オレが愛した女は過剰スパルタアネゴレオン   作:ホスパッチ

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33話「自宅謹慎」

「これでもう大丈夫だ」

 

 果実を溶かした水溶液を注射器でキリヤに注入した女医は安堵を込めて言う。

 見ていたシィナも胸を撫で下ろすとキリヤはカッと目を見開いて突然起き上がる。

 

「おお!! 復活!! オレ超元気になった!!」

 

『ご主人ー』『主人ー』『じンー』

 

「うわっぷ! 分かった分かったから一旦離れて!」

 

 今では懐かしいと思える毛玉状態。

 引っ付いてくるサキムニ達に一旦離れてもらいつつ、部屋の中でも外でもキリヤの様子を見ていた〈碧の野薔薇〉団員に頭を下げる。

 

「皆、ありがとうございました!」

 

「パンチボーイ、お礼を言うならまずシィナによ。アナタの危機に一番に走り出したんだから!」

 

「い、いえ、元はと言えば私のせいでキリヤさんは高熱を起こしてしまいましたし……」

 

「気にすんな! ありがとう!!」

 

 シィナの手を握ってぐわんぐわん握手をしながら手を振るうと何故かシィナは顔を赤らめていて、今の状態から言えばシィナが高熱を患っているようだ。

 と、今度はブーリに肩を叩かれたかと思えば親指で後ろを指され、見るとそこにはソル。

 

「ソルちゃんも頑張ってくれたのよ? 皆に声をかけてくれたのもソルちゃんだし」

 

「ありがとうソル!!」

 

「ぎゃーっ抱きしめてくんな!」

 

 あれだけ普段ツンケンしているのに助けてくれたソルにキリヤは感動を覚え、親愛の抱擁(ハグ)

 キリヤよりも普通に身長は高い男勝りなソルだが抱きしめ心地で言えば女性らしい柔らかさを持っている。

 

「ソルって意外に女なんだな!」

 

「何だその発言くたばれ!!」

 

 ついでに胸を揉めばまさかのグーパン。

 ふごご、と呻きながらキリヤは追撃を制止しているとまだお礼を言い忘れていた人がいて思い出すとソルの拳を抑えたまま、

 

「姫様もありがとうございました! 熱に魘されてる間手を握ってて貰ったし、色んな話聞かせて貰ったし」

 

「なん、だと……この羨まし――いや恨めしい!!」

 

「ぎゃーっ! やめろやめろ! 病人だったんだぞ!!」

 

「すでに過去形だろうが!」

 

 ベッドでソルに関節技を極められ呻くキリヤに『何故言ったんだ』と言わんばかりに呆れた表情を見せるシャーロット。

 様子を見ていた〈碧の野薔薇〉団員もキリヤの復活に笑い、脚が完全に極められているもののキリヤはこれまでにないやる気に満ちていた。

 

「これでまたバリバリ働けます!」

 

「――いや、それは無理だ」

 

 張り切ったところでいきなりシャーロットに止められる。

 キリヤはあまりに唐突な言葉に呆気に取られるがシャーロットは言葉を続ける。

 

「前に国王の一件があったがあの件を国王がもう一度問題にしてな。このまま許しては国王の威厳に関わると言い出したのだ」

 

「器ちっさ……」

 

 思わずソルも言ってしまうがそういうことは思っても言ってはいけない。

 他の〈碧の野薔薇〉団員もその話に理不尽さを訴えるがキリヤは甘んじて罰を受けると顔を俯かせる。

 

「それで罰って何スか……?」

 

「一週間の謹慎だ」

 

「……謹慎って何ですか?」

 

「まあ強制的に取らされる休みってところだな」

 

 ソルのざっくりした説明。

 その説明に何も違和感を覚えないキリヤは「なるほど」と頷き、

 

「だったら遊びに行ってきます! わっふーっ!!」

 

 すぐさま部屋から飛び出して出て行ってしまう。

 止める暇もなかった行動力にシィナも声を掛けられず、静かにシャーロットは顔を伏せると。

 

「今のはソルの説明が悪い」

 

「す、すんません!」

 

 ◎

 

 呼び止められた気はするもののキリヤはずっと来てみたかったところへやってきていた。

 それは〈黒の暴牛〉の拠点。

 何度も補修されているのか見た目はかなりボロく、正直廃墟にも見えなくはない。

 

(アスタも頑張ってるんだろうな……)

 

 あのボロさもきっと何か深い事情があってこそ。

 アスタの勤務地はそれだけ厳しい環境なのかと思いながらキリヤは扉をノックすると――ブッ壊れてしまった。

 

(えええええええええええっ!! 脆すぎ!!)

