なんだかんだで彼女ら(彼ら)は再び戦車に乗る 作:眼鏡とタバコ
投稿が遅くなり申し訳ありません!
いよいよ決勝戦です!
どうぞ!
「その・・・・・すまなかった」
まほさんはなんとも言えない表情でそう言った。
「同情するくらいならお金をください!」
俺の隣にいる吹雪は四つん這いになってそう言う。
いやほんと、どうしてこうなった。
〜〜時は遡ること2時間前〜〜
いよいよ決勝戦まできた。と言ったも県予選の決勝戦だ、この試合に勝とうが負けようが全国大会に出場出来る。
やっとスタートラインに立てるのだ。
「各員はそれぞれ今日使う戦車の点検を再度点検してください!故障箇所があれば速やかに私や整備班に報告を!残燃料も測って、燃料補給が必要な戦車は補給を行なって下さい!あと今日の試合で車長を任されている人は私のところに集まって下さい、作戦の最終確認をします!」
俺は今、試合会場の工場にいる。どうやらここは他とは違い、熊本県では一番大きいらしく、設備も充実している。
そして俺はというと、今日使う戦車の最終点検を行なったり、作戦を再確認したりと多忙である。
「集まりましたね。それでは作戦の最終確認をーーー」
「申し訳ありません。こちらに笹原 紅音さんはいらっしゃいますか?」
声がする方に顔を向けるとそこには、カメラを持った中年の男の人とマイクを持った女の人と若いお兄さんがいた。
「はい、私が笹原です」
「お忙しいところ申し訳ありません、テレビ局の者です。今お時間は大丈夫でしょうか?」
でたよ、テレビ局。俺インタビューとか新聞とか嫌いなんだっての。
「申し訳ありません。今ちょっと手が離せないのでーーー」
「笹原ちゃ〜ん」
振り返るとそこには笑顔の冴塚先輩がいた。助かった、これでこの人達から逃げーーー。
「こっちは私に任せて行ってきていいよ〜」
られなかったーー!!
おい先輩!なんてこというんだ!適当に言い訳して逃げようと思ったのに!少しでも信じた俺が馬鹿だった!
「いえ、ですがまだ作戦の最終確認も済ませていませんし、車両の点検もまだです。あと隊長と呼んで下さい」
「大丈夫よ。こっちは私達に任せて行ってらっしゃい」
今度は冴塚先輩の後ろから現れた黒川先輩がそう言った。なんか視線を感じるなと思って周りを見渡すと、部員の何人かがこちらを見ていた。
「それに試合までまだ時間があるしね」
「はぁ、分かりました。作戦の最終確認は私が戻ってきてからにします。副隊長、少しの間こちらの指揮をお願いします。何かあれば私の携帯に電話をください」
「わかった〜」
そう言い残してテレビ局の人達のところへ向かう。
「お待たせしました」
「いえ、こちらこそお忙しいところ申し訳ありません」
それから少し雑談して場所を変えたらすぐに本番がきた。
てかこれ生だったんだな。
いかん、スマイルスマイル。
「はい、今私は試合会場に来ています。ご覧下さい、観客席には沢山の人が来ています」
それを聞いて俺も観客席の方を見る。確かに人多いなぁ。つかウチの生徒もいるぞ!?なんで制服!?今日休日だろ!?
「そして私は今から今大会注目の方、万年県予選敗退の学校をここまで引っ張ってきた笹原 紅音さんにインタビューをしたいと思います!」
おい、そこはもっとオブラートに包めよ。はっきり万年県予選敗退の学校って言うな。
「笹原さん、今のお気持ちを教えて下さい」
とうとう俺にマイクが向けられた。
「そうですね。まさかここまで勝ち進むことができると思っていなかったのですごく緊張しています」
「そうですか。決勝戦では王者、黒森峰女学園の中等部と戦いますが勝率どのくらいでしょうか」
「なんとも言えないですね。何せ黒森峰女学園と戦うのは今回が初めてですので分からないです」
「そうですか」
「ですが」
「?」
「勝率は決して0ではありません。例えどんなに低かろうと私は、私達は決して諦めません」
「・・・・・分かりました。最後に黒森峰女学園中等部隊長の西住 まほさんから笹原さんにメッセージが届いております」
えっ?あの人から?
