「義輝、一刀、お帰り」
「・・・・・おい、これはどういう状況だ?」
Dクラスとの約定という土産を引っ提げて意気揚々とBクラスへ帰ってきた義輝と一刀。
二人を恵が迎えるが義輝はとある物を見て首を傾げる。
客足は落ち着いたとはいえまだまだ飲み食いする客で席が埋まっているのだが、その中の一つのテーブルに一人突っ伏して占領している者がいた。
顔は見えないものの、その特徴的な髪型はよく義輝も見知っている。
「何で恭二がいるんだ?できるだけ顔を出さないんじゃなかったのか?」
「あの様子 余程のことが あったのか?」
「根本、負けた。なぜかは知らない」
正体はこのクラスの主、恭二だ。
義輝と一刀が恵に事情を知らないか尋ねるが恵は首を横に振る。
「対戦相手は確かFクラスのバカ主従だったっけ?あんな風にしてるぐらいだから・・・・ま、とにかく本人に聞いてみるか」
原因が何かのかあたりをつけたらしく、義輝は恭二がいるテーブルへと向かい、一刀が後に続く。
「おい恭二。どうした、落ち込むなんてお前らしくないぞ?」
「・・・・・ああ」
義輝が恭二の向かい側に、一刀が恭二の隣の席に座る。
「おい根本 何があったか すぐ話せ」
「・・・・・ああ」
二人が呼び掛けるも恭二は腑抜けた声しか出さない。
「あぁ、もう、面倒だな。・・・・・・おい恭二、廊下にいるのって小山じゃないか?」
「何だとっ!?」
原因にある程度あたりをつけついた義輝が友香の名前を出すと、先ほどとはうって変わって恭二が即座に反応して立ち上がる。
「んだよ、いねぇじゃねぇか」
「嘘に決まってるだろ。お前がウジウジ不貞腐れているからだ。で、恭二。何があった?Fクラスのバカ共に何かされて友香と仲違いでもしたか?」
「仲違いなんかじゃねぇ、あれは誤解だ!」
恭二は座って悔しげに拳をテーブルに叩きつける。
そして二回戦で何があったのか語り出した。
文月学園清涼祭試験召喚大会トーナメント。
恭二はこのイベントにCクラス代表である友香と共に参加していた。
一回戦の相手はAクラスとEクラスの生徒だった。
点数の高いAクラスの生徒を先に二人がかりで倒すことで
難なく勝利した。
そして二回戦。
恭二達はステージの上で対戦相手の到着を待っていた。
数分待った後に対戦相手がようやくステージ前に現れる。
「あ?バカ共にウチのクラスの岩下と菊入は負けたのか?」
恭二の予想に反して勝ち上がって来た相手は明久と雄二だった。
情けない奴等だ、と恭二がぼやく。
「あれ?誰かと思えばBクラスとCクラスの代表カップルじゃないか」
明久が雄二と共にステージに上がる。
「別に良いじゃない恭二。Fクラスの底辺コンビが相手なんだから、この勝負は貰ったようなものじゃない」
先の戦争で秀吉に騙されかけたこともあって二人を睨み付ける友香。
「あの時みてぇに仲がよろしいようだな」
雄二も雄二でBクラスとCクラスに嵌められたこともあってか忌々しげに睨み返す。
「友香、さっさとこの雑魚共を片付けて俺のクラスで茶でも飲むか」
「ええ、そうね。バカ共には負け犬姿がお似合いよ」
「何だと!さっきからバカバカとーー」
「落ち着け明久。挑発に乗るバカがあるか」
雄二は明久の襟首を掴んで宥める。
「おっと、ごめん雄二。僕としたことが危うくーー」
「あ、すまん。挑発に乗る乗らないに関係なくお前がはバカだったな」
「ぶっ殺す!!」
明久は拳を振り回して暴れようとする。
「あの、スケジュールも押してますのでそろそろ始めたいのですが」
しびれをきらした遠藤教諭が早く始めるように催促する。
「ちっ、命拾いをしたね雄二。一回戦の続きはまた今度だ」
「上等だ、コラ」
雄二が襟首から手をはなすと明久は乱れた服装を整える。
「けっ、仲間割れかよ。これはもう勝負は決まったようなもんだな」
その様子を見ていた恭二は嘲笑う。
さて、この後恭二は敗北を喫する訳だが原因は一つである。
それは相手をみくびって油断していたからではない。
普段、恭二は誰かと敵対する時には脅したり弱味を握ったり嫌がらせをしたりなどとにかくあらゆる手段を講じて自身を優位にたたせるのが常である。
しかし恭二はこのトーナメントにおいてはそのような真似は一切していない。
理由は簡単。
