オレが愛した女は過剰スパルタアネゴレオン   作:ホスパッチ

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29話「貴様程度」

「あれー……おっかしいなぁ。何でオレ空を見上げてるんスかね……?」

 

 四大精霊ノームの力を手に入れて早速使ってみたがキリヤはメレオレオナに敗北。

 いつもと同じように空を見上げており、日光浴させられていた。

 絶対防御のはずなのにメレオレオナは普通に殴り突破してきてこれには文句ものだが――

 

『謝罪。あの人間、素で我が壁を打ち破りし者』

 

「シンプルにバケモン……でも好き!」

 

 起き上がるとメレオレオナにはまだまだ余裕がありそうで、まだ結婚の道まで程遠いことが思い知らされる。

 だがここで一つキリヤに疑問が頭を過ぎる。

 

「何でレベル3二つを掛け合わしたのにレベル33にならないんだろ……?」

 

「莫迦者が。足したところで六だ。組み合わせられるといっても相性があるのだろう」

 

「なるほど! 流石レオナ様!」

 

 ともあれ恐らくここで今回の修行は終わり、だがキリヤは「そうだ!」と思い出したように懐に仕舞っていた魔道具"何でも仕舞えライオン"を取り出す。

 獅子を模したガマ口の財布になっているこれは専用の異空間にほぼ何でも物ならば仕舞える便利品であり、計算実践の時に闇市で購入していたのだ。

 メレオレオナが訝しげに見る中、中身を手で探るとカメラを取り出し、

 

「レオナ様これ――」

 

「――見つけたわよボーヤ」

 

 言葉を遮るように上空から何かが着地したと思えば砂埃が舞い上がる。

 しかも今の声には聞き覚えがあり、煙を裂いて現れたのは――ベレラファスラ。

 キリヤが魔宮(ダンジョン)で戦った〈七剣総統〉の一人であり、その顔はまだ一応鮮明に覚えていた。

 

「あ、オマエ!!」

 

「ボーヤのおかげで散々な目に遭ったわ。まあ気持ち良かったからイイものの、やっぱり負けっぱなしってのは癪だしね」

 

 今度は棍棒を持ち合わせていないベレラファスラは不敵に笑いながら岩石創成魔法によって前回と同様に岩の大斧を創り出す。

 何せタイミングが悪い。キリヤはノームからのメレオレオナに全力でぶつかったばかりでそう体力は戻っておらず、しかしメレオレオナで甘えた態度など見せられずに跳ね起きる。

 

「レオナ様下がっててください! コイツ一回戦ったことあるヤツなんで――」

 

「下がっているのは貴様だ莫迦者」

 

 前に出ようとするキリヤにメレオレオナは即座にアイアンクロー。

 そうしてキリヤの前に出たメレオレオナはベレラファスラの顔を見て一つ問う。

 

「貴様が莫迦弟子を負かせた女か?」

 

「フフ、そうじゃないけど。でも幸運(ラッキー)ね、ボーヤの師匠まで一緒にいたなんて!!」

 

 ベレラファスラは地を蹴ってメレオレオナに肉薄。

 その速度は魔宮で戦った時よりも遥かに速く、”流れ”を読めていなければキリヤにも分からないほど。

 爆発的な力と加速力によって大斧は横薙ぎに振るわれ、メレオレオナの首を狙う――

 

「レオナ様っ!」

 

「――狼狽(うろた)えるな莫迦者が」

 

 大斧の一撃は的確にメレオレオナの首を捉えたように見えた。

 だが見れば首の寸前で止まっており、何より――メレオレオナが素手で止めていたのだ。

 単純な握力で大斧を砕いたメレオレオナは拳を握り締め、炎の魔力を凝縮すれば――

 

「貴様程度に負けていたならば絶縁していたぞ、キリヤ」

 

 炎魔法”灼熱腕(カリドゥス・ブラキウム)”。

 メレオレオナが放った炎の鉄拳がベレラファスラの顔面に突き刺さり同時に爆発。

 凄まじい威力は留まることなくベレラファスラを吹き飛ばし、その身はすぐさま見えなくなるほど果てしなく飛ばされる。

 

「フン、この程度か〈七剣総統〉。貴様もしかするとあんなのに苦戦したのか?」

 

「そ、そんなわけないっスよ!! あんなのオレでもワンパンでしたよ!! なぁサキムニ達!?」

(うわぁ! さっすがレオナ様ヤバすぎ!!)

