真・恋姫✝無双 魏国 再臨   作:無月

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36,過去と今 そして 二人の天の遣い 【沙和視点】

「凪ちゃーん、必要な装備の確認終わったのー」

「じゃぁ、次は・・・・・ この書簡を読んでおいてくれ。

 移動時の配置についてのもので、多分沙和が一番大変なところだからと隊長がわかりやすくまとめてくれた物だと白陽殿が言っていた」

 反董卓連合が起こって、沙和たちは初めての遊撃隊としての出陣で準備に勤しんでるの! 前とは違って、隊長が負担してくれてた書簡仕事も任されて、凪ちゃんと真桜ちゃんと分担して頑張ってるの。

「わかったのー。

 ここで読んでも平気?」

「読みながら他の仕事は出来ないだろうし、いいと思う」

 書簡に目を落とす凪ちゃんを見ながら、沙和も書簡を軽く眺めることにするの。

 こうしてることなんて前の時は考えられなかったもんね、沙和も真桜ちゃんも不真面目だったもん。でも、もしまた隊長が消えるかもしれないってなった時、何にも出来ないのはもう嫌なの。何にも知らないで、何一つ出来ないでいるよりかは何か出来るようにしたい。それに・・・・

 覗いた先にいる凪ちゃんの顔は前と変わらない真面目で、前よりもずっとやる気に満ちてる。それは形として凪ちゃんが隊長を任されたことと、多分沙和たち三人の中で一番あの日のことを気にしてるからだと思うの。

「沙和、ちゃんと読んでるか?」

 おっと、危ないの。

「読んでまーす。

 ようするに先頭に凪ちゃん、後ろに真桜ちゃん。沙和は真ん中でクソ虫どもを怒鳴って整列させればいいんだよねー?」

「・・・・あぁ」

 凪ちゃんも、真桜ちゃんも、教えてくれた隊長も沙和がこの言葉使うと微妙顔するのなんでなのー?

 もー、沙和は隊長に最初に教わったやり方を少し強めに言ってるだけなのにー。

「凪ー、沙和ー、おるー? ・・・・おぉ、よかった。居ったな。

 二人の武器、整備終わったからちょっと調子見てほしいんやけど?」

「あっ、真桜ちゃん。

 その辺りの書簡にまた樟夏様から苦情まがいの、経費に関しての書簡が回ってきてるのー」

「またかいな?!

 ウチ、あとでいつもことしてくるわ」

「今回は駄目だ。

 戦前にいつものようなことをして、時間をとられるわけにはいかない」

 そう言いながらも真桜ちゃんは私たちに武器を渡して、外に来るように促してくるの。読み終わった書簡に『読了』って書いてから積み上げて、外に出る。

「そうは言うてもなぁ、凪。

 これはウチの・・・ いいや、工作隊にとっては死活問題なんや!!」

 真桜ちゃんが書簡を見て面白い顔になってて、凪ちゃんの制止に抗議してるの。

 経費に関しての苦情は月に一度は必ず来てるし、そのことで毎回樟夏様のところに突貫しに行くことがお約束になってるの。お互い一切譲らずに言葉だけ、その上で沙和がやってるみたいな言葉も使ってないのに凄い舌戦になるの。

 大抵騒ぎを聞きつけた隊長が間に入ったり、秋蘭様とか、桂花様が間に入らなくちゃ終わらなくて、その内会議で正式に議題になる予定なの。

「・・・・戦が終わってからじゃ駄目なのか?」

 凪ちゃんの拳が真桜ちゃんへと迫って、真桜ちゃんはそれを受けずに後ろへと避ける。沙和は拳を伸ばしきった凪ちゃんへと走って、二天を思いっきり振りおろす。けど、やっぱりすぐに腕で防がれて、左足で吹っ飛ばされちゃった。

 凪ちゃんが心配そうにこっちを見るけど、着地できたし、動きの練習だけだから力がこもってないから全然問題ないの。

「あかんあかん。

 樟夏様もこの忙しい時期を狙って必要経費と苦情回してきたんやろうし、ここでウチの部隊が黙っとったら、認めることになってまう。

 二人の武器の調子もええようやし、ウチ、今から行ってくるわ」

「樟夏様も忙しい身、特に今はあちこち飛び回って部屋に居られない可能性の方が高い。

 これで隊の準備に支障が出ても問題だし、やめた方がいいんじゃないか?」

 んー、これじゃぁ凪ちゃんと真桜ちゃんの間で喧嘩になっちゃいそうなのー。もー! 樟夏様の経費関連になると真面目な凪ちゃんと、職人としてこだわりたい真桜ちゃんの意見が真っ向から対立して大変なの!

