「ーーーー以上がFクラスの秘策に対する策だ。策というよりは博打に近いけどな。博打を打つにあたって近衛部隊の皆には大変なリスクを負ってもらうことになる。当然、俺も負う。ローリスクハイリターンが理想だけどこれはハイリスクハイリターンだ。不安な奴は今、やめてもらっても構わない」
クラスの生徒の多くが食事を終えた頃合いに緊急のミーティングを開き、義輝が考案した博打を伝える。
博打の内容は成功が確約されていない、まさに大博打。
持ちかけられた選抜された精鋭、近衛部隊の面々は不安を顔に浮かべつつも名乗り出る者はいない。
もっとも、使命感に燃えている訳ではなく単に誰も名乗り出ないから、という場の空気に流されやすい日本人特有の気質から来るもの故だろうが。
「ありがとう。そして本当にすまない。さっきも言ったようにリスクが伴うけどしっかりやってくれ。大事なのは『窓から着かず離れずの距離を保つこと』だ。これだけは忘れないでくれ。リスクを回避しやすくなるはずだから。後、演劇部と美術部の皆は『例の物』を頼んだ。アレこそが博打の肝だからな。・・・俺から言うことは・・・あぁ、まだあった。自分の点数に不安のある奴、上がる見込みのある奴は放課後にでもテストを受けてくれ。俺からは以上だ。」
「次は俺か」
義輝と入れ替わりで今度は恭二が教壇に立つ。
「まず朗報だ。姫路瑞希を抑え込むためのネタが手に入った。奴のラブレターだ」
そう言いながら恭二は見せびらかすように便箋をヒラヒラと振る。
『ここまでくるとむしろ清々しいな』
『うわ、姫路さんドンマイ・・・』
『どうやって手に入れたの?』
クラスの反応は様々だ。
今まで恭二に関する良くない噂を聞いたことがあれども実際に目にしたことがある者は少ない。
彼らはこれから片棒を担ぐことになるのだがようやく実感がわいてきたことだろう。
「これを適度に使って脅し・・・もといお願いをするわけだ。後、今回の戦争ではCクラスにも協力してもらう。午後に義輝、丸目、伊東は俺と一緒に交渉に行ってもらうから来い。そして他の策はーー」
恭二の話を噛み砕くと以下のようになる。
まず、策の担当を決めて部隊を編成する。
義輝の策を実行してもらう近衛部隊。
Cクラスと合同策を実行している間にFクラス教室の設備を破壊し、兵糧ともいえる補充テストを妨害する破壊工作部隊。
こちらはストレスが溜まっている者を中心にすぐに集まった。
そして理系科目教師や特定の生徒を拉致して妨害を計り揺さぶりをかける拉致工作部隊。
教師を拉致する(連れていくだけ)のはBクラスの多くの生徒が理系科目を苦手としているためであり、生徒を拉致するのは人質にして有利に事を運ぶためである。
最も多くの人員が割かれているのが前線部隊である。
こちらは近衛部隊の一部の生徒も兼任している。
時には押して、時には引いて前線のコントロールをはかる。
その他にも部隊ごとに指揮官や伝令も割り当てられた。
かくしてBクラスは着実に戦争の準備を整えて行った。
このとき、屋上ではFクラスの幹部達が生死の境をさ迷っていたのだがBクラスは知る由もない。
「なぁ恭二、頼みがあるんだが」
「あ?何だ義輝?」
「その姫路直筆ラブレター、俺に預からせてくれないか?なーに、ちょっと良いこと考えたんだ」