なんだかんだで彼女ら(彼ら)は再び戦車に乗る   作:眼鏡とタバコ

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お久しぶりです!
今回は新キャラ4人出ます。艦娘達の敵である奴らが!
ではどうぞ!


勝つ為に手段なんか選んでられるか 前編

 

 

 

 

『海元中学校フラッグ車走行不能!勝者、廃空中学校!』

 

俺は目の前の状況に驚かざるをえなかった。俺と黒川先輩、弥生、エリカは今、海元中学校と廃空中学校の試合を見に来ていた。

昨年、海元中学校は準々決勝まで勝ち進み、過去の資料では全国大会に出場した学校である。対して廃空中学校は毎年1、2回戦止まりだった。勝て要素はどこにもないはず。

 

「ありえないなんて事はありえない、か」

 

どこかの強欲な男も言っていたな。

俺は携帯を取り出し、吹雪に電話をかける。

 

『もしもし』

「アンタ試合見てた?」

『テレビで見たよ。想定外の事態になった〜』

「えぇ、まさか海元中学校が負けるなんて思わなかったわ」

『だねー。それじゃ予定通り、私は情報収集を始めるねー』

 

俺は携帯をしまい、その場に立った。

 

「皆さん、今日は部活もありませんので、帰宅していただいてかまいません。お疲れ様でした」

「アンタはどうすんのよ」

「私はこのあと用事があるから、それを済ませてから帰るわ」

「そう、わかったわ」

「笹原ちゃん、お疲れ」

「私は紅音ちゃんに付いて行くー」

「弥生は早く帰りなさい。それとエリカと弥生は今日もテスト勉強するからね」

「わかったわ」

「むぅ〜〜」

「不貞腐れてもダメよ」

 

困ったな、コイツは何が何でも付いてくるつもりだ。

 

「勉強が終わったら一緒に遊んであげるから」

「わかった!」

 

そう言って弥生は、エリカと黒川先輩に付いて行き帰った。

3人が見えなくなって、俺は大型スクリーンを見て呟いた。

 

「まさか、廃空中学校にアイツらがいるとはね」

 

目が赤く、白髪のツインテールの女の子がそこには映っていた。

それだけではない。その周りに集まっていた女の子達も目が赤く白髪だった。

 

「さて、行きますか」

 

そして俺は、会場を後にした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜常幻東中学校、校長室前〜〜〜〜

 

 

 

 

 

俺は扉をノックする。

「どうぞ〜」

「失礼します」

 

俺は中に入った。

中に入ると八雲 紫、そして西行寺 幽々子がいた。

 

「なんで西行寺校長がここに?」

「気にしなくていいわ〜。それより、紫に用があってきたんじゃないの?」

「・・・まぁいいです。八雲校長、お聞きしたいことがあります」

「何かしら?」

「この世界には、私と吹雪以外に転生者はいるんですか?」

「いないわよ。それと私と幽々子しかいないから敬語は使わなくていいわよ」

「そう、もう一つ聞きたい。この学校以外にも弥生や白露型四姉妹みたいな人間はいるの?」

「もちろんいるわよ」

 

やはりいるのか。いや、俺と吹雪が望んだことだからいてもおかしくないか。

 

「ありがとう、それと不足しているパーツを書類にまとめたから、次の試合までに補充をお願いするわ。それとこっちの方はなるべく早く取り寄せて」

 

俺はバックの中から紙を2枚取り出し、紫に渡した。

 

「確かに受け取ったわ」

「では、私はこれで」

「次の試合には勝てそう?」

「どうだろ、正直わからないわ」

「そう、頑張ってね」

 

ひとごとみたいに言いやがって、まぁひとごとなんだが。

 

「失礼しました」

 

そう言って俺は校長室を後にした。

さて、今から弥生達と勉強会をして編成を変えないとな。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜翌日の部活の時間〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「それでは今から会議を始めます」

 

場所は空き教室、部員全員を集めた俺は部員の前に立ち、作戦会議を始めた。

 

「先ずは、作業をやめてここに集まっていただき、ありがとうございます。昨日行われた海元中学校と廃空中学校の試合、皆さんも知っていると思いますが、廃空中学校が勝ち進みました。そこで吹雪達が集めてくれた情報を元に作戦を立てて行きたいと思います。吹雪、射命丸さん、姫海棠さん、お願い」

「「「はーーい」」」

 

そう言って、3人が前に出て来る。

 

「先ず先に私から、今回の情報収集で得られた情報なんですが、紅音ちゃん、この資料を見て」

 

そう言われて、俺は吹雪から資料を受け取った。

 

「・・:・・・やっぱりね」

 

用紙は8枚、そこに書いてあったのは廃空中学校の部員の個人資料だった。

 

1年 深海 礼 (ふかみ れい) ※艦これの「戦艦レ級」

操縦手 兼 砲手

 

1年 南 遥 (みなみ はるか) ※艦これの「南方棲戦鬼」

砲手 兼 車長 兼 通信手

 

1年 防野 空 (ぼうの そら) ※艦これの「防空棲姫」

砲手 兼 装塡手 兼 操縦手

 

1年 空木 真夏 (うつろぎ まな) ※艦これの「空母棲姫」

通信手 兼 車長 兼 装填手

 

1人2枚の資料で、それぞれのポジションや練度等が書いてあった。

おいおいちょっと待てよ。よりにもよって深海棲艦がここで4人も出てくんのかよ。昨日は2人しかスクリーンに映っていなかったから2人だけだと思ったのに。

しかも技量はそこそこ高い、てかウチの部員といい勝負ができるぞ。

 

