姉がコツメカワウソ   作:飼育係

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前回のあらすじ

 掃除をするために川をせき止め池の水を全部抜いたフェネックとアライさん。しかし50年間掃除をされていなかった池はヘドロや産業廃棄物が蓄積し、ペットとして飼われていたワニガメやアリゲーターガーなどの巨大外来生物の姿が!
 果たして二匹は外来生物を全て根絶し、元の生態系に戻す事ができるのか!?



友達がサーバル

「わ゛あ゛い゛!た゛あ゛の゛し゛い゛い゛!」

 

 姉のコツメカワウソが扇風機の前で何かをしていた。

 

「わ゛れ゛わ゛れ゛は゛う゛ち゛ゅう゛じ゛ん゛た゛あ゛わ゛ぁ゛お゛ぉ゛う゛」

 

 いわゆる宇宙人ごっこだ。扇風機の前で話すと声が回転する羽に反射して変な声に聞こえる、ただそれだけ。家に扇風機があるなら誰でもやった事があるはずだ。

 

「た゛っく゛ん゛も゛や゛ろ゛ーよ゛ー!た゛の゛し゛ーよ゛ー!」

 

 すごい楽しそうに、大きく口を開けながら俺に聞いてきた。水風呂に入らせないように風呂場の水は抜いたので、姉貴は朝からずっとこんな調子で、扇風機の側を離れない。

 ちなみにエアコンとかいう人類の英知はウチに存在しない。家中の窓を全開にして団扇と扇風機だけで暑さをしのいでいる。

 

「やらねーよ!それにもうすぐ姉貴の友達が来るんだから、ちゃんとしろよ」

 

 今日は姉貴の友達が家に遊びに来る日だ。なんでも大学のゼミのレポート?を一緒にやるらしい。まあ平たく言えば大学の宿題みたいなもんだ。ポケモンのセーブの事かと思ってた。

 さすがにスク水姿で会わせる訳にはいかないので、タンスから適当な服を選んで水着の上から無理やり着させた。

 姉貴は暑がりなので、デニムのショートパンツとTシャツにした。少し軽装すぎるかと思ったが、元々ニーソとロンググローブを着けていたので、逆にカジュアル感がかもし出されて夏の装いとして不自然ではない。むしろなんかオシャレ。

 適当に選んだけなのにこんなに似合うなんて、自分のセンスに感動しちゃうっ!おすぎになれるかもしれない゛!……ピーコだっけ?まあいいや。

 ただ、Tシャツにはシイタケのキャラがプリントされていて「誰か殴ってやろう」とか書かれていたが、着るの姉だし大した問題ではなかろう。

 

 ピンポーン

 

 そうしているうちに、表から楽しそうな声が聞こえてきて、インターホンが鳴った。うちの家の壁は薄いので、ボタンを鳴らされる前に来客がわかる。

 

「あ、いらっしゃーい!!あがってあがってー!」

 

「おっじゃましまーす!」

「お邪魔しますぅ」

 

 ドアノブを回して扉を開けると、二人の女の子が立っていた。かばんさんとサーバルさんだ。

 

「コツメちゃん久しぶり!元気だったー?」

 

「久しぶりサーバルー!元気だったよー!」

 

「弟ちゃんも久しぶりだね!」

 

「あ、どうもお久しぶりです。サーバルさん」

 

 

【の】 サーバル(ネコ目ネコ科ネコ属)

 

 

 こっちの元気そうな子がサーバルキャットのサーバルちゃん。見た目の通り、元気が良くて活動的で元気そうな感じがする明るく元気なよい子だ。あと耳がでかい。

 彼女とは一度会っただけだが、すぐに仲良くなった。

 

「コツメさんこんにちは。あと弟さんも」

 

「はい!どうもこんにちはッス!!」

 

 そしてこちらの純情可憐な黒髪の女性がかばんちゃんさんだ。

 外見に違わず博識聡明。校内でも人気があるらしい。

 

 

 三人はさっそく居間のちゃぶ台で勉強を始めた……、いや正確には二人がだ。

 うちの姉貴は席に着くやいなや、すぐにペン回しを始めやがった。

 ペンを人差し指と中指の間に挟むと、中指から薬指、薬指から小指の間へ、クルクルと器用に移動させた。

 

