とある転生の幻想交差 Re:birth   作:僧侶

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8割がた旧版と同じ


初戦×連戦=もう二人の魔法少女

『ヴァアアア!!』

「あ、ちょっ!?待て!」

 

 翔太の意識がなのはの方を向いている隙に、奴が翔太を迂回するように進路を変えた。より強い力を持つなのはの方へ。

 

「え?きゃあ!?」

 

 いくらあの赤い宝石―レイジングハート―を起動させたからと言って、いきなり魔法が使えるようになるわけではないし、怖いものが怖くなくなるわけでもない。

 突然迫ってきた奴に怯えて、なのはは杖を身体の前に出すことしかできていない。だがこの場面でそれは功を奏したようだ。

 

『protection』

『ヴァ!?』

 

 円形の壁に阻まれて奴が弾き飛ばされる。

 

『落ち着いてくださいマイマスター。あなたなら大丈夫です』

「ふえぇ!?」

「今度は宝石が喋った!?」

「もはやなんでもありだな…」

 

 ちなみにこの間、すずかは「ねえあなたお名前は?」「あ、ユーノ・スクライアといいます」「私は月村すずか。よろしくね」「はい。ご丁寧にどうも」「魔法を使ってるのが高町なのはちゃんで、元気な女の子がアリサ・バニングスちゃん。男の子は雀宮翔太くんっていうの」と呑気に自己紹介なんぞをしていた。ある意味、驚くのも面倒になって現実逃避をしているだけではないだろうか。だってほら、視線はユーノとやらじゃなくて明後日の方向に向いてるし。

 

「そもそもアイツはなんなのよ!なんでなのはやあんたに襲いかかったの?」

 

 吹き飛ばされたダメージが抜けないのか、『ヴヴヴヴ…』と唸っている奴に注意を向けたままアリサがユーノに尋ねる。

 

「あれはジュエルシードの思念体です。襲いかかってきたのは、より強い力を求めて魔力を持っている者に無差別に襲いかかってるんじゃないかと思います」

 

 なるほど、最初は周囲にテレパシーを発していたユーノを狙い、翔太が禁書目録(インデックス)を召喚してからは彼を狙い(そのおかげでなのはがレイジングハートを起動させるまで、食い止めることが出来ていた)、そしてなのはが魔法に目覚めてからは彼女を狙うようになったというわけだ。

 

「ジュエルシードについては今は詳しく説明している暇がないので省きますが、危険な力を秘めた魔力の塊です。輸送中の事故でこの町に降り注いだうちの一つです」

「一つ、ってことは複数あるの?」

「全部で21個。うち一つは回収済みです。それにここに落ちたのはジュエルシードだけじゃない…」

「あんなのがアレ含めて20個あって、さらに別の物もあるってこと!?まずいなんてもんじゃないでしょ!」

「すいません……」

「なんであんたが謝るのよ。輸送中の事故ってのはあんたが引き起こしたの?」

「いえ、そういうわけじゃ……。ただ、ジュエルシードとクロウカード(・・・・・・)は僕が発掘したものだから、もし僕が発掘してなければこんなことには―」

 

 

 

「ちょっとマテ」

 

 

 

「―はい?」

 

 翔太は転生前の世界で訊き覚えがあった単語が聞こえた気がしたので思わず突っ込みを入れる。彼の記憶に間違いがなければ、少なくともそれがあるとすれば海鳴市ではなく友枝町のはずである。

 

「ジュエルシードと、あと何だって?」

クロウカード(・・・・・・)です」

 

 なんでやねん!! なんでそれがこの世界に存在すんねん! と、興奮のあまり翔太の頭の中では関西弁の突っ込みを入れていた。

 

「そんなことより今目の前のことよ!」

 

 人知れず内心で混乱していた翔太を、アリサが律した。見れば奴も体勢を立て直して、再びなのはの方に跳びかかろうとしているのがわかる。

 

「サンキュ、アリサ。目が覚めた。……なのは、それとレイジングハート、だっけ? とにかくお前らならアイツを封印できるんだよな」

「そうなのレイジングハート?」

『All right。ですがマスターのイメージ構築に時間がかかると思われます。その間の時間稼ぎをお願いしたいのですが』

「まかせとけ!」

 

 翔太はヤツとなのはの間に割り込んで、紙束の中から66頁~77頁の束を引きちぎり、胸元に押し当てて叫ぶ。

 

『能力召喚"御坂美琴"、能力:電撃使い(エレクトロマスター)!』

 