「今紅音ちゃんに渡したのは、廃空中学校の要注意人物だね」

「要注意人物って、ちょっとこれはマズイわね」

「口で説明するよりも、実際に見てもらった方が早いかな。文ちゃん、はたてちゃん、準備をお願い」

「わっかりましたー」「オッケー」

 

そう言ってテキパキとプロジェクターとスクリーンを準備して試合動画スタート。

1、2、3回戦の動画を見終わったところで休憩を挟み、自販機にコーヒーを買いに行った。

はぁ〜。これウチの部員達よりか技量は上じゃん。何がいい勝負だよ、全然じゃん。

 

「待って紅音ちゃん、私も行く」

 

そう言って吹雪も付いて来た。

 

「まさか深海棲艦もいるとは思ってなかったわ」

「だねー。今回はちょっと苦戦しそうだねー」

「そうね。吹雪、何が飲みたい?」

「いいの!?じゃ私はマウン◯ンデ◯ー!」

 

チャリン、ピッ、ガコンッ。

 

「はい」

「ありがとう」

 

チャリン、ピッ、ガコンッ。

 

「さっ、戻るわよ」

 

そして俺達は教室に戻り、会議を再開した。

 

「それじゃ会議を再開しますが、紅音ちゃん、試合の動画を見て何か感じた?」

「そうね。先ず第1に、この要注意人物達は間違いなく私と吹雪、エリカや弥生を除いた1年生と同じかそれ以上ね」

「笹原ちゃんと雪宮ちゃんはわかるけど、何で逸見ちゃんと轟ちゃんも除いたの?」

 

黒川先輩が質問してきた。まぁ普通そう思うよな。

 

「私と吹雪以外の1年生はほぼ初心者で、中学校に入学して戦車道を始めたのがほとんどです。そんな中、一番成長したのはエリカと弥生の2人だからです。まぁ、2人は私と吹雪が集中的に教えたってのもありますが」

「そっか。でも、逸見ちゃんと轟ちゃんの2人でその要注意人物達に勝てるの?」

「2人だけでは無理ですが、勝てます。絶対に」

 

俺はそう言い切ってから2人を見て話しを続ける。

 

「私と吹雪を除いてなら、2人は間違いなく1年生の中でトップです。エリカは車長としては、きちんとした状況判断をして的確な指示を出せますし、弥生は砲手としてならエリカより上で正確な射撃が出来ます。2人なら問題ありません」

「自慢の教え子だもんね〜。それで笹原ちゃん、作戦はあるの?」

「もちろんあります。ですが先ず、編成を発表します」

 

俺はそう言って教壇に立ち、黒板に編成を書いていく。

 

1小隊長 兼 IS-2車長 笹原 紅音

砲手 相澤 ナズナ

操縦手 神宮寺 華蓮

装填手 四季 映姫

 

クルセイダー車長 兼 装填手 雪宮 吹雪

砲手 兼 通信手 アリサ・イリーニチナ・アミエーラ

操縦手 宇佐見 蓮子

 

1小隊 兼 ティーガーⅡ車長 佐々木 白露

砲手 佐々木 時雨

操縦手 佐々木 夕立

装填手 佐々木 村雨

通信手 佐々木 春雨

 

1小隊 兼 ティーガーⅡ車長 川越 朝潮

砲手 川越 荒潮

操縦手 川越 満潮

装填手 川越 霞

通信手 五十鈴 香織

 

1小隊 兼 ヤークトティーガー車長 瀬川 綾波

砲手 瀬川 敷波

操縦手 三澤 千尋

装填手 瀬川 曙

装填手 瀬川 漣

通信手 遊佐 愛莉

 

1小隊 兼 ブラックプリンス車長 博麗 霊夢

砲手 霧雨 魔理沙

操縦手 東風谷 早苗

装填手 魂魄 妖夢

通信手 十六夜 咲夜

 

1小隊 兼 III号突撃砲車長 2年生

砲手 2年生

操縦手 2年生

装填手 2年生

 

1小隊 兼 III号突撃砲車長 2年生

砲手 2年生

操縦手 2年生

装填手 2年生

 

2小隊長 兼 ティーガーⅠ車長 冴塚 明日香

砲手 黒川 夏海

操縦手 2年生

装填手 2年生

通信手 2年生

 

2小隊 兼 ティーガーⅠ車長 逸見 エリカ

砲手 轟 弥生

操縦手 寺本 沙緒里

装填手 和田 真奈美

通信手 柚園 麻希奈

 

2小隊 兼 チャーフィー車長 射命丸 文

砲手 乃村 陽炎

操縦手 乃村 黒潮

装填手 乃村 不知火

通信手 湯沢 奏

 

2小隊 兼 チャーフィー車長 姫海棠 はたて

砲手 三浦 優美子

操縦手 二階堂 エリナ

装填手 由比ヶ浜 結衣

通信手 宗政 睦月

 

(※2年生と記載しているところは、主人公が2年生の名前を覚えていないのではなく、UP主が思いつかなかっただけです。申し訳ありません!)

