オレが愛した女は過剰スパルタアネゴレオン   作:ホスパッチ

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59話「替え玉作戦」

「キリヤさん! 流石に公衆の面前でサラマンダーは駄目です! 例え団長を守るためでもやりすぎですから!」

 

「えぇー……」

 

「でも先輩の気持ち分かります! 何かキモかったですしあの男爵芋!」

 

「フィーちゃんはちょっと黙ってて!」

 

 ”サラマンダーの吐息”で騒然とする市民達だがそんなこと構わずキリヤはシィナから怒られていた。ついでにフィオレナも。

 ドレスを手に戻ってきたソルもこれには驚き、

 

「うわ何だこの騒ぎ! 姐さんどうしたんスか!?」

 

「些細なことだ。あと団長と呼べ」

 

「はい姐さん!」

 

「いや些細なことじゃなかったでしょ! というかまだあのオッサン締め上げられてるし止めなさいよっ!」

 

 見ていたアスタは未だに荊に締め上げられているバルトン男爵を指差しながらソルに近付くも躓いてソルの谷間にダイブイン。通常の女性なら殴り飛ばすかビンタものだがソルはアスタを抓み上げ、

 

「あ、オマエ戦功叙勲式にいたチビっ!」

 

「誰がチビじゃあああああっ!」

 

「アスタ! オレ前にソルの胸揉んだことあるからオレの方が上だな!」

 

「何と競ってんの!?」

 

「そんなことより姐さん! とてつもなくイカすドレスを見つけたんスよ~っ! 絶対似合いますから!」

 

「や、やめろソル……っ!」

 

 アスタを放り投げたかと思えばソルはシャーロットの手を退いて簡易試着室に突入。どったんばったんと中で大暴れした後に出てきたシャーロットの服装はソルが持ってきたドレスへと変化していた。

 蒼を基調とした薔薇の装飾が成されたドレスはシャーロットの美しさをより一層引き立てる。

 

「イカすっス姐さんっ!」

 

「やっぱり姫様は美人っス!!」

 

「ドチャクソ綺麗です団長!」

 

「フィーちゃんその表現だとあんまり褒めてない気が……でも綺麗です団長!」

 

 その姿を見た〈碧の野薔薇〉団員達は大盛り上がり。

 一方野次馬と化していたアスタも含め男達もその美貌に盛り上がるが――

 

「騒ぐな男共見世物ではないぞ……ッ!」

 

「姐さんの美しさに盛り上がっていいのは〈碧の野薔薇〉の団員だけなんだよ! 見るな見るな!」

 

「だったらオレは最大級に盛り上がってイイみたいだし精霊達と一緒に――」

 

「絶対やめろ。オマエだけで完結しろ」

 

「えぇー……」

 

 今からサキムニ達の協力も得てパレード風にシャーロットを讃えようとしたが先読みされたのか即刻止められる。だがこういった場合止まってくれるのは良識ある者だけで。

 魔導書からトゥルーが出てくればにやにやと悪い笑みを浮かべ、

 

「やっぱりボクチャンの想いは形にしないとね!」

 

「何をする気――」

 

「サラちゃんと一緒におっきな花火で大宣伝だよ~んっ!!」

 

 精霊複合魔法”ニャンマンダーの大花火”。

 トカゲ状態に戻ったサラマンダーを肩に乗せたトゥルーが火球を夜空へ打ち上げれば天高くで特大の花火が爆発。

 しかもその花火には『ここにとびっきりの美人がいるにゃ~んっ!』と書かれており、それを見たシャーロットはわなわなと震える。

 

「貴様何をしている……っ!」

 

「だってぇ〈碧の野薔薇〉団員だったら盛り上がってイイワケだしぃ~。ね~ソルちゃん!」

 

「やりすぎだけどな!?」

 

 ソルも予想以上の盛り上がり方をされれば少しテンパっており、しかしキリヤはうんうんと頷く。

 と、ここでトゥルーの出で立ちを見ればキャバ嬢時のドレスとはまた違ったドレスを身に纏っていた。

 遊牧衣装と言えばいいのか。全体的に紫を基調とし、ところどころ猫を模した刺繍が施され、スカート部分には深いスリットが入っている。ぴっちりとしたサイズのためにトゥルーの身体のラインの良さをより引き立てていた。

