「先輩! アタシは諸々の事情で試験を受けられないですけど今日はめいっぱい先輩を応援します!」
「ありがとなフィオレナ」
付き添いでやってきたフィオレナがきゅっと拳を握って意気込み、それを見たキリヤも笑う。
「キリヤさん!」
「お、シィナにソルとプーリも!」
呼ばれて振り向けばシィナ、ソル、プーリ。
それぞれ〈碧の野薔薇〉の中でも指折りの実力者であり、フィオレナも手を振って出迎える。
「もちろんシィナ先輩達の応援もします!」
「ありがとうございますフィーちゃん。でもどうしてフィーちゃんは出られないのでしょうか? 火山登りから明らかに実力者とは団長も分かっているはずですが……」
「まあ諸々ですよ諸々~」
「適当な誤魔化しだなー」
と言いつつもソルは気にしていないらしく、キリヤを指差す。
「今日もし戦うことになっても容赦しないからな!」
「当たり前だ! 全力でやるからな!」
やや雑だが拳を合わせ、シィナの方を見るとシィナはどこか別のところを見ていた。
見てみればそこに立っていたのは如何にも育ちが良い雰囲気の女性。その黒い長髪や容貌はどことなくシィナと似ており、ただシィナと違って長身でまるで大人版シィナだ。
「なあアレって――」
「はい、私の姉――リィナ・シュヴァルツです」
ただならぬ気迫。
今までのシィナになかった確かな闘志が漲っており、キリヤは驚きながらもシィナの額をこつんと軽く小突く。
「分かってると思うけどオマエは強いよ。だから気負い過ぎんな。もっと自然体で行けば負けるはずないさ」
「っ! はいっ!」
「それじゃ先輩アタシ応援ゾーンに行きますんで!」
「おう!」
元気良く返事したシィナにキリヤも大きく頷く。
これ以上はシィナの精神的集中にも邪魔になると思い離れ、フィオレナとも離れたところで見慣れた人影が近付いてくる。
「よっキリヤ!」
「おうアスタ。ユノには挨拶したのか?」
「ああ! キリヤ、今日は負けねぇぞ!」
「オレこそ負けねぇよ。まあ何するか知らないけど」
「……確かに!」
ずっと思っていたがこの場にいる誰もまだ何をするか知らない。
すると丁度良いタイミングで魔法帝が皆よりも高い位置に現れ、一気に空気が張り詰める。
「じゃあこれから
「――試験説明は余からしよう」
「げ、また出てきた自称国王」
「またとは何だまたとは! というより貴様余が出る度に無礼を働きよるな!! 国王ぞこっちは!」
奥から現れた国王はもう完全にキリヤのことを覚えてしまっており唾を飛ばしながら怒りを表すも今日は珍しくすぐに冷静さを取り戻す。
「試験内容はチーム対抗
シンプルに実力を試すかと思えばそうではないらしく、国王の背後に用意されていた
「ルールは簡単! エリアに配置された自軍の
加え三十分以内に破壊出来なかった場合は
次いだ魔法帝の話では対〈白夜の魔眼〉戦では様々な団が協力して立ち向かう必要があり単騎の力だけではなく協調性と共に戦略性を測るのに最適な方式だと考えられたと。
「では早速チーム発表だ!」
やはり自分達では決められないようで名前が書かれた映像が展開される。
多く羅列した名前の中自分の名前を見つけるのは一苦労だったがようやく自分の名前を見つけるキリヤ。
どうやらアスタやユノ達とは一緒のチームになれなかったようで少し残念に思うとキリヤに向かって一人の女性が歩み寄ってくる。
「アナタは私と同じチームのようね、キリヤスフィール・フィン・ガルガン」
「ん?」
声を掛けられ見てみればそこに立っていたのは〈金色の夜明け〉のローブを纏った女性だった。
眼鏡を掛けており、目つきは鋭くややくせっ毛なのが目立ち、髪は後ろで束ねている。見る限り二十代ほどだろうか。
冷たい印象が見て取れるも声を掛けてきたというのなら女性の言う通り同じチームなのだろう。
「よろしく! えーっと……名前何?」
「別にアナタと馴れ合うつもりはないわ。だから自己紹介もしない」
「じゃあメガネって呼ぶことにするな! よし、今日からオマエはメガネだ!」
「な……ッ!」
名乗らないのならばそう呼ぶしかない。
いきなり”メガネ”呼ばわりされた〈金色の夜明け〉の女性は一瞬クールな表情が崩れるもすぐに平静を取り戻す。
「ま、まあこの際それでも良いわ」
「よしよろしく!」
握手をしようと手を伸ばすも一度は躱され、しかしその程度で諦めないキリヤはメガネの手を追って強制的に握手する。
「もう何なのよ……」
「あと一人は誰だろうな」
何やらユリウス付近で遅刻してきたザクス・リューグナーが何かしたようで騒ぎになっているがキリヤにとってはそれより重要な残り一人のメンバーの方だ。