「よっ!ほっ!よっ!とぅ!」

 

「なにそれ、すっごーいー!」

「わぁ~、器用ですねー!」

 

 それはまるで路上パフォーマーが演技をしてるような素早い手捌きだった。

 姉貴はこう見えて手先が器用だ。ペン回しとかヨーヨー、ジャグリングみたいな指を使う遊びはかなり上手い。

 

「たのしそー! 私もやるー!」

「いいよ、教えてあげる!」

 

「二人とも、勉強が終わってからにしようね」

 

 食いついたサーバルちゃんを、かばんちゃんさんが諭した。さっそく勉強の邪魔してんじゃねぇよ、かばんちゃんさん困ってるだろ!……まあ確かにすごいけど。

 

 机には図書館から借りてきたらしき学術書が積まれていた。

 本のタイトルを読んでみると、『サンドスター粒子下における動植物の変化』『けもハーモニー相対性理論』『ジャパリ力学習定理』『フェレンゲルシュターデン現象』『パブロフの犬』『シュレーディンガーの砂猫』『マーゲイの最終定理』……。

 

 うん、全然わからん。とにかく何かすごい研究をしているのだけはわかった。

 それから三人は小一時間ほど、それらの学術書を参考にしながら、何か論文を書いていた。正確には勉強しているのは二人だけで、姉貴はサボって遊んでいただけだが。

 

「それじゃあ少し休みましょうか」

「やったー」

「ここでちょっと休憩!」

 

「じゃあスイカ食べます?今持って来るっすね」

 

「あ、お構いなく……」

「わーい!スイカだー!」

 

 俺はこんな事もあろうかと、風呂場のタライでスイカを冷やしておいたのだ。俺はキッチンにスイカを運び、包丁で切ろうとした。

 

「私が切ってあげるよ!」

 

 台所へ元気よくやって来たのはサーバルちゃんだった。

 

「いやでも、お客さんにやらせる訳には……」

 

「へーきへーき、見ててね!みゃみゃみゃみゃみゃ、みゃあ!」

 

パッカーン

 

 サーバルちゃんはそう言うが早いか、まな板の上にあった大きなスイカを、包丁も使わずに一瞬で切り分けてしまった。

 すっごーい!あまりに素早い早ワザだったので、隣で見ていても何がどうなったのか分からなかった。

 

「へっへーん、すごいでしょー?」

 

 俺が心底驚いているのがわかったサーバルちゃんは、ドヤァという感じで( * ˘ω˘* )←みたいな得意げな顔をした。ところで、さっきちゃんと手洗ったよね?

 

 しばらくスイカを食べて休憩ということで、俺も三人に加わらせてもらった。

 

「なるほど、弟さんは来年受験生なんですね」

 

「はい、まあ一応そうゆう事になりますかね……」

 

 話題は自然と大学受験の事になってしまう。とは言っても、俺はかばんちゃんさんほどの学力ないので、言葉を濁す。

 

「たっくん酷いんだよー!いっつも勉強してるって言って全然遊んでくれないんだよー!」

 

 姉貴がスイカの種をプププとマシンガンのように庭に飛ばした。汚いからやめなさい。

 

「それじゃあ弟さんも一緒に勉強しませんか?」

 

「そんな、邪魔しちゃ悪いっすよ……」

 

「みんなで勉強した方がわかり易いし楽しいですよ?ボクも分かる範囲なら教えてあげられますし」

 

「そうだね、弟ちゃんも一緒にやろーよ!」

 

 サーバルちゃんも心から嬉しそうにニコニコと笑ってた言った。本当にいい子だなぁ、この子。

 

「じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」

 

「うん!」

 

「やったー!」

 

「さっそく遊ぼっか!」

 

 

 

 姉貴、今の話し聞いてた?

 

「ちょっとだけ!ちょっとだけだからー」

 

 そう言うと姉貴は隣の部屋の押し入れから、ガサゴソと何かを取り出そうとしていた。まさか知育玩具でも持ってくるんじゃないだろうな?

 

「持って来たよー!」

 

 姉貴はなにやら緑色をしたおもちゃを抱えて帰ってきた。

 そ、それは!世界三大アクションゲームの一つ!スーパーイタイワニー!!