 どくん!と翔太の身体に、脳に、能力の使い方が叩き込まれる。

 

「いくぜっ!」

 

 額から放出される青白い光を右手にいったん集め、奴に向かって解き放った。

 

『ヴァアア!?』

 

 命中して足を止めることに成功する。ビリビリ痺れるように震えているのがわかる。

 

 御坂美琴を召喚するのに、なぜ超電磁砲(レールガン)ではなく、電撃使い(エレクトロマスター)という単語を用いたのか。それは、超電磁砲(レールガン)として召喚すると、そちらの印象が優先される所為で、電撃を他の事に使いにくくなってしまうからだ。

 例えば、電撃使い(エレクトロマスター)として召喚した場合にも超電磁砲(レールガン)を撃つことはできるが、その場合の威力を仮に"50"とする。砂鉄剣や電撃照射の威力も"30"くらいになると設定しよう。

 これが超電磁砲(レールガン)として召喚した場合、超電磁砲(レールガン)の威力は"100"となるが、逆に電撃照射の威力は召喚した能力名の印象(・・・・・・)からずれる所為で、"10"となってしまうのだ。

 今回みたいに、ジュエルシードを破壊してしまう危険性のある超電磁砲(レールガン)は使う気がない場合には、超電磁砲(レールガン)ではなく電撃使い(エレクトロマスター)として召喚した方が都合がいいということだ。使い様によっていはいくらでも汎用性のある能力である。

 

 実際には大したダメージではなかったようで、すぐに起き上がって再び跳びかかろうとしてきた奴に向かって、翔太は磁力で構成した砂鉄剣を叩きつけて怯ませる。ついでに剣の形をといて、砂鉄状態で奴の周囲を囲むように操作して逃げ道をふさぐ。

 後ろのなのはの力が、何か形を成してきたのを肌で感じて振り返る。

 

「いけるか?」

「任せて!」

 

 そう言って杖を突き出すなのは。

 

『sealing mode set up。stand by ready』

「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル21、封印!!」

 

 杖の先端に円形の魔法陣が描きだされ、その中心から飛び出した桜色の光線が奴を包み込む。

 

『ヴァアアアアァァァァ………』

 

 黒いもやもやが晴れて、菱形の青い宝石が浮かび上がってきた。

 

『sealing。receipt number XXI』

 

 そしてそれはレイジングハートの赤い宝石の中に吸い込まれていった。

 

 

 

「………えーと、解決ってこと?」

 

 数秒の沈黙を破ってアリサが確認するように周囲を見回す。

 森の中だからというわけでなく、日が落ちた所為で暗さを増している。まだ消えてない電撃使い(エレクトロマスター)の能力で手のひらに雷球を発生させて周囲を照らす明かりの代わりにする。

 

「はい、この近くにはもうジュエルシードはありません」

『barrier jacket off』

「あ、服が戻った」

 

 実際見た目の上で大した変化はないが、なのはの格好が制服姿に戻り、胸元にレイジングハートが収まっている。

 

「とにかくこの森から出ましょう。はぁ、塾は完璧遅刻だわ…」

「にゃ、にゃはは」

「はーい、後悔は後回し。急がねーと俺の能力が切れて真っ暗になるぞー。あと塾はもうサボろうぜ?」

「急ごう」

 

 結構奥まったところまで逃げてしまっていたようで、公園までたどり着くまでにそれなりの時間を要した。

 

 

 

 

 

 

 その後は黙々と歩いて林を抜け、背後に街灯が立っている公園の狭いベンチに、端から、なのは、すずか(膝の上にユーノ)、アリサ、翔太の順でピッチリ詰める形で座り込んだ。

 ちなみに電気は林を抜けた時点で時間切れになっていた。

 

「はあ゛ぁぁぁ~~~。ホント疲れたわ」

「レディがおっさんみたいなため息吐くな」

「…うっさい」

 

 アリサが顔を赤くしてそっぽをむく向こう側で、ユーノが説明を始めていた。

 

 

 

 この世界には、次元世界というものが存在していて、ユーノはこことは違う次元から訪れたのだという。ロストロギアという、発達しすぎて滅亡した世界の遺産を発掘することを生業としているスクライア一族の一員らしい。

 その発掘作業の中で、先日ユーノが見つけたのがジュエルシードとクロウカードなのだそうだ。どちらも過去の文献で大きな力を秘めているらしい記述があったため、スクライア一族で管理するのは危険と判断し、次元世界の治安維持組織、時空管理局に預けることになった。

