恭二によって処分を言い渡された数日後、Bクラスとの試召戦争で失った点数を補充したFクラスは取り決め通りAクラスと交戦するために交渉すべく、幹部その他数名で敵の本丸を訪れていた。
代表である雄二、小隊長格である明久と秀吉(美波は勝手に行動し被害を出したということで解任)、筆頭戦力で裏切り者の汚名返上に燃える瑞希、同じく全力である康太というFクラスの首脳たる面子である。
本来ならば事前交渉だけならこの五人で事足りるのだが今回は事情が大いに異なる。
「く、くそっ!離せ、離しやがれ!!」
「・・・何なのよ、この絵面は」
Aクラス交渉役である優子は顔をひきつらせる。
それも当然である。
須川ら男子数名によって両腕を掴まれ犯罪者を連行するように引きずられてきた雄二が着ている服に問題があるためだ。
恭二が処分として最後に言い渡した言葉通り、男子生徒が着用する制服ではなく女子生徒のそれなのだ。
それに加えて先日秀吉がCクラスを騙して煽動した際に着用していた物と同じである。
小柄で細身かつ女顔である秀吉が着こなせばまさしく可憐な女子高生となるのだが、昔喧嘩で名を馳せていただけあって運動神経抜群かつ引き締まってはいるが筋骨隆々の雄二が着用するともはやただの変態である。
服のサイズが合わないのに無理矢理袖を通させたために今にも破れんばかりにパンパンでボタンをかけることは不可能なため下着に包まれた逞しい胸板が露になっている。
そして下のスカートは膝上まで短くされており、これまた逞しい脚が露に。
ちなみに脛毛は全剃りである。
顔を羞恥で赤らめじたばた喚き散らす雄二を二人のカメラマンが写真に収めていく。
「ムッツリーニ!!止めろ、撮るんじゃねぇ!!」
「・・・・・需要があるかもしれない」
一人はムッツリ商会会長にしてプロ並みのカメラの腕前を誇るムッツリーニこと康太である。
ありとあらゆる角度から雄二にの醜態を撮影していた。
「あるわけねぇだろ、あってたまるか!!てめぇもだ、根本!!ニヤニヤしながら撮ってんじゃねぇ!!」
もう一人はこの光景を作り出した張本人である恭二であった。
「いやぁ、ここまで酷いとは」
「敗戦の 将はかくも 惨めなり」
「あれ、醜い」
義輝は笑いをこらえながら、一刀と恵は一種の憐れみのこもった目で眺めていた。
「ちょっと聞きたいんだけど」
雄二が観念し落ち着いて来たところで本題に入ろうとしたのだが、その前に優子はBクラス幹部一行に尋ねる。
「この間の約束通りならFクラスだけでいいはずなんだけど何でBクラスまでいるわけ?」
訝しげに見る優子。
「取り決め通りFクラスには表向きは和睦にしてAクラスを攻めさせて今に至るんだけどな、その時に条件を出した。FクラスがAクラスに負けたらFクラスは向こう三ヶ月間俺達のパシり、勝ったら取り消しかつ三ヶ月の不可侵ってやつだ。それがかかっているから見届けさせてもらおうと思ってな」
恭二が応答する。
「本当にそれだけなの?」
「本当だって木下姉。大方戦争後に俺達が攻めて来やしないかと思ってるんだろ?考えてみろって。蟻が象を一噛みしたところで何か影響があるか?FクラスごときじゃAクラスを疲弊させられるわけないだろ?今回は単純に見物しに来ただけだよ。見物にあたって先生方の許可も得たし、絶対にAクラスに何もしない旨も伝えてある」
義輝が捕捉する。
「・・・まあ良いよ。ちょっと怪しいけどね。・・・・それで、坂本『さん』、何か要求があるんでしょ?」
「誰が坂本さんだ!これは根本の要求で仕方なくやっているだけでーー」
「なあ義輝。俺、そんなこと言ったっけ?」
