オレが愛した女は過剰スパルタアネゴレオン   作:ホスパッチ

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46話「開国と真実と後輩誕生」

『正直一目惚れでいつ登場しよーっかなって悩んでたんだけどやっぱり全部片付いてからの方がタイミングも良いと思って待ってたんだけどかーっこよかった! あれ何て言うの? 身体進化魔法だっけ? ノームとジブリンを纏ってた鎧イイねぇーっ! あーしも早くだーりんに纏われたいってゆーかー――』

 

「あ、あの、ウンディーネ? 思ってたキャラと全然違うんだけど……」

 

『ウンディーネ、ムカシからあんなカンジ』

 

 物凄い勢いでマシンガントークをされてしまい珍しく圧されているキリヤに対してジブラウストはどこか懐かしさを感じている様子。

 本題の魔石に関する話に行きたいのだが当のウンディーネは久しぶりの会話で止まらず、ジブラウストに近付いては肩を叩きまくる。

 

『ジブリン! あんたもよーっやく前に進む気になったのね! ずっとうじうじうじうじうじしてたからあーしがいちいち言うのもメンドくさいし放置してたけどようやくこれであーしのここでの役目は終わり! これからあーしはだーりんについていきまーすっ!』

 

「え?」

 

 ついていけず会話の流れで次はキリヤの魔導書にウンディーネが増えれば光り輝き、新たなページが刻まれる。

 あまりの行動の早さに呆気に取られてしまい、そのうちにウンディーネが首から下げていた魔石のネックレスを外してキリヤに手渡す。

 

『あ、だーりんコレあげる。あーしにはこれいらないし』

 

「いやこれ王女様に貰ったものとかじゃ……」

 

『んーん。どっかで拾ったんだけど欲しいならあげるー』

 

「ありがとな」

 

『いーえーイイのよこれくらい』

 

『ウンディーネ、ここからデていくのか?』

 

『うん』

 

 ノームに凹んだ身体を修理されていたジブラウストはウンディーネの言葉に度肝を抜かれたように呆然とする。

 その様子にウンディーネは息を吐く。

 

『確かにここは姫ちゃんやジブリンと一緒に過ごした大事な場所。だけどもう昔みたいな場所じゃないし今はトロール達がここで新しい文明を築いてる。姫ちゃんの最期は確かに悲惨だった。でもどんな形であれ姫ちゃんはきちんと人間として命を全うしたんだ。あーしらは人よりも当然長く生きるからいつまでも割り切れないままじゃいられないよ』

 

『でも、それだとオウジョサマがいたアカシ、どこにもなくなる……』

 

『姫ちゃんと同じ時間を生きたあーしがいる。あんたがいる。あーしら自身が証なの。だからさ、あんたがそんなカオしてると姫ちゃんいつまでも安らかに眠れないよ。それにイイ加減出来なかったお葬式してあげようよ。あんた変わりたかったんじゃないの?』

 

 近付いてじっとジブラウストの目を見つめたウンディーネ。その視線を受けてジブラウストもやがて頷く。

 

『……うん。オデ、カわる。キリヤ、オデもついていく。ついていってオウジョサマがミたかったセカイをミる』

 

「おう、これからよろしくなジブラウスト。ウンディーネ」

 

 ジブラウストとウンディーネ共にキリヤと拳を合わせればウンディーネの声はさらに高らかなものとなる。

 

『そんじゃージブリンもここから卒業ってことで姫ちゃんしめっぽいの嫌いだったし皆巻き込んで盛大な宴にしようよ! ね、だーりんも協力してくれる?』

 

「ああ、勿論だ。サイルも頼むよ」

 

「ええ、任せて」

 

『我らも謹んで協力させてもらう』

 

「じゃあ盛大に騒ごうぜ!」

 

 湖から解放されたトロールも起き上がり、キリヤが拳を突き上げればつられてこの場にいた者達も一斉に拳を突き上げる――

 

 ○

 

『ウンディーネ、罪深き我らを許して貰い感謝の念を――』

 

『イイのイイのあんなの。マジの盗人だったらブッコロ確定だったけどあんたらのことは何となく事情があること分かってたし!』

 

 湖から地底帝国本土に出ればトロール達が用意した大きな炎を中心に巨大な肉が焼かれ、トロール達も含めてキリヤ達は盛り上がっていた。

 

「何の肉か分からねえけど美味いなこれ!」

 

「口に合って良かったわね」

 

 メレオレオナとの修行の際は基本野生の肉焼きは基本だったので特に抵抗もなく骨付き肉に齧り付き、サイルは上品に皿に盛った肉をナイフとフォークで食べている。

 そこにせめてもの贖罪として宴席を走り回って料理などの準備や酒の追加などを行っているフィオレナがやってくる。

 

