真・恋姫✝無双 魏国 再臨   作:無月

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サブタイトルが今までの中で一番乙女チックに?!
ちょっと難産でした・・・ 口調難しいです、この子。


読者の皆様にご報告が一点、作者は学生のため明日より授業があります。
大変申し訳ありませんが、これまでのような毎日投稿はおそらく厳しいです。
作者としましては二日に一度、三日に一度は投稿したいと思っていますが・・・ 週に一度になる可能性もあります。
待っていてくださる皆様、大変申し訳ありません。
ですが、途中放棄だけはしないとお約束しますので、こんな作者を見捨てないでください。
よろしくお願いします。


 今 あなたを想う 【流琉視点】

 青い空に柔らかい雲が浮かんでいて、とてもいい天気。

 洗濯物がよく乾きそうな、気持ちいい日です。

「季衣はもう兄様たちに会えたかなぁ」

 数日前に一足先に華琳様たちの元へと会いに行った季衣が少し羨ましく思うけど、私もここでやることをやらなくちゃ。

 季衣が兄様を守ってるのは少し不安だけど、春蘭様も秋蘭様もいらっしゃるから大丈夫だって安心できますね。

「あっ、もう時間かな?」

 そう思いながら私は、村の人たちの元へと駆け出した。

 

 

 

 思い出すのはあの日、赤き星が落ちた日の翌日のことだった。

「流琉! 早く兄ちゃんのところに、華琳様たちのところに行こうよ!!」

 必要な荷物を持って朝一番の私のところに来た季衣に私は少し戸惑ったけど、季衣の言葉を理解して頭を叩く。

「いったーい!

 何すんだよ・・・」

「季衣! もっと冷静になって!!」

 季衣と睨みあいになる前に、私は叩き付けるように叫んだ。

「流琉?」

 驚いて目を丸くする季衣の手を引いて、家の中に入れる。

「季衣、落ち着いて。

 昨日思い出したこととかを、整理してみて」

 私は季衣から荷物を取り上げて、座らせる。

 ついでにお茶とお菓子を出して、いつも通りであることを心がける。

「昨日思い出したこと・・・・

 あの赤い星が落ちてから、華琳様たちや春蘭様、兄ちゃんのことを思い出して、ここじゃないけどここで会った事を思い出したんだ。

 三国を統一して、やっと全部終わったっていう日の宴のとき、兄ちゃんが還ったって聞いて・・・・・ ずっと探し回ったのに、兄ちゃんはいなかった」

 少しだけ笑顔になってから、それは暗くなる。

 私と同じ、あの日の記憶だってわかってる。

 兄様がどうして消えたのか。

 どうして帰ってしまったのか、私たちはずっとわからないままで。

 泣いて暮らすわけにもいかなくて、前を向いてるふりをしていた。

 兄様が望んだ未来(さき)、それは本当にただ漠然としたもので、それが当たり前になったらどんなに素敵だと思ってた。

 事実、三国統一後それは成し遂げられた。

 三国の王が手を取り合って共に作った世は、とても素晴らしい世だった。

 

 だけど私たちにとってそれは、完全なものではなかった。

 たった一人、北郷一刀(兄様)が居ない。

 ただそれだけで私たちは、心の底から笑顔にはなれなかった。

 誰も口にはしなかったけれど、『ここにあの人がいれば』と思い続けていたと思う。

 そして同時に私たちは、きっと認めたくなかった。

 

 たった一人いないだけでも世界が回る。

 たとえ、それが大切な誰か(存在)であったとしても。

 そんな残酷な世界の真理を、私たちは直視したくなかった。

 

「兄様はあの時、どうしてかはわからないけど帰った」

 でもこれは、どうしようもない事実だった。

 私たちはそれを忘れちゃいけないし、忘れていいわけがない。

 ううん、きっとどれだけ忘れたいと思っても、私たちはずっと忘れられない。

「だけど、今は変えられるよね?」

 何が原因かわからないなら、あの時と同じことを繰り返さなければいい。

 もう二度と、あんな思いを繰り返さないように行動をすればいい。

 私たちまだ今は二人だけど、魏には、華琳様の元には皆さんが居る。

 考えること(原因究明)は私たちじゃなく、もっと得意な風さんたちがしてくれると信じられるから。

「だからすぐに!」

「それは違うでしょ! 季衣!!

