真・恋姫✝無双 魏国 再臨   作:無月

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活動報告の宣言通り、書けましたー。

ただあまり時間がないので、見直しがあまりできていません。申し訳ないです。
それから土日は私用があるので投稿できません。
構想はねっておきますし、週一は守りますのでご安心を。
また、それに伴い今日の十五時以降から日曜の十五時までは感想の返信が出来そうにありません。
その辺りをご了承ください。

いつもありがとうございます。


23,帰路 そして 再会

「あぁ、冬雲。

 あなたに一つ、言い忘れていたことがあったわ」

 陳留への帰り道、華琳が俺を見てふと思い出したように口を開いた。俺はその次の言葉を待ちながら、聞き逃さないように夕雲に合図して近くに寄ってもらう。

「冬雲、あなたにはしばらくの間、左手に盾を装備することを義務付けるわ」

「はっ? 何で・・・・」

「『何で』ですって?」

 俺が疑問を口にしかけた瞬間、極寒の風が華琳から巻き起こったような気がしたのは俺の幻覚だろうか?

 助けを求めようと近くにいた雛里を見るが、雛里の背後に猛りくる鳳凰を幻視した。

 怖っ?!

 そして、二人だけじゃなく、周囲の空気もなんだか冷たくなった気がするんだが?!

「今回の件、あなたが持ち歩いていたのが一般兵と同じ安物の剣でなく、それなりの剣であったなら、たとえ関羽の一撃だったとしても壊れることはなく、こんな怪我を負わずに済んでいたと思うのだけれど?

 そしてそれは、『まだ、これでいい』などと言ってきちんと装備を揃えなかったあなたの不備によるものよ」

 華琳から怒りの笑みと共に語られるその事実に、俺はぐうの音も出なくなる。

「だ、だけどなぁ・・・」

「あなたがしたこと、したかったことはこの際、関係ないわ。

 戦力面としても、あなたは抜けられたら困る位置にいる。

 今回の一件は軍としての最良であっても、最高の状態ではないもの」

 そう言った後、馬上から俺に視線を向けて声には出さずに、口元だけを動かす。

 俺はその言葉を理解し、おもわず顔が熱くなる。

『それに私も、あなたが傷つくことが嫌なのよ』

 くっそ! 何だ、この可愛いさ!

 正論で負かされて言い返せないものあるけど、何も言えなくなるじゃねぇか!

「盾は既に作成の依頼は出しましたし、戻って数日すれば届くことでしょう。

 その時に使い勝手等を確認なさってください」

 黒陽の補足説明を聞きながら、俺は額には冷や汗が流れた。

 それって留守組のみんなが、もうこの怪我のことを知ってるってことですか?

 そんな俺の肩を秋蘭が叩いてきたので、俺がそちらを見ると何故か寒気のする笑顔がそこにあった。

「冬雲、安心するといい。

 おそらくはまだ、桂花たちはこのことを知らない」

 安心したいのに、秋蘭の笑顔にはそうさせてくれない何かがあった。

「初めから全てを説明させた方が、良質な反省材料になるだろう?」

「お前たちは鬼か?!」

 おもわず俺は叫ぶが、そんな俺を同情的に樟夏によって肩を叩かれた。

 が、そんな中でただ一人だけ、春蘭が地図とにらめっこしていた。

 言っちゃ悪いが、かなり珍しいな。

「どうかしたのか? 春蘭」

「いや・・・・ この辺りの村に何故か覚えがあるような、ないような?」

 首をかしげて不思議そうにしている春蘭に、俺も地図を覗きこむ。

 あれ・・・ 確かに、なんか見覚えがあるな?