 

 

【の】 スーパーイタイワニー(ワニ目イタイワニ科イタイワニ属)

 

 

 イタイワニーとはッ!子供からお年寄りまで老若男女誰でも楽しめる、ジェンガ、黒ひげ危機一発に並ぶ、超有名パーティゲームだッ!!

 ルールはいたって単純(シンプル)ッ!口を広げ待ち構えているワニーの歯を1本ずつ交代で押していき、噛みつかれた者の負けとなるッ!!

 バネ動力によりなんと電池不要!シンプルでありながら一人から複数人までお手軽に楽しめる、超ロングセラーのヒット商品なのだッ!!(民明書房刊『世界玩具名鑑』より抜粋)

 

 しかしなぜワニーがハズレの歯を押した時にだけ噛みつくのかと疑問に思うが、自分で痛いワニーと言ってるくらいだし、その歯だけ虫歯なんかで痛かったのだろう。

 他の歯だって根元まで強引に押し込まれれば、虫歯とか関係なく十分に痛い気もするが、そんな事を気にするのは野暮というものだ。

 ちなみにこれと名前をよく間違われるワニワニパニックは、ゲームセンターなどでたまに見かけるワニをハンマーで叩くモグラ叩きゲームのことで、別メーカーなのでまったく関係がない。

 

 

「なにそれ、なにそれー!?」

 

 サーバルちゃんも新しいオモチャを見つけた飼い猫のように、目をキラッキラッと輝かせていた。

 

「すごいでしょー、ワニワニパニックって言うんだよー!」

 

 イタイワニー、な。

 

「姉貴、せっかく二人が勉強しに来たってのに、ゲームなんてやってる暇ないだろ!」

 

「えー!?」

 

「かばんちゃんさんも遠慮しないで姉貴に言ってやってくださいよ!」

 

「えっ?う、うん……」

 

 彼女はそわそわした表情でワニを見ていた。……やりたいのか。

 

「じゃあ、ちょっとだけ遊んでみます?」

 

「はい!」

 

「やったー!」

 

 

 

 気がつくと夕方になってしまった。結局勉強はやれず仕舞い。

 かばんちゃんさんに勉強を教えて貰う事も出来なかった。

 

「勉強の邪魔してしまって、すみませんでした」

 

「いえ、みんなで遊べて楽しかったです」

 

「カワウソちゃん、弟ちゃんばいばーい!」

 

「ばいばいサーバル!」

 

姉貴とサーバルちゃんは互いにブンブンと手を振っていた。

 

 

「そうだ、弟さん」

 

 かばんちゃんさんは、ちょいちょいと手招きして、俺の耳元まで顔に近づけると、ヒソヒソとささやいた。

 

「次に会う時は、たっくんもボクのこと『かばんちゃん』って呼んでほしいな」

 

 かばんちゃんはそう言うと、踵を返してサーバルちゃんの方へ走っていった。

 彼女が振り返った時、顔が少し赤く見えたのはきっと夕日のせいだろう。

俺は二人の後ろ姿が見えなくなるまで見守っていた。

 

 

 

「……なあ、姉貴」

 

「なに?たっくん」

 

「今晩なに食べたい?」

 

「お刺身!」

 

「よっしゃ買ってくる!」

 

 俺は夕日に向かって駆け出した。

 

 

同日深夜。

 

???「くんくん……ここを通ったようなのだ、早く見つけないと!」

 

???「まーまー!気軽に行こうよ、道のりは長いよー?」

 

???「ダメなのだー!あれがなくなったら……なくなったらぁ……町内の危機なのだー!!」

 

???「町内の危機ねぇ、アライさんに付き合うよー」

 

???「一刻も早く、犯人を見つけ出すのだ!」

 

???「はいよ~!……でも、もう夜だから明日にしよっか」




PPP「ペパプよこく〜」

イワビー「今週はスッポンについて予習だぜ!スッポンの鳴き真似をしてみよう」

(各々)
「スッポン?すぽん、すぽん……?」
「すーぽぽぽぽ……」
「ぽんぽん、すっぽぽん」
「ぽーす、ぽーぽーぽー……」

パッパッピプッぺッぺッポパッポーパッパッペパプ!


イワビー「次回、ヒグマ」
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