 

「この編成でいきます。作戦については今から説明しますが、その前に何か質問等はありますか?」

「紅音ちゃん。私達の車両だけどこの小隊にも属してないよ」

「いい質問ね吹雪、今回の試合はアンタの冷静な判断が頼りよ」

「えっ?それってどう・・・い・・うこ・・と・・・・あっ!・・あぁぁぁぁぁ!!」

 

勢いよく立ち上がる吹雪、どうやら理解したらしい。

 

「ようやく気づいたようね」

「ちょ、ちょっと待って!これ私がやるの!?」

「私がやってもいいけど。アンタ、私の性格知ってるでしょ?だからアンタが向いてると判断したのよ」

「それはそうだけど・・・・」

「それにこの場合、アンタがフラッグ車をするより、私がフラッグ車をした方が作戦は上手くいく。適材適所ってやつよ」

「う〜〜ん、でもなぁ〜〜」

「それにアンタ、さっきジュース奢ったでしょ」

「ジュースの対価大き過ぎない!?」

「何も考えずに奢られたアンタが悪いわよ」

 

吹雪は悔しそうにこちらを睨んでくる。

いや、そんなに可愛く睨まれても変えないぞ?

 

「まっ、アンタに任せた方が私も安心できるわ。てかアンタ以外頼める人いないし」

「それをもっとツンデレキャラ風に言ってくれたら満点だけどなぁ〜〜」

「アンタ、私にどんなキャラ期待してんのよ」

「ハイハイわかったよ。それじゃ2小隊の作戦はこっちで決めていいんだよね?」

「構わないわ。吹雪以外に質問がある人」

「私も・・・・いいかしら」

 

そう言ったのはエリカだった。エリカだけではない、弥生も何か言いたそうだ。

 

「何で私を小隊長から外したの」

「私も、何で紅音ちゃんの率いる小隊から外してエリカと同じ戦車なの?エリカと同じ戦車なのが嫌ってわけじゃないけど、理由を教えて」

「それを含めて今から説明するけど、それじゃダメ?」

「・・・・わかったわ」

「私は今知りたい!」

「弥生・・・今回の作戦では仕方ないことなの」

「なんで!なんでこの編成になったの!!」

「・・弥生・・・・」

「小隊から外されて車長からも外されて、私は納得がいかない!!」

「車長としての技量は貴女よりエリカが上よ、でも砲手としての技量は貴女が上、貴女達2人を見てきた私と吹雪だからわかる、だからこの編成になったの」

「ならエリカを小隊長にして、私を車長にして!」

「・・・・それはどういう意味かしら」

「冴塚先輩を1小隊の編成にしてエリカを2小隊、そして私を車長に「弥生!」ッ!」

「貴女、何か勘違いしているみたいね」

 

俺は少し低いトーンで話す。

いつかこういったヤツが出てくるとはわかっていた。天狗になったヤツが。

ならどうするか、答えは簡単だ。

 

「貴女、今自分が何を発言したかわかってる?」

「何って」

「確かに貴女とエリカは、私と吹雪を除けば1年生の中でトップよ、それは一番貴女達2人に教えてきた私と吹雪だからわかるわ。でもね、それは1年生の中だけであって冴塚先輩や黒川先輩達と比べたらまだまだよ」

「そんなのやってみないと」

「わかるわ、そんなの」

「そんなの!」

「冴塚先輩」

「な、何?」

「行進間射撃の自分の成績はどのくらいですか?先輩の口から言って下さい」

「パーセントで言うと、きゅ、93%」

「弥生、貴女は?」

「・・・88%」

「そうね、でもそれは晴天で無風の時の点数よね。貴女は悪天候の時、酷ければ80未満だったわね。それに比べて冴塚先輩は行進間射撃、夜間射撃、悪天候の中での射撃、どんな状況下でも85より下に落ちたことはないわよ」

「そ、それは」

「それに、貴女は砲手以外で冴塚先輩に何か一つでも勝ってた?」

「・・・・いいえ」

「思い上がらないで、貴女がどんなに砲手としてのセンスがあっても、上には上がいるのよ」

 

教室の中が静寂に包まれる。

こういったヤツが今後出ないとは限らない。ならそういったヤツが出ないようにするには誰かを見せ締めにするしかない。教え子を見せ締めにするのは心苦しいが、これは俺の今までの行動が招いた結果だ。

 

「エリカ、まさかとは思うけど貴女もそうだったりしないわよね?正直に答えなさい」

「・・・・・・・・・・・」

「沈黙は肯定とみなすわよ」

「・・・・・ごめんなさい」

「素直でよろしい。皆さんも今後この2人のようにならないよう常に上を目指して下さい。別にじゃれ合いやおふざけをするなとは言いません。ですがもし、2人のように天狗になっている人がいれば、そのときは容赦はしません。いいですか?」

「「「「「はい!」」」」」

「では作戦内容を伝えます。先ずはーーーー」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜17時30分〜〜〜〜

 

 

 

 

 

部員全員が帰ったあと、俺は1人で空き教室に居た。

あぁ〜〜疲れた。2人を見せ締めにしたあと作戦会議したが、部員全員に笑顔がなかった。

はっきり言って気まずい。

試合前にあんなお通夜ムードになられては困る。どうしたものか。

 

「笹原ちゃん」

 

俺は教室の方に顔を向けた。そこには冴塚先輩、黒川先輩、相澤先輩、神宮寺先輩の4人が居た。

 

「どうしたんですか、冴塚先輩」

「大丈夫?」

「何がです?」

「今日の作戦会議、逸見ちゃんと轟ちゃんのことで疲れてるんじゃないかなと思って」

「大丈夫です。問題ありません」

「私にはそうは見えないよ」

「神宮寺先輩・・・」

「確かに笹原さんはすごい。1年生で隊長になって、私達2年生よりも実力は上、隊長として相応しい人だよ」

 

神宮寺先輩はここで会話をやめ、他の選手達を見て再度俺を見た。

 

「でもね、なにもかも自分1人で抱え込まなくてもいいんだよ」

「そうよ、隊長だからって1人で抱え込まなくていいのよ。前にも言ったけど、もっと先輩達や周りの人を頼ってね」

「そうだぞ笹原、それとも先輩達がそんなに頼りないか?」

「そうでは・・ありません」

「だったらもっと私達を頼って」

 

