……そういえばモニカの武器にアレがあったな……
……ふむ、思いついた
追記:12月29日修正
ユリスから返ってきた言葉に思わず声を荒らげてしまうヘスティア。何気無い一言に対しての答えに『たった一つの町以外が滅んでいる』と言われればヘスティアのこの反応は仕方ないと言えるだろう。
ユリスは知らないが、オラリオに住まう神に対して人は『嘘をつけない』のだ。正確には神は『人の嘘を感じ取れる』のだが、ヘスティアはユリスの言葉からは嘘を感じ取る事が出来なかった。
「パームブリンクス以外の町は滅んでいるって……冗談だろ?」
だが、嘘を感じ取れる事と信じる事は別物である。ユリスの突拍子もない言葉に対してヘスティアは確認の意味を込めてユリスに言った。
「ううん、本当だよ。十年前に世界は一度、パームブリンクスを除いて全て滅んでしまったんだ」
「……っ!?(嘘を……ついてない!?)」
そしてヘスティアは理解してしまう。ユリスの真剣な顔から出た言葉からは嘘を感じ取れない、ユリスが言っている事は本当の事なのだと。
しかし、それならば当然の疑問が出てくる。
「……どうやら嘘ではないみたいだね。けど、それならこの街が存在しているのはどうしてだ? 少なくとも僕はそれなりに長くこの街に居るけど、世界が滅んだなんて話は聞いたことも無いし、現に今もこうして存在している。それとも何かい? 実際に世界は滅んでいたけど、僕たちがその事を認識出来ていなかった……とでも?」
「……その可能性は高いね。ボクが旅してきた所では世界が滅んだ事による影響で自身の存在が失われていた人たちが居たんだけど、その人たちはほとんどが自分が消えていた事を認識出来ていなかったんだ」
「……これも嘘ではない、か」
ヘスティアは腕を組んで考え込む。
自分たち
が、まだ疑問は残っている。世界が滅んだ事はわかったが、そもそも『何故世界が滅んだのか』だ。
災害か何かで世界が滅んだのであればその痕跡などは残るはずだし、戦争などの人為的なモノであればそれこそ自分たち神や冒険者が居るオラリオまで滅ぶとは思いにくい。
であれば何があったのか。ヘスティアは世界が滅ぶような要因を考えながらユリスに問う。
「……なるほど、ユリス君が言っている事は全て本当みたいだ。それで一つ聞きたいんだが、世界は何故滅んだんだい? 何かがあったのは間違い無いだろうけど、存在や認識が抹消されるって言うくらいだ。……何があったのか、僕に教えてくれないかい?」
ヘスティアの真剣な表情を見てユリスは頷く。
「……うん、わかった。もしかしたら信じられないかもしれないけど、ボクが知っている限りの事、全部話すよ。世界に何が起こったのかを」
「……ああ」
ユリスとヘスティアは近くの椅子に座ると、ユリスは世界に何が起こったのかを語り出す。
十年前にグリフォン大帝という存在によって世界は突如として滅んだ事。世界が滅んだ事によって歴史が歪み、本来は存在していたモノが消えてしまった事。その世界で唯一、自分の住んでいるパームブリンクスという町だけが残った事。それだけでなく、世界を旅する途中で出会った少女から世界が滅んだ影響で未来が失われたという話を聞いた事。世界を、そして未来の為に現代と未来の二つの時代を駆け巡った事と、ユリスは順を追ってヘスティアに話していった。
ユリスの話を聞いている間ヘスティアは、頭の中は冷静になりつつも、心の中では驚愕やら何やらがごちゃ混ぜになっていた。そしてユリスの話の中で気になった所に、自身を落ち着かせる為にもヘスティアは幾つか質問した。
それに対してユリスが答えつつ、反対にユリスもヘスティアの話しを聞いたりと、二人が話し始めてから二十分は過ぎただろうか。二人はお互いに話をしていく内に、一つの違和感を感じていた。
ヘスティアが(あれ?)と違和感を感じている横でユリスも違和感の正体に気が付いたのか同じ様に頭に疑問符を浮かべている。
そして数秒、ヘスティアが違和感の正体に気が付いたと同時に、ユリスも違和感の正体に気が付いたが、ヘスティアが一瞬先に口を開いた。
「ユリス君。話していて思った事があるんだが……聞いてくれるかい?」
「思った事?」
ヘスティアは、自身が思った事をユリスに言った。
ヘスティアが思った事、それはお互いの話が妙に『噛み合わない』部分があるのだ。
ユリスが言っていた事は全て本当の事なのだとわかるが、それにしては自分が知っている事と違っている部分が多い。
特に極めつけはユリスが言っていた鉄道や機械などの科学についての話である。
ユリスが言うには現代や未来には鉄道やロボットなどがあり、それらに乗って世界を旅していたとの事だ。しかし、ヘスティアには乗り物と言えば普通は馬か馬車が一般的であり、鉄道なんてモノは聞いたことが無かった。ましてやロボットという機械で出来た人形については初めて聞き、ユリスがヘスティアに見せた銃という武器は様々な冒険者が集まり、鍛冶の神ヘファイストスの所に居てありとあらゆる武具を見てきたヘスティアですら『初めて見た』代物であった。
オラリオで使われている武器は主に剣や槍、ナイフ、弓矢などで他には強力な攻撃が可能だが詠唱が必要な魔法がある。だが、この銃は引き金を引くと弾を発射して攻撃する物だという。そしてユリスの持つ銃『ラストリゾート』は引き金を引き続ける事で絶え間無く弾を撃ち続けて攻撃する『マシンガン』という武器だと言う。
何だ、それは。
ユリスの話にヘスティアはそれしか言う事が出来なかった。
そんな武器、オラリオで聞いた事も見たことも無い。そもそも存在すら知らないよ、と。
しかし、おかげでわかった事がある。
ヘスティアは銃を腰のポーチに仕舞うのを見てユリスに言った。
「ユリス君。君の話を聞いてわかった事があるんだ」
「わかった事……?」
「ああ。もしかしたらお互いに話が噛み合わない事が多いから君も薄々気がついてるかも知れないけどね」
「……確かに。話していてもしかしたら世界が滅ぶ前の時代に来てしまったのかも、って思ったけど、それにしてはおかしい所が多い気がする」
「僕も、ユリス君の話に出てきた鉄道とかの事を聞いて思ったんだ。この街……この世界にはそう言った科学は殆ど無い、けどそれ以上に大きな事がある」
「……それって」
ゴクリ、と唾を飲み込む音が廃教会に響き渡る。
「うん。ユリス君はさっき世界を旅した話の時に『月』について言っていただろう? 月は元は二つあったって」
「うん。そして、旅の終わり際に世界の崩壊を止めたときに月が一つになったんだけど……」
「……ユリス君。月は元から『一つしか』なかったんだよ。今まで何十年、何百年……ううん、何万年も昔からね。月は二つあった事は無いんだ」
「……えっ?!」
ユリスは驚きを隠しきれず椅子から立ち上がってしまう。
確かに、ユリスが一度訪れた遠い過去には月は一つしかなかった、が、その後に起こった出来事によって月は二つになり、それから遠い年月が過ぎて現代まで月は二つ空に浮かんでいた。
しかしヘスティアは月は元から一つしかないと言う。……どういう事なのか。
頭を回転させて考えるユリスにヘスティアは続けて言った。
「……で、だ。これで僕は思ったんだ。お互いに言っている事は何も間違ってない、なのに何故話が噛み合わないのか。そして世界の事に関してのこの認識の違い」
「……いや、でもまさか?!」
「僕もまさかだと思う……けