9-nine- そらいろそらこいそらのまい   作:奈々歌

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修正、加筆しました。
天メインの新作が発売決まったので、本格的に更新頑張っていきます。

予約はしましたか? その前にゆずソフトやけど(笑

それではどうぞ!


Prologue
Act.0ー1


 朝。目が覚めると手元にあった。

 そう、知らない間に手元にあったんだ。“あった”というよりは“握っていた”と言う方が正しいのか? とにかく、いつの間にか手の中にあったんだ。

 

 ――黒いブレスレット。

 

 別に詳しい訳では無いが、プラスチック製のようであって、そうではない材質。持った感じは凄く軽いのに、少し指で弾いてみると金属のような高い音が鳴る。

 

 はて……こんな物をいつ買った? 貰った? 記憶が無いな。

 

 俺は酒は飲まんし――というか未成年だし。よく聞く酔った勢いで購入したとかはありえない。

 そして今は一人暮らしをしているので、家族からプレゼントのサプライズという線もない。

 ファッションにこだわりもないので、アクセサリーの類いも持ってはいない。

 じゃあ、どうしてこんな物が?

 

 そんな疑問が頭に浮かぶが、ベッドの枕元にある目覚まし時計が鳴り出し、思考を遮っていく。ああ、もうそんな時間か。

 

 朝支度をしなければ学校に遅刻する。

 とりあえずはとベッドの横、小物置きのテーブルに“それ”を投げ置き、寝癖を直しに洗面所へと向かった。

 その後、適当に冷蔵庫を漁り、朝食をすませると、バックを肩に掛けて部屋から姿を消す。

 

「いってきまーす」

 

 誰もいない空間に自身の声が静かに響いた。

 一人暮らしに慣れ、今は何とも思わないのだが、生活を始めた最初の頃は寂しく感じたもの。

 バタンッとドアを閉めると、鍵を閉めた。

 

 …………。

 ………。

 ……カチャリと音がした。

 

 テーブルの上のブレスレットは無くなっていた。

 

 

 

 †

 

 

 

 スマホの電源をつけて時間を確認すると、現在朝七時。

 

 暮らしているマンションをエレベーターで降り、後にする。ここから学校までは電車に乗って四十分ほど。早く出るのは通勤ラッシュで満員になる前の電車に乗る為だ。

 

「ふぁぁああ……」

 

 今日は月曜日。となると、学生の皆さんも同じ考えに至るはず。そう、かったるい。

 ついつい大きな欠伸が出てしまう。

 

 そんなフワフワと頭の上に眠気玉が三つでも浮いていそうな締まりのない顔で駅へと歩いて行く。頬を叩いて眠気を覚ます? 痛いから嫌だよ。

 

 出勤に通学と目的の違いはあれ、通る場所は同じ。

 人々の流れに合わせて、駅の中に入る。カードを反応させ、改札口を抜けると、駅のホームで椅子に座って電車を待つことに。

 

 すると、朝から耳に突き刺さる騒々しく、鬱陶しい声と平手が背中にぶつかった。

 

「おっはよー! おお、相変わらず、眠そうな顔してますなぁ」

 

「うるせぇよ、俺は元々こんな顔だ。知ってるだろ」

 

 勢いよく叩かれた背中を摩りながら、騒音の発生源である少女に返す。少女は叩いた手をひらひらさせて、悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

 

 銀髪の髪、鮮やかな藤色の瞳。小柄な背に少しのお馬鹿。あとは……最近の子らしく、イケイケな雰囲気と適度なブラコンか。

 こいつは「新海 天」。天と書いて“そら”と読む。

 

 本人は“てん”とか“てんちゃん”と呼ばれるのが嫌だと言っていたな。小さい頃から今でも間違えられることがあるらしい。

 初めて天と会った人や、新しいクラスの担任とかに。

 

『何でこの漢字にしたんだ!』とか『将来、絶対改名してやる!』とか前に言っていたな。

 

「今日は兄貴と一緒じゃないのか?」

 

「にいやんはこーんなにも可愛い妹を置いて先に行っちゃったみたい」

 

「は、ざまぁ」

 

「うっせバーカ」

 

「お前には言われたくねぇよ、バーカ」

 

「馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞー」

 

 そんな天との不毛な口論をしていると、アナウンスが掛かり、電車の到着が近いことを乗客に知らせてくれる。

 隣で騒ぐ天には自販機で甘ったるい飲み物を買ったら静かになった。

 

 全く、チョロいもんだ。こいつは変わらないな、小さい頃から。

 

 車輪と線路が擦れ合い、甲高い音がホームに響いてくる。

 時間ピッタリにこうして電車が到着するのは、この国の凄いポイントなのだと、以前見ていたテレビで旅行に来た外国の人が言っていたのを思い出す。

 