冴塚先輩がそう言ったあと、俺を抱き寄せた。

 

「練習メニューに書類の整理、作戦立案なんかも全部1人でやって、学校の成績もトップを維持して、そんなこと繰り返してるといつか身体を壊すよ。そうなる前に私達に頼って。1人で抱え込まないで」

「・・・・・ありがとうございます」

「うん!それとね、さっき連盟から通達が来てね、試合の場所が決まったよ」

「ッ!どこですか!」

 

俺は冴塚先輩から書類をもらい、確認する。

 

「・・・・・これは、場所取りが重要になるステージですね」

「でも、私達が一番早く待ち伏せ出来るステージとスタート位置だね」

「そうですね。作戦は変更しません、部員全員には私から一斉メールします」

「もう!さっき言ったばかりなのに、私からメールしておく」

「でも」

「いいの、もっと先輩を頼って」

「わ、わかりました」

「さっ、帰るわよ。笹原ちゃんも帰るわよ」

「わかりました、わかりましたから黒川先輩、後ろから抱きつかないでください、歩きにくいです」

 

そう言って俺達は教室をあとにした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜試合当日〜〜〜〜

 

 

 

 

 

試合当日、この日までエリカと弥生とは一言も話していない。

大丈夫かアイツら?エリカは平然としているが、弥生はあの日からずっと落ち込んだ様子だ。

 

「笹原ちゃん」

 

隣に立っていた冴塚先輩が周りに聞こえないように小さな声で話しかけてきた。

 

「どうしましたか?」

「轟ちゃん大丈夫?逸見ちゃんは大丈夫だと思うけど。轟ちゃん、あれからずっと落ち込んだままだよ」

「私もあれから一言も話していないのでなんとも言えません。今回の作戦は冴塚先輩達2小隊が要なので、何かあればフォローをお願いします」

「わかった」

『放送します。各校の選手は整列をお願いします。繰り返します。各校の選手は整列をお願いします』

「さて、準備しますか。っとその前に」

 

俺はIS-2のフェンダーの上に立ち部員全員を見渡す。

 

「全員注目して下さい!」

 

部員全員が各々の作業の手を止めてこちらを注目した。

 

「いよいよ準決勝です!これに勝てば全国大会に出場出来ます!ですがお分りの通り、戦車の数、個々の技量、どれをとっても私達が不利です!」

 

俺はここで、一旦区切り全員の顔を見た。

不安な顔をしたやつ、悔しそうな顔をしたやつ、少し諦めた顔をしたやつ、全員様々顔をしていた。

 

「皆さん、色々思うところがあるでしょう。ですが、私はこう思っています。だからなんだ!部員の技量?戦車の数?下らない!そんなこと最初からわかっていることじゃないですか!いいですか!我々は弱者です!どれをとっても勝てる要素のない弱者です!」

 

全員の目の色がだんだんと変わってきた。なんか視界の端で1人笑っているが気にしない。

 

「人間が今までどうやってライオンや熊、その他の肉食動物達から生き残ってこれました!それは我々人間が知性にあったからです!だから我々人間は強者である肉食動物にも勝って生き残れました!」

 

こら視界の端のヤツ、いつまで笑っている。

 

「もう一度言います!我々は弱者です!なら弱者が強者を屠るためにはどうしたらいいか、ぐだぐだ下らないことで悩んでいる暇があるならどうやったら勝てるか、少しは頭を使え!」

 

あっヤベ、男口調になっちまった。

 

「見せてやりましょう!自分達が強者だと思って余裕ぶってる連中に目にものを!!」

「「「「「おーーー!!!」」」」」

「そのいきです!参加者は整列準備!」

 

俺はフェンダーから飛び降り、整列準備した。

そして視界の端にいたヤツが笑顔で走ってきた。

やめろその笑顔、腹立たしい。

 

「ねぇねぇ今どんな気持ち?ねぇ今どんな気持ち?」

「その笑顔やめてくれない?すごく腹立つから」

「それでなんのパクリ?ノ◯ラ?ノ◯ラのパクリ?ノ◯ラのセリフを自分なりにアレンジしたの?」

「コイツムカつく。バカやってないで行くわよ」

 

俺は無視して移動したが、その隣を並行してついてくる。

 

「何かいいことあった?」

「なんでそう思ったの?」

「だって、今まで率先してあんなことしたことなかったよね」

「いいことなんて何一つないわよ。特にエリカと弥生がね」

「まぁそこは冴塚先輩に任せるしかないよ」

「それもそうね。・・・・・この試合、バックであるアンタにかかってるんだからね」

「任せて、絶対に勝とうね」

 

そう言って俺達は移動して整列した。

目の前には黒髪ロングでちょっと身長の低い人と、南方棲戦鬼こと南 遥がいる。

 

「はじめまして、廃空中学校戦車道隊長、3年の犬井 咲だ」

「同じく副隊長の1年、南 遥です。よろしくね」

「常幻東中学校戦車道隊長、1年の笹原 紅音です」

「同じく副隊長、2年の冴塚 明日香です」

「貴女が噂の隊長か〜〜。同じ1年生とは思えないなぁ〜」

「そうかしら?まぁ、私としてはどうでもいいけど」

「冷たいなぁ〜〜。もしかして私嫌われてる?」

「私はいつもこうよ。不快な思いをさせたならごめんなさいね」

「ううん気にしないで。同じ1年生として興味あったからどんな人かなぁって思ってね。ねっ笹原さん、お願いがあるんだけど」

「何かしら?」

「この試合、負けてくれないかな」

「・・・・はぁ?」

 