「『君の試合はいつも見ていた、今大会ではどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ。期待している』とのことです」
なんだか、らしいと言えばらしいな。
しかし期待している、か。そんなこと言われてもなぁ。
「では私から、その期待に応えられるよう全力で挑ませていただきます!」
「ありがとうございます。以上、試合会場からでした」
どうやら終わったらしい。
はぁ〜終わった終わった。
「笹原さん、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
「決勝頑張って下さい」
「ありがとうございます」
俺はそう言って、工場に戻った。
「あっ、笹原ちゃんだ〜。お帰り〜」
冴塚先輩はそう言って歩み寄ってくる。ふと周りを見渡すと全員がこちらを見ていた。
「あの、どうしたんですか?」
俺がそう言うと冴塚先輩はポケットから携帯を取り出して操作し始めた。
「笹原ちゃん〜、これな〜んだ」
そう言って俺に携帯の画面を見せてきた。
『はい、今私は試合会場に来ています。ご覧下さい、観客席には沢山の人来ています。そして私は今から今大会注目の方、万年県予選敗退の学校をここまで引っ張ってきた笹原 紅音さんにインタビューをしたいと思います!』
ちょっと待てぇぇぇーーーー!!!
えっ!?なんで!?なんでさっきのインタビューが!?
「冴塚先輩、それは一体なんですか?」
落ち着け、落ち着くんだ俺。
「録画した動画だよ〜。最近のアプリって便利だね〜」
マジかよ。
「ちなみに録画した動画は部員のみんなに送ってあるから〜」
最悪だ。
「今すぐその動画を削除して下さい」
「やだ〜」
冴塚先輩は笑顔でそう言ってきた。
「いいじゃん紅音ちゃん」
後ろから吹雪が笑顔で言ってきた。
なんなんださっきから。冴塚先輩もそうだが、なんでお前まで笑顔なんだ?
「それに色々と手遅れだと思うよ」
そう言って吹雪は携帯の画面を俺に向けてきた。
そこにはこう書かれていた。
名無し1
あれは本当に中学生?
名無し2
今確認した。どうやら本当に中学生みたいだ。
名無し3
なんて体だ、けしからん。
名無し4
まさにボン、キュッ、ボンだったな。
名無し5
何を食べたらあんなになるんだ。
名無し6
将来有望な嫁になるな。
名無し7
今のうちにつばをつけなければ。
名無し8
お巡りさん!ここに性犯罪者がいまーす!
名無し9
通報しました。
名無し10
みんなー!逃げてー!
といった内容だった。
俺はそれを見て、地に落ちた。
誰だよ!そんなことを掲示板に書き込んでいる奴!
確かにスタイルはいいよ、自分で言うのもなんだが。ファ◯キ◯ルのレーヴァテインみたいにまだ身長164 B85 W57 H83はないよ。おそらく年相応の身体に神様が調整してくれたんだろう、声もちょと幼いし。
だがそれでも中学生にしてはどうかと思う身体だ。
でもそれをわざわざ掲示板に書き込むかね。
これだから新聞やマスコミやパパラッチは嫌いなんだよ。
「紅音ちゃん」
「・・・吹雪・・・」
「掲示板はどうにも出来ないけど、動画は私達だけに留めておくから!」
削除する気なしかよ!
「いいから早く削除しなさい」
「ヤダ!」
お前もかよ!