 

「あ、トゥルーも衣装チェンジしたんだな」

 

「お祭りだからね~、どうどう可愛い?」

 

「おう可愛いな。どっちかと言えば綺麗系?」

 

「むふふ~ボクチャンは素直でよろしい!」

 

『だーりんあーしも見てみてーっ!』

 

 トゥルーに頭を撫でられていれば今度はウンディーネが魔導書から飛び出してくる。

 基本全裸で水色なウンディーネだが今は器用に身体の水を形状変化させてドレスを作り出しており、髪型もサイドテールへと変化して肌の色や髪色を自ら着色して創り出していて完璧な人間の少女となっていた。

 

「へー器用なモンだな! もちろん可愛いぞ!」

 

『いえーいっ! サキムーも見たげて! ほらほらサキムー恥ずかしがってないで出てきなよー』

 

「う……うン」

 

 魔導書から出てきたサキムニは人間の姿になっていた。

 兎精霊強化魔法”人間化(ヒトカ)”。

 前に一度少女の姿になっていたのは見ていたが今のサキムニは完全に女性であり、恐らく全てのサキムニが一人に集中した結果なのだろう。その証拠に――

 

「デカイな!」

 

 キリヤよりも身長が高く、二メートルは余裕で超えていて頭頂部にある耳も含めたら三メートルはあるのだろうか。

 黒い髪を膝裏ほどまで伸ばしており、恥ずかしそうに容貌を手で隠しているもその隙間から見ても分かるほどの美女だ。メイド服を基にしたドレスも可愛らしく、その身長もあって視線は一気にサキムニに注がれる。

 

「うぅ、恥ずかしいよご主人っ!」

 

「ぼふっ!? だ、大丈夫だ……今のオマエはどこに出しても恥ずかしくない美人だぞ」

 

 高身長のサキムニに抱きしめられれば面白いほどに視界が黒く染まり、何とか宥めて引き離すと見ていた野次馬達から「こ、今年の〈碧の野薔薇〉はレベル高いな……」などと声が聞こえてくる。

 と、今度はキリヤの掌に乗ったのは小さなゴーレムだった。

 

『これがおマツり……』

 

「ジブラウスト? えらくちっちゃくなったなオマエ……」

 

『僥倖。核さえあればジブラウストは維持出来る。我、それにより小さい形態を創った』

 

「ナイスノーム! これでジブラウストも普段外に出られるな!」

 

『うん!』

 

 小さくなったジブラウストはウンディーネの頭に乗り、これでより一層祭りを楽しめると思えば野次馬が多く集まってしまった休憩所にヤミが現れる。

 

「何だとびっきりの美人がいるって花火上がったから来てみればオマエかよトゲトゲツンツン女王。つうかどうしたそんなキラッキラな恰好して」

 

「貴様こそ何だその奇妙な出で立ちは……」

 

 至って冷静に言うシャーロットだが本当にヤミの恰好はよく分からなかった。

 上半身裸に”暴れ牛”と書かれた法被を身に纏って下は(フンドシ)。シャーロットの恰好を笑うヤミだがそれ以上に奇天烈な恰好をしているのには間違いない。

 

「小僧共も盛り上がってるか?」

 

「はいヤミ団長!」

 

「デシゴレオンは……言うまでもないな。どんなハーレム築いてんだ」

 

「……? 楽しいですよ祭り!」

 

「そりゃそんだけ女侍らしてて楽しくないとか言ったらウチのアッシーくんが死ぬぞ」

 

 何やかんやトゥルー達に抱きつかれたままのキリヤは言葉の意味が分からず首を傾げるもフィオレナが、

 

「先輩って強いし人望もありますけどハイパーモテますよね……まあアタシの時みたいな感じで声かけてれば当然なんでしょうけど。しかも行動アリですし」

 

「モテ……?」

 

「皆に好かれるってことですよ」

 

「オレも皆好きだけど? 皆モテまくりってことか?」

 

