オレが愛した女は過剰スパルタアネゴレオン   作:ホスパッチ

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61話「国王との再会と王撰騎士団」

「レオナ様~何かオレ間違ったんスかね~っ!」

 

「莫迦者が。こんな場で抱きつくな」

 

 順位発表が続く中、先ほどのやらかしを気にしたキリヤはメレオレオナに抱きついていた。

 だがここは容赦ない拳骨で引き離され、涙目でキリヤは頭を押さえてしゃがみ込む。

 

「――では順位発表も終わったことだしお待ちかねの我らがクローバー王国国王の登場だ!」

 

「そういやこの国の国王ってどんなヤツなんだ!?」

 

「オレ会ったことあるよ」

 

「マジで!? どんな人!?」

 

「小物」

 

「それ絶対本人の前で言っちゃダメなヤツだ!」

 

 サイルとの初戦で会った自称国王が本当に国王ならば事実だ。

 ぶっちゃけ魔法帝がトップの方が国は成り立つだろうとキリヤでも思うほどだがどうにもそうは行かないようで。微妙な拍手と共に現れるのは――国王。

 絵に描いたようなザ・王様としか思えないその姿にアスタもユノも無言になってしまう。

 

「えーこほん。我が国民たちよ、御機嫌よう。クローバー王国国王(アウグストゥス)・キーラ・クローバーである」

 

「国王様ばんざぁーい……」

 

「やめちまえ国王ーっ!」

 

 アスタやユノと同じような反応で観衆達も微妙な反応を示し、その反応に国王は青筋を立てる。

 

「もっと余を讃えんかァ――ッ!! というか今さりげなく国王やめろと言った奴は誰だ!? 余こそ国王ぞ!? 魔法帝なぞよりも遥かに偉大な存在なのだぞォオオオ――ッ!!」

 

 いきなり激昂した国王が叫び声を上げたところで観衆は引き気味の沈黙しか出来ない。

 所詮血で玉座に座っているだけなのだから実際に行動し、皆の模範となっている魔法帝には遠く及ばないというのに。そうキリヤは思う。ちなみにやめちまえと言ったのもキリヤ。

 

『うっさーマジであれ国王なのだーりん?』

 

「残念だけどそうみたいだな……」

 

「ワタシも何度か見たけど魔法帝の方が王の器だよね~。てゆーかセクハラ酷かったし! ボクチャン慰めて~」

 

「何だあの国王キャバクラ行ってたのか……」

 

「なっ!? 貴様あのキャバクラのキャバ嬢!? それに貴様はあの時の糞餓鬼ではないか!」

 

 トゥルーが抱きついてくる中、ようやく国王はキリヤのことが分かったようで大きく指を差してくる。

 

「まあ落ち着けよ自称国王。オレらみんな引いてるよ……まさか国王がキャバクラで権威振るってセクハラしてたなんてな。セクハラって何か知らねーけど」

 

「ナチュラルなタメ口はやめんか!!」

 

「いやオマエに敬意示すほど尊敬してないし」

 

「はっきり言いおったな貴様ァアアアアアアアア――!!」

 

「まあまあ国王落ち着いて下さい。怒るよりも先に国民に伝えることがあるでしょう」

 

「そ、そうだな……」

 

 わざとらしく咳払いした国王は改めて、

 

「報告することがある――〈白夜の魔眼〉のアジトを突き止めた。今まで奴らの後手に回っていたがいよいよこちらが総攻撃を仕掛ける! そのために魔法騎士から選りすぐりの騎士を集め最強の選抜隊を余が結成する! それこそが王撰騎士団(ロイヤルナイツ)!!」

 

 国王の言葉によれば試験は一週間後に全騎士を対象として行うらしい。

 その試験を通過すれば王撰騎士団(ロイヤルナイツ)への入団を許可されるらしいが――

 

「何で王様が選ぶんだ?」

 

 少し我慢していたキリヤの代わりにアスタが先に言ってしまった。

 

「オレ達が尊敬してるのは魔法帝や団長達で王様じゃないんだけど」

 

「だよなー。選ばれるにしても椅子に座ってるだけの王様に何の権限があるんだって話だよな。どうせアイツが選んでも王族とか貴族だらけになって本当の精鋭揃わないかもよ? アイツ賄賂とか普通に受け取りそうだし」

 

「な……貴様ら……っ!」

 

「オレ今まで王様が何かしたって話聞いたことないし」

 