 私だって兄様たちに会いたい! 

 だけど、私たちがこのまますぐに、華琳様や秋蘭様に合流したってどうするの?」

 これが季衣なりに考えた末の行動だって、本当はわかってる。

 すぐ傍で兄様たちを最初から守ることが、変えられる可能性だっていうこともわかる。

「けど! 僕たちがここに居たって!!」

「村は?! 私たちが居なくなって、誰がこの村を守るの?!

 ここの人たちを放ってまで会いに行って、兄様たちが褒めてくれると思うの!?」

「っ!」

「私たちは、私たちがここで出来ることを全部してから胸を張って兄様たちに会うべきでしょ?!

 それにあの兄様なんだよ? 私たちに会えなかった時、何にもしてなかったと思う?」

 兄様は弱かった。

 でも兄様は、将の中で一番自分が弱いことを知っていた。

 いつも、誰よりも私たちのことを見ていたのはきっと他の誰でもない兄様だろう。

 もしかしたら、私たちよりも私たちが何を出来るかを知っていたかもしれない。

 

 だけど兄様は兄様でいいと、私たちはずっと思っていたから。

 有能じゃなくていい。何かに秀でていなくてもいい。

 人を傷つける度胸なんて持っていなくていい。意気地なんてなくていい。

 弱くても優しい、誰よりも私たちを『将』としてではなく、『普通の女の子』として見てくれた兄様がいい。

 

 でもきっと、だからこそ兄様は・・・ 誰よりも自分を責めてる。

 優しい兄様はきっと残された私たち以上に私たちのことを考えて、考え続けた末でやっと方法を見つけたんだとなんとなくだけど、わかってしまう。

「兄様はきっと、凄くなって戻ってきてる。

 それなのに私たちは、自分たちのことだけを考えて華琳様たちのところに行くの?」

「っ!!

 じゃぁ! どうすればいいって言うのさ!」

「一緒に考えようよ、季衣。

 私たちは一人じゃないし、二人だけでもないんだよ?」

 そう言って私は季衣に手を伸ばす。

 兄様がいつも誰にでも当たり前にしていたことを、私たちは完全に出来るまでとはいかなくても近づかなくちゃいけない。

 あの時の私たちの憧れは春蘭様や秋蘭様、それはきっと今も変わらない。

 でも、平和を目指すとき、目標とすべきはきっと兄様なんだ。

 

「それで? 具体的にはどうするの? 流琉」

「・・・・まず、前の私たちを見直してみよう。

 そこから兄様がしたことを比べてみようよ」

 前私たちがしていたことは、村を守ること・・・・ だけど、それは誰と?

「私たちって・・・・ 二人で村を守ろうとしてなかった?」

「そりゃだって、みんなには力がないし、僕らにはあったから・・・・ あっ!」

 それは兄様もそうだった。

 というか、兄様に限らず、兄様の周りに居た警邏隊の人もそうだった。

 誰しも力を持っているわけじゃないし、弱くても町の安全をちゃんと守っていてくれた。

「村のみんなにも手伝ってもらおうよ!

 みんなも鍛えて、山賊をやっつけるんだ!!」

「・・・・やっつけることだけが、山賊を倒す方法なのかな?」

 季衣のその言葉に私は疑問を抱く。

 殺すことだけが選択肢じゃないことを教えてくれたのは、華琳様だった。

 華琳様は間違った者たちは確かに討伐していたけれど、その人たちがどうしてそうしてしまったのかを考えていた。

 賊だって元は私たちと同じ農民で、飢えたから立ちあがるしかなかった人たち。

「・・・そうだよね、兄ちゃんは警邏隊で町を守ってたけど、それだって取り押さえてただけだもんね」

 二人で腕を組んで考える。

「ねぇ、季衣。

 私たちって、あの時焦ってなかった?」

「焦る?」

 私たちはあの時『自分たちしか力がないから守らないといけない』って思っていた。

 今もそうだと思うし、周りからの期待もあった。だから私たちは、それに応えようと必死だったんだと思う。

 華琳様たちに会うまで、自分たちよりも強い存在なんていないとすら思っていた節があったし、だから私たちは自分たちよりも凄い春蘭様や秋蘭様に憧れた。

「兄様、いつだか言ってたよね。

 『困ったら、周りに頼っていいんだ』って」

「周りに頼る・・・ 村長の話してみようよ!