「確かこの辺りの村は・・・・

 何でも気を使う者を中心にし、自警団が発足し、それをまとめる者と、村のあちこちに罠等を仕掛けてあるとか・・・ 黄巾賊が攻めてはいるようなのですが返り討ちにしているという情報が・・・・」

 樟夏のその言葉にあの三人が浮かび、苦笑いを作って華琳を見る。

「華琳・・・」

「・・・迎えに行って、おあげなさい。

 ただし、私たちは先に戻っているわよ。

 今回の件で民が流れてくることと、もう一件仕事が増えることが確定してしまった。

 桂花や樹枝、斗詩たちだけでは書類処理が間に合わないでしょうし、あまり責任者である私が留守にしているわけにはいかないもの」

 溜息を吐きつつも、華琳の表情に喜びが垣間見え、俺も笑う。

「冬雲、樟夏、曹仁隊の二十名を連れ、近辺の村の調査をしてきなさい。

 使える人材がいたら、その場で引き抜いてきなさいな」

「了解」

「はっ!」

 俺と樟夏は短く応え、隊から離れる。

 樟夏が不思議な視線を向けられながらも、俺は可愛い部下三人と再会出来ることが嬉しくて、口角が自然とあがっていた。

 頑張ったみたいだから、たくさん褒めてやらないとな。

 

 

 

 俺の白抜きの円に赤字の曹の旗、樟夏の紫の色に書かれた白銀の曹の旗を持って近づくと村全体に柵に囲っているところから、砂煙をあげて何かが近づいてくる。

 戸惑いながらも俺たちを守ろうと構える兵たちに、手で武器を下ろすように示してから、俺は夕雲と共にそっと前に出る。

 そして、夕雲に被害が及ばないように、そっとその背から降りた。

「兄者?!」

 俺のその行動に、樟夏がさらに戸惑いを見せるが俺は砂煙の中から見えた三人の人影を待っていた。

「隊長! 隊長!!」

「隊長なのー! 本物なのーーー!!」

「隊長! ウチら頑張ったんや!! 褒めて、褒めてぇ!!」

 俺の胸に文字通り飛びついてきた三人をしっかりと抱きしめて、倒れないように踏ん張っているとそんな言葉の嵐が巻き起こる。

「あぁ・・・ 頑張ったんだな」

「隊長! たいちょ・・・・」

 俺がそうやって順番に頭を撫でていると、不意に顔をあげた凪の顔が硬直する。

「そのお怪我は・・・・?」

 あっ・・・・ 包帯は取れても、傷はこのまんまだからなぁ。

 俺は先程も流したばかりの冷や汗がまた、額に流れている気がした。

「隊長に怪我をさせた、蛆虫以下の××野郎は一体誰なのー?」

 ・・・やっぱり自警団をまとめてたのって、お前か。沙和。

 ここでももうその方法やっていれば、そりゃぁ相当な守りを発揮するだろうな。

「ウチもそれ知りたいなぁ?