「さあな。でも、世の中いろんな人がいるよな。だから突然女装に目覚める奴がいても不思議じゃない。ただ俺達に負けたらショックが大きかったんだろうな。ここはあたたかく見守ってやるのが俺達の務めだ」
恭二が惚けると義輝は態とらしく頷きながら言う。
「てめぇら・・・いつか絶対コロス!!」
額に青筋を浮かべ握りこぶしを作る雄二。
「事情は分かったから冗談はおいといて、要求は何なの?」
「お、おう・・・。Fクラスは試召戦争としてAクラス代表に一騎討ちを申し込む」
「一騎討ち?うーん、何が狙いなの?」
今度は雄二を訝しげに見る優子。
「もちろんFクラスの勝利だ」
「Bクラスに負けといてAクラスに勝てると思ってるの?それに代表に一騎討ちなんて何か企みがあってのことなんでしょ?一騎討ちなら時間をそれほど取られずにすむからありがたいけど、罠があるなら別よ。そうなったらAクラスには何のメリットもない。アタシ達は下位クラスの挑戦を受ける義務はあるけれどルールを縛らなければならないってことはないのよ?」
「おいおい、Aクラスともあろう者が怖じ気づいたのか?Fクラスからは俺が出る。今ここにいる全員が証人になってくれれば覆しようがないだろ?」
「それでも信頼できない。何せCクラスを騙したんだから、ね?ひ・で・よ・し?」
優子は愚弟を睨み付ける。
「ひっ!?」
秀吉は明久の背に隠れてしまった。
「でも時間がかからないのはやっぱり魅力的だから一騎討ちっていう提案は呑んであげる。ただし、代表同士の一騎討ちじゃなくて・・・・お互い五人ずつ選んで、一騎討ち五回で三回勝った方の勝ち、っていう条件なら」
「仕方ないか。けど勝負する内容はこちらで決めさせてもらう。そのくらいのハンデは認めてもらいたい」
「え?うーん・・・」
雄二の申し出に優子は悩む。
条件が変わってもなお自信のある態度を崩さない雄二を警戒しているのだろう。
「・・・・受けてもいい」
「うわっ!」
突然奥から現れたのはAクラス代表てある翔子に驚いたのか明久が情けない声を上げる。
「・・・・雄二の提案、受けてもいい」
「あれ?代表。いいの?」
「・・・・その代わり、条件がある」
「条件?」
「・・・・うん」
翔子は頷き、雄二から瑞希へと視線を移し、じっくり眺めた後再び雄二に視線を戻す。
「・・・・負けた方は何でも一つ言うことを聞く」
「・・・・・」
「ムッツリーニ、今撮影しようとする意味なんてないよ!というか、負ける気満々じゃないか!」
被写体を雄二から翔子と瑞希に変更すべくカメラを構え直した康太を明久がたしなめる。
はたから見たらまったく意味不明な光景であるのだが。
「じゃ、こうしよう?勝負内容は五つのうち三つはそっちに決めさせてあげる。二つはウチで決めさせて?」
優子が取り成す。
「交渉成立だな。」
「・・・・あと、根本、宍戸」
翔子は傍観していたBクラス2トップの方を見る。
「・・・・絶対に邪魔しないで」
「こちらとしちゃあどっちに転んでも一応利益はあるからな。邪魔はしないって明言してやるよ。ただ、あの約束は忘れんなよ?」
「・・・・分かってる」
恭二と言葉を交わす。
「・・・・雄二、時間は?」
「そうだな。十時からでどうだ?」
「・・・・分かった」
こうしてAクラス対Fクラスの戦争の事前交渉が終わり、一旦解散となって各自教室へと戻って行く。
「まあ、戦争の邪魔はしないよな、邪魔は。な、恭二」
「それか奴らが何かしてきたら別だがな」
「・・・・土屋?でいいの?」
「・・・・・何だ?」
「・・・・後で写真を売ってほしい」
ということで立ち会うことになったBクラス一行でした。
どうなることやら(笑)
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