「いやそういうわけじゃなくて! というかそれ絶対ヨソの男の前で言っちゃダメですからね!? 今の先輩が言ったらブチ殺されますよ!?」

 

 フィオレナが何を言いたいのかイマイチ理解出来ないでいるキリヤ。聞いていたシィナもこれには苦笑し、その間にもシャーロットの方では何だか対戦が行われていようとしていた。

 様子を見にキリヤはヤミの隣に立ち、

 

「えと、これ何してるんスか?」

 

「よく分からんがバネッサがトゲツン女王に突っかかって酒飲み対決になったんだよ。トゲツン女王酒弱いってのに」

 

 現にそう言った途端それまでに飲んできていたのかバネッサがダウン。次いで飲んだシャーロットもダウン。

 倒れたシャーロットの酒をヤミが飲み、両者引き分けに終わってしまった。

 

「何て虚しい戦いなんだ……」

 

 終わった後に立つ者なしという光景を目撃してキリヤも息を飲む。

 やがて市民達が騒ぎ始め、

 

「大広間で魔法騎士団の功績発表が始まるぞーっ!」

 

「今回は団長全員集まるんだってよ!」

 

「〈紅蓮の獅子王〉と〈紫苑の鯱〉に新しい団長も来るらしいし楽しみだ!」

 

「団長全員……?」

 

「でも姫様とヤミ団長はここにいるし……」

 

「行き遅れた。ヤベーどうするか」

 

「えぇええええええっ!?」

 

 功績発表があることはシャーロットも知っていたはずなのに何をやってしまっているのか。

 シャーロットを見れば完全にダウンしており、このままでは到底間に合わない。

 

「ど、どうしましょうか……?」

 

「流石に欠席ってマズイっしょ! ヤミ団長ならともかく!」

 

「オイ何でオレは『ともかく』なんだよ。結構マジメに仕事してっからな?」

 

「このままだと姫様のメンツに関わっちゃうだろうし……」

 

「話聞けよオイ」

 

 ヤミの言葉が耳に届かないキリヤは無い頭で懸命に考える。

 傍にいるのはキリヤが契約した精霊達で、その顔を見た瞬間に思いつく。

 

「よしっ!! 何が何でも姫様は功績発表に出席させる!」

 

「出席させるって姐さんこんな状態なんだぞ?」

 

「幸いソルが着せたドレスのスカートは丈が長い。つまりオレが中に入って肩車してもちょいと屈めば何とか移動は出来る!」

 

「先輩それだと団長の身体ぷらんぷらんになりますけど!」

 

「そこはサキムニに一体ずつ背中とか腕とかに引っ付いて貰って人形みたいに動かす! 声は……トゥルー何とか出来るか?」

 

「任せて! 声マネとか得意だから! はいボクチャンと合体っ!」

 

 身体進化魔法”気紛れ猫精の軽鎧(レベル24・ニャンコニャンニャンラーマー)

 兜は猫耳を模したもので細くしなやかな鎧を纏えばキリヤは拳を握り締める。

 

『猫精霊魔法”猫撫で声(ケットボイス)”……これでボクチャンの話し声は完璧に美人団長と同じになったよ~』

 

「ありがとう! って思った以上に姫様の声だ!」

 

 試しに声を出してみればキリヤの声はシャーロットの声そのもの。

 これで無限に遊べそうだがそうも言ってられず、サキムニは”人間化(ヒトカ)”を解いてそれぞれシャーロットの背や腕に張り付く。

 

「多分実行して成功したとしてもトゲツン女王ドエライ恥かきそうだけど大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ! きっと姫様も分かってくれるはずです!」

 

 支えられて立ち上がったシャーロットのスカートの中に入り込み、上を見上げれば――

 

「うわ姫様結構派手な下着着けてるんですね!」

 

「オマエ後で絶対殺されるわ」

 

 思った以上に派手だったので思わず言葉が出てしまい、ヤミの冷静なツッコミが飛んでくる。

 ドレスのスカートがボリュームあるおかげでキリヤが入ったところで大した変化はない。

 

「よーし行くぞーっ!」

 

『おーっ!』

 

 キリヤの掛け声に精霊達も応え、今シャーロットの面子を守るための小さな戦いが火蓋を落とす――

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