 

『う、うン……広い目で見れバ……ワンパンだったヨ?』

 

「広い目とか言うのやめろ!!」

 

 嘘を吐けない性質(タチ)のサキムニ達は一様に目を逸らしてしまう。

 そんな態度を見せられれば当然バレてしまうがメレオレオナもこれにはノーコメント。どうやら勝っただけ見逃してくれるらしい。

 ともあれキリヤは一応ベレラファスラに感謝する。これがもしベレラファスラではなくサイルだったらそれこそ本当に絶縁されていたものだ。

 

「あのまま飛べば王都まで行くだろう。で、キリヤ貴様は何か言いかけていたようだが」

 

「あ、そうですそうです! これです!!」

 

「……カメラ?」

 

 キリヤはカメラを見せるとメレオレオナは怪訝そうな表情を浮かべる。

 対照的にキリヤは嬉しそうにしながら、

 

「レオナ様の写真が欲しいです!!」

 

 と正直に言った。下手に変化球を投げれば拳骨を喰らうこと間違いなしであり、素直が一番なのだ。

 だが冷静に考えればメレオレオナが写真を撮らせてくれるなど考えにくいが――

 

「イイぞ。撮らせてやる」

 

「え、ホントですか!?」

 

「貴様は”流れ”を理解しノームの力も手に入れた。修行としては及第点に至っているからな」

 

「やったーっ!!」

 

 意外にも了承してくれたメレオレオナ。

 いつもならば絶対莫迦者がァ拳骨(キリヤ名称)が来るタイミングだったがキリヤは遠慮なく写真を撮りまくる。

 結局、写真を撮りすぎて拳骨される羽目になったが――

 

 ◎

 

 数日後。

 キリヤは朝食時とんでもなくご機嫌な様子で首から下げたペンダントを見ていた。

 機嫌が悪い時など滅多にないがこれほどまでに機嫌が良いのもなかなかにないのでシィナは後ろから声をかける。

 

「どうしたんですかキリヤさん。ものすごくご機嫌じゃないですか」

 

「ふはは! 聞くが良い! とうとうレオナ様の写真が撮れたんだ! で、現像してもらった!」

 

「やったじゃないパンチボーイ!」

 

 シィナの傍にいたブーリも顔を覗かせてハッピー雰囲気を醸し出す。

 前からキリヤの口からよく出る”レオナ様”が何者なのか〈碧の野薔薇〉では度々議論になっていたのだ。

 その疑問がようやく晴れると思い、シィナも思わず気分が高揚してしまう。

 

「見せてもらっていいですか?」

 

「おう見ろ見ろ! これがレオナ様だ!!」

 

 心底嬉しそうなキリヤがペンダントの写真を見せてくるとブーリは「おぉ!」と言うがシィナは反対に絶句してしまった。

 ――何せ、ものすごく知っている顔だったからだ。

 メレオレオナ・ヴァーミリオン。王族に属するシィナとは例年行われる王族が集う食事会で幾度と無く顔を合わせる見知った仲。

 一年のほとんどを自然界で過ごす王族としても物凄く稀有な女性なのだ。

 まさかそんな人がキリヤの師匠だったとは――いや、だからこそキリヤもあれほどまでに人外な動きをするのか。

 

「ものすっごくワイルドな女性じゃないの!」

 

 ブーリは絶賛するもシィナはどう反応して良いのか分からない。

 と思っているうちに通りかかったソルも興味を示したのかキリヤの後ろからのしかかって写真を見る。

 