 

 キリヤも驚いているうちに〈黒の暴牛〉拠点内にいたメンバーと目が合い、一時沈黙。

 中には見たことあるバネッサがいて、何故か下着姿だが。

 すると状況をどんな風に捉えたのか見る限り不良(ヤンキー)な青年が立ち上がれば、

 

「んだコラァアアアアアア!! カチコミかァアアアアアアアアア!?」

 

「いや違うんスよ! 扉脆すぎてノックしたら壊れたんですって!」

 

「テメェそのローブ……〈碧の野薔薇〉じゃねえか! やっぱり〈黒の暴牛(ウチ)〉にカチコミかァ!!」

 

「あ、野薔薇の坊や久しぶりじゃないの」

 

「バネッサ姐さん久しぶりっス! で、カチコミって何スか?」

 

「今テメェがしてることだァ!!」

 

 話も聞いてくれず不良青年が手の平に炎を灯す。

 炎は球体に形取れば不良青年の手に収まり、キリヤに向かって思い切りブン投げられる。

 炎魔法”爆殺轟炎魔球”。

 凄まじい回転を持ちながらキリヤに向けて一直線に飛んで来た炎球。

 対しキリヤは避けることもなく、真正面から炎球を受け爆発。

 

「ちょ、何してんのよ童貞不良!!」

 

「ど、どどど童貞じゃねーし!! カチコミだったから受けて立っただけだ!」

 

「野薔薇の坊や大丈夫!?」

 

 いきなりの攻撃に反応が出来なかったのかとバネッサは心配する声を上げる。

 だが爆煙沸き立つ中でキリヤは平然と無傷で「だいじょーぶっ!」と飛び出す。

 

「オレがここにきたのは友達のアスタくんと遊びたいなって思って来たんですけどーっ!! アスタくんいませんかーっ!!」

 

「うるせぇ!!」

 

 魔法を受けても無傷なキリヤに驚くバネッサと不良青年だったがそれより部屋の奥にいただろうヤミが騒ぎを聞きつけて姿を現す。

 相変わらずの筋肉質な身体にキリヤも憧れるが今回はそうではなく、ヤミもキリヤに気付いたようで、

 

「あ、デシゴレオンじゃねえか。入団試験以来か?」

 

「そうっスね! あとそのアダ名レオナ様に似てて自分好きっス!」

 

「で、何で〈碧の野薔薇〉のオマエがいんの?」

 

 ヤミのおかげで不良青年も冷静になったのかこれでようやく話が進む。

 アイアンクローされた状態だが。

 

「ははは! レオナ様のアイアンクローに比べればこんなもの全然耐えられますよ!」

 

「いやそんなこと聞いてないから。てかあの扉弁償しろよ」

 

 というわけでノームやサキムニ達に扉の修理を頼み、改めてキリヤは用件を言う。

 

「自分何だかんだ国王に嫌われちゃって謹慎中なんですよ! で、暇だからアスタと遊びたいなって思って来ました!!」

 

「そこは謹慎しろよ」

 

「坊やだったらフィンラルに連れられてラックと一緒に合コンに行ったんじゃなかったかしら」

 

「えぇ!!」

 

「でも来ちゃったんだからゴハン食べていけば?」

 

「今夜は美味しいウサギ鍋が出来そう……」

 

『ご主人助けテーっ!』

 

「ああ! ウチの子を鍋にしないでくれませんか!?」

 

 チャーミーと呼ばれた小柄な少女がいつの間にかサキムニ達を捕まえており、キリヤは焦って取り戻しに行く――

 

 ◎

 

「だからオレはレオナ様と結婚するためにレオナ様を超えるんスよ!!」

 

「……とんでもねー物好きがいたもんだ。相手はアネゴレオンだぞ」

 

