私と僕の暗殺教室   作:宵季

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僕と私の転校初日
磯貝と転校生


「‥‥‥‥な‥‥‥‥の」

「「‥‥‥‥な‥‥‥‥の」

「もう‥‥さんってば‥‥‥な‥でしょ」

 

朝、いつものように本校舎から隔離された位置にあるE組校舎に向かうために山道を歩いていると、声が聞こえた。

どうやら上で誰かが会話をしているようだ。

 

一方の声は小さくてよく聞こえないがもう一方の声は男のもののようで、高めの活発そうな印象の声が鼓膜を僅かに震わせる。語尾の強さからすると言い合いをしているようにも思えるが、内容がわからない以上検討がつきにくい。

 

‥‥にしても一体誰だ?

前原達と練った殺せんせー暗殺計画の下準備の為に、他のヤツよりも今日はかなり早く来たんだけど。

 

殺せんせーが来てからというもの、俺達椚ヶ丘中学校3年E組の生徒以外に国防省の人達もここに出入りするようになった。だから知らない大人が校舎にいること自体はそう不思議なことではない。

 

でも、上から聞こえるこの声は防衛省の人達が纏う緊張感のある声や会話とは違って、こう、どちらかというと俺ら生徒が休み時間に談笑する時の雰囲気に近しいものだ。

 

覚えのある雰囲気ではあるけども、聞いた覚えはないその声色の主を確かめるためにも、俺は制服では少々歩きにくいこの山道を進んでいく。

 

少し歩けば木々に囲まれた視界が開けて、日光が声の主を照らした。

 

校舎の前に立つのは、クセの少ない長い黒髪を横に結んだ女子と少しふんわりとした癖毛の白髪の男子。二人とも肩に大きなスポーツバッグをかけている。

 

こちらに気付いた二人は会話をやめ、同じように山道を登りきったばかりの俺を見た。

俺の方に向けられた二人の顔立ちはどちらもとても整っていて、その影響で俺は一瞬仰け反りそうになった。

 

「あっ、もしかして君ここの学校の人?」

が、向こうから声をかけられたことで何とか体制を崩さず踏みとどまった。

 

笑顔で先に口を開いたのは男子の方。日本人にしては洋風な顔立ちで、もしハーフやクォーターと言われても納得するほどだ。

声の印象と同じく活発で親しみやすそうな雰囲気を纏っているが、それ抜きで顔だけを見ると白い癖のある髪と淡い光を持った緑色の瞳、それを縁取る髪と同色の睫毛のせいもあって儚げな印象も抱く。こういうのを浮き世離れと言うんだろうか。そういう意味ではイケメン、というより美丈夫ってやつなんだと思う。深い意味はないけど、ニュアンス的に。

 

鮮やかな緑色のパーカーを羽織り、黒い手袋とブーツを履いてはいるが、

シャツ、ネクタイ、ズボンは俺と同じ椚ヶ丘の制服……ってことは。

 

「ああ、そうだけど‥‥。もしかして転校生、とか?」

 

正直この微妙で大変な時期に転校生が来るとは思えないし、もうすぐ転校生がくるなんて話も殺せんせーや烏間さんからは聞いていない。

だが椚ヶ丘の制服を着ているものの、ここの学校の人かと聞いたことを踏まえると本校舎の学生ではなさそうだ。

 

となると、時期外れの転校生の線しか残されていない。

 

「うん!大当たり!

楽しみだったもんだから朝早くに着きすぎちゃったんだよね、あはは。」

 

そう言って困ったように眉をさげて笑いながら頬をかく。

 

「あっ、最初に自己紹介するべきだったよね!?」

 

いけないいけないと言いながら、左手で女子の手を引いて今いる校舎の前から俺の方に小走りでやってくる。

女子の方は少し迷惑そうに整ったその顔をしかめた。

 

俺の前に着くと彼は荷物を地面に置き、空いた右手を差し出して満面の笑みを浮かべた。

 

「僕は俵木統也(わらきとうや)だよ!大統領の統に、地面の地の右側のやつで也。これからここに通うことになるから、よろしくね!」

 

ぱっと大きな花が咲いたような笑顔で握手を求める統也。

まっすぐ差し出されたその手に戸惑いつつも、よろしくと握手を返す。突然のことなのに、吸い込まれるように自然に俺の手が統也の手を握るために上がった。

握られた手を見ると、自分よりも統也の方が色白だと言うことに気づく。髪といい皮膚といい、全体的に色素が薄いようだ。

 

「そんでこっちが、俵木宵(わらきよい)。僕の双子の姉さんだよ!