「オレも。前にクローバー王国が襲撃された時も『余を守れぇ!』しか言ってなかった気するし」

 

「スゲー魔力あるのは分かるけど国民に何もしてくれてなくね?」

 

「……そうだな」

 

 アスタもユノもキリヤもその点は同じことを思っていたようで好き勝手言ってしまう。

 トドメを刺したのはアスタの言葉で――

 

「やっぱりあの王様器小さそうだよな……」

 

「オイアスタ。こういう時は本当のことを言ったらダメなんだぞ」

 

「奇遇だな二人共。オレも会った時そう思ったしオレ一回アイツの器小さいせいで謹慎にされたし……」

 

「処刑じゃぁああああああ!! いくら強かろうが国王の余に対してこの狼藉!! 決して許されたものではない!! この三人を即刻処刑せよ――ッ!!」

 

「そういうところが器ちっちゃいって言われるんだって……」

 

 逆鱗に触れたのかブチギレる国王にキリヤは冷静にツッコミを入れてしまい、ウンディーネやトゥルーは笑いを堪えるのに必死なようだった。

 しかしこれは大問題。魔法帝を目指すアスタやユノがこんなところで処刑されるのは敵ったものではない。

 

「自称国王様!」

 

「何じゃ今さら様付けしおって!!」

 

「ごめん許して!」

 

「そんな安い謝罪で許すかァアアアアア――ッ!! 国王を何じゃと思っとるんだ!!」

 

「よし殴り飛ばそう!」

 

「それは流石にマズイって!」

 

 分からなければ拳で伝えるまでと拳を握り締めるとアスタに慌てて止められる。

 代わりに国王の前に出たのはユリウスで、

 

「どうか私に免じて気をお鎮め下さい国王。それにこの程度のことで王の権威を振るえば安く見られますよ?」

 

「ぐぬ……っ!」

 

王撰騎士団(ロイヤルナイツ)……私も期待している! 魔法騎士達よ! その力を存分に見せて欲しい!」

 

 やはり魔法帝の人気は絶大なものでユリウスの言葉で場は収まり、盛り上がりを見せる。

 

(やっぱり実績も必要だけど上に立つには魔法帝やレオナ様とかみたいにこう……何か特別な才能がいるよな)

 

 反面教師自称国王のおかげでつくづくそう思うのだった――

 

 ◎

 

「魔法帝すみませんでしたぁあああ!」

 

「良いんだよ。それより王撰騎士団(ロイヤルナイツ)は次の実績を得るチャンスだ。君達は確かに凄いがまだ新人、試験には多くの猛者が集まるだろうが――驕らずに進んでおいで」

 

「はいっ!!」

 

 魔法帝の言葉に大きく頷くアスタとユノ、それを見ていたキリヤも次いで頷く。

 そしてアスタやユノは魔法帝に別れを告げて歩き出し、その後を追おうとすればキリヤの肩が叩かれる。

 

「ん……どうかしたんですか?」

 

「少しだけ話をしても良いかい?」

 

「ええ、大丈夫ですけど」

 

 この後の予定も考えておらず、アスタ達について行くかメレオレオナのところに行こうかと思ったがユリウスの真剣な表情に足を止める。

 了承すればユリウスも「ありがとう」と言い、

 

「とうとう四大精霊の三体と契約したようだね」

 

「はい。何かと縁があって」

 

「本当に凄いとしか言いようがない。そして聞かせてくれ――キミは何者なんだい?」

 

 真剣な眼差しのユリウス。

 その目にキリヤも目を逸らさず、

 

「オレはエルフ族の生き残りらしいです。でもキリヤスフィール・フィン・ガルガンであることに変わりありません。それに――オレは守りたいものを守って信念を貫くだけです」

 

 今度ばかりは正しい敬礼をユリウスに見せる。

 今のキリヤを創ったのはメレオレオナでありシャーロットであり、今まで出会ってきたヒト達だ。だからこそ自分が人間じゃないからといって自分の信念は守りきらない理由にはならない。

 その覚悟を示せばユリウスも笑む。

 

「そうか、それなら良かった。もしかしてキミ以外にもエルフの生き残りはいるのかい?」

 

「魔女王に聞いた話だとディフォーレ・フィン・ガルガンって女性がいるらしいですけどその人がオレの母様なのか何なのかは分かりませんけど」

 