 降車する人々を待った後、乗車する。天とは違う車両に乗ろうとしたのだが、付いてきた。制服の袖をいつの間にか握られていたらしく、逃げられない。

 

「おい」

 

「ん? どうかした?」

 

 振り返って天を見ると、可愛らしく小首を傾げている。どうやら揶揄いではないご様子だ。もし、それだったら一目で分かる。幼馴染みだからな。

 はぁ、と溜息にも似た声を漏らしながらも、振りほどくことはしなかった。

 

 車両の中はそこそこに混んでいた。

 座る場所は見る限り無さそうだったので、俺と天はドア付近に立つ。席と扉の境目には仕切りが有り、背を預けるには丁度が良い高さ。天にその場所を譲り、俺は人避けの壁になった。その中で天はご機嫌に飲んでいる。

 

 大体の朝はこんな感じ。毎回、何故か天のペースになってしまう。お財布から小銭がどんどん消えていく……。

 

「ねぇねぇ、この間のイベントのやつ行った?」

 

 窓から外の景色を何となく眺めていると、袖を引っ張られる。

 

「ん? ああ、あれだろ。何かのアニメのやつ」

 

「そーそー、それそれ」

 

 確か、この街『白巳津川』が名乗りを上げ、直々にスポンサーを行った地域振興を目的として制作されたアニメ。

 タイトルは忘れたけどな。興味がなかったから仕方ない。失敗したっていうのは噂で聞いてはいるけれど。

 

「それがどうかしたのか?」

 

「この間、あれのイベントに行ってきたんだけどさー、出店がぼったくりだったんだよ」

 

 ああ、甘い物沢山食べに行くって言ってたもんな。俺は用事があって行けなかったけど。

 

「こ~~~んな小っさいパフェでさ、800円もしたんだよ? あり得なくない? 味もコンビニのスイーツの方が全然マシだった」

 

 自分の両手で大きさを表現している天。

 聞くところでは、アニメ関連グッズのオマケ込みの値らしい。それなら仕方なくないか? イベント物なんて高いもんだぞ。

 テンションが上がっている客に、そのノリで買わせる――常套手段ってやつだな。

 

 にしても今年も開催したのか……。

 

 アニメの内容は、街の伝承をモチーフにしたと聞いたが、難解すぎる物語をアニメでは上手く伝えることが出来ず、「何をしたかったのかが分からない」と悪い意味で評価された。

 

 完全なる失敗作に終わったはずなのだが、それを認めていないのか、将又、理解しての開催なのか――。

 

 放送から二年。放送開始に合わせて始まったお祭り。去年に今年と地元住民の圧倒的な不支持を差し置いて行われた。

 まぁ、去年はどうか知らんが、今年はお祭り騒ぎとはいかなかったと思う。

 理由は――。

 

「そう言えば“地震”、大丈夫だったか? 結構大きかったと思うけど」

 

「ああー、大っきかったよね~。別にこれと言ったのはなかったんだけど、にいやんが警護してた神器? ってのがコロッと落ちてパリーンって簡単に壊れちゃったんだって」

 

「あの玉っころか?」

 

「うん、それそれ」

 

 神器……あの錆びて歪んだ鉄球みたいな物がそんな簡単に割れるものなのか……。アニメにも登場していた秘宝。大昔から奉られてきた由緒正しいマジ物の代物らしいけど。

 

「怒られなかったのか? あんな大事そうな物、やばいだろ?」

 

「沙月ちゃんが別にいいって言ってたから問題ないんじゃない?」

 

「あの人、本当に巫女なのか……」

 

 思わず苦笑いが出た。

 問題ないならそれはそれで……。本当に何も無ければ良いけど。朝から変なことがあったせいか、少し気になってしまった。

 

 その後は何気ない話を交わし、時には線路の継目で車両が揺れてバランスを崩した天を支えたりして密着したりと……。これといって特筆することはなかった。

 

 電車に揺られること数十分。学校への最寄り駅に到着した。

 

 電車を降り、改札口を通る。

 学園の最寄り駅ということもあり、ここからは制服を着る生徒たちの姿が多くなる。その集団に混ざって、天と歩道を歩いていると、前方に天の兄「新海 翔」がいた。

 

 天はまだ兄の存在に気付いておらず、さっきから隣で兄の小言ばかり愚痴っている。

 

「ほら、お前の兄貴いたぞ。行ってやれよ」

 

 このままではいつまでも聞かされそうだったので、指で兄の姿を示す。これは面倒を押しつける為でもある。こうなった天は面倒くさいのだ。

 

「え? 何で?」

 

 杏の指先を目で辿り、兄の存在に気が付く。だが、杏の言葉に小首を傾げていた。

 そう、頭の上にはてなマークでも浮きそうな感じで。

 

「いや、兄貴に会えなかったから、俺と登校して来たんだろ?」

 

「いや、別に?」

 

「何なんだよ、お前」

 

 特に興味も無さそうにしている様子を見ると、本当のようだ。

 

「まぁ、いいじゃん、このままで」

 

「……。まぁ、お前がそれでいいなら――」

 

「あ、ジュースなくなった。杏やん、あの自販で買って来て」

 

「お前、マジで兄貴のとこ行けや……」

 

 呆れながらも、買ってあげてしまうのは何故だろうか?