 だから、真桜ちゃんの味方して、遊撃隊(沙和たち)の良い方にすすむようにしちゃうもん。

「だったら、お昼ごろに行けばいいと思うの。その時間ならよっぽどのことがない限りは、食堂に居るの。

 それに短く終わらせたいのは向こうも同じだろうし、真桜ちゃんがごり押すか、隊長に一筆書いてもらえばいいと思うの」

「な?!

 沙和! 隊長もお忙しいんだ。そんなことを頼めな・・・」

「その案貰うで! 沙和!!

 ついでに隊長に一筆と、ここにぶっちゅーっと接吻もろうてくるわ!」

 真桜ちゃんが指差したのは唇、あっ、凪ちゃんから流れてくる気が怖くなった気がするの。

 それに沙和もちょーっと、イラッとしたの。普通はこういう時ってほっぺた指差すもんなのー!! なんで遠慮の欠片もなく唇指差すかなー、もー!!

「抜け駆けしたら、真桜ちゃんでも許さないのー!!」

「流石にそれはじょーだんや、冗談。

 ウチらは三人一緒で、冬雲隊や。今も、昔も、ウチらは三人で隊長と一緒におるんや」

 真桜ちゃんを見送りながら、凪ちゃんは口をぱくぱく動かして、行き場をない手を宙に彷徨わせてるの。

 あっ、考えるの放棄して空を見始めたの。

 沙和もそれを追いかけると、綺麗な青い空に白い雲が浮かんでて、楽しそうにしてるの。隊長は前から晴れ男なの。隊長との思い出は全部青い空の下で、でも陽射しが辛いとかお肌に悪いとか感じたことがなかったの。それはきっと、隊長と一緒にいたからで、いつもさりげなく沙和たちに日影の方を歩かせてくれてたからなの。

「沙和、この後も準備はあるんだ。

 やるべきことを済ませるぞ」

「はいはーい。

 沙和はここで少し休憩してから行くの」

 そう言ってその場に寝っころがると、凪ちゃんが凄い目をして睨んでくるの。こーわーいー。

「沙和?」

「大丈夫なのー。やるべきことはやってあるから、お昼になったら動き出すの。それまではちょっときゅーけー。

 凪ちゃんもほどほどに休憩入れないと、隊長が心配して白陽ちゃんが来ちゃうかもよー?」

「そう、だな。

 隊長はお優しく、心配性だから。私もほどほどに休むことにする・・・・ でも、その」

 凪ちゃんの言葉は優しくて、幸せそうな恋をする乙女の顔になっててすっごく可愛いの。

 隊長の幸せ者めー、どれだけ沙和たちに愛されてるかちゃーんとわかってないと怒っちゃうもんね。

「隊長に心配されるのは申し訳ないけど・・・・少しだけ、嬉しいんだ。

 おかしいかもしれないけど、隊長が自分を気にかけてくれる。

 それだけで凄く、ここがあったかくて・・・ 幸せなんだ」

 後ろめたそうに、恥ずかしそうに言って、やや速足で戻っていく凪ちゃんの足音を聞きながら、沙和は二天を空に掲げるの。

 二人とも頑張ってるし、勿論沙和も頑張ってるけど、二人はどこか気負ってる気がしてならないの。

「凪ちゃんも真桜ちゃんも何も言わないけど、本当はあの日を気にしてるんだろうなー」

 そう言って思い出すのは遠い昔、頭のよくない沙和にはよくわからないこと。

 でも、『北郷一刀』という名前だった隊長との思い出はとても楽しくて、幸せだったことだけは確かなの。

 だって、違和感なんて覚えることもないくらい、この気持ちは自分のものなんだってすぐにわかっちゃったんだもん。

 

 

 あの後も頑なに蜀のみんなと立場の差とか、警邏隊の任務が忙しいことを理由に関わろうとしなかった凪ちゃんと、一見は楽しそうに会話もできるけど、何かと研究とかを理由にして距離をとってた真桜ちゃん。