 しかし、その道中で原因不明の事故にあい、クロウカードを封印できる鍵だけは何とか回収したが、他は間に合わず、ジュエルシードとクロウカードがこの海鳴市に降りそそいだのだと言う。

 発掘のときの総責任者であったユーノはそれに責任を感じ、今回単独で回収に臨んだらしいが、この世界の魔力素に適合不良を起こしてジュエルシードの一つ目を回収した時点でほぼ力尽きてしまったらしい。

 

「お前が責任を感じることはないんじゃないか?というか、管理を諦めるくらい危険なものならさっさとその、時空管理局?とやらに回収を依頼すればいいのに」

「それはそうなんですが、組織というのはなかなか腰が重いというのがあって、こんな偏狭な惑星に実動部隊が到着するのには時間がかかるとのことで、いても経ってもいられず…」

「急ぎユーノだけで回収しようとしたってことね。それにしてもどこもかしこもお役所仕事はこれだから…」

「あ、あはは」

 

 こめかみに指をつけて首をふるアリサにすずかは苦笑いをするしかない。

 それにしてもさっき気になることを言ってたな。

 

「さっきさ、クロウカードに関して"封印できる鍵だけは何とか回収"したって言ってたけど、逆に言えばもしかしてクロウカードって、それ使わなきゃ封印できねーの?」

「はい、そうなんです。クロウカードには太陽と月の属性があるのですが、太陽属性のカードはこの太陽の鍵、月属性のカードは月の鍵でしか封印が出来ないんです。少なくとも文献ではそう記されていました」

 

 そう言って、金色と銀色の鍵を差し出す。

 翔太は"カードキャプターさくら"の内容をある程度記憶しているが、そんな設定は聞いた覚えがなかった。この世界において、クロウカードは翔太が知っているものとは少々違う来歴を持つ存在なのかもしれない。そもそもクロウカードはさくらの世界ではイギリス人と中国人のハーフが作ったと言う設定のはずである。完全に地球生まれのはずであるが、ユーノの話を聞く限り、遠い次元の古い時代の文献にもその存在が記されているところをみると、かなり違いがあるようだ。

 

「ただ……」

「ただ?」

「……なんか嫌な予感がするんだけど気のせいかしら」

 

 小首を傾げるすずか、そして眉根を寄せて苦い表情を作るアリサ。

 

 

 

「僕にはこの鍵を起動させることができなくて」

 

 

 

「………………はっ!?ダメじゃん!?」

 

 あまりのことに反応が遅れたアリサ達だった。

 

「ちょっと、それじゃクロウカードってのがさっきのジュエルシードみたいに襲ってきたら対処が出来ないってことじゃない!」

「そうだね…… ところでアリサちゃん」

「何よ! 今たてこんでるのよ!」

 

 そういえば先ほどから言葉を発していなかったなのはが、とある一点―ベンチに座るみんなの影―を見つめたまま、とても乾いた声でこう言った。

 

 

 

「さっきからアリサちゃんの影だけ微動だにしてないんだけど…」

 

 

 

 アリサはこのベンチに座ってから、翔太の言葉にそっぽを向いたり、ユーノの話に派手にリアクションをとっていた。そのはずなのに、一切影が動いてなかったというのだ。

 なのはの言葉に恐る恐る―首からギ、ギとかいう音を出しながら―アリサの影に視線を向けるみんな。

 

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

 

――………………………―

 

「………」

「………」

「………」

「………」

「……?」

 

――ブワッ!!!――

 

「「「きゃああああああああ!!!!」」」「「うわああああああ!!!!」」

 

 突如として影が膨れ上がり、彼女たちは一斉にベンチから飛びのいた。

 

「何よあれ何よアレジュエルシードなのジュエルシードなの!?」

「おおおおおおお落ち着いてアリサちゃん!?」

「おお前も落ちつけよすずか!?」

「私なのはだよ!?」

「皆さん落ち着いてぇ!」

 

その間にもゆっくりひたひたと近づいてくる影。

 

「アレはクロウカードです!」

「あ、そうなの?…って、封印できない奴じゃないの!どうすんのよ!」

「と、とりあえずなのははバリアジャケットとやらのセットアップを!」

「りょ、りょうかい!レイジングハート!」

『All right my master』

 

 なのはを包む光が解けて衣裳が変わった時には、翔太はなのはの隣にならんで原稿用紙の束を持ってアリサとすずかを庇うように前に出ていた。

 影は翔太達の様子を見下ろすように、優雅に佇んだままだ。

 