 

 

 

 †

 

 

 

 暫くして、学園に到着。

 この街の中心となる学園、白泉学園。この辺りの学生は基本的に白泉学園に進学する傾向にあるようだ。

 その為、新しい学校。新しいクラス。新たな生活。と言っても顔ぶれは大して変わらない。

 

 昇降口で靴を履き替えて教室へ向かう。天とは教室が違うので、先に分かれ、それぞれの教室に向かった。というか、同じ教室に入って来そうな勢いで付いて来ていたぞ。

 

「おはよーさん」

 

 教室に入るなり、適当に挨拶をすると、ドアの付近にいた女子たちや、普段から仲の良いいつものメンバーが返してくれる。

 

「おう、今日は早かったな」

 

 肩からバックを下ろして席に置き、椅子へ腰を下ろす。

 すると、隣の席。俺から見て右側か。その席に座る男子生徒が声を掛けてきていた。

 

 こいつは「森本」。高校に上がってから話すようになった仲だ。中学の頃は特に関わりはなかったが、入学して最初に隣の席になったことがきっかけ。

 

「ああ、朝から変なことがあってな……」

 

 謎のブレスレットのことを思い出していた。

 うーん……。本当に覚えが無いんだよな。もしかして天の悪戯か? 天のやつ、俺や兄貴が一人暮らししているの羨ましがっていたからなぁ……。

 

「変なこと?」

 

「なぁ、俺ってさ、最近アクセサリー的な物を貰ったりしなかったよな?」

 

「さぁな、貰ってないと思うけど……。って、何、お前彼女でも出来たのか? 抜け駆けは駄目だぞ! どこの誰だ、教えろ!」

 

「そんなんじゃないって、俺みたいなのに彼女が出来たら、そいつはかなりの物好きだろうよ。お前なら分かるだろ」

 

「ああ……」

 

「それで納得されるのも、なんか嫌だな……」

 

 苦笑を浮かべる杏。それを見て、森本は吹き出して笑っていた。

 

 いつも通りの何気ない平和な朝。今日も何事もなく、過ぎていく――そのはずだった。

 

 

 

 †

 

 

 

 ………。

 ……。

 …。

 

「おかしい、ありえない、普通にホラー」

 

 ホームルームが終わり、1時限目が始まるまでの休憩時間。

 バックの口を開けて、ポケットの財布を仕舞いつつ、次の時間の教科書やらノートを引っ張り出す。

 

 ――そのはずだったのに……。

 

 不自然にノートが底で引っかかり、抜けない。

 首を傾げて一度バックを鞄の上に上げ、中身を確認することに。

 

「まぁ、気にするほどじゃないと思うけどな」

 

 ごそごそと掘っていくと、底に手が容易につく。まぁ、何も入ってないよな。そもそもあんまり物を入れないのが俺だし。気にしすぎかと、バックを机掛けに戻す。

 その時――。

 

 チャリン……。

 

「ん?」

 

 金でも落としたか? 小さい金属のような音が聞こえた。でも、見回しても何もない。試しに森本にも聞いてみるが。

 

「今、なんか落としたか?」

 

 隣で携帯をいじっている所に話し掛ける。最初は耳だけを傾けていたが、携帯から視線を離し、こちらを向く。

 

「なんかって、何を?」

 

「んー、お金?」 

 

「今月既に金欠。1円でも落とさんわ」

 

「……なんか聞いて悪かったな」

 

 多分、趣味に使ったのだろう。今月はこいつが集めている人気タイトルの続編が出ていたな。ゲームに本にアニメに。オタクは大変だな。

 

「それよりもお前、“それ”何? 遂にオシャレに目覚めたのか?」

 

 森本に指を指され、視線で辿る。

 その先は自分の手首。

 さっき、バックに突っ込んだ方の腕。

 

 そこにはあるはずの無い“あれ”があった。置いてきたはずなのに、何故?

 

 ――黒いブレスレット。

 

 腕が少し動き、またカチャリと小さく音を鳴らす。ここで話は最初に戻る。

 

 これは普通にホラーだろ。

 

 




評価、感想貰えると嬉しいです。

OPも前作と雰囲気が違い、また良い感じでしたね。お値段もお手軽ですし、高くて買うのに躊躇ってしまう人にも優しいと思います。
好みのキャラだけを攻略出来ますし。
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