オレが愛した女は過剰スパルタアネゴレオン   作:ホスパッチ

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60話「功績発表」

「カカッ! 随分と重役出勤じゃねえか野薔薇の団長さんよ……って何だその恰好は?」

 

 シャーロットのスカートの中から肩車したキリヤは団長達の控え室にどうにか間に合ったものの遅れてきただけあって団長達の視線がシャーロットへ注がれる。ちなみに視界はここに来るまでにスカートの二箇所に小さな穴を開けて確保してある。

 

 それにしてもスルーしてくれると思ったが団長の中でも〈翡緑の蟷螂〉団長のジャック・ザ・リッパーは何かと人に絡むのが好きなようだ。というか確かにサキムニを装備しまくった今のシャーロットの出で立ちはおかしいが。

 ここはシャーロットっぽい口調で、

 

「気にするなカマキリーマン。少し団員達と祭りに興じていただけだ」

 

「カ、カマキリーマン……?」

 

(しまった! 思わず言ってしまった!)

 

 名前をイマイチ覚えていなかったために思わず口が滑って前に言ってしまったあだ名を言ってしまった。

 カマキリーマンと呼ばれたジャックは不審に思うもそれより先に前に出たのは――

 

「シャーロット、貴様少し弛んでいるのではないか?」

 

〈紅蓮の獅子王〉のローブを身に纏ったメレオレオナだった。

 新しい団長が来ると市民は話していたのは聞いていたがまさかメレオレオナだとは思ってもいなかった。

 

「レオナ様っ! レオナ様が新しい団長だったんですね! オレ嬉しいっス!」

 

「レオナ様……オレ……? 貴様、何かおかしくないか……?」

 

 鋭くなるメレオレオナの眼光にキリヤはしまったと思い、慌ててサキムニ達にシャーロットの身振り手振りをさせ、

 

「も、申し訳ありません。少し酒が回ってしまっているようで……」

 

「貴様なかなか酒癖が悪いクチか」

 

『――さあ国民みんなで呼ぼう! 我ら九人の魔法騎士団長を!!』

 

 あまりにも適当な誤魔化したもののどうやらメレオレオナは納得してくれたようだ。

 丁度良いタイミングで魔法帝ユリウスの声が響き、団長達はシャーロットに構っている暇がなくなって歩き出す。

 と思いきや――

 

「――そんなところで何をしている莫迦弟子」

 

「ぎゃあああああっ! 気付いてたんですかレオナ様!!」

 

 先に他の団長が進む中、しゃがんだメレオレオナとスカート越しでがっつりと目を合わせられる。

 その眼光は獅子そのものの威圧さを持ち、思わず驚いてシャーロットの身体が大きく揺れてしまう。

 

「声では一瞬気付かなかったが喋り方と気配で分かった。それで何故そんなところにいる?」

 

「あの、姫様がお酒飲んでダウンしちゃって……でも今日は特別な日って聞いてますし」

 

「貴様なりの気遣いか。それならもっと上手くやれ」

 

「うぅ、も、申し訳ありません……」

 

「時間もない。行くぞ」

 

「うすっ!」

 

「……話す機会があればシャーロットになりきるのは忘れるなよ」

 

 念押ししつつメレオレオナは先に行き、キリヤも改めて後についていく。

 薄暗い控えから出れば観衆の前にすでに他の団長達は立っており、キリヤもシャーロットを肩車したままそそくさと自らの場所と思われる端へ立つ。

 

「何で〈碧の野薔薇〉の団長はあんなにウサギを付けてるんだ……?」

 

 そんな疑問の声が上がりながらも観衆の話題は〈黒の暴牛〉の団長ヤミがいない方が強く、そのおかげで難を逃れる。

 

『それじゃあ気を取り直して順位をいきなり発表しちゃおっか!』

 