「確かに紅音ちゃんがこういったのが嫌いなのは知ってるよ。でも今回はいいじゃん、中学生でテレビに出られるなんて普通はないよ」
「別に私の望んだことじゃない」
「それに動画も私達だけに留めておくってことでいいじゃない。悪用しようってわけじゃないんだから」
そう言って吹雪は辺りを見渡す。
「皆さんも動画に関しては異存はありませんか?」
「私はそれでいいよ〜」
「私も〜」
「私もそれでいいわ」
「私も・・・・じゃないと後が怖いし」
誰だ最後に言った奴。
「はぁ、わかりました。それで手を打ちます」
俺は立ち上がりながらそう言った。
「それでは皆さん、作業に戻って下さい。車長の人達は私のところに集まって下さい、作戦の最終確認を行います」
それからは車長達は作戦の最終確認、その他の人は車両の点検を行った。
数十分後、作戦の最終確認や車両の点検等が終わり、試合開始まで待機することになった。
「いよいよ決勝戦だね〜」
戦車のフェンダーの上で音楽を聴いていた俺の隣に冴塚先輩がやってきた。
「隣いいかな〜?」
「どうぞ」
それを聞いて冴塚先輩は俺の隣に座った。
「何聴いてるの〜?」
「デスメタルです」
俺はイヤホンを外してポケットに携帯とイヤホンを突っ込む。
「本当にいろんな曲を聴くんだね〜」
「・・・・・・今日はどうしたんですか?」
「何が〜?」
「自分でわかっているでしょ」
「・・・・・やっぱり笹原ちゃんには敵わないな〜」
「それでどうしたんですか?」
「うん、その、ね。気を紛らわせたかった、かな?」
「何で疑問形なんですか」
「そのね、緊張してるのかな私。だって万年県予選敗退していた私達の学校が決勝戦まで勝ち進んで、全国大会出場も決めて。私はすごく嬉しいよ。でも、その嬉しい気持ちと同じくらい緊張してる」
「・・・・・・・・」
「だから少しでも気を紛らわせるために笹原ちゃんに話しかけた、かな。ごめんね、こんな気持ちにあまりなったことないから自分でもよくわからないんだ」
「いいじゃないですか」
「えっ?」
「緊張感を持つ、いいことじゃないですか。別に悪いことじゃありません。まぁ、それをどうするかは個人の問題なので、私はどうこうは言いません」
「笹原ちゃんは緊張したりしないの?」
「してますよ?いつもより」
「そうなんだ」
まぁ、その『いつも』もあまり緊張はしていないが。
なんとなくの気持ちで辺りを見渡す。やはり緊張している者が大半だった。吹雪はソシャゲしているが。
俺はその場に立ち上がって大きく伸びをした。
「笹原ちゃん?」
「ちょっと隊長らしいことをしますか」
俺は一度深呼吸をした。
「はーい、皆さん注目してくださーい!」
それを聞いた部員全員は俺に視線を向けた。
「点検や作業等お疲れ様でした。いきなりですが、私からお話があります」
それを聞いて、部員全員は静かになった。
「皆さん、いよいよ決勝戦です。緊張している人、不安の人、色々あると思います。ですが皆さん思い出して下さい。これまでの私達の頑張りを、そして忘れないで下さい、私達はまだスタートラインに立っただけであることを」
部員全員の目が少しずつ変わりはじめた。
「今回の試合、インタビューではあんなこと言いましたが、はっきり言って勝率はかなり低いです。それもそうです。なぜならこちらは部費が少ない、部員も少ない、戦車道経験歴が浅い人ばかり、そんな状況で全国優勝を目指すのです。さらに言えば、こちらは部費が少ないこともあり節約しなければならない。対して黒森峰は部費も部員も経験歴も圧倒的に上、付け加えて言うなら黒森峰には家元の娘2人がいます。勝率が低いのは当たり前です。ですが皆さん思い出して下さい。そんなこと分かりきっていたことじゃないですか。そんなこと覚悟の上じゃないですか」
そうだ、そんなの俺が隊長になったときからわかっていたことだ。
部費が少ない?部員が少ない?経験が浅い?だからなんだ!そんなの負ける理由にはなっても勝てない理由にはならないぞ!
部費が少ないなら被害を出さないようにするなり節約するなりすればいい。部員が少ないならその少ない人数で作戦を立てればいい。経験が浅いなら積ませればいい。
「言っておきますが今回の試合、私は負ける覚悟はしています。ですが、だからと言って勝つことを諦めたわけではありません。もちろん勝ちにいきます。見せてやりましょう黒森峰に、私達の戦いを、弱者の戦いを!!」
「「「「「「おーーー!!」」」」」
『まもなく、試合を開始します。出場する選手は速やかに整列準備してくだい。繰り返します。まもなく、試合を開始します。出場する選手は速やかに整列準備してくだい。』
「ちょうどいいタイミングです。皆さん、準備を!」
「「「「「はい!」」」」」
俺は戦車から降りて整列準備をした。
「それではこれより、黒森峰女学園 対 常幻東中学校の試合始めます!」
また蝶野さんか、この人もこの人で大変だなぁ。てかこの人年いくつなん?仮に20後半だとしよう、それで階級が1等陸尉は普通ありえない、よっぽどのエリートじゃない限り。
確か陸上自衛隊富士学校、富士教導団戦車教導隊所属だったよな。あそこの部隊は確かにエリートの集まりだが、この人がそのエリートって考えられない。だって撃破率120%って言ってる人だぜ?まぁ教導隊は教習で使う戦車の整備及び貸し出しや、教官以外の乗員の貸し出し等をする部隊だからなぁ、こういうのは本職じゃないから考え方が荒いのはわかるが。
「どうかした、笹原さん?」
「い、いえ」
いかん、ちょっと
俺は目の前のある人に向き直る。
「・・・・・・・」
まほさん!なんでそんなに不機嫌なんですか!いや確かにまほさんはいつも険しい顔しているから分かりづらいけど、あれ絶対怒ってるよ!
