捏造している箇所があるのでご注意ください。
『3年E組への外部からの暗殺者と情報屋2名の投入日に関して学校側と政府側で食い違いが起きている。学校側によると編入日は本日とのこと。至急確認。』
そう上司からの連絡を受け、予定より随分と早く出勤をしてアタッシュケースを両手に隔離校舎までの山道を進んだ。
ケースの中には予備として手元に置いていた分の対超生物用ナイフと銃、弾薬。本来ならば発注をかけて検品の上真新しい物資を送付してもらうのだが、今回のように迅速な受け渡しが優先される以上は致し方ない。
特に今日は通常の業務に加えて、理事長に明日からの件で挨拶に向かう予定も入っていた。余計に時間が惜しい。
予定日前にトラブルを起こした、今回作戦投入される外部人員二人。
片方は「影」そのものではと噂される程に接近及び接触に長けた暗殺者。近接戦闘にも長けているため、権力者から豪傑までその暗殺可能対象は幅広い。
もう片方は高い潜入技術と観察眼で得た希少性・有用性・信憑性共に高い水準の情報を売買する情報屋。数多の高難易度依頼を尽く成功させてきており、政府も何度か彼に依頼を出していると言う。
両者共に確かな実績があり、何より一般人が見ても違和感なく生徒に紛れる事の出来る年齢だと言うことで今回この投入作戦にて真っ先に名前が挙がったとのことだ。
俺自身もこの作戦の指揮官として彼らの情報を確認した際に異論は無かった。
触れられないターゲットに対して、接触に長けた暗殺者。
情報が少ないターゲットに対して、観察眼に優れた情報屋。
基礎的な動きが身についていない一般の生徒達に対して、同年代の近接戦闘に長けた人物。
気配や殺気のコントロールに慣れていない一般の生徒達に対して、同年代の潜入技術に長けた人物。
ターゲットに対しても元から在籍している3年E組の生徒達に対しても、現時点でこれほどまでに理にかなう人員も中々いないだろう。
そう思っていたが。
確かに作戦に開発協力している研究所の1つから、対超生物物質繊維を使用した服飾品が試験目的で支給されているとは聞いていた。しかし、それでは破壊力の面で心許ない。なにせ以前交流した開発陣の若い研究員からも「溶解自体は可能だが、既存のナイフや弾薬に比べて純度が低いため溶解の速度が圧倒的に劣る。」と直接報告を受けていた品だ。スピードが自慢のターゲットに対して速度が既存品よりも劣る、という欠点は致命的だろう。
「触手を一本破壊した」
だから、その言葉を聞いた時は大変驚いた。最新鋭の戦闘機ですらヤツに傷一つ負わせることは出来なかったのだ。それを装備のハンデを背負いながら成すとは。
本人たちはかなり不服そうだったが、これは我々にとって大きな前進だ。触手破壊の実績を持った生徒として長い時間3年E組に留まる彼らが今後投入予定の兵器や装備、そして暗殺者と連携することで作戦成功率は格段に上がるだろう。
今回直接言葉を交わしてみて感じた。彼らは優秀ではあるが決して従順ではない。特に情報屋、俵木統也の方は。口ぶりから察するに、今回のこの騒動の首謀者は彼だ。
しかしその行動には彼らなりの意図があった。それが依頼の完遂ひいては若い彼らの身と生活を守ることに繋がっていたと、そういう事なのかもしれない。
ただ従順なままでは自らが破滅しかねない。これは社会においても通ずることだ。特に殺しを依頼するような、そんな人間と取引するような世界では。
だから今回の件について、俺は深く咎めることをやめた。
それに今の彼らは守られるべき立場の『生徒』でもある。そして俺は明日から名実共に彼らの教師だ。……生徒の自発的な行動は、きっと称賛されるべきものだろう。
だから。
共にヤツを殺せるようによろしく頼む。