「なるほど……引き止めて悪かったね。もう行ってくれて大丈夫だ」

 

「それでは失礼します!」

 

 改めて敬礼してキリヤはアスタ達が歩いていった方へ駆け出す――

 

 ◎

 

「えーっと、これどういう状況ですかレオナ様?」

 

「見れば分かるだろう、温泉合宿に行く準備だ」

 

 数分後、無事アスタ達を発見したキリヤだがよく分からないことになっていた。

 メレオレオナの背から炎の獅子の手が何本か出ていてそのうち一本がアスタをもう一本がユノを捕まえており、その背後にいるのは〈紅蓮の獅子王〉の団員達でレオポルドもいる。

 

 ――温泉合宿。

 その単語には非常に聞き覚えがあり、ということは――

 

「オレだけの師匠じゃなくなっちゃったんですかレオナ様ァ!!」

 

「莫迦者がァアアアアアアア――ッ!!」

 

「久しぶりの顔面拳骨っ!?」

 

「愚弟がいない間に〈紅蓮の獅子王〉は随分と腑抜けたらしくてな。仕方ないから私がしごいてやるだけだ。そしてこの二人は立候補したため連れて行くだけだァアア!!」

 

「いや立候補はしてませんけどね!?」

 

「ということは今でもレオナ様の弟子はオレだけってことですか!?」

 

「そういうことだ莫迦者ォオオ――ッ!!」

 

「やったぁ!! レオナ様大好きっス!!」

 

 がばっと飛び込み拳骨されようが構わずメレオレオナの胸に飛び込む。

 その後、ヤミ、シャーロット、ノエル、シィナも捕まってソルとフィオレナもついでについて来ることになり温泉合宿はスタートすることになる――

 

 ◎

 

 強魔地帯ユルティム火山登山道。

 やってきた一行の眼前ではこれでもかと火山が荒れ狂いながら止め処ない噴火をしており、その熱波はとんでもないもの。全員がドン引きしているのが分かるがキリヤも初めて来た時は同じ反応だった。

 

「さあ行くぞ!! 糞莫迦共ォオ――ッ!!」

 

「よっしゃ行くぞーっ!!」

 

「流石にそのテンションにはついていけねえよ!」

 

「ここは地中深くに巨大な(マナ)を浴びた火山帯があり常に噴火している。普段は人間の近付ける場所ではないが山頂には滋養強壮に良い温泉があるのだ!! どうだワクワクしてきただろう!! さあ各々山頂に向かえ!!」

 

「はいレオナ様!!」

 

「先輩はメレオレオナ様先輩のことになると途端に盲目になりますね……」

 

「ここの温度も物凄いですがキリヤさんと私達にもとんでもない熱量の差がありますね……」

 

「こうなればアスタ! そしてユノとやらも誰が最初に山頂に辿り着けるか勝負だ!」

 

「……勝手にどうぞ」

 

「チンタラせんとさっさと行かんかァアア!!」

 

 アスタやユノに勝負を挑んでいたレオポルドはメレオレオナに蹴り飛ばされる形で登山道へ落とされる。

 そして呼吸もままならない熱気の中、先立つヤミとシャーロットはこの環境下ですら構わず突き進んでいく。

 あまりにも乱れない行動に〈紅蓮の獅子王〉の団員達が驚くも、

 

「分かったぞ! 魔力を常時纏って身を守っているんだ! この(マナ)が安定しない環境でも一糸乱れない魔力放出で!」

 

「でも分かったところで一朝一夕で長時間やるなんて無茶だ!」

 

「いいやイケる――ッ!! 少しずつ感覚を掴み、ここに順応するのだ!! 腑抜けた自分を鍛え直すには最高の環境だ――ッ!!」

 

 マナスキンのタネに気付いたことで〈紅蓮の獅子王〉から弱音にも似た言葉が飛び出すもレオポルドが激励しやる気を出す。

 その最中、レオポルド達の隣をしれっとマナスキンを完璧に使いこなしているフィオレナが通り過ぎる。

 去り際にふと〈紅蓮の獅子王〉の方へ振り向くと苦戦している様子を見て、

 

「え……この程度魔導書(グリモワール)貰う前には出来るようになってるのが普通ですよね? まさかクローバー王国の魔法騎士ってこんな基礎的なことも知らなかったんですか?」

 

 フィオレナの何気ない言葉が〈紅蓮の獅子王〉やユノ達を煽り倒してしまった――

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