何を言っているんだコイツ?意味がわからない。

 

「どういう意味かしら?」

「そのままの意味だよ。わざと負けてくれないかな」

「・・・・・犬井先輩、彼女はいつもこうなんですか?」

「すまない、彼女はいつもこうだ。気分を害したなら謝罪する」

「えぇ、実に不愉快。もちろん返答はNOです」

「あぁ、もちろんそれで構わない。お互いにいい試合をしよう」

「そうですね。ですがその前に、彼女に一言だけ言いたいことがあります」

「私に?何かな」

「あまり図に乗るな」

 

犬井先輩と南はちょっと驚いた顔をしていた。ちょっと怠そうな態度から急に態度が変わったんだ、わからなくもない。

 

「アンタみたいな人に会ったのは久しぶりだわ。今のうちに負けたときの言い訳を考えておきなさい」

「言うねぇ〜。勝てると思ってるの?」

「確かに総合的技量や戦車の数、その他色々なことを考慮しても勝てる要素はないわ。でもね、だから何?そんなこと最初から分かりきっていることよ。そんなことで勝敗が決まると思っているならそれで構わないわ、所詮貴女はそこまでの人間よ。見せてあげるわ、弱者の戦い方を」

「あははっ。それじゃ楽しみにしてるね」

「それではこれより!廃空中学校 対 常幻東中学校の試合を始めます!両校!礼!」

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

 

俺は、俺と冴塚先輩を待つ部員達のところへ向かった。

負けられない。ここまで上から目線でものを言われたのは久しぶりだ。前世の俺なら殴り掛かっていたが、ここは我慢だ。

このお返しは、しっかりと試合で返してやる。

 

「全員!乗車!」

 

俺は自分の戦車に乗り、スタート地点に向かった。

 

「全員!試合が始まったらそれぞれのポイントに向かい、到着次第作業開始して下さい!装填手、砲手はスタート地点に着くまでの間に、車内で作業服に着替えておいて下さい!」

『『『『『了解!』』』』』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜南 遥サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

私は今、複雑な気持ちだ。

笹原さんには申し訳ないことをしたなぁ〜。彼女の最大の武器は冷静な判断と飛び抜けた発想、万年県予選敗退のチームをここまで引っ張って来たのだから相当な手練れだ。そんなのを相手にするんだ、まともな戦い方で勝てるはずがない。各試合のデータを見てわかった、とても同じ中学生とは思えなかった。

だから少しでも勝利をあげる為に挑発した。少しでも怒り狂ってくれることを期待して。この手の人は冷静な判断が出来なくなったら最後、あとはそこから自滅していくだけ。

私はともかく、犬井先輩や他の3年生の先輩方は今年が中学最後の試合。なんとしても全国大会に連れて行ってやりたい。

でもなぁ〜、笹原さんかわいかったなぁ〜。小さいしぶっきらぼうだったし、いじり甲斐ありそうだし、私の見立てに間違いなければあの子はツンデレタイプ。私としては仲良くしたかったなぁ〜。

 

『両校、スタート地点に到着しましたので試合を始めます!試合開始!』

 

まっいっか。今は試合に集中しよ。

 

『それでは打ち合わせ通り、私は後方に下がり指示を出す。南は現場指揮を頼む』

「了解!犬井先輩、何があっても前衛に出て来てはダメですからね〜」

『わ、わかっている!』

 

大丈夫かな〜。

犬井先輩ってちょっとおバカなところあるし、どちらかと言えばガンガン行こうぜ!って感じだし。

でも、そんなことろがちょっとカッコイイんだけどね。

 

「それじゃみんな行くよ〜。パンツァー、フォー!」

 

私の合図で全車が前進する。

さて、笹原さんは今回どんな戦い方を見せてくれるのかな〜。彼女の戦い方いつも驚かされている。試合中ほとんど止まらず、ずっと行進間射撃していた時もあったし、短期決戦に持ち込んで一気に試合を終わらせた時もあった、今日はどんなものを見せてくれるのかなぁ〜。

そんなことを考えながらしばらく前進した時だった。

 

 

 

ドーーーン!

 

 

 

突然砲撃音が響いた。

 

「全車周囲を警戒!」

 

音からしてかなり離れている。すぐに接触することはないはず。

 

『南、そちらの状況はどうだ』

「こちら南、現在周囲を警戒していますけど、発見出来ません」

『わかった、そのまま周囲を警戒しろ』

「了解」

 

 

 

ドーーーン!

ドーーーン!

ドーーーン!

ドーーーン!

 

 

 

いくつもの砲撃音が響く。

一体何を撃っているの?試合中に味方戦車を撃つようなことはありえないし、暴発?それもありえない。

そして砲撃音がやんだ。

 

『敵戦車は見つけたか?』

「いえ、やはり敵戦車はいません」

『わかった、引き続き周囲を警戒しつつ前進、敵戦車を発見次第攻撃しろ』

「了解!全車、周囲を警戒しつつ前進!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜1時間後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

おかしい、あの砲撃音からすでに1時間が経過した。あれから何度も止まっては周囲を見渡して、止まっては周囲を見渡してを繰り返している。だがそれでも発見には至っていない。

 

「犬井先輩、なんだかおかしくありませんか」

『あぁ、ここまで静かな試合は初めてだ』

「一体どこにーーー」

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

突然何もないところから攻撃を受けた。

 