双子で名字が一緒だから、僕らのことは統也と宵って、下の名前で呼んでね~。」

 

両手でずいっと背中を押され、女子‥‥宵さんが俺と統也の間に立たされた。

 

「‥‥俵木宵(わらきよい)です。よろしく。」

 

男子‥‥統也の行動に不満があるのか、少々辟易とした様子で自己紹介をした宵さんの方は和風美人、というのだろうか。可憐で女の子らしさがあるけれど、同時に強さもある雰囲気の顔立ちだ。

色味のない椚ヶ丘のシャツ、ベスト、ネクタイ、スカートを着用しているが、統也と同じ黒手袋とブーツを身に付けている。

高い位置で括った癖のない髪の色も黒で、

履いているデニール数の高いタイツの色も黒だからか露出がなく隙がない。そんなイメージを沸かせる。

 

表情があまり変わらず、口数が少ないせいか統也に比べると少し近付きがたく感じてしまった。

 

男と女。

白髪と黒髪。

洋風と和風。

笑顔と無表情。

 

双子だと言っていたけれどこの二人、全体的に正反対なのは気のせいだろうか。

いやでも男女ということは二卵性だから、別に不思議でもなんでも……

 

と、危ない危ない。

向こうが自己紹介してくれたならこっちも自己紹介をしなくては。

 

「俺は磯貝悠馬。ここ3年E組でクラス委員長をしてるんだ。困ったことがあったら、いつでも相談してくれ。」

「うわあ委員長さんだったんだ!イソガイくん、磯貝悠馬くんと。

うん、それなら遠慮なく頼りにさせてもらうね!」

「‥‥‥‥。」

 

じゃあさっそく、と統也が前置きをして玄関を指差した。

 

「中に入りたいんだけど、どうやったら空くの?さすがに扉を蹴破ったり、ピッキングしたりするのはいけないよね?」

「あれ、まだ玄関空いてないのか?」

「うん。」

 

統也と一緒に、最初の『困ったこと』を解決しに校舎の玄関に向かう。

この時間なら、先生が玄関の引き戸の鍵を開けているはずだから建て付けが悪くなってしまったんだろうか。統也の鮮やかな緑色のパーカーの背を追う。

 

「‥‥なんだろう、あの触覚みたいなの。」

 

先程から山の風にゆらゆら揺れる頭頂の二房の紙を見ながら

ぽそっと呟いた俵木宵の疑問は、弟の背を追った当の委員長の耳に届くことなく空気に溶けていった。もう‥‥さんってば‥‥‥な‥でしょ」

 

朝、いつものように本校舎から隔離された位置にあるE組校舎に向かうために山道を歩いていると、声が聞こえた。

どうやら上で誰かが会話をしているようだ。

 

一方の声は小さくてよく聞こえないがもう一方の声は男のもののようで、高めの活発そうな印象の声が鼓膜を僅かに震わせる。語尾の強さからすると言い合いをしているようにも思えるが、内容がわからない以上検討がつきにくい。

 

‥‥にしても一体誰だ?

前原達と練った殺せんせー暗殺計画の下準備の為に、他のヤツよりも今日はかなり早く来たんだけど。

 

殺せんせーが来てからというもの、俺達椚ヶ丘中学校3年E組の生徒以外に国防省の人達もここに出入りするようになった。だから知らない大人が校舎にいること自体はそう不思議なことではない。

 

でも、上から聞こえるこの声は防衛省の人達が纏う緊張感のある声や会話とは違って、こう、どちらかというと俺ら生徒が休み時間に談笑する時の雰囲気に近しいものだ。

 

覚えのある雰囲気ではあるけども、聞いた覚えはないその声色の主を確かめるためにも、俺は制服では少々歩きにくいこの山道を進んでいく。

 

少し歩けば木々に囲まれた視界が開けて、日光が声の主を照らした。

 

校舎の前に立つのは、クセの少ない長い黒髪を横に結んだ女子と少しふんわりとした癖毛の白髪の男子。二人とも肩に大きなスポーツバッグをかけている。

 

こちらに気付いた二人は会話をやめ、同じように山道を登りきったばかりの俺を見た。

俺の方に向けられた二人の顔立ちはどちらもとても整っていて、その影響で俺は一瞬仰け反りそうになった。

 

「あっ、もしかして君ここの学校の人?」

が、向こうから声をかけられたことで何とか体制を崩さず踏みとどまった。

 

笑顔で先に口を開いたのは男子の方。日本人にしてはかなり洋風な顔立ちだから、ハーフ………なんだろうか。

声の印象と同じく活発で親しみやすそうな雰囲気を纏っているが、冷静に顔だけを見ると白い髪と淡い光を持った緑色の瞳、それを縁取る髪と同色の睫毛のせいもあって儚げな印象も抱く。

 

鮮やかな緑色のパーカーを羽織り、黒い手袋とブーツを履いてはいるが、

シャツ、ネクタイ、ズボンは俺と同じ椚ヶ丘の制服……ってことは。

 

「ああ、そうだけど‥‥。もしかして転校生、とか?」

 

正直この微妙で大変な時期に転校生が来るとは思えないし、もうすぐ転校生がくるなんて話も殺せんせーや烏間さんからは聞いていない。

だが椚ヶ丘の制服を着ているものの、ここの学校の人かと聞いたことを踏まえると本校舎の学生ではなさそうだ。

 

となると、時期外れの転校生の線しか残されていない。

 

「うん!大当たり!