 ウチらの隊長に傷残るほど怪我させたんや、それなりの覚悟はあるんやろしなぁ?」

 ・・・・コレ、帰ってからもあると思うと滅茶苦茶しんどいな。

 どうしたもんかなぁ。多分先に帰ってても、さっきの感じだとみんな絶対に説明しておいてくれないだろうし。

「この怪我は、知っているかどうかわかりませんが、関羽が・・・・」

 樟夏の説明に三人の顔がどす黒い怒りに染まっていくのが目に見えてわかった。

 そして俺はそんな三人の表情を見て、あの(俺が消えた)後三人がどう思ったのかをなんとなく理解した。

 立場としてはあの時の仲間で最も低く、劉備たちとの関わりも薄い彼女たち。

 だが共に過ごした時間は華琳よりも長く、俺もまた部下として三人を可愛がり、手をかけた。

 わかっている情報も少ない中で、他のみんながどう説明したかはわからないが、一番関わりが深かった蜀が原因であることは想像できてしまったことだろう。

 だからこそ、三人はあの中の誰よりも蜀の面々を許せなかった。いいや、憎んだことだろう。

「関羽! あの軍はまた隊長を!!」

 そしてその考えが正しいことを、凪の言葉で確信する。

「三人とも」

 だが、守ることに憎しみはいらない。

 あの日々はきっと消えないし、傷は確かに残ったままだ。

 だけど・・・

「ただいま」

 たとえ結果論だったとしても、俺はここに戻ってくることが出来た。

 多くのことがあの日々と違うこの世界で、関係の全てを一からやり直すことも覚悟の上だったのに、彼女たちの記憶すら夢那が与えてくれた。

 その言葉に毒気が抜かれたように、呆気にとられる三人だが俺はそこに畳み掛けた。

「この傷はな、華琳たちを守った証なんだ。

 凪の傷と同じ、誇ることはあっても誰に恥じることはない。

 だからさ、久々に会ったんだから、そんなに怒るなよ。三人とも」

 まず、手始めに凪の頬を軽く引っ張ってから、沙和と真桜の頭も軽く小突く。

「た、隊長・・・・」

 凪は目を潤ませて、俺の胴へと回した腕に力を込めてきた。

「呆れるくらい、何にも変わってないの」

 俺の左手は沙和に固く結ばれ、肩に抱きついてくる。

「ホンマやなぁ。見た目はこんだけちゃうのに、ウチらが大好きな隊長のまんまや」

 真桜も幸せそうに笑いながら、右腕に絡みついてきた。

「それにしても、村からじゃ旗くらいしか見えなかっただろ?

 よく俺だってわかったな?」

「一目でわかります!

 こんな美しい雲のような白は、隊長の御心そのものです!!」

「そうなのー。

 隊長が沙和たちをいつも包んでくれたのー。でも、風みたいに悪戯じゃなくて雲みたいに柔らかそうな感じだったの」

「風に飛ばされて、あっちこっちうろつくとこもぴったしやな!

 一つのところに留まれんくせに、誰も見捨てないでいてくれはる。ウチらの大好きな雲や!」

 凪たちの熱い言葉に、突然影から白陽が出てきた。

「「「うわっ?!」」」

 三人が驚くのも気にせずに、白陽はその場で深々と頭を下げた。

「私の名は司馬懿、真名は白陽と申します。

 冬雲様の影を務める者、どうかこれからもよろしくお願いします。

 あなた方の冬雲様への思い、同じとは言いませんがひどく近しく感じます」

 そう言って頭をあげる白陽。そして、その目を見て凪は微笑んだ。

「私は楽進、真名を凪と申します。

 あなたも、隊長に救われたのですね」

 それは問いではなく、確認のようで、白陽もまた両目を隠すこともなくとても嬉しそうに微笑んだ。

「はい。この方が私を、救ってくださったのです。

 そしてあなたも、そうなのでしょう?」

 どちらともなく手を取りあい、固く結びあう二人を見て、俺は心からその光景が美しいと思った。

 凪の傷は、自分を顧みずに村を守ろうとした証。

 白陽の目は、一族の、彼女の両親の子である証。

 どちらもとても美しく、恥じることなど一片もありはしない。

「ウチらも忘れんといてや!

 ウチは李典、真名は真桜や!」

「私は于禁なのー、真名は沙和なのー!」

 そんな二人に突っ込んでいく二人を見ながら、俺は穏やかに笑っていた。

 そして、目を逸らしつつ、遠目で村を確認する。

 しっかしまぁ、周りが柵で囲まれて、村のあちこちに罠。そうでなくても先陣をきっただろう凪の気弾と、沙和が育て上げた自警団。

 ・・・・うん、一つの村がここまで力を持つのは危険すぎる。

 ていうか、三人がうまくやってなかったら、馬鹿なことを考えた奴が反乱の材料になりかねない。

「兄者、あまり時間をとられてはまずいのでは?」

 樟夏の俺を促す言葉に頷き、俺はその場で手を叩く。

「さてっと、嬉しいけど準備してきてくれないか?

 どうせ俺たちが来ることをわかってたんだろうし、それなりの準備はしてきたんだろう?」

「勿論や!

 隊長に贈りたいもんもあるし、そのための沙和による躾や!」

 し、躾か・・・・

 教えた俺も俺だが、そう言い切られるとなんだか苦い顔しかできないんだがな。

「村には沙和たちは飛び出すって言ってあるから、大丈夫なの!