「全車、状況報告!」

『こちら3号車!すみません、撃破されました!』

『こちら7号車!同じく撃破!』

『8号車も同じく!』

『12号車もやられました!』

『4、6号車、履帯破損!』

「了解!動ける戦車は私にーーー」

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

『5号車撃破されました!』

『9号車もやられました!』

『11号車も同じく!』

「動ける戦車は退避!」

 

私は慌てて退避命令を出す。

 

「犬井先輩、こちら南!敵戦車と接触!すみません、半数以上やられました」

『なっ!今すぐそこから離脱しろ!』

「今退避命令を出しました」

『よし、ではそちらの状況を教えてくれ』

「はい、現在3、5、7、8、9、11、12号車が撃破、4、6号車が履帯破損の状況。残りは後方へ後退、追撃はありません」

『半数以上やられたか、厳しい状況になってきたな』

「それより、何故敵は追撃して来ないのでしょう。私達は半数以上もやられてパニック状態でした。倒すには絶好のチャンスのはずです」

『分からん、とにかく今は近くの見つかりにくい森の中に隠れてくれ。作戦を立て直す』

「了解」

 

私は指示された通り後退しながら周囲を警戒しつつ、隠れやすい森を探した。

しかし私は腑に落ちなかった。

どうして?絶好のチャンスのはずなのに、どうして追撃がないの?

分からない。

どうして。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜遡ること1時間前〜〜〜〜

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「全車、ポイントに到着しましたか?」

『こちら白露、ポイントに到着』

『こちら朝潮、同じく』

『こちら霊夢、同じく到着』

『綾波も到着しました』

『III突2両も到着したよー』

 

俺達は今森の中にいる。

ただ森の中にいるのではない。作業服に着替え、作業靴に履き替え、側から見たら整備士の格好をしている。戦車に至っては砲身に砲塔、車体にもゴムを張りめぐらせている。

何故かって?

それは。

 

「それではディーガーⅡ2両とブラックプリンスは地面に向かって榴弾を撃って下さい!相澤先輩、お願いします」

「はいよー」

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

IS-2の砲撃で、地面に大きな穴が出来た。ちょっと大き過ぎたかな。戦車が入るには充分過ぎる大きさだ。

 

 

 

ドォォォーーーン!!

ドォォォーーーン!!

ドォォォーーーン!!

ドォォォーーーン!!

 

 

 

IS-2の砲撃音を合図に、他の戦車も地面に榴弾を撃っていった。

 

『ねぇ。この穴、ちょっと大き過ぎるんじゃないかしら?』

「大丈夫よ、問題ないわ。全車、エンジンを切って作業開始!装填手と操縦手と通信手は鉈を持って木に登り、枝をドンドン切り落としていって下さい!ただし切り落とし過ぎに注意して下さい!切り落とし過ぎると逆に不自然に見えて位置がバレます!5〜6本くらい切り落としたら次の木に移って下さい!砲手と車長はその枝を戦車に付けていって下さい!戦車だけでなく、射線方向の穴の縁の地面にも枝を刺して下さい!」

『『『了解!』』』

「III突2両とヤークトディーガーは試合前に渡した偽装ネットを戦車全体に覆い被せて、その辺の落ち葉を上から撒いて下さい!」

『『『了解!』』』

「さてと、四季さん、神宮寺先輩、お願いします!」

「わかった」

「わかりました」

 

四季と神宮寺先輩は木に登ってドンドンと枝を切り落としていく。

 

「しかしこうして見ると小さい頃を思い出すなー」

「小さい頃って、ついこの前まで私は小学生で、相澤先輩も中学生になってまだ2年経ってないじゃないですか」

「細かいことは気にするなってー」

「でもそうですね、小さい頃はよく木に登って虫を捕まえてましたね」

「おっ、意外だなー。笹原にもそんな時期があったのかー。てっきりそんなのに興味ないと思ってた」

「失礼ですね。私をなんだと思っているんですか」

「重度の面倒くさがり」

「ホント失礼ですね」

「ハイハイ、そんな顔しても可愛いだけだぞー」

 

まさか相澤先輩に言われるとは思っていなかった。

面倒くさがりは認めよう。だがな、面倒くさがりは面倒くさがりでも重度の面倒くさがりではない。重度の面倒くさがりと言うのはこの人のことを言うのだ。そもそも重度の面倒くさがりならこんな作戦を立てたりしない。だから俺は重度の面倒くさがりではない。面倒くさがりではあるが。

さて、俺は何回面倒くさがりという単語を使っただろう。暇な人、数えといてー。

 

「ナズナー。サボってないで手伝ってー」

「笹原さん、会話はその辺にして手伝って下さい」

 

木に登っていり2人からお叱りを受けてしまい、俺と相澤先輩は慌てて作業に入る。

 

『こちら綾波、隊長聞こえますか』

 

俺は車内に戻り無線を取る。

 

「こちら笹原、作業終わった?」

『はい、Ⅲ突2両も終わりました。これからどうしたらいいですか?』

「作業終わったら他の戦車の支援にまわって、先輩達にも伝えておいて」

『了解しました』

 

こうして作業は着々と進んでいき、偽装が完了した戦車は榴弾で作った穴の中に入った。

 