「レオナ様だからイイんスよ!!」

 

「イイわねぇ一途って」

 

 何だかんだで〈黒の暴牛〉で食事を共にすることになったキリヤは気付けばヤミ達にメレオレオナの話をしていた。

 どうにもメレオレオナが弟子を取るということがあまりに珍しいのか、メレオレオナを知る人には全員に聞かれている気がする。

 同席していたバネッサもキリヤの一途さに頷くもヤミはそれに同調しない。

 

「――オマエは初恋に囚われてるだけなんじゃねえか?」

 

「なん、ですと……」

 

「アネゴレオンに盲目になってるだけで他の女を知らねえんだろ」

 

「知ってますよ! 女子率九割の団にいますし!!」

 

「……それもそうだったな」

 

 一瞬忘れられていたようだが〈碧の野薔薇〉は九割女性で形成された団なのでキリヤは女慣れしていると自負出来る。

 だがそれでもメレオレオナ以外結婚したいとは思えず、しかしヤミはというと。

 

「よし、社会勉強しに行くか。女遊びってヤツを教えてやる」

 

「随分と唐突ですね……いやマジで!」

 

 首根っこを掴まれたと思えばヤミに連れて行かれてしまい、どこへ行くのかまた拒否権もなく連れ去られていく――

 

 ◎

 

「……で、ここって何スか?」

 

「見りゃ分かんだろ――キャバクラだ」

 

 キリヤは夜の繁華街に連れて来られたと思えばやけに露出度の高い服を着た女性が働く店に連れて来られていた。

 ソファに座らされたキリヤの両側には店員と思われる女性が座っていて、ヤミの両側にも女性が座っている。何だかよく分からないがキリヤにとっては混沌(カオス)な状況だ。

 

「コレがアレですか。俗に言う”女遊び”っていうヤツですか?」

 

「おう。日々のストレスを女達と酒飲みながらドンチャン騒いで発散するんだよ」

 

「そーそー、ヤミさんはこの店によく来てくれるんだよねー!」

 

「ヤミ団長って意外に女遊びとかするんスね」

 

「オレも男だからな。この年齢(トシ)で女遊びの一つや二つしてなかったら逆に怖ぇだろ」

 

「……そういうもんスかね」

 

 そういうもんだろ、とヤミが返すうちにキリヤの口にマスカットが一粒「あーん」と入れられてしまう。

 キリヤは未成年で酒も飲めないのでキリヤはヤミの奢りで果物を食べているのだ。絵面は完全に餌付けだが。

 

「それにしてもボクチャンはどうして〈碧の野薔薇〉に入ったのん?」

 

 話しかけてきたのは右側に座る女性。

 淡い蒼色の髪が特徴的で毛先を丸めてロールを作っており、可愛らしいお姉さん的な顔立ちで胸も大きい。

 話しながら魔法でナイフを浮かせて果物の皮を器用に剥いているのを見ながらキリヤも答える。

 

「団のこと全然知らなくて適当に選んだらそうなったんスよー」

 

「キャハハ! ボクチャン可愛いねぇ! ホラホラ、いっぱいお食べー」

 

「あ、ありがとうございまふ……」

 

 いっぱい果物を口に詰められるキリヤ。

 これが女遊びなのかと思いながらキリヤは促されるままパクパクと果物を食べていると――

 

「……んん?」

 

 ドタドタと足音が聞こえてきたと思えば店に突入してきたのは〈碧の野薔薇〉の団員達。

 シィナやソルを筆頭に何故か全員サングラスをかけており、キリヤは何故ここにいるのかこの状況を何一つ分からないまま、

 

「未成年だと知りながら接待したとして――風営法違反で逮捕します」

 

「えぇ!?」

 

 困惑する店内で次々と店員に手錠がかけられていき、ついでにヤミまで手錠にかけられてしまう。

 

「え? オレ団長なんだけど?」

 

「未成年と知りながらこんないかがわしい店に連れてきた……監督不届き現行犯で逮捕します」

 

「おい今作んな法律を――ってマジか。マジで逮捕する気かオマエら」

 

 キャバクラでまさかの団長逮捕。

 クローバー王国始まって以来のとんでもない不祥事がキリヤの目の前で巻き起こる――

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