 しっかり仕込んであるから、反乱しないようにしてあるの!!」

 沙和の説明に俺は笑顔を向けながら、『お前、どんな指導をしたんだ?!』というツッコミが口から出かかったが何とか飲み込んだ。

「それに、いつ来られてもいいように荷物もごく少量にまとめてあります。

 が、どうしても真桜の物は量が多くなってしまいますが・・・」

「「いつの間に(いつしてたの)?!」」

 凪、もうその縁の下の力持ち的なところが大好きです。

「荷車を一台、売ってもらってそれに積むか。

 少しなら手持ちもあるし、荷車を引く余裕もある」

 難点をあげるなら到着が少し遅れることだろうが、それも準備を一から始めた場合を考えれば短いものだ。

 俺はそう言って凪に財布を渡し、行くように促す。

「これで必要な物を買ってこい、

 俺たちはここで待ってるからな?」

「はい!

 隊長、天の遣いはお二人いると聞きましたが、今の隊長のお名前を聞きたく思います!」

 凪の言葉に自分が名乗ることを忘れていたことに気づき、自分に対して苦笑いした。どれだけ会えたことが嬉しかったのか、そればかりに夢中になってしまっていたようだ。

「俺の名は曹仁子孝、真名は冬雲だ。

 お前たちが『らしい』って言ってくれた通りの雲が、俺の真名だよ」

 真名を言わずとも、俺のことを知っていてくれる可愛い三人の部下へと笑った。

 

 

 三人を待つこと約半刻、おそらくは大半が真桜の機材だろう物を荷車に乗せて戻ってくる。そして、真桜が布に包まれた何かを抱えて、俺の元へ駆け寄ってきた。

「隊長!

 隊長に渡したいもんはこれや!!」

 それは一本の細身の剣、俺はそれを真桜に手渡されながらそっと鞘から抜き放った。

 そこに現れたのはやや赤みを帯びた刀身、まっすぐな剣をそのまま軽く素振りをするとなぜか不思議と手に馴染む。

 俺のためだけに作った真桜の心を表すかのように、振るっても動いても違和感がない。

「えぇみたいやね」

「真桜・・・・ この剣」

 まるで俺が何を使うかわかっているかのように誂えた剣に、ただ驚かされた。

「ほんまはもう一本用意せなあかんと思ったんやけど、あっちこっちから隕石の欠片かき集めるんはちょい金が足らへんかったんで、一本しか出来んかった~」

「しかも、隕鉄を使ったのか?!」

 俺はおもわず目を開いて驚き、三人を見る。

「そうなのー、集めるのに結構かかったけど、何とか一本分は三人で出し合って間に合ったの」

「幸い、自警団等の剣で村人たちからいくらか援助はしてもらえました」

「・・・・まったく、お前たちは」

 本当に可愛くてしょうがない、俺の大切な部下たちを見つめた。

 俺の前に集まって鳴いていた三羽の烏は、こんなにも自分たちで考えて行動していてくれた。

 三人の頭で考え、一つのことへと向かって突き進むその姿は三つ首の狼(ケルベロス)のようだ。

「ありがたく使わせてもらうぞ。

 それで、この剣の銘は?」

「『連理』や。

 まぁ、もっとも比翼はなくても、いつも隊長の傍にはウチらが()りますよって」

 一度だけ鞘越しに刀身を撫で、俺は三人へと笑いかける。

 俺の大切な、愛する人は多すぎる。

 なんて枝の広い連理だと呆れられるだろうが、これは俺の本心だ。

 みんなが好きで、愛おしい。これからも守りたいと思う。

 だけど、俺一人の力できることなんてたかが知れている。

 みんなの力があるから、俺はここに居られる。

「さっ、行くぞ。

 きっとみんな待ってるし、たくさん紹介したい奴らがいるんだ」

 三人を見ながら、俺は帰ってから起こる大変なこと以上に楽しみな嬉しいことに心躍らせながら、陳留への帰路についた。

 




この後は拠点ですね、その後はオリジナル要素が入ることを予定しています。

感想、誤字脱字お待ちしています。

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