 結局、北郷隊の中でまともに蜀のみんなと会話して、あの三国統一の中でちゃんと笑ってたのは沙和だけだったの。

 でも、それは当たり前。

 だって、他の陣営の子たちにとって隊長は『天の遣い』で、『魏の将を誑し込んだ男』でしかなかったの。いくら否定したところで、広まった噂を消すことがどれだけ難しいかを沙和はよく知ってたから、笑って誤魔化すことしか出来なかったの。

 隊長の良い所も、残したものも、この子たちにはわかりっこないって諦めてたし、隊長のいない以上言い返すことは無意味なの。

 だって隊長が望んだのは争うことじゃないもん。

 みんなが笑う、沙和たちが幸せになる大陸を、夢見てくれてたんだもん。

 戦うことを恐れてた隊長が、自分がいなくなってでも欲しかったのは沙和たちの涙でも、怒ることでもなくて、笑顔なんだもん。

 だから沙和は笑ったの。

 いつか戻ってきてくれる隊長が褒めてくれるように、誰に対してでも笑顔を向けたの。

 

 

 隊長が居なくなってしばらくした時、凪ちゃんから沙和たちをお酒に誘ってきたの。

「沙和はどうして・・・ いや、私が間違ってるのも、隊長がこんな私を望まないことはわかってる。

 けど! 私にはどうしても納得出来ない!!

 華琳様が成し遂げ、春蘭様たちを追いかけ、桂花様に指揮の元、手に入れた平和。それは尊く、得難く、守らなければならないものだ。

 けれど、三国が手を取りあう未来を誰よりも見ることを望んでいたのは! この夢を私達と共に見てくれたのは隊長じゃないのか!?

 先日、警邏隊の者たちとある騒動を止めた時、その喧嘩の要因は何だったと思う?!

 『他国から来た者が何も知らずに北郷様の悪口を口にし、許せなかったから喧嘩になった』と聞いたとき、私は職務でありながら、どうすべきか迷ったんだ!

 いいや、それだけじゃない! 私はその乱闘に参加したいとすら思ってしまった!!

 私達は隊長と共にこの時を、この日を見たかったからじゃないのか?!

 ただ、隊長と一緒に生きて、幸せになりたかったからじゃないのか? そのための平和だったんじゃないのか!

 私たちの目的は! この先にあったものじゃ! なかったのか!!

 他の陣営なんかじゃない、隊長と一緒に居たかったからこそ私たちは頑張れたんじゃないのか・・・!」

 その悲しい叫びは、きっとあそこにいた人の多くが抱いた想いだったの。

 隊長が居ないのに、隊長が残したものは悲しいくらいたくさんあって、それはとても身近でいつも誰かを助けてくれる。

 それが今は悲しくて、でも隊長が居た証があることが嬉しくて、抱える思いにおかしくなりそうな気持ちが痛いほどわかっちゃう。

 それなのに、何も知らない人たちだけが、噂だけの隊長を悪く言って去っていく。

 辛くないわけない、悔しくないわけない、怒ることを我慢しろっていう方が酷なことなの。でも、隊長が居たら言うことは決まってるの。

『他が言うことなんか気にすんなって、俺のことはみんながわかってくれてればそれでいいんだよ。それに、これから俺のことをどんどん知ってもらえばいいんだからさ。

 だからそんなに怒るなって三人とも、可愛い顔が台無しだぞ?』

 でも隊長はいない。どんなにみんなが悲しんでも、ここに居てくれないの。

 だから沙和は泣き崩れた凪ちゃんのことを、真桜ちゃんと一緒に抱きしめることしか出来なかったの。

 

 

 ある時はベロベロに酔っぱらった真桜ちゃんが、沙和の部屋に突然やってきたの。

「沙和は凄いなぁ・・・ ウチには出来ひんよぉ。

 笑顔は出来る、名乗ってももえぇ、でもな・・・ 隊長が居らん。

 いないっちゅうことに考えられるんは、やっぱあそことの争いやん? 何度もぶつかって、隊長が苦しい思いしてたんもやっぱりあそことの戦いのときや。

 泣くんも、辛いってことすらも、ウチらには見せてくれへんかったけど、隊長が強がって無理してるんは、なーんも言われんともわかるに決まっとるやんけ。どんだけ見てたと思っとんねん・・・ あんだけ傍に居たんや、ウチらに隠し事なんて出来るわけないやん。それなのに、ウチらには心配かけんとあの笑顔なんやもん。

 あー! 隊長はずっこい! ずっこいよぉ! 惚れて、惚れて・・・ 隊長なしには生きるのがしんどくなるくらいウチらに恋させた癖に、今ここにおらんねんもんなぁ。

 なぁ、沙和ぁ。何でウチらは、憎んじゃあかんのやろ?