「キリヤ先輩サイル先輩お疲れ様です! お水か果酒はいかがですか!?」

 

「あー俺未成年だからなぁ。あと先輩って?」

 

「やっぱりお世話になるんですし先輩って呼ぶのが筋なのかと!」

 

「一応言っておくけど私は魔法騎士団の人間じゃないわよ?」

 

「え、ホントですか!? でもあんなに強いなんてマジ尊敬です!」

 

「ず、随分と変わったわね……」

 

 水を注ぐフィオレナの姿にサイルも目を丸める。

 あれだけ地底帝国の女王を気取っていたのに今では完全に後輩と化していて、その変化にはキリヤも驚かされている。〈七剣総統〉という重みを捨てたために本人は気楽そうでいるが。

 

「それでは失礼しますっ!」

 

「おう、頑張れよー」

 

「はいっ!」

 

 一礼してフィオレナは走り去っていき、再びサイルと二人になればキリヤはサイルへ顔を向ける。

 

「地底帝国の魔石も手に入ったし、この宴会が終わったらオレ帰るけどサイルはどうするんだ?」

 

「私はもう〈白夜の魔眼〉をやめるわ」

 

「……マジで。あんなにクローバー王国のことを憎んでるのに?」

 

「幹部以上はクローバー王国だけじゃなくて人間自体を恨んでるわ。その点は私も同じ。でも私はアルーグが……キリヤが生きていてくれればいいの。私はそれだけでいいわ。今だから言うけどリヒトはあなたが〈白夜の魔眼〉側にならなければ切る選択をした。私がそれを許すはずがない」

 

「何でそこまで俺のためにしてくれるんだ? 俺ってばおまえのこと全く覚えてないし何もしてやれてないと思うんだけど」

 

「愛してるから、それ以上に理由は必要ないわ。あなただって頑張っている根底にあるのは『レオナ様』への愛でしょ?」

 

「うん。でも抜けた後はどうする気なんだ? 行くアテとかあるのか?」

 

 フィオレナはまだしもサイルは実際に国王暗殺未遂を行い、現状クローバー王国の中で最大の咎人と称される〈白夜の魔眼〉の一員。仮に自首したところでその罪はあまりに重く、どれだけキリヤが言っても覆りはしないだろう。

 だが考えがあるのかサイルは微笑み、

 

「……キリヤ、今から少しだけ難しい話をするわね」

 

「……?」

 

「私やリヒトや〈三魔眼(サードアイ)〉、あなたも含めて人間じゃないの。元々は人間より魔力に愛されたエルフって種族なの。過去に人間に裏切られ殺されて魂が転生して今はあなた以外人間の器に宿ってる。その人間の器には元々の人間の魂もあるからつまり一種の二重人格のようなものね」

 

「一つの身体に二つの魂……?」

 

「ええ。中でも私は魔力の後押しもなしに転生して……って、あなたには論より証拠を見せた方が良いわね」

 

 言ってサイルは瞼を閉じる。

 するとサイルの身体は光の粒子に包まれ、肉体に変化が訪れる。

 二十代に見え長身だったサイルの容姿は小柄な少女のものへと変化していき、その容姿にキリヤも驚く。

 黒髪をボブほどの長さにした愛らしい少女は――

 

「シィナ……?」

 

 キリヤと共に〈碧の野薔薇〉に入団したシィナ本人だった。

 変身魔法でもなく、ゆっくりと瞼を開いたシィナはキリヤの顔を見るなり驚き、

 

「え、あれ!? どうしてキリヤさんがここに? それにここは一体……?」

 

「シ、シィナだよな……?」

 

「はいもちろんです! ですが――」

 

 と、シィナの言葉の途中で再び光り輝き、その容姿はサイルのものとなる。

 あまりの変化に驚かされるばかりだが、

 

「私とシィナは記憶の共有が出来ないの。最近になってようやく私の声がシィナに届くようになって一方的だけど様子を見ることが出来るようになったけど……とにかく私が〈白夜の魔眼〉を抜けてもシィナとして魔法騎士団に居続けることが出来るわ」

 

「氣を感じ取れるようになったけど全然分からなかった……」

 

「本当に多重人格なら気配で分かるけど私の場合は姿も魂も完全に変えてるから気付かなくて当然よ」

 

「……ん、姿も魂も入れ替えてるから気付かない……?」

 

 その言葉に何やら引っ掛かりを感じたキリヤ。

 見逃せないはずの言葉で何かの真相に行き着きそうになるも如何せんこういったことに頭が回らない。散々馬鹿と言われてきたが流石に自覚症状が出て来そうになる。

 