「野郎…… 余裕かましやがって。封印できない以上、おどかすぐらいしかできねえけど!」

 

 翔太はヤケクソ気味に数頁引きちぎって唱えた。

 

『能力召喚"Fortis931"!!』

 

 瞬間、翔太は炎の魔術がこの身に宿るのを感じた。

 本来とある魔術の禁書目録上ではステイルの魔術は、周囲に張り巡らされたルーンがあるからこそ発現できる、という設定がある。だから能力だけを呼び出したところで結局使えないのではないか、と思うかもしれないが、それは違う。

 

「半端にやるつもりはねえぞ!炎よ(Kenaz)――」

 

 右手を大きく振りかぶる。その手には超高熱の炎の塊が生まれている。

 召喚に使った頁が"その魔術が行使できる状況"であれば、問題なく使うことができるのだ。

 

「――巨人に苦痛の贈り物を(PurisazNaupizGabo)!」

 

 それを影に向かって思いっきり投げつける。

 

―ドオオオォン!!!―

 

 爆発音が響き、あまりの熱量に公園の砂がガラス状に変化をしていた。

 だが、影は変わらずそこにある。

 

「くそ、やっぱり影には通じないか!」

 

 本体には攻撃が通じないのはCCさくら原作と同じ。

 

「きゃあ!?」

「なのは!?」

 

 街灯に照らされてできたベンチから伸びた影に足を取られて、なのはがぶんぶん振り回されていた。

 そういえば(シャドウ)には周囲の影を操る力があったんだったか、と翔太はひとりごちる。だがそれと同時に対策も思い出す。本体以外の影ならば、炎の光で照らすことで消すことが出来る。

 

「これでも喰らえ!」

 

 なのはを捉えている影の付け根の部分に炎弾を投げ込む。その炎に照らされてなのはを捉えていた影がすーっと消えていった。

 

「わわ!?」

「おっと」

 

 ナイスキャッチ。

 でも本体の影に対しては干渉が出来ないので決定力がないのは変わらなかったりする。

 そんな風に翔太となのはが奮闘している横で、アリサ達は現状の対処の仕方を模索していた。

 

 

 

「あれをレイジングハートで封印することはできないの?」

「術の系統が全然違うから無理なんだ。封印はこの鍵でないと」

「でもユーノは起動が出来なかったんでしょ?」

「そうなんだけど……君たちにも僕の"声"は聞こえてたんだよね?」

「そうよ。それがどうしたの?」

「それは魔法の才能があるってことなので、もしかしたらこの鍵を起動することが出来るかもしれない」

 

 翔太は、その話を(シャドウ)に意識を向けつつ耳をダンボにして聞いていた。これはもしかしてもしかするのか? と。

 

「………やるだけやってみましょう」

 

 そう言ってアリサは太陽の鍵を受け取る。

 

「私も」

 

 すずかも月の鍵を手にする。

 

「胸の奥にあるリンカーコア、魔力の源を強く意識して。そしてそこにある魔力を鍵に流し込むイメージを」

「「………」」

 

 二人は鍵を両手で包みこみ、目を閉じた。

 数秒、何もおこらず、これはダメかと思った瞬間、目の前の(シャドウ)が何か、驚いたようなリアクションをした。

 それと同時に、アリサの手から金色の、すずかの手からは銀色の光が漏れだした。

 

 

 

『こにゃにゃちわ~~~~!!!!』

『………はぁ』

 

 

 

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

 

―………―

 

 突然、金色に光り輝く太陽の鍵が元気よく喋り出し、その場の全員が―(シャドウ)も含めて―ポカーンと口を開く。同時に目覚めたらしい月の鍵の声の主も「呆れてものも言えない」といった感じだ。

 

『いや~、あんさんようわいを目覚めさしてくれたわ~。何気に数百年ぶりとちゃうか?』

「か、関西弁?す、すずかのほうは?」

『安心してください。私の翻訳機能は正常ですよ』

「そ、そうなんですか」

 

 突然ハイテンションに喋り出した太陽の鍵に困惑するアリサ。すずかの方は比較的まともなようだ。

 

『なんやスッピー、別にわいの翻訳機能が壊れたんやないで?わいら実体を持たん管制人格やさかい、普通にしゃべっとるだけやったらキャラが薄くなるやろ?だから言葉で個性を発揮せんと埋もれてくで?』

『私を巻き込まないでください。それとスッピーと呼ばないでください。私はスピネルです』

 