正面から堂々と相手を叩きのめして友香に良いところを見せたいという思春期ならではとも言える思惑があったからだ。
誰でも惚れた異性に対しては張り切るもの。
恭二にしては珍しく純粋な思いであるが今回はそれが仇となる。
「じゃあ雄二、例のモノを」
仕切り直しと言わんばかりに明久が言う。
「おう。これのことだろう?」
ニヤリと笑い雄二は一枚の大きな紙を取り出して広げて見せる。
「んなっ!?何でそんな物が!?」
恭二はそれを見て驚きの声を上げる。
『奇跡の一枚根本恭二ver 本当のア・タ・シ』
そんなタイトルと共にその紙、ポスターに写っていたのは女子の制服に身を包んだ恭二の姿であった。
当然、恭二にはポスターに関して覚えがない。
それもそのはず。
これはムッツリーニこと康太が彼自身が持つ無駄に高い無駄な技術を施した物であり、雄二の女装写真に恭二の顔写真を合成しその他細かい処理を施した逸品である。
事情を知る者ならばそのからくりを見破ることは容易いであらうが、全く事情を知らない者を誤解させるには申し分ない効果を発揮する。
そう例えば、友香とか。
「・・・・・これはどういうことかしら?」
ポスターを見て顔をひきつらせる友香。
「ま、待て友香!これはこいつらの捏造ーー」
「明久、根本の口を塞げ!」
「了解」
「お、おいっ!」
恭二が何かを言う前に雄二が明久に命じると、明久は恭二の後ろに回ってチョークスリーパーホールドの要領で腕を首にまわした上で口を塞ぐ。
「まだまだあるぞ、Cクラス代表の小山とやら」
雄二はそう言うと空いた方の手でポケットから写真の束を取り出す。
言わずもがな、それらは女装した恭二が写っている合成写真である。
「さあ、これを手にとって見たければ今すぐに棄権してくれ」
「!!!? !!!?!」
雄二の言葉に恭二は何かを言おうと必死になるが明久に阻まれて声にならない。
「・・・・・いいわ、私達の負けよ」
「交渉成立、だな」
雄二がいっそう口角を吊り上げ、写真を友香に手渡す。
「は、放せ!!と、友香!!これは違うぞ、奴らの策略だ!こんな物捏造だ、誤解ーー」
明久の手を振りほどいて恭二が友香に詰め寄る。
当の友香は無表情で写真を確認していくと恭二に言う。
「そうね。私、誤解していたわ。
もう二度と私に付きまとわないで、変態」
まるでゴミを見るかのようか冷たい目をしながら恭二にいい放ち写真を投げつけ、そのままステージを降りて行ってしまった。
「それでそのまま棄権したって訳か。・・・まあなんだ、言うなれば『嫌な事件だったね・・・』ってか」
事のあらましを聞いた義輝は苦笑いし、一刀は慰めるように恭二の背をさする。
「どこぞの国家錬金術師かお前は」
「冗談はともかく・・・・・Fクラスの奴ら、また何か企んでいるようだな、恭二」
「報復を 恐れず根本 嵌めたのか」
「そうだ一刀。バカ共は今俺達の奴隷だ。下手にこちらに不利益をもたらそうものなら俺と恭二が黙っていないことぐらい分かるはずだ」
「じゃあ俺を嵌めてまで勝たなきゃならない理由があったってか?迷惑極まりないこった」
「何にせよ、下手に放っておけばBクラスに余計な火の粉が降りかかる恐れがあるな。・・・・・よし、一つ連中に探りを入れてみるか。店のローテーションも敗退組が帰って来ているから抜けても大丈夫みたいだからな。穴埋めは後ですれば良いし。一刀、お前も来るか?」
義輝が尋ねると一刀は頷く。
「恭二、お前は?」
「すまんがお前達に任せる。俺は友香の誤解を解きたい」
「ああ、分かった。どうせまた頭に血が上っているだけだけだって。ほとぼりが冷めたら行ってみろよ。さて、一刀。俺達はFクラスにーー」
『写っているのは男の足ばっかりじゃないか畜生!』
義輝が席を立とうとすると、廊下の方から聞き覚えのある声がした。
その方向を見やるとFクラス一行と小学生くらいの少女が向かいのAクラスに入って行くのが見えた。
根本君、ドンマイ。
新連載、始めました。
あちらの主人公はこちらの作品のBクラス生として出す予定でしたがタイミングを見失いました。
松永正久は言うなればSAN値がとても低い状態ですね。
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