「キリヤ……?」

 

「な、何でもない」

 

 心配そうに顔を覗いてくるサイルを慌てて誤魔化すも一抹の不安が過ぎる。

 サイルは迷う様子を見せるキリヤに今度は二人で一つになった魔導書を手に持ち向ける。

 

「これはあなたが持っていて。私はここから出るとシィナに変わって見ることに専念するわ。それに精霊達もきっとあなたといることを望んでいると思うから」

 

「申し訳ないけどそれは出来ねえよ」

 

「……どうして?」

 

「サイルの魔導書にいる精霊達と絆を紡いだのはアルーグだ。そんでオレの魔導書にいるのは今のオレのことを認めてくれた精霊達だ。だからオレの力がアルーグを超えたって時、(アルーグ)よりも(オレ)がイイって思ってくれた時に来て欲しいと思ってる」

 

「本当に頑固ね」

 

「今のオレじゃ持て余しそうだしな。……ぶっちゃけサイルもそう思ってんじゃね?」

 

「…………ちょっぴりね。でも彼は本当に強かったから」

 

「ぐぬぬ、いつか必ず超える!」

 

 いつの間にか魔導書から出てきていたアルーグの精霊達は少し寂しげに、しかし納得した様子で魔導書内に戻り、一つになっていた魔導書も二つに分離する。

 元に戻った手帳サイズの魔導書がやけに懐かしく感じながらもキリヤは笑い、

 

「なあサイル。もしオレの手が届かない場所でシィナに何かあったら助けてやってくれねえか?」

 

「ええ、構わないわ。この子に死なれれば私も死ぬし」

 

「それもそっか。でもありがとな。最初はめちゃくちゃ普通に敵だったけど話してみればサイルは優しいヤツだ。今更だけど」

 

「良いのよ。でも私が優しいのはあなたにだけ。他の人間にはこうはいかないわ」

 

「そうだとしてもオレはおまえのこと優しいって思うよ」

 

『なーにしんみりしてんのよだーりん! あーしと踊りましょーよーっ!』

 

「おう!」

 

 盛大な宴はさらに盛り上がりを見せており、炎を囲んでトロール達が踊りを見せていた。

 そこにキリヤもウンディーネに手を引かれて参加し、夜通しで飲んで騒いでを繰り返した――

 

 ○

 

 翌日――

 

「――ご苦労様、〈白夜の魔眼〉を退けて無事に魔石を手に入れられたようで何よりだ。それで……その子が今回捕虜にした〈七剣総統〉の一人かい?」

 

「はい。そこでオレからの願いなんですけどコイツ行くアテもないから〈碧の野薔薇〉に置いてやりたいんです。勿論コイツが知ってる情報全て差し出すのも了承してるし相当強いしどうかお願いします!」

 

 懸命に頭を下げるキリヤだがその願いを聞いた上でユリウスは首を横に振るう。

 

「……地底帝国だろうがそこはクローバー王国の領地。彼女が侵略行為をしたことに変わりないから厳罰は当然のことだよ。〈七剣総統〉はスペード王国の要、むやみやたらにこの国の中で自由を、しかも魔法騎士なんていう立場を与えることは出来ない」

 

「そこをどうにかお願いします! まだオレの潔白が証明出来たわけじゃないですが何かあれば必ずオレが責任を取りますから!!」

 

「先輩……」

 

「僕は魔法帝でこの国を守る義務がある。そして君もまたその義務を背負う者だ。敵国の有力者を引き入れるのがどれだけ危険なのか分かるね?」

 

「……はい。それでも今フィオレナはオレの”手の届く範囲”にいて助けられるんです。だからオレは自分の意思に従いフィオレナを見捨てません! ここで見捨てるのはオレの信念が許せないんです! お願いします!」

 

 再び頭を下げるキリヤにユリウスも困った表情を浮かべる。

 やがて考えがまとまったのかキリヤの肩を叩く。

 

「……正直もっと強く言いたいところだけど――君は充分過ぎるほど実績を示している。その褒美と言っちゃなんだけど君が信じるなら私も一度信じてみよう」

 

「ホントですか!?」

 

「ただしまずは情報収集から。そして元〈七剣総統〉の肩書きは隠して執行猶予付きでキミの監視のもとで行動させる。大前提として〈碧の野薔薇〉に入団出来るかはシャーロット次第だけど」

 

「やったなフィオレナ! これでおまえの魔法騎士だ!」

 

「ありがとうございますキリヤ先輩!」

 

「話聞いてる? まず色々としてもらわないといけないんだけど――」

 

 魔法帝そっちのけで喜び合うキリヤとフィオレナの二人にユリウスも「まあ今は良いか」とその様子をしばし見るのだった――

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