『ねぇ、やっぱりこの穴大き過ぎないかしら?』

「そうね、次はもっと別の方法を考えるわ」

『そうですか?私達の方はそこまで穴は大きくありませんが』

『朝潮、それは多分隊長と霊夢のところの地面が柔らかかっただけだと思うよ。私と朝潮のところは結構地面硬かったし』

『そのなのですか?』

「選定ミスねこれ。私のところは車体がすっぽり入っているけど射撃に支障はないわ。ただ穴がやっぱり大きいわね」

『私のところは車体どころか、砲身の付け根ギリギリの深さになったわ。おかげで負角が取れないわ』

「それ大丈夫なの?」

『大丈夫よ、射撃に支障はないわ。これでも結構穴は埋めた方だし』

「そんなに?私達もスコップ使って穴埋めしたけどそこまで酷くなかったわ」

『魔理沙が調子に乗って同じ穴に2発撃っちゃったのよ。妖夢は無意識に次弾装填しちゃってたし』

『いやーー、ついやっちゃったZE☆』

「・・・・・霧雨さん」

『なんだ?』

「この試合で1発でも外したら砲手から整備班に移動してもらいます」

『お、おいおい、冗談だろ?』

「それとも今この場で白旗をあげますか?」

『ちょっと待って!何も活躍しないまま退場は嫌よ!』

『そうです!確かに装填してしまった妖夢にも責任はあるけど、お叱りを受けるのは魔理沙だけにしてほしい!』

『私も作業服に着替えてスコップ持って穴埋めして、無線機をちょっと触っただけで終わるのは嫌よ』

『私も何も活躍せず戦車をただ運転しただけで終わるのは嫌です』

「らしいわよ霧雨さん、それじゃ頑張ってね」

『砲手から降ろされるのは嫌だ!絶対に全弾命中させる!』

 

そのやる気を普段の授業でも出してほしいものだ。いつも居眠りばかりして、先生から怒られる度に「こらーキノコ娘、起きんか。笹原ー、お前のところの部員はどうなってるー」と言われる俺の身になってくれ。

 

『おっ、あんなところにキノコがあ『こちら吹雪!紅音ちゃん、聞こえる!』』

「こちら笹原、どうしたの?」

『はたてちゃんから報告、紅音ちゃん達のところに敵戦車接近中。数は14両。あと10分でキルゾーンに到着』

「了解。霧雨さん、悪いけどキノコ狩りはまた今度にしてちょうだい」

『あと10分あればいけるZE☆』

「・・・・・言い残すことそれだけ?」

『よし!敵戦車、どんと来やがれ!』

「最初からそうしていればいいのに、それしても吹雪」

『何?』

「予想通りの展開になったわね」

『でしょ。私達の情報収集能力を甘く見ないでね』

「敵フラック車は見つかった?」

『まだみたい。もう少し時間がかかると思う。あと50分時間ちょうだい』

「こっちの状況次第ね。なるべく早く探してほしいわね」

『そこはどうにも出来ないよ』

 

さて、そろそろ今回の作戦の説明をした方がいいな。

簡単に言ってしまえば陽動作戦である。俺達1小隊が敵主力と交戦をし、2小隊はフラッグ車を叩く。

1小隊の指揮は俺が。吹雪は2小隊の指揮をしつつ全体の指揮をしている、1小隊の役割は陽動とバレないように敵主力と交戦。2小隊の具体的な役割は、はたてが敵主力を見つからない位置から監視、もちろん戦闘には参加しない。残り3両は敵フラッグ車の捜索及び撃破である。なので吹雪とはたての車両は試合には参加するが戦闘には参加しない。てかアイツらはどこに隠れた?見つからない場所に隠れているならいいが。

廃空中学校はここまでどの試合もフラッグ車だけ隠れ、それ以外の戦車が戦う戦術を取っていた。おそらくこのフラッグ車が指揮をしているのだろう。確かに悪くない作戦ではあるが、フラッグ車が隠れて指揮するとなると、見つかったときに対処出来なくなる。

この大きなリスクを背負ってまでそれするということは、南を含めた要注意人物達はよほどの実力者なのだろう。

そんなヤツと戦うとなると正攻法は通じない。そこで考えたのはアンブッシュ、待ち伏せである。

予め交戦地域やキルゾーンを設定して部隊を適所に配置し、敵に発見されることなく偽装して目標の観察をし、適時において奇襲を加えるという攻撃である。

今回のフィールドは森と草原の割合は5:5くらいである。戦闘するにも木々が多過ぎるも森の中でのあまり車線が通らない、だから草原の中で戦闘をするのが普通だ。

だが俺達の学校は部員が少ない上に技量はそこまで高くない、ついでに言うなら予算もあまりない。紫に頼んで予算を増やそうとしたが、「別にいいけど、これまで予選敗退している部活に予算をあげたら他の部活から苦情が来るわよ?」と言われ、渋々諦めた。全国大会前に面倒ごとは避けたかったからだ。

たがら少ない予算、少ない部員でやるとなるとこの作戦しかない。

 

『こちら吹雪、そろそろ敵主力が視認できると思うけど、見える?』

 

俺は双眼鏡でキルゾーン付近を見る。

 

「確認したわ。数は14両、間違いないわ」

『了解。それじゃ予定通り、紅音ちゃんは戦闘にだけ集中して。はたてちゃんから随時状況報告してもらうから、それを頼りにこっちから指示を出すね』

「了解」

「それしても笹原、わざわざこんな面倒な作戦をしなくても、笹原がまとめて指揮すれば良かったんじゃないか?」

「敵フラッグ車を発見次第、私が指揮します」

「そうじゃなくて、最初から笹原が指揮すればいいんじゃないかって話」

「今回は少ない数で倍の数を相手にしないといけません。予算を抑えたいのでこちらの被害はできるだけ出しなくありません。そうなると私がこちらに集中するしかないんです。多分、撃破確認している余裕がないくらいの戦闘になると思います。この状況では、流石には2小隊の指揮まで頭が回りません」