 みんなで対策を練れないかって、僕たちの話なら聞いてくれるよ!」

「うん! 行こう!」

 そう言って私たちは二人で村長の元へと駆け出した。

 そこから村の防衛策はみんなで増やしていくことができ、村全体で対策を練ってだんだんと被害を減らしていけました。

 最初の内は大変だったけれど、兄様がしていたみたいにゆっくりと少しずつ理解してもらえるように何度も何度も話し合いました。

 やっぱり鍛錬とか私たちが中心になってしまったけれど、それ以外の罠とかは私たちだけでは無理だったし、学ぶところも多かったです。

 まだ更生の余地がある人は役人に引き渡しはしないで、田畑を耕して一緒に村で過ごして村の一員であり、働き手が少しずつ増えていくことまで成功しました。

 

 

 

 本当は私も一緒に行きたかったけれど、鍛錬の方はもう少しの間どちらかが居ないと駄目だと思ったし、それ以外にもう一つだけしなければならないことがあります。

 

「はい、今日の鍛錬はここまでです。

 皆さん、この後はゆっくり休んでくださいね。

 あと食事も用意してあるので、どうぞ食べていってください」

 他の人たちが食事の方へと流れていくのを見ながら、私は袋に木片と小刀、食事を入れて森へと走っていく。

 途中いくつかの果物をとりながら、見晴らしのいい樹の上に乗って周りを見渡した。

 食事をとりつつ、周りの地形を見る。それにそって、大雑把でもいいから小刀で木片を削っていく。

「・・・・でも、役に立つのかな」

 近隣の山や谷を彫ったそれらは、私にしかわからないように番号が振ってあり、手作りの地図におけば地形がわかるようになっています。

 実際に歩いてもいるから距離もなんとなく掴んでいますから、この辺りだけなら私にわからないことはないと言ってもいいです。

「だけど・・・ この周辺だけの地図じゃ、足りないですよね」

 問題は私が村から離れられない現状、ここの近辺しかできないということ。

 昼間じゃないと地形はわかりませんし、かといって昼間には他のしなければならないこともありますからね。

「・・・何とか出来ないかなぁ」

 地図を作ることは罠を設置する時にどうしても必要だったこと、そして村の人たちだけがわかればいいから設置した場所には穴を開けていました。

 そして、子どもたちが作っていた、泥で作った山を見て浮かんだのがこの方法でした。

 地図があっても地形だけは記憶だけを手さぐりにしていかなければわかりませんでしたし、距離はどうしても掴みきれないのが地図の欠点です。それに地図があるからと言って実際行った人の話を聞かないと、どれほどの日数がかかるかもわかりません。馬でもそれは同様です。

「はぁ・・・・」

 こうしていることも本当に無駄なんじゃないかと、思う時もあります。

 季衣と共に兄様たちのところに行った方が役に立つんじゃないかと、思わないときがありません。

「兄様・・・・ 会いたいです」

 一言、褒めてほしい。

 一目でいいから会いたい。

 そればかりが浮かんでは消えて、結局は村のことを放ってはいけないからここに残ったことを改めて思い出しました。

「駄目駄目!

 やることを全部やってからじゃないと、兄様たちに会わせる顔がないもの!」

 そう言って自分に喝をいれ、立ち上がります。

 兄様たちに会うまで、せめてこの辺一帯だけでも地形を完成させないといけません。

 そう思って再び小刀を手に取って、作業を続けました。

 

 

 兄様、再会したらいろんなことを聞かせてください。

 私たちにはわからなかった多くのことも、私たちと出来なかったたくさんのことも、思い出してから私たちが頑張ったことも・・・ 話したいことはたくさんあるですよ。

 兄様たちと会うその日まで、私は私の出来ることをやってみます。

 だから兄様、そこに居てください。

 絶対にもう、私たちから離れないでくださいね。

 




次は本編を予定しています。
もう書き出しが出来ていますので、早ければ明日。遅くとも明後日にはお届けできるかもしれません。

感想、誤字脱字等々お待ちしております。

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