 何で隊長を悪く言う、なーんもしてへんで理想だけ語る奴らにこの怒りぶつけたらあかんのやろな? なんで隊長のことなんも知らへん、華琳様たちや、みーんなの悲しみの欠片もわからん奴らにウチらの宝もんの思い出すら、否定されなあかんのやろな?」

 沙和はこの時、ようやく真桜ちゃんが一番強がってたことを知ったの。

 話を聞いた時ですら冷静で居ようとして、周囲を笑わそうと動いてた真桜ちゃんがようやく言ってくれた本音がそこにはあったの。笑いながら泣いて、本当に辛くてどうしようもなくて、それでもお酒の力を借りなきゃ本音を言えない親友がそこには居たの。

「何でなのかは、沙和にもわかんないよ・・・」

 だって沙和だって、毎日思ってたの。

 みんなと楽しい筈のおしゃべりをしてる時、楽しい筈の時間がまるで何もないみたいで、本当に居てほしい人の姿が目の裏に焼き付いたままで。

「どうしてここに居るのが隊長じゃないだろうって、思わない時がないんだもん」

 それは隊長が居なくなった後の、沙和たちの思いだったの。

 

 

 

 反董卓連合の拠点までに移動中も、ずーっとそういうことを考えてると一つの結論に達したの。

「ねー、(らん)ちゃん」

 行軍中で他のみんなには聞こえないように、常に沙和たち三人の傍に居る司馬家の姉妹一人である藍陽ちゃんを呼ぶ。

「何でしょうかぁ? 沙和ちゃん」

 白い髪に青い目がとっても綺麗で、お洒落に興味があるみたいだったから沙和とお化粧の話ですっごく盛り上がってくれる子なの。

「すこーし、協力してほしいんだけどいーい?」

「あらあら? (隠密)の力でなくては困るようなことをなさるんですか?

 沙和ちゃんは悪戯っ子さんですね」

 沙和を軽く叱るみたいに笑ってくれる藍ちゃんは、言葉と違って全然怒ってなんかいなかったの。むしろ、沙和がしたいことを察してるみたいだったの。

「えへへ・・・ 連合の陣幕についてからね」

 だから、あんな風に隊長を言ってた劉備ちゃんたちのところに、もし隊長と同じような天の遣いがいたらどうなるかを沙和は一番気になってるの。

 それに・・・ 心配するなんて本当はおかしいのかもしれないけど、やっぱりあの時の沙和たちと同じような思いはしてほしくないの。どれだけ前のことが許せなくても、ここに居る劉備ちゃんたちは同じだけど別の人だもん。恨むのは少し違うと思うんだ。

「沙和ね、白の遣いを見てみたいの」

「あらあら、冬雲様がお怪我されたことへの復讐なら駄目ですよぉ?」

「ぶー、違うのー。

 凪ちゃんじゃないんだから、いつまでもそんなことで怒ってたら、隊長が気にしちゃうじゃーん。

 単純にどんな人か気になってるだけだし、華琳様たちとは違う視点から見た方がいいと思ったの。沙和はやっぱり農民出身だし、身分とか『高い』以外わっかんないもん。『劉』なんて『李』さん並にありふれた名前だし」

 それに日常的なことから見えてくる物って、すっごく大事だと思うの!

 身だしなみとか、周りの人との関係とか、それはその人のことを示す重要な物なの!!

「本音と建前の位置が逆ですよぉ? 沙和ちゃん。

 まぁ、私も興味がありますし、建前があるなら大丈夫でしょうけど、一応いろいろしておきましょうかぁ。(ろく)ちゃーん?」

 顎に指を当てて、少しだけ考える仕草をする藍ちゃん可愛いの!