楽しみだったもんだから朝早くに着きすぎちゃったんだよね、あはは。」

 

そう言って困ったように眉をさげて笑いながら頬をかく。

 

「あっ、最初に自己紹介するべきだったよね!?」

 

いけないいけないと言いながら、左手で女子の手を引いて今いる校舎の前から俺の方に小走りでやってくる。

女子の方は少し迷惑そうに整ったその顔をしかめた。

 

俺の前に着くと彼は荷物を地面に置き、空いた右手を差し出して満面の笑みを浮かべた。

 

「僕は俵木統也(わらきとうや)だよ!大統領の統に、地面の地の右側のやつで也。これからここに通うことになるから、よろしくね!」

 

ぱっと大きな花が咲いたような笑顔で握手を求める統也。

まっすぐ差し出されたその手に戸惑いつつも、よろしくと握手を返す。突然のことなのに、吸い込まれるように自然に俺の手が統也の手を握るために上がった。

握られた手を見ると、自分よりも統也の方が色白だと言うことに気づく。髪といい皮膚といい、全体的に色素が薄いようだ。

 

「そんでこっちが、俵木宵(わらきよい)。僕の双子の姉さんだよ!

双子で名字が一緒だから、僕らのことは統也と宵って、下の名前で呼んでね~。」

 

両手でずいっと背中を押され、女子‥‥宵さんが俺と統也の間に立たされた。

 

「‥‥俵木宵(わらきよい)です。よろしく。」

 

男子‥‥統也の行動に不満があるのか、少々辟易とした様子で自己紹介をした宵さんの方は大和撫子、というのだろうか。可憐だが凛とした雰囲気の顔立ちだ。

色味のない椚ヶ丘のシャツ、ベスト、ネクタイ、スカートを着用しているが、統也と同じ黒手袋とブーツを身に付けている。

更に黒のデニール数の高いタイツを履いているので、露出がなく隙がない。そんなイメージを沸かせる。

 

表情があまり変わらず、口数が少ないせいか統也に比べると少し近付きがたく感じてしまった。

 

男と女。

白髪と黒髪。

洋風と和風。

笑顔と無表情。

 

双子だと言っていたけれどこの二人、全体的に正反対なのは気のせいだろうか。

いやでも男女ということは二卵性だから、別に不思議でもなんでも……

 

と、危ない危ない。

向こうが自己紹介してくれたならこっちも自己紹介をしなくては。

 

「俺は磯貝悠馬。ここ3年E組でクラス委員長をしてるんだ。困ったことがあったら、いつでも相談してくれ。」

「うわあ委員長さんだったんだ!イソガイくん、磯貝悠馬くんと。

うん、それなら遠慮なく頼りにさせてもらうね!」

「‥‥‥‥。」

 

じゃあさっそく、と統也が前置きをして玄関を指差した。

 

「中に入りたいんだけど、どうやったら空くの?さすがに扉を蹴破ったり、ピッキングしたりするのはいけないよね?」

「あれ、まだ玄関空いてないのか?」

「うん。」

 

統也と一緒に、最初の『困ったこと』を解決しに校舎の玄関に向かう。

この時間なら、先生が玄関の引き戸の鍵を開けているはずだから建て付けが悪くなってしまったんだろうか。統也の鮮やかな緑色のパーカーの背を追う。

 

「‥‥なんだろう、あの触覚みたいなの。」

 

先程から山の風にゆらゆら揺れる頭頂の二房の紙を見ながら

ぽそっと呟いた俵木宵の疑問は、弟の背を追った当の委員長の耳に届くことなく空気に溶けていった。




年を跨いでの久々の更新です。
長い間お待たせして申し訳ありませんm(_ _)m

時期としてはカルマ登場の直前の設定ということで‥‥。

磯貝君も引っ掛かりとして感じてますが、本当なら疑うべき可能性を磯貝君は見過ごしています。
というか、見過ごさせられています。

この辺りから別サイトとは違う展開になっているので、ここからどうなるかは正直私にも分かりません。
統也の暴走をいかにコントロール出来るかが一番の課題です。怖い。


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