オレが愛した女は過剰スパルタアネゴレオン   作:ホスパッチ

15 / 72
14話「七剣総統」

「で、ソル。〈七剣総統〉って何なの?」

 

 魔法トロッコに乗ってすぐにキリヤは疑問を口にする。

 するとキリヤから少し離れた位置で座っていたソルは面倒そうに頭を掻き、

 

「〈七剣総統〉ってのはスペード王国で最も強い七人のこと。何でも全員が魔法と剣技に特化した魔法剣士で〈七剣総統〉となれば実質国王と同じぐらい権限持ってるらしいけど。とにかくクローバー王国で言えば魔法騎士団団長みたいなモンだな」

 

「ということはそんなスゲェヤツと戦えるかもってことか! もし勝ったらオレってば姫様超えたってことになるかな!」

 

「だぁー! あくまで団長みたいなモンって言っただけで姐さんと同じ実力とは言ってないだろ! バカ! 姐さんより弱いに決まってる!」

 

「えぇ……」

 

 何故怒られているのか分からずキリヤはふと疑問に思う。

 ――どうしてここまでソルはシャーロットへの執着を強く見せるのか。

 気になるもののそれよりキリヤの興味はいつの間にか流れる光景が変化していたことに向けられる。

 

「これは……星空?」

 

 よく分からないが洞窟のようなものの中に入れば一気に暗くなり、辺りを照らすのは壁一面の星々。

 メレオレオナと修行していた頃はよく見上げて星座というものを教えて貰っていたが――

 

「うおっ!」

 

 回想する暇もなく何やら天井から落ちてくる。

 受け取ると筒状のもので持ち手があり、指を引っ掛けられる部分があって試しに引いてみると――

 

「スゲェ! 魔力出たっ!」

 

 砲口から魔力弾が飛び出し、しかしそれは着弾するなり紙吹雪を散らす。

 これでどうするのかと思えば次は目の前に兎の影が現れ、今度は看板のようなものを持っていた。

 

『ルール説明! 今からたくさんのエネミーが現れるからキミが持ってるクラッカー(ガン)で撃ちまくろウ! 洞窟が終わるまでに五十体倒せたらクリアだよ! あとトロッコから落ちないように気をつけてネ!!』

 

「なるほど! 了解した!」

 

 ゲームスタートまでのカウントが進む中、早速キリヤはクラッカー銃を構え張り切るがソルは何とも乗り気ではない様子。

 キリヤは首を傾げ、

 

「おいおいどうしたんだよソル。こんな楽しそうなのに」

 

「私はオマエと違ってガキじゃないからこんなのではしゃがないし」

 

「じゃ、コレ借りる!」

 

 ソルの分もクラッカー銃を持てばキリヤはゲーム開始と同時に現れたエネミーを次々と撃ち抜いていく。

 その度に小気味良い音がいくつも響き、キリヤはものすごく楽しそうに笑う。

 

「ハハハハ! どんと来い!!」

 

 五十体がどれほどの数か分からないがとにかく撃ちまくる。

 と、後ろを見ずに動いていたキリヤはトロッコに後ろ足を引っ掛けてしまい、

 

「バ――」

 

 落ちそうになったところをソルが慌てて手を伸ばしてくるがキリヤは落ちなかった。

 キリヤの背を支えていたのはあろうことか今まで撃ちまくっていたはずのエネミーで、キリヤが落ちないようにしっかりと支えてくれていた。

 

「あ、ありがとな」

 

 これにはキリヤもよく分からず、しかし問いかけようにもその瞬間に洞窟を抜けてしまった。

 結果的にキリヤのスコアはクリア基準に達していて複数のクラッカーが鳴り響く。

 

『オメデトウ! シューティングスターをクリアしたのデ鍵を一個贈呈しマス!』

 

「おー何か手に入った」

 

 兎の影から手渡されたのは一本の鍵。これまた兎を模した形になっていて、怪訝そうにその鍵を見つめるキリヤにソルも後ろから覗く。

 