「そんなもんかね」

「そんなものです。まぁ私的には早く敵フラッグ車を見つけて叩いてくれるとありがたいです。楽ですから」

「だな〜」

 

まぁ、正直言って楽をしたかったというのもあるが。

 

「そろそろ敵主力がキルゾーンの入ります。各車、自分が狙い戦車を決めてください」

『私は先頭のシャーマンを狙うぜ』

『じゃボクはその後ろのシャーマンを狙うね』

『それじゃ私は最後尾のシャーマンを狙おうかしら〜』

『私はファイヤフライを狙うね』

『私はM7狙うね』

『私はパーシングにする』

「私もパーシングにするわ」

「了解」

 

キルゾーンまであと数十メートル。

 

「各車、撃ち方用意」

 

70・・・50・・・30・・・10・・・入った。

 

「撃てーー!!」

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

「装填手次弾装填、急いで下さい!砲手!撃破確認はしないで次の戦車を狙って下さい!吹雪!姫海棠さん報告は!」

『今きた!4両撃破、2両履帯切ったよ!』

 

誰か1人外したな。って魔理沙のヤツ外してんじゃん。まぁいい。

 

「了解!次弾いきます!撃てーー!!」

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

『3両撃破!』

 

これで半分、残り7両!

敵が後退し始めた。これはチャンスだ。

ヤツらは混乱しているはずだ、主力を潰すには今しかない。

 

「装填手、次弾装填!『待って紅音ちゃん!』ッ!」

『敵が後退し始めたってはたてちゃんから情報がきた、ならこっちも退いて』

「何を言っているの!?あと半分なのよ!!追撃して出来るだけ戦力を削いだ方が後々『紅音ちゃん!』ーーー!!各車後退!ヤークトティーガー、Ⅲ突は偽装ネットを回収!その他の車両は私に続いて下さい!」

『『『『『『了解!』』』』』』

 

俺は吹雪に指示され後退した。

あと半分、あと半分だったのに!

 

『紅音ちゃん、聞こえる?』

「・・・・・えぇ」

『なんで後退させたかわかる?』

「追撃したなら間違いなく、こちらの戦車が何両かは撃破される。私達の学校はあまり予算がない。予算を抑えるには、ここで退くしかない」

 

わかっていた。だからこのような作戦を立てた。

でも。

 

『今さっき自分が何をしようとしたかわかってる?』

「えぇ、わかってるわ。でも」

『でもじゃない!私達の学校は予算がないんだよ!ここで被害を出して無駄に出費を出してる余裕はないんだよ!だから今回みたいな作戦を立てたんだよ!それに今回の作戦立案者は紅音ちゃんだよね!自分で立てた作戦なのに、自分が作戦通りに動かないでどうするの!そんなの隊長として失格だよ!自分で立てた作戦なら作戦通りに動いて!』

「・・・ごめんなさい」

『はぁ〜〜。まぁ、いいよ。紅音ちゃんは自分の性格を理解した上で私をバックにつけたんだもんね。紅音ちゃんは気合入ると作戦とか無視することろがあるし、それを止めるという意味で私がバックにいるわけだし、これも私の役目だから気にしてないよ』

「ありがとう」

『いいよ。昔から紅音ちゃんのことはわかってるから』

「えぇ」

『はたてちゃんには後退した敵主力を追跡してもらってる。まだチャンスはあるから、落ち着いていこ』

「そうね」

『いや〜。雪宮も怒ることあるんだな〜』

『霧雨さん、その言い方は失礼ですよ』

『あら、そういう朝潮だってさっき雪宮さんが怒鳴ったとき飛び跳ねたじゃない』

『ちょ、ちょっと!五十鈴さん!何言ってるんですか!』

『妖夢も砲弾を落としそうになったわよね』

『霊夢!なんでバラすの!』

『バカじゃないの?』

『もっと緊張感持ちなさいよ』

『ハイハイみんな集中して下さい、今は試合中ですよ。心温まる喧嘩は試合が終わったあとにして下さい』

『ぽい〜〜。夕立もお話しに参加したかったぽい〜〜』

『夕立、遊佐さんの言った通りボク達も試合に集中しよ』

『ぽ〜〜い』

 

湿っぽくなった雰囲気を変えるべく魔理沙を始め、他の部員達が盛り上げてくれた。

 

『それに笹原もあんなに素直に謝ったのって始めてじゃないか?すげー驚いたぜ』

「うっ、それ以上は言わないで」

『おっ、もしかして恥ずかしいのか?可愛いなぁ!』

「それ以上喋ると整備班に移すわよ!だいたい、さっき1発外したでしょ!私はちゃんと見てたわよ!」

『うげっ。マジか』

「ホントよ、今まで砲手お疲れ様でした、明日から整備班頑張ってね」

『やめてくれーー!!』

「ふんっ」

 

まぁもちろん、整備班にするつもりはないが。

 

『ッ!紅音ちゃん!朗報だよ!エリカちゃん達が敵フラッグ車を発見したよ!』

「ッ!!吹雪!2小隊に無線機の周波数をこっちに合わせるように伝えて!」

『わかった、ちょっと待ってて!』

 

吹雪と通信が途絶えて数秒。

 

『こ・・らエリ・・聞こえ・・こちらエリカ』

「エリカ!」

『隊長、こっちはフラッグ車を見つけたわ!』

「わかってる、弥生!」

『な、何?』

「この作戦、貴女達2小隊が要だから、そっちは任せたわよ」

『わ、わかった』

「よし、これより指揮は吹雪から私が引き継ぎます!」

 

さぁ、第2ラウンドと行こうか。

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか!
次は5月に投稿します!
では!
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