も据わっている。

 これは当然と言えば、当然の疑問。

 いつかは誰かから問われるだろうと、俺も華琳も覚悟していた。

 ましてや、あの時居た俺たちと時の管理者たち以外はこの事実を知らない。

 あとは知っていたとしても、司馬家が正確には意味を理解出来ずに、予測の域で全体図を想像している程度だろう。

 樟夏は生来の性格からか直接聞いてくることはなかったが、それは俺がもう先手を打っておいたからだ。

「樹枝! 身のほどを弁えなさい!!」

「たとえ姉上の言葉でも、今回は聞けません!

 いいえ、むしろ何かを知っているだろう姉上の言葉だからこそ、聞けません!!」

 桂花から叱責の言葉がとぶが、彼はそれに対して怒鳴って返す。

 その通りだ、桂花は知らずともなんとなく理解していただろう。

 記憶が戻って、星が落ちたこと、そして陳留の刺史(華琳)が天の遣いを拾ったとわかった時点である程度の予測は出来ていた筈だ。

「答えてください。曹操様。

 あなたが目指すものとは? そして、何を成し、欲するのですか?」

「いいわ、答えましょう。荀攸公達。

 私が目指すものはこの大陸の平和。

 まず、成すことは大陸の平定。そして、欲することは・・・・」

 華琳は俺へと見る。

 『あなたもそうでしょう?』とでも聞いてくるようなその目に、俺は深く頷いた。

 俺はそのために、そうしたいからここに帰ってきた。

「その平定した未来(さき)を、私は見たいのよ」

未来(さき)・・・・・?」

 突然、壮大な話をされて驚いている荀攸に華琳は楽しげに笑っていた。

「えぇ、私も一人の女。愛する者との子も抱きたいわ。

 ねぇ、冬雲?」

 俺はその言葉に一拍遅れて、意味を理解した。

 俺との子を、望んでくれるのか? 華琳。

 俺と共にそうしてずっと、生きてくれるのか? 俺、幸せすぎて死ぬぞ?

 みんなに会うまでは死なないし、華琳とそんな未来(さき)を見るために死ねないし、みんなを幸せにするまで死にたくないけど。

 もう俺、幸せだ。

 俺は胸がいっぱいになって、涙を堪えることに必死だった。

「兄者、これを」

「すまん・・・・ 樟夏」

 手拭いを渡されて、俺は目元を拭った。

 何も知らないというのに、こうして俺に言及しないでいてくれる配慮に長けた弟に深く感謝した。

「・・・・お答えいただき、ありがとうございます。

 ですが、まだ不明な点もありますが・・・ それはいつか答えていただけるのでしょうか?」

「えぇ、あなたが私の側を離れなければ、いずれ伝えることになるでしょうね」

「では、その時をお待ちします。

 真名は樹枝と申します。

 どうかお受け取りください、曹操様」

「えぇ、確かに受け取ったわ。樹枝。

 私のことは華琳と呼びなさい」

「はっ、華琳様」

 そうして荀攸は俺へと向き直る。

「先程はありがとうございました。

 背に乗せてここまで運んでいただいただけでなく、部隊の方に救助までしていただき、本当にありがとうございます。

 華琳様に名乗った通り、どうか曹仁様も真名を受け取ってください」

「確かに受け取ったよ、樹枝。

 俺は曹子孝、真名は冬雲だ」

 丁寧に頭を下げて礼を述べる樹枝の肩に触れ、名乗る。

「冬雲様・・・・」

「やめてくれよ、様付けで呼ぶなんて。それに華琳に真名を許されたんだ。

 俺たちの立場は同じで、もう仲間だろ?」

 そう言って俺が手を伸ばすと、俺とその手を見比べてからゆっくりと伸ばしてきた。

「その、あの・・・・ 冬雲兄上と呼んでも、よろしいでしょうか?」

「あぁ、もちろんいいとも。樹枝」

 弟いなかったから、二人もできるなんて嬉しいなぁ。

 そう思って頭を撫でていると、樹枝の背後へと桂花が近づいていき、樹枝と入れ替わるように雛里が俺へと頭を差し出してきた。

 樹枝は桂花へと引きずられながら、後方へと消えていく。

 すまん、樹枝。それは俺にはどうすることも出来ないんだ。無力な兄を許してくれ。

「その・・・・ 冬雲さん、頭を・・・」

「うん?