「多分後で必要になるんじゃないか?」

 

「そうかな」

 

 とりあえずこうして一個目の鍵を入手。

 だがキリヤにはどうにも先ほどキリヤを助けてくれたエネミーのことが引っ掛かっていた。

 魔宮は危険な罠が仕掛けられている。そう聞いていたが先ほどからこの歓迎されている雰囲気、キリヤが怪我をしないように配慮したかのような行動。

 どうにもキリヤの中で魔宮イコール危険地帯が繋がらないように思えた――

 

 ◎

 

 ダン、と苛立ちが篭った靴音が響く。

 

「ねぇウサギのマスコットちゃん。アンタ達はそんなに私を苛立たせて楽しい?」

 

 言ったのは一人の女性。

 目を細め、ゆっくりと眼差しを向けた先にいたのはこのテーマパークを支配するマスコットのウサギの群れ。

 

『ボ、ボク達はソンナつもりじゃないんダ……ただ――』

 

「そういうことを聞いてるんじゃないの。私はアンタ達の背後にある宝箱、それが目的なんだからさっさとそれを開けなさいって言ってるのよ」

 

 手に持った身の丈よりも遥かに大きい斧の柄頭が地面を打つ。

 大きく揺れた床にウサギの群れは驚き、恐れて後退する。女性が指し示すのはウサギ達よりもさらに後ろにある見たこともないほど大きな宝箱。

 宝箱は幾重にも鍵が掛けられており、無理矢理壊したところで仕掛けられている防護魔法によって中身は泥に変えられてしまうだろう。

 だから力ずくでは不可能。それを知っているからこそウサギ達は震えながらも言う。

 

『ムリだよ……コレは全部のアトラクションをクリアしないと開けられないんダ。ソレがマスターと交わした契約なんダ……』

 

 つまりこのテーマパークに存在するアトラクション自体が儀式なのだ。

 厄介なことをしてくれる、女性は心の内で舌打ちをする。

 この魔宮を創り出したのはかつて一つの文明すら創り上げた大魔道士。その大魔道士が自らの技術の全てをあの宝箱に封じ遺したとされている。

 

(あの中身さえ手に入れば他の国を圧倒することが出来る)

 

 その大魔道士は生前精霊魔法や聖遺物と呼ばれる数々の魔道具の研究をしており、たった一人で国力の全てを担っていた。

 ここに来るまでにすでにクローバー王国の魔道士複数人と戦っており、クローバー王国も狙っているのは確実。ならば早く手に入れなければ増援がこの場に辿り着いてしまう。すでに魔力は検知している。

 だがどうにも解除方法が煩わしい――そう思えば上空にどこからかの映像が映し出される。

 

「あれは……」

 

 映っているのは自らが無視したアトラクションをクリアしている少年魔道士の姿。さらにクリアしたことによって鍵を受け取っている。

 宝箱を見ればいくつも施錠されており、あの鍵はその中の一つに違いない。

 楽しんでいるあの様子からして引き続きあの少年魔道士はアトラクションをクリアしてくだろう。

 

「ははは……なかなかに運が回ってきたねェ……」

 

 女性の名は――ベレラファスラ。

 スペード王国が総統と崇める〈七剣総統〉が今、動き出す――

 

 ◎

 

『アトラクションクリアーっ!!』

 

「よっしゃあ! やったなソル!!」

 

「おうっ!」

 

 あれからいくつも現れるアトラクションをクリアしていったキリヤ。

 鍵も残すところ残り一本だと先ほど兎が教えてくれたためにもう終わってしまうのかと残念な気持ちにもなる。

 

 それに最初は「男はやっぱりバカだな」と言っていたソルも楽しんでいるキリヤの姿を見て自分もやりたくなったのかいつの間にか参加して今では協力してクリアしていたのだ。

 ハイタッチするとそのことに気付いたソルはというと、

 

「なっ! ちが、違うからな!! 私はオマエみたいな男認めてないからな!」

 