 一位――〈金色の夜明け〉。

 前年度の星を大きく更新した125という多大な数を持って堂々の一位。

 正直一位を取れなかったことは悔しいがやはり〈金色の夜明け〉は精鋭揃いなのだろう。

 

『〈金色の夜明け〉は今年も素晴らしい活躍だった。それでは星取得に最も貢献した団員――風の四大精霊を従えた期待の新人ユノくんに登壇してもらおうか!』

 

 ユリウスの言葉によって登壇したユノは堂々とした立ち振る舞いであり、観衆からも歓声が湧き立つ。

 そして二位の発表。観衆はそれぞれの予想を立てながら耳を傾ければ――

 

『第二位は――〈黒の暴牛〉!!』

 

 その言葉に観衆の誰もが度肝を抜かれてしまった。

 星の取得数は101。荒くれ者の集まりと称されていた〈黒の暴牛〉の二位に疑う声が上がるも今までアスタ達が助けてきた人間達がそれを否定する。

 

『驚くのも無理はないよ。昨年は異例のマイナス50だったからね。でも今年は目覚しい躍進を見せ一気にこの順位まで上り詰めた! 中でも凄かったのが新人のアスタくん……ってどこかにいるかな?』

 

 ユリウスが声をかければどこからか投げ飛ばされてくるアスタ。

 その姿にスカートの中で様子を見ていたキリヤも自分のことのように喜んでいると――

 

『ここで新人の紹介をしたいところだけどそれは第三位を発表してからだよ! それじゃあ第三位は――〈碧の野薔薇〉! 星取得数はジャスト100! 〈黒の暴牛〉にはちょっとだけ及ばなかったね!』

 

〈紅蓮の獅子王〉も〈銀翼の大鷲〉をも差し置いて〈碧の野薔薇〉が第三位。

 観衆にとって今年は大波乱の年であり、ユリウスも興奮を隠しきれないように言う。

 

『女性が強い〈碧の野薔薇〉だけど今年はあまりにも凄い魔道士が入ったんだ! 彼一人で獲得した星は団の中でも半分以上! そして数多の精霊を従え、スペード王国の〈七剣総統〉を単騎ですでに四人も倒した。その余りある実績から新人の中で最も魔法帝に近いことは間違いない!』

 

 とんでもない前フリにキリヤも目が点となってしまうもユリウスはさらに大きな声で――

 

『それでは登場して貰おう! 新人の中でも星取得数一位のキリヤスフィール・フィン・ガルガン!!』

 

(えぇえええええ――っ!! 出にくいっ!!)

 

 とんでもない雰囲気が出来上がってしまった場に今スカートの中から飛び出すのは難しい。

 そう思っていれば魔導書が光り輝けばサキムニや精霊が次々と飛び出す。

 

『そーよっ! このあーしウンディーネを従えてるんだから当然よ!!』

 

『当然。我らが主こそ一位に相応しい』

 

『オデもそうオモう!』

 

『……』

 

『やっぱりご主人は凄いんダ!!』

 

 ウンディーネやノーム、サラマンダー、ジブラウストにサキムニ達がこれでもかと言うほど魔力で派手に演出し、観衆の度肝をさらに抜いて場を彩る。

 ユノのベルも合わせれば四大精霊が全て揃ったこの場はこれまでにないほど自然の(マナ)に満ち溢れ、ただ今のキリヤにとっては申し訳ないが自重して欲しいところだ。

 

『さっ場はあたためたから! 出でよだーりんっ!!』

 

 最終的にシャーロットのスカートに向けてライトアップされてしまい、出るしかなくなって鎧を解除してサキムニにシャーロットは任せて暖簾を潜る感覚でスカートから出る。

 

「ど……どーも」

 

「いやどっから出てきてんの!?」

 

 何だか色々申し訳なさが出ているもキリヤはユノの隣に立てばサラマンダーが右肩、ノームが左肩、ウンディーネが頭に両腕を乗せてもたれてくる。

 