 白陽ちゃんの妹ちゃんってみんなすっごく可愛くて、凄い子ばっかりなの。姉妹がいっぱいでいいなぁって少しだけ思っちゃうの。

「はい、藍(あい)姉さま。

 私は沙和様がいない間、沙和様に扮して部隊を回せばよろしいのですね?」

「えぇ、お化粧はお姉ちゃんに任せなさいなぁ。

 緑ちゃんを沙和ちゃんそっくりにしてあげる、うふふふ」

 藍ちゃんのこれもあって、緑ちゃんってば演技力が凄くなったの。だからいつかは、天和ちゃんたちみたいに舞台で演じてみたいって言ってたの。

 その夢はぜーったい、叶うの! だって、隊長と華琳様がいるんだもん。

 

 

 さぁ、連合の陣営に着いたの!

 藍ちゃんについて早速一つの陣幕を覗いたんだけど、そこに在ったのは衝撃的なものだったの。

 

「はぁ、ようやく縛り終った・・・」

 そう言って一息ついてるのは白い服こそ着てないけど、前の隊長にそっくりな青年なの。見れば見るほどそっくりで、おもわず目を疑っちゃったの。

 でもなんだか、隊長と同じ顔をした人が居るのってなんだか複雑な気分なの。

「はーなーせー! ほーどーけーー!」

 その子が太い縄で縛ってたのは、深い緑の髪の見たこともない女の人なの。なんだか春蘭様に近い雰囲気がしてきて、凪ちゃんと同じくらいかそれ以上の力がある予感がして怖いの。

 でも、縄が意味ないんじゃないかなーってくらい嫌な音をしてるし、結び方も普段縄を使ってない雑な縛り方なの。これじゃぁ、半刻持たないで縄が耐え切れなくなって、ちぎれちゃうと思うの。

「王平さん、どうして突然暴れ出したりなんか・・・」

「うっさい! 君にはわからないの?!

 この過去の深さを感じさせる濃厚な香り、それでいて自己の研鑽を忘れることのない強い意志を窺わせる輝くような気配!

 超、私好みの年配の男性がいるんだよぉーーー!!

 あっちに絶対いる! 私の勘が言ってる!!

 私に今すぐ駆けていけという天の啓示に決まってるんだよぉ!

 私から希少ないい男を見る機会を奪う気かー!」

 もしかして隊長のことなの?!

 良い男なのは否定しないけど、流石に他陣営からこう言う人が来たらまずいと思うの・・・ 下手すれば始まる前から、連合が崩れちゃうの。

「そんなのがわかってたまるか!

 ていうか、あっちってさっき到着したばっかりの曹操さんの陣幕しかないですよ?!

 曹操さんのところに確かに落ち着いた雰囲気を持った曹仁さんがいますけど、王平さん好みの年齢じゃないですし、絶対気のせいでしょう!

 それに今から力合わせて戦おうとしてるのに、問題起こすわけにはいきませんから!」

 雛里ちゃんたちから聞いてたよりもずっとまともそうな発言で、沙和ちょっとびっくりしてるの。

「曹仁! その名前に私の勘が『それだ!』って告げてるーーー!

 何が何でも、連合中に会ってやるぅーーー!!」

「あらん、ご主人様。

 お疲れ様、王平ちゃんのせいで疲れた体はあたしが優しく癒してあ・げ・る」

「嫌だあぁぁぁぁーーーー!!!」

 そう言って出てきたのは・・・ 筋肉むきむきの化け物なの?!

 しかも、白の遣いくんがそれに連れていかれちゃったの?!

 まさか、雛里ちゃんが言ってた『男の秘め事』ってこれのことなの? つまりその、白の遣いくんは・・・・

「だ、男色家なの・・・?」

 隊長と同じ顔をした白の遣いくんが連れていかれるその姿は、なんだかいらない不安を沙和に募らせるのー?!

 

 ・・・・なんていうか、隊長は本当に沙和たちのところに来てよかったの。

「藍ちゃん・・・」

「はぁい?」

「沙和、すっごく疲れたから、隊長に癒してきてもらうの。

 隊長と愛を確かめてくるのー!!」

 そう、隊長はそうじゃないことを確認しないと、沙和の心の安定が保てないの。

 隊長は違うもん。男色家なんかじゃないもん! 仮にそうだとしても、絶対にそんな間違った道には沙和たちが行かせないのー!!

 隊長、今行くのー!


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