「何だよ急に」

 

 いきなり離れたソルにキリヤは疑問符しか浮かばない。

 またガニ股になったソルは勢い良くキリヤに指を差すと、

 

「姐さんが認めた風だけど私は騙されないからな!」

 

「何か言えば二言目には姐さんだよなソルって。何でそこまで姫様に拘んの?」

 

「何でオマエにそんなこと教えないと――」

 

 と、一時は否定したがやがてソルは頭を掻くとどこか照れくさそうにし、

 

「姐さんは私に生きる希望を与えてくれたんだ。だから私はシャーロット姐さんのために頑張って、活躍して、認めてもらって、喜んでもらいたいんだ」

 

 それはキリヤがメレオレオナに対する思いと同じように思えた。

 だがソルとキリヤの二人では大きく違いがある。

 ソルはシャーロットの傍にいて頑張ることを決めた。

 対しキリヤはメレオレオナの傍に一度離れることを選択し、対等な立場になるために超えることを決めた。

 ソルの考えは悪いことではない。キリヤと違い、ずっと共にいて従属することを本懐としているのだから。

 

「なあソ――」

 

 声を掛けようとした刹那――トロッコが縦に割れた。

 これによりキリヤとソルは分断され、キリヤが手を伸ばそうにも即座にソルは空間魔法によって転移させられ姿を消してしまった――

 

 ◎

 

「……くそ、分断された」

 

 どういった趣向か、分断され一人になったソルは頭を掻きながら周りを見渡す。

 見れば山、いや火山か。辺りにはいくつもの火山があり、火口から溶岩を垂らし今にも噴火しそうになっている。しかしこれだけ近くにいても熱を感じないのは今までのアトラクションと同じく見た目だけなのだろう。

 しかもこの山は入り口から見えた巨大な山のようだ。線路は平面だが火山は傾斜にいくつも聳えており、上を眺めれば本体の巨大な火山が見える。

 

「フフ……悪いことをしたわね、彼氏とデート中だったのに」

 

「っ!? あ、あんなのが彼氏であってたまるかーっ!!」

 

 女性の声が耳をくすぐる。

 思わずツッコミを入れてしまったが全く気配を感じなかった。

 すぐさまソルは大きく後退し、睨みつければそこに立っていたのは一人の女性だった。

 シャーロットには劣るが整った容貌をしており、だが胸元には刀傷と思われる傷痕が酷く残っている。

 焦げた黒の長髪を靡かせ、肩口から胸元まで露出した黒の衣装を身に纏いその肩にはスペード王国の紋章。

 

「まさか……」

 

「お察しが良ければ分かるわよね。私はベレラファスラ――〈七剣総統〉の一人よ小猫ちゃん」

 

「誰が小猫ちゃんだ!」

 

 相手の言葉にいちいち反応するソルにくすくすと笑うベレラファスラ。

 言葉は勢いあるもののソルの心の内は穏やかなものではない。

 

(〈七剣総統〉……まさか分断された時に出てくるなんて)

 

 キリヤがいればまだしも――そんな考えが一瞬浮かび、ソルは大きく自らの頬を叩く。

 いつの間にそんな軟弱な考えになってしまったのか。男に頼るなど普通の女――男以下の女と同じだ。

 シャーロットが嫌う弱く、虐げられるのが当たり前になっている女と同じになってしまう。

 

「上等だ! あんなヤツいなくったってオマエ程度私がブッ倒してやる!!」

 

「アハハ……威勢のイイこと」

 

 ここで〈七剣総統〉を単独で取ったとなればこの魔宮探索も格段に楽になり、よりシャーロットに認められることになる。

 そう思えば俄然やる気が出て気合いを入れるソルだがまるで物怖じないベレラファスラ。

 

「アンタが鍵を持っていないことは知ってるの。だから簡単に嬲り殺してア・ゲ・ル」

 

 不敵に笑い、ベレラファスラは鈍重な大斧を持ち上げる――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。