 あぁ、もちろんいいよ。よしよし」

 雛里が言わんとしていることがわかり、三角の帽子の上へとそっと手をのせて左右に動かす。

 帽子越しなのが少し残念だけど、雛里が嬉しいならそれでいいか。

「あわわわわぁぁぁ~~~~」

 目を細めて、まるで猫のようにする雛里の表情に俺の口元も緩む。

「行軍を始めましょう。

 これ以上の遅れは許しがたいわ」

 華琳の言葉に全員が動きだし、行軍が再開された。

 

 

「華琳様、前方に賊が居ます」

「「きゃっ?!」」

 華琳の影の中から突然這い出してきた灰陽に二人が驚き、灰陽はそれに対して反応せずにすぐに消える。

 叫ばれた一瞬、表情が強張ったのが俺には見えていた。

 傷ついたんだろうなぁ、あとで何か出来ることがあればいいんだが。

「数は?」

「二十弱に対し、少女が一名奮戦しております」

「冬雲、春蘭、行きなさい」

 そう言われ、俺が馬の腹を蹴とばす。

「申し上げにくいのですが、春蘭様はもう・・・」

「あの猪、相変わらずね・・・」

 続いて出てきた橙陽(とうよう)の報告に、桂花の溜息が聞こえた。

 まぁでも、しょうがないだろ。

 特にあの二人は仲が良かったし、季衣は春蘭が大好きだったからな。

 それに桂花だって、そう言いながらも口元は上がっていた。

 

「兄ちゃん! 兄ちゃん兄ちゃん兄ちゃん!!」

 そして、俺を迎えてくれたのは季衣の満面の笑みだった。

 俺もそれに応えようとすぐに馬を降りると、襲ってきたのは強力なボディブローに似た季衣の突進。

 俺は何とか踏ん張り、倒れないようにしっかりと受け止める。

「おいおい、季衣。

 嬉しいのはわかるけど、昔の俺だったら吹っ飛んでたぞ?」

「吹っ飛ばなかったからいい!」

 きつく抱きしめられ、俺も季衣も抱きしめ返した。

 そしてそのまま脇へと手をやり、季衣を高く両腕で持ち上げた。

「ただいま、季衣」

「おかえり! 兄ちゃん!!」

 俺が持ちあげるのも、声をかけるのも全部に嬉しそうに笑う。

 薄桃色の髪、山吹に茶を足したような瞳が俺をまっすぐに見つめていた。

「おぅ! 相変わらず、元気そうだな。

 流琉はどうした? 一緒に来なかったのか?」

 てっきり一緒に来ると思ってたんだが近くには居ないようだし、さっきの灰陽の報告でも『少女は一人』だった。

「流琉はね、村の人たちが、自分たちでも守れるようにもう少し鍛えてからくるって!

 兄ちゃんに教わったことを活かして、僕たち頑張ったんだよ!

 それに、あの辺なら僕たちの方が詳しいからいろんな対策を練れたんだ。

 落とし穴とか、丸太とか、狩りに使う罠とかで、力がなくても賊を捕まえたり出来る方法いーっぱい考えたんだよ! 流琉が!!」

 その言葉に俺は、目を見開いて驚いた。

 この子たちはまだ幼いのに、自分たちから出来ることを探して動いていた。

 いや、何かしら行動はしているだろうと信じてはいたし、わかっていたつもりだ。

 俺の予想ではそれは精々体を鍛えるだけだと思っていたし、それで充分だと思ってる。

 だがこの子たちは、良い意味で俺たちの期待を裏切ってくれた。

 自分たちで考えて村を守ろうと動き、誰かを守るために動いていたんだ。

「偉いぞぉ! 季衣!!」

 本当に、なんて勇気がある子たちだろう。

 俺は季衣を抱えたまま回り、手を離して季衣を受け止める。受け止めてからも、腕の中で頭をくしゃくしゃに撫でた。

「くすぐったいよぉ、兄ちゃん」

「曹子孝、真名は冬雲。それが今の俺の名だ、季衣。

 受け取ってくれ」

「うん! わかった!! 冬雲兄ちゃん!」

 あぁー、もう! 可愛いなぁ!!

 強くて、賢くて、可愛いなんて完璧すぎるだろ!

「冬雲! ずるいぞ!!

 季衣を独り占めするな!」

 春蘭が怒って、俺に不満を言ってくるが俺はその場でさらに手を伸ばした。

「じゃぁ、春蘭も来いよ!

 二人で季衣を、たっくさん褒めてやろうぜ!!」

「それは名案だな!

 季衣、何の事だかよくわからんがよくやったんだな。偉いぞ!!」

 春蘭も飛び込んできて、季衣の頭を撫でた。

 言葉は凄く春蘭らしいが、それでも季衣は嬉しそうには笑う。

 

 俺は二人を抱きしめて、春蘭が季衣を褒めて、笑いあうのは華琳たちが呆れながらそこに到着するまで続いた。

 




なんだか書くたびに、作者が想像しているよりも話が進まない・・・
ようやく季衣と再会させることが出来ました。

誤字脱字、感想等々お待ちしております。

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