「何か……ごめんな。二人の邪魔をするつもりはなかったんだけど」

 

「負けねぇ。魔法帝になるのはオレだ」

 

「オレだっつーの!」

 

「相変わらず仲良いな。まあ頑張れ。オレは二人を応援してる!」

 

「いーやキリヤ! オレはオマエも超える気でいるからな!」

 

「ははは、そりゃ楽しみだ!」

 

『ユノくんとアスタくん、キリヤくんは共に新人の中で特に優秀で期待の新星だ。入団して半年で例を見ない素晴らしい成果を挙げた! しかも二人は同郷の幼馴染で三人共若干十六歳、まだまだ将来が楽しみだね!』

 

 その言葉に観衆も三人を褒め、だがすぐに――

 

「いやアスタとユノってのは最果ての下民らしいぜーっ!! しかもアスタってのには魔力がないインチキ野郎だろーっ!!」

 

 心無い言葉で観衆達はざわめき、中にはアスタ達の実力を疑い始める者もいた。

 この数の観衆でも声がした方は分かる。そしてそこにいたのはアスタが入団試験の際に戦ったことがあるセッケがいて、恐らくセッケがアスタ達の足を引っ張るために言ったのだろう。

 

『サイッテーっ! ヒトの功績妬んで足引っ張るとかマジ考えられなーいっ!』

 

『…………』

 

 ウンディーネも分かったのか苛立たしげに言い、サラマンダーも言葉にせずとも口を開ける。

 だがユノは至って冷静に魔導書を開き、

 

「ベル、全力だ」

 

 身体から魔力を引き出せばいきなりアスタへと放出。

 突然の一撃にアスタはすぐさま魔導書から反魔法の大剣を抜いて風を切り裂く。

 

「って何すんじゃオマエは~っ!! 晴れ舞台で殺す気か!」

 

「アレで死んだらその程度の男だってことだ」

 

『……二人の力を見てまだ疑う者がいれば出てきて欲しい。確かに二人は下民だが誰よりも努力しこの場に辿り着いた。努力する者のその足を引っ張る真似をする者がクローバー王国にいるとは思いたくない』

 

 どよめく市民達だがすでにアスタ達の功績を疑う者はいなかった。

 と、そこでユリウスの視線はキリヤに向けられる。

 

『せっかくだ。新人一位のキリヤくんの実力も少しみんなに見せてやってくれないかい?』

 

「マジですか」

 

 アスタとユノのように分かりやすいパフォーマンスなんてあったか。

 そう考えるキリヤの肩を叩いたのは控えていたトゥルーで、

 

「どっかーんって魔力見せてあげたらどうかな?」

 

『そーそー多分みんな驚くわよ?』

 

「そっか、それでイイのか――よっと!」

 

 至極単純なのはキリヤに向いている。

 促されればキリヤは両腕をクロスして一瞬集中すれば――”エルフ覚醒”。

 人間とは比較にならないほどの魔力がキリヤから放出され、周りで見ていた団長も驚きで目を見開き、市民の中にはあまりの(マナ)の奔流に耐えられず倒れてしまう者も出てしまう。

 

「これで良いですかね魔法帝……って、もしかしてやらかした感じですかコレ」

 

 何人も倒れてしまった観衆を目にしてしまえばキリヤも急いで元に戻る。

 だが少し遅かったようでユリウスも含めて周りは絶句。ドン引き状態と言っても良い。

 

「君は一体……」

 

「オレはオレですけど……」

 

『ほーら見て見て! だーりんの力を見て卒倒しちゃってるわよ!』

 

 振り絞った魔法帝の言葉にキリヤはストレートに答えるもそうではなかったようだ。

 喜んでくれているのはウンディーネ達精霊だけでキリヤは何だか居所の悪さを感じてしまうもそこから順位発表は何とか再開され、それでも市民達はどこか上の空のようだった――

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