 とりあえずCCさくらの世界観の設定とは違う事を確信した翔太だった。彼らは杖に宿る管制人格などではないし、そもそも杖は二本もない。クロウカードの事も、翔太の知っている物とは別のよく似た何かなのだろうと思うことにした。

 

「あ、えっと、そのあれを封印するのに力を貸してほしいですけど…」

 

 すずかが(シャドウ)を指差しながら、おずおずと月の鍵に向かって伺ってみる。

 

『なるほど。この地にクロウカードが解き放たれたというわけですね』

『ありゃ(シャドウ)のカードやないか。しょっぱなから変なヤツ引き当てとるな~』

 

 声だけのはずだが、ふんふんと頷く気配が伝わってくる。確かにキャラはたっている。

 

「で、協力してくれるの?くれないの?」

『まあ私はかまいませんが、あなた方は理解しているのですか?』

「何をよ」

『クロウカードの封印は、私とその術者にしかできません。そして私と契約すると言うことは、クロウカードの回収はあなたたち以外にはできなくなる、他の者には任せることが出来なくなるということです』

「あのカードを封印するだけして、解約、とかはできないんですか?」

『そりゃ無理や。解約したとたん封印が解けてまた散らばるだけや』

 

 ユーノの問いに太陽の鍵が答える。翔太の頭に「魔法少女のマスコットキャラクター世紀の競演」とか益体のない事が思いうかんだが、早々に振り払う。

 

「ふん、初めからそのつもりよ! クロウカードだろうがジュエルシードだろうが、全部私たちで集めてやるわよ! ね、すずか?」

「もちろん」

「え! で、でもジュエルシードの関しては僕の魔力素適合が治ったらお手伝いいただかなくても――」

「手伝うよ!」

 

 (シャドウ)と相対しながら―というかまた影に足を取られてぶんぶん振り回されながら―強い決意のこもった言葉を放つ。

 

「そりゃっ!」

 

 とりあえずそのままじゃ格好がつかないので、なのはを捉えていたいた影を炎で消して助け出す翔太。なのははレイジングハートの補助でしっかりと着地した。

 

「危険なものがこの町にあるって知ってて、そしてそれに対処する力があるのにそれを見逃すことなんて、私にはできないよ」

 

 なのはの強い決意のこもった笑顔に見つめられ、ユーノは何も言えなくなっていた。

 

「私も同じ気持ちだよ」

「もちろん私もね。いいわ、契約とやらをやってやろうじゃないの!」

『よっしゃ、ようゆうた!そんじゃ契約を始めよか!あんさんら、名前は?』

「アリサ・バニングスよ」

「月村すずかです」

 

『よし、なら始めよか。―我、陽の選定者、ケルベロス』

 

『陰の選定者、スピネル・ムーン』

 

『我と契約を望む少女、名をアリサ』

 

『名をすずか』

 

 

 

『『我らを手に取り、力を手にせよ 封印解除(レリーズ)』』

 

 

 

 アリサ、すずかの目の前で鍵がほんの少しだけ形を変える。色は違うものの、なのはがレイジングハートを起動させた時と同じように、周囲に魔力の光があふれる。アリサからは金色の、すずかからは銀色の光が。

 

 そして躊躇することなく、それを掴むふたり。その瞬間、光が包み込んだ。

 

 

 

 光が晴れたその真ん中に、それぞれの杖を手に、服が変わっている二人の姿があった。

 

 アリサは足首までのブーツと、布製のひざ当て、太ももの中ほどまでのスパッツとそれを覆うミニスカート。ピンク色に赤いラインの入ったインナーはノースリーブだが、それに肩が膨らんだ半袖の赤いジャケットを羽織っている。手は指貫きグローブをして、手首から腕の中ほどまでは金属のアーマーに覆われていた。髪止めはいつものゴムではなくリボンに変わっている。

 全体的に赤色が基調となりかっこいい印象だが、背中、というより腰の部分についている大きなリボンがアクセントになって、かわいらしさも感じられる。

 手に握っている杖は、先端部分に太陽を模した金色の大きな飾りが付いている赤い杖だ。

 

 すずかは足首までのブーツ(アリサと違って紐靴タイプ)と、少しフリルのついたミニスカート。白いインナーは手首までの長袖で、それを覆うようにコートのような紺色のジャケットを羽織って、手には指貫きグローブをしている。髪の方はヘアバンドが金属製になっていて、さらに体育のときのようなポニーテールで、それをリボンで結んでいる。

