私と僕の暗殺教室   作:宵季

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磯貝と新しい仲間

俺は3-Eの教室に着くまでの途中、二人のことを聞いた。

 

二人とも政府からの要請でここに俺たちのサポートをしに来たこと。

統也は情報収集が得意で、宵さんは実戦の方が得意なこと。

それと、さっきまで統也が俺に対して印象の操作を行っていたこと。

 

最後の事に関してはすごく謝られた。

話を聞くにさっきの襲撃の時に、俺の様子が変だということで殺せんせーに攻撃を感づかれないようにするのが目的だったようだ。俺自身暗殺成功の為と納得したし、特に怒ってもいないけれど、統也曰わく「誠意」らしい。

 

「いつもの仕事ってさ、僕が僕以外の全く違う誰かになって仕事するんだ。例えば成人済みの会社員とか、図書館の司書さんとか。でも今回の僕らは違う。俵木統也として、俵木宵として、自分がどういう目的でどういう素性しているのか。それを明かしてこの仕事に就いてる。

いくら味方だって言っても、情報屋とか殺し屋とか言われたら君たちめちゃくちゃ怖いんでしょ?しかも僕が騙してたから、本来感じるはずの恐怖を磯貝君は感じることが出来なかったはずだし。

 

例えばさ、ニュースで流れた猟奇的殺人事件の犯人が自分が知ってる優しい近所の女性だったってなったらさ。

自分達が知ってたその人の優しいいつもの顔と、自分達が知らなかった殺人を行う猟奇的な顔の二面性に恐怖するよね。

『危機は近くにあった』『その恐怖が見えていなかった』って。

 

僕が最初磯貝くんに見せたのはその女の人で言う優しいいつもの顔の部分にあたるし、暗殺の時に見せたのは猟奇的殺人鬼の顔にあたる。

猟奇的殺人鬼の顔を知ってしまったら、優しい顔を知っていた分その人の事も信じられなくなるし、何よりもそれに気付けなかった自分自身のこともきっと信じられなくなる。

……僕はそれを知っているのに、そっちの方が自分たちに都合がいいからってわざと磯貝くんにそれをしてしまった。

 

だからさ、本当にごめんね。」

 

そう言って俺の言葉を待つ統也はこの数十分の中でずっと見せていたあっけらかんとした明るい表情を欠片も感じないほどに悲痛だった。

 

「そんな顔するなって。

寧ろ俺は二人のこと心強いと思ったよ。俺ら、暗殺なんて初めてだし不安なことだらけだし。日に日に、この先生は本当に殺せるのかって思う出来事ばっかだし。

これからの暗殺、あんなことができるおまえ等二人が味方だって思ったらめちゃくちゃ心強かったんだ。

だから全然いいよ。寧ろそういう暗殺に関わる目的で騙されるんなら本望だ!

改めてよろしくな、二人とも。」

 

突然やってきた、同い年のプロの情報屋と暗殺者。

もしかしたらこの言葉も表情も、また何かしらの目的を持って作り出した打算的なものなのかもしれない。現に彼を目の前にして言葉を交わしても、自分の判断や感覚なんて全く役に立たなかった。

それでもと思ってしまう、信じたいと思ってしまう魅力が今の統也にはある。自身が今感じているこの感覚と、疑念という相反した感覚を持ち続けたままでは双方から引き裂かれるだけだ。それなら、クラスメイトとして信じる方が良いと思った。

どちらにしても、殺せんせー暗殺の目的は一緒なわけだし。

 

「い、い、磯貝くぅん~!

想像以上にイケメンだぁ~!!」

「ちょっ、統也!?」

「あ。」

先程の悲痛な表情から一変、表情が明るくなった統也にぴょーんと抱きつかれてぐらりと体が揺れる。

左に大きく傾いた体は統也の重みを乗せたまま床に打ちつけられる……………ことはなかった。

 

「ごめんね、磯貝悠馬。トーウーヤー。」

「いやはや本当に申し訳無いね磯貝くん。何度も何度も。いやホントに。マジで。

この仕事の前は3ヶ月間アメリカに行ってたから、なんかオーバーリアクションの癖が抜けなかったって言うか。アメリカンにアグレッシブに行きすぎたって言うか。」

 

緑色の瞳は俺と宵さんどちらでもない明後日の方向を向いている。早口で言い訳をする姿は、どこか頼りない。

 

「統也、言い訳はいいからさっさと退いて。磯貝悠馬にずっと負荷かけてるつもり?」

「早急に退きます。」

「よろしい。」

 

倒れそうだった先にいた宵さんがバランスを崩した俺の背をひっつく統也ごと支えてくれていた。大の男子二人をけろっとした顔で。

服の上から見た限りはかなり細い子だけれど、今の支えの力強さと安定感は半端じゃなかった。さっきの実戦が得意という話や殺せんせーの話からして、フィジカル面に優れているのかもしれない。

……なんだか男として不甲斐ない気分になってしまう。

 

「正直、君がここまで好意的に受け入れてくれると思ってなかった。だから、私も統也があんなことした気持ちは分かるの。気持ちだけ。

改めてよろしく頼むね、磯貝悠馬。」

 

起こした後、俺の背中の制服のシワをぱんぱんと優しく延ばしながら宵さんは言った。

先程殺せんせーの触手を初めて破壊したその手の平が今俺の背を撫でていることに妙な感覚を覚える。

 

「ありがとうな、宵さん。

ほら、あそこの3-Eってかいてある扉のところが俺らの教室だ。」

 

職員室から教室までの短い道中。

俺は新しい3-Eの仲間を連れて、教室についた。

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