と、探していると何やら会場の雰囲気に呑まれてテンパっている少年がいた。
「そこのキミ! もしかしてオレ達と同じチームの人!? オレはキリヤでコッチはメガネだけど!」
「私の本名はメガネじゃないんだけどね」
「お、おまて……おまちさせした!」
「え?」
思わず素で聞き返してしまった。
多分『おまたせしました!』と言おうとしているのだろうが完全に緊張してしまっているようだ。
見ればそのローブは〈翡緑の蟷螂〉のものでキリヤの肩ほどの身長。特筆すべき点は特にない普通の少年だった。
「ビ、ビスです! よっろろしくしゃす!」
「そんな緊張しなくてイイのにな。よろしくビス!」
ビスと名乗った少年は手汗びっしょりな手でキリヤと握手を交わし、さりげなくウンディーネに洗浄されてしまうもこれでチームは揃った。
周りを見てみればアスタは先ほど騒ぎを起こしていたザクスと、ユノはノエルと、ソルは〈黒の暴牛〉のマグナと、レオポルドはフィンラルと顔見知り同士でチームが出来ておりシィナを見ればシィナのチームに知り合いはいないようだ。
「では試験のステージに移動しようか!」
ユリウスの言葉で魔法帝直属の空間魔道士コブが空間魔法で皆を試験会場へと連れて行く。
空間魔法の先に見えたステージは森、岩場、砂漠、廃墟と一つで様々な様相を見せ、これもまたユリウスの狙いの一つなのだろう。これもまた戦略の幅にも繋がるに違いない。
「事前に抽選で決めたトーナメント表を発表するよ! バトルの勝ち負けが合否に関係するわけじゃないけど勝ち上がっていくほどに実力をアピール出来るから頑張って!」
映し出されたトーナメント表にはキリヤ達の初戦の相手はプーリ、クラウス、ラックと書かれていた。
全体的に見ればアスタとは決勝戦まで当たらず、二回勝ち抜けばユノやシィナと当たる可能性がある。しかもシィナの初戦は運命なのかリィナであり、キリヤも改めて気合いを入れ直す。
(優勝して改めてレオナ様が育てた弟子が最高だってところを見せてやる!)
そして第一回戦、早速アスタの試合が始まる。
開始早々に不意討ちの魔法が
しかしアスタのチームにいるザクスは協力するつもりはなく寝始め、戦略が狭まるアスタともう一人――確かミモザと言ったか。ミモザが守りアスタが攻める形で突貫する。
(こんなところで負けんじゃねえぞアスタ)
氣が読めるだけあって位置さえ分かればアスタは狙撃を反魔法で斬り落とし、接近を果たすも相手は偽物を用意することで撹乱。だがミモザの感知によって本物を看破する。
しかし敵三人に囲まれた瞬間にアスタが何者かの罠魔法で怯んでしまい、三方向から同時に強力な魔法が放たれる。
流石に回避不能――そう思えばそれぞれの魔法の前に魔法陣が出現。魔法を飲み込んでそれぞれ違う相手に魔法が炸裂する。
すると今まで眠っていたはずのザクスが起き上がり、辛うじて
「未知の魔法に対する想像力が欠如してるんじゃねえかァ!? あらゆる可能性も考慮しないで魔法ブッパで勝てりゃ世話ねーんだよ!!」
言葉遣いは荒い者のザクスの言葉は正論。
アスタと一波乱ありそうだがザクスの一撃で相手チームの
(次はソルか)
ソルのチームにはマグナの他に〈珊瑚の孔雀〉副団長キルシュがいて、彼の桜魔法と助言のおかげでソルやマグナは上手く立ち回り危なげなく勝利を収める。
続く一回戦第三試合はレオポルドや〈金色の夜明け〉の団員をフィンラルが空間魔法で上手く誘導することにより戦場を支配し、圧勝を収めた。
第四試合目、セッケはともかく〈金色の夜明け〉副団長ランギルスの攻撃性に特化した空間魔法で相手の
流石〈金色の夜明け〉副団長とだけあって恵まれた魔力に魔法、圧倒的な力を見せ付けられる。
自分ならどうするか、そう考える暇もなく迎えたのは第五試合目。Xという謎の名前は〈水色の幻鹿〉団長リル・ボワモルティエが扮していた仮の姿であり、魔力を絵の具にして操る絵画魔法は全ての属性を再現可能であり、その一撃で決めてしまう。
「うわすっげぇ何あれ! カッコイイな!!」
「はいはい。次は私達の番だから早く準備しなさい」
「へいへーい」
身を乗り出して絵画魔法で創られた炎と水の双嵐を見ていればメガネに襟元を引っ張られて引き戻される。
見れば次は第六回戦、気付かないうちにキリヤが戦う番となっていた。
「よっしゃ行くぜ! メガネ! ビス!」
「騒々しいわね本当に……」
「が、が……がんば、がんばりまひょ……」
莫迦者、生真面目、情緒不安定、よく分からないチームがいよいよ出陣する――