「何かすんごく強そうだな!」

 

「だろ!? 昨日なんて魔法騎士団本部から逃げ出した〈七剣総統〉ワンパンで倒してたからな!!」

 

「シンプルにバケモノじゃねえか!」

 

 その話を聞けばソルも驚き、話は盛り上がる。

 確かに昨日拘束されていた〈七剣総統〉が看守を殺害し逃げ出したかと思えばすぐにどこからか吹き飛んできて戻ってきたらしい。火傷を負った重傷らしく、異例のスピード解決の裏にはメレオレオナがいたのか。

 そうなれば納得するしかないが、シィナは震えた声で、

 

「キ、キリヤさんはこういう、その、野生味のある女性が好きなんですか……?」

 

「おう! だって魔法騎士団に入ったのも強くなってレオナ様と結婚するためだし!!」

 

「ッ!?」

 

 キリヤのとんでも発言にシィナは凍りつき、ブーリやソルを筆頭に聞いていた他の女魔道士も寄ってきて女性特有の恋愛脳で盛り上がり始めてしまう。

 いつしかキリヤを中心に会話の輪が広がり、これはキリヤが上級魔法騎士になり始めた頃からだった。

 

 どうにも〈碧の野薔薇〉には温厚派と過激派がいるようでキリヤの実力を認めた温厚派は今ではキリヤと仲良くなっており、何と言うかキリヤはいつしか話しかけられたり手作りのお菓子を貰ったりと仲良しになっていたのだ。それはそれでシィナもショックだが。

 

 一方、男なのにシャーロットに気に入られているに加え隙あらばシャーロットの兜を奪う、抱きつくなどセクハラ三昧をするキリヤに過激派からは今も殺意に似た視線が向けられているがキリヤは微塵も気にしない。

 

「……何を騒いでいる」

 

「あ、姫様!」

 

 メレオレオナの話で盛り上がっている中、シャーロットが姿を見せる。

 すぐに気付いたキリヤは振り返り、何も言わずババンとメレオレオナの写真をシャーロットに見せれば、

 

「貴様のその行動力にはいつも驚かされるな……」

 

 すでにシャーロットは知っていたのかそれほど驚きはない様子。

 代わりに一枚の紙を見せると、

 

「キリヤスフィール、シィナ、二人に任務だ」

 

「おお! 早速ノームの力試せるのか!」

 

 任務という言葉に気分を昂ぶらせたキリヤの肩には焦げた色の外套を纏った白い鼠がいて、キリヤに合わせて拳を挙げる。

 その秘める魔力は凄まじく、どう見てもただの鼠ではないことはシャーロットも気付き、

 

「四大精霊のノーム……そんなものまで手に入れたのか」

 

「レオナ様との修行のおかげっス!」

 

 本物のノームにシャーロットさえ驚くもこほんとすぐに咳払いし、

 

「……ともかく、今回の任務は山道にいる危険生物の排除だ。近くの村を荒らし、明確な被害を出しているために魔法騎士団が駆除することになった」

 

「どんな生物なんですか?」

 

「村人からの聴取によれば全身棘だらけの黒い鱗に包まれた四足歩行の生物らしい。山岳地帯を生息地としており、食物を求めて人里に下りるらしく、中でも狙われるのは人が作った作物のようだ」

 

「見た目の割には草食なんスね……」

 

「これを持って行け」

 

 言ってシャーロットがキリヤに手渡したのはその村の作物だろうヤマダイコン二つ。

 手渡されたキリヤはヤマダイコンを剣のように両手に構え、

 

「……もしかして、これ持って山走れってことですか?」

 

「敵は作物の匂いを嗅ぎ分けて行動しているらしい。誘き出すには一番の手だろう」

 

「よぉし! 行くぞシィナ!」

 

「は、はいっ!」

 

 ダイコン二つ持ってキリヤは拠点から飛び出し、シィナも言われるがままその後を追っていく――

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