えっ?俺何かしたっけ?
いかん、心当たりがない。
どうしよう、話しかけた方がいいのか?しかしあんなまほさんに話しかけるなんて無理だ。
「それでは試合を「待ってください!」ッ!」
試合開始の合図をしようとした蝶野さんの声をまほさんが遮る。
「笹原」
「なんでしょうか?」
「まさかとは思うが、それで試合をするつもりか?」
「それとは具体的になんのことですか?」
「惚けるな。
なんだそのことか。
そう今回の試合で俺達が使う戦車はたったの10両である。
理由はもちろん部費節約のためである。
もちろん俺達の学校が部費が少ないことは俺達しか知らない。まぁ知られたからどうってことはない。実際部費が少なくても戦える。だがそれを教えてやる義理はない、なんだか自分が惨めに思えてくるからな。
「そのつもりですが、何か問題でも?」
「随分とナメられたものだな。明確な数の差をつけることで私に油断させようという魂胆なんだろうが、私はそこまで君を過小評価していない」
「ナメるも何も私達は大真面目ですが「紅音ちゃん」・・・何よ吹雪」
後ろから吹雪が割って入ってきた。
「君は?」
「初めまして、紅音ちゃんの幼馴染みの雪宮 吹雪です」
「そうか。それで何の用だ」
「一言だけ言わせていただきます。貴女に私達の何がわかるんですか?」
「どういうことだ?」
「私達は他校とは違って大きなハンデを背負ってこの大会に参加しました」
「ハンデだと?」
そこまで言って、吹雪は膝から崩れ落ち四つん這いになった。
「私達にはお金がないんです!!」
その一言で場が静寂に包まれた。
てか何ぶっちゃけちゃってんの!!??
「3年生はおらず、1年生は中学に入って戦車道を始めた人ばかり、経験者は2年生だけ!これだけも充分なハンデなのに、万年予選敗退しているから部費もまともにない!わかります!?そのおかげで他校との練習試合はおろか、射撃練習も限られるんです!確かにそれは言い訳に聞こえるかもしれません!ですがね、私達はこの大会が終わったあと、つまりこの1年間を少ない部費でやりくりしないといけないんです!!先生に言ってなんとかしてもらおうともしましたよ!でも「してもいいけど実績がない部にそんなことしたら他の部に何言われるかわからないわよ?」って言われて結局ダメだったんです!紅音ちゃんも苦しんで悩んで、仕方なく戦車の数を減らすという決断をしたんです!その他にも隊長の仕事で苦しんで、私達が支えているんです!わかります!?わからないでしょ!?王者に私達の苦しみが!!」
吹雪の熱弁が終わり、また場が静寂に包まれる。笑い声もなく、同情の声もなく、ただただ静寂に包まれた。
「蝶野さん」
俺は近くにいた蝶野さんに声をかけた。
「な、何かしら」
あーあ、蝶野さんも困ってるじゃん。
「今ってカメラ回ってますか?」
「えぇ、バッチリと」
「音声も?」
「えぇ、でもこのくらいなら音は拾えてないと思うわ」
「すいませんが、10分程カメラを止めていただけないでしょうか?」
「わ、わかったわ。それにしても、今の話ホント?」
「はい、事実です。あっ、この話はここだけにしてください」
「わかったわ」
そう言ったあと、蝶野さんは近くにいた他の審判に指示を出した。
「その・・・・・すまなかった」
まほさんはなんとも言えない表情でそう言った。
「同情するくらいならお金をください!」
俺の隣にいる吹雪は四つん這いになってそう言う。
「ついでに胸も!」
お前は何言っているんだ。
「カメラ止めてもらったわ」
そう言って蝶野さんが歩み寄る。よし、今から俺ちょっとキレるからな、カメラで撮られるわけにはいかん。
「吹雪立ちなさい。みっともないわ」
吹雪はそれを聞いて立ち上がり、俺に向き直る。
「部費が少ないのは仕方のないことよ。その問題はこれから解決していけばいいの」