 全体的に清楚で可愛い印象だが、ミニスカートなせいか普段より活動的な印象も感じる。

 手に握っている杖は、先端部分に満月を模した銀色の大きな飾りが付いている青い杖だ。

 

『さて、契約したのは良いですが…』

「どうしたんですか?」

『今回私達にできることは何もありませんね』

「どういうことですか?」

(シャドウ)は太陽の属性のカード。封印できるのは太陽の杖だけです』

「そうなんですか…」

 

 役に立てないと聞いてしゅん、と落ち込むすずか。

 

『心配をする必要なありませんよマスター。月の属性のカードの場合は逆にあちらの方が役立たずになると言うだけのことです。お気になさらず』

 

「ちょっと聞こえてるわよアンタ」

『まあまあアリサ。スッピーは敬語なくせして言ってる事は辛辣やったりするけど根は良いやつやさかい、大目に見たってぇな』

 

 なんか早くも打ち解けてるっぽい二人であった。

 

「てゆーか、早くこいつを封印してくれ!なのはが(ある意味)ひどい事になってんだよ!」

 

 実はアリサ達が契約をしている横で、さっきからなのはは影に足を掴まれて振り回される→翔太が助ける→着地→再び掴まれて振り回される、を延々と繰り返していた。(シャドウ)は暴れるというよりも遊んでいるだけらしい。

 

『レイジングハートと契約する時に漏れ出たその少女の魔力に興味を持って、遊びに来ただけでしょう。(シャドウ)は偏屈なカードですが、悪い子ではありません。おそらく危害を加えるつもりはそもそもないでしょう』

 

 眠っている私にも感じ取れるくらいの超魔力でしたから、と漏らすスピネル。

 

「いやもう三半規管がぐるぐるだと思うけど!?」

「ふにゃぁ~~」

 

 目もぐるぐるだ。

 

「それで、ケルベロスって言ったけ? ……長いからケロちゃんって呼ぶわ。封印ってどうやるの?」

 

 あっさりと呼び名を変えるアリサ。実はアリサ、翔太と友達になった時も「すずめのみや……長い名字ね。面倒だから翔太でいいわね」と速攻名前呼びになったというエピソードがあったりする。本人もバニングスと呼ばれるよりもアリサと呼ばれるのを好む。

 

『け、ケロちゃん!?わいにはケルベロスって立派な名前が』

「封印ってどうやるの?ケロちゃん(・・・・・)

『封印のやりかたをお教えしますアリサ様』

 

 睨みに怯えて屈服したケロちゃん。御愁傷様である。

 どうやらもうすぐ封印ができる事を察した翔太は(シャドウ)が逃げないように、原作と同じく周囲を火で囲んで(シャドウ)が潜れるような影を消す。

 

『…って唱えたら封印できるんや』

「なんだ、結構簡単なのね。それじゃいくわよ」

 

 翔太が下準備をやっている間に準備が整ったのか、アリサが(シャドウ)に近づいて行く。(シャドウ)の方も逃げる気はないのか、なのは()(断じてなのは()ではない)遊んだことに満足したのか、特に抵抗は見せなかった。

 

「汝のあるべき姿に戻れ!クロウカード!」

 

 ゴウ、とアリサの杖から金色の魔力が迸り、(シャドウ)を包んでいく。それはやがて輝きを失い、一枚のカードとなってアリサの手に収まった。

 カード片手に満面の笑みで皆に向かってピースをするアリサ。

 

「クロウカード(シャドウ)、封印完了!」

 

 カードキャプターアリサ、始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで」

「ん?」

「辺り一帯すごい事になってるんだけど、どうしよう」

 

 主に翔太が放った炎の影響で、ガラス状になっていたり焼け焦げていたりと、ここだけ局地的に空襲でも起きたのかという物凄い光景だった。

 

「………………………よし逃げよう」

「同感」

「さ、なのはちゃん、ユーノくん」

「え、あ、うん」

「は、はい」

 

 誰かが気付く前に一目散にその場を逃げ出した。

 

 

 

 翌日、その公園の惨状が地方紙のトップを飾ったのは言うまでもない。

 

 

 

 




旧版との大きな変更点はユエではなくスピネルになった所。性格や言葉遣い的にイメージし易い。
しかも名前がスピネル・サンじゃなくてスピネル・ムーンに改変してます。原作至上主義者は注意。そこはほら、異世界ってことで納得して頂戴。
CCさくらではスピネルは属性が太陽・陰でした。ちなみにケルベロスは太陽・陽です。ユエは月・陰で、ルビーは月・陽。
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