「でもそれじゃ「それよりも」ッ!」
「私、今すごく怒ってるんだけど、なんでかわかるかしら?」
吹雪は顎に手をあて考える。
「理由は2つあるわ」
「・・・・・・なんで?」
「一つ目は、なんでこちらの情報を敵に教えているのかしら」
「・・・・・あっ」
「二つ目は」
俺はそこまで言って吹雪の胸ぐらを掴む。もちろん逃げないようにするためである。
「あ、紅音ちゃん?どうしたの?なんかすっごい笑顔だよ?」
「貴女さっき私が苦しんで、悩んで、仕方なく決断したって言ったあとなんて言った?隊長の仕事で苦しんでる私を支えているって言ったわよね?えぇ確かに貴女には情報収集のことでは感謝しているわ。でもね、貴女の評価はプラス、マイナスで言えばマイナスよ」
「な、なんで!?」
「スケジュール表の作成と報告、必要な部品や道具の取り寄せ、作戦立案、チームの編成、書類作成、報告、管理、予算の見積もり、その他色々を今誰がやっているのかしら?」
「え、えーーっと」
「校長は頼りに・・・コホンッ、忙しいから校長の仕事も引き受けているのは誰かしら?」
「そ・・・それは・・」
「私よね?みんなには練度向上してほしいから仕方なく私がほぼ全部引き受けているわよね?でも貴女は部員の中では、私を除けばダントツでトップよね?というか私とはあまり実力差がないわよね?」
「あ、紅音ちゃん?」
「私、何回仕事を手伝ってって言ったかしら?正直私も20回まで数えていたけれど、それから先は数えるのをやめたわ。まぁ数なんて些細なことよ、問題はその度に貴女は逃げていたわよね?よくもまぁそれで支えているって言えたわね?」
俺は胸ぐらを掴んでいる左手と拳を握る右手に力を入れる。
「そ、その拳一体何かな?」
「吹雪、今から目を閉じて、足を開いて、歯を食いしばりなさい」
「いっ、嫌だーーー!!」
そう言って吹雪は必死に逃げようとするが胸ぐらを掴まれるて逃げることが出来ない。ついでに言うなら片足も踏んでいる。
「もう我慢の限界よ!大人しく私の拳をくらいなさい!」
「ごめん!ごめんってば!これからはちゃんと紅音ちゃんの手伝いをするから!」
「そのセリフは聞き飽きたわ!」
そう言って俺が殴るポーズをした時である。
「は〜い。ストップ〜」
冴塚先輩が割って入ってきた。
「まったく、何やってんのよアンタ達」
「紅音ちゃん、流石に試合前にそれはマズイよ」
エリカは吹雪を、弥生は俺の後ろにつき俺らを引き剥がした。
「離しなさい弥生!今日こそ吹雪に!」
「わかった、わかったから落ち着いて。みんな見てるから」
それを聞いた俺は我に返り、辺りを見渡す。
黒森峰の選手は困惑していた。まほさんは顔に手を当て、見ていられないといった様子だった。みほにいたってはオロオロしていた。
それに対してウチの生徒は、またやってるよって感じだ。
「・・・・・お見苦しいところを見せて、大変申し訳ございませんでした」
俺は黒森峰側と審判側に頭を下げ、謝る。
「も、もういいかしら?」
戸惑いながらも、蝶野さんはそうたずねる。
「申し訳ありません。お願いします。あっ、それと」
俺はまほさんの方を向く。
「随分とナメられたものだな、と仰っていましたね。確かにそちら側から見たらふざけているように見えるかもしれません。ですが生憎、私達はふざけてもいませんし勝利も諦めていません。油断しないでくださいね。でないとその王の座、貰いますから」
「ふっ、いいだろう。ならばこちらも全力で相手をさせてもらおう」
「準備はよろしいですか?では改めて、黒森峰女学園 対 常幻東中学校の試合始めます!両校、礼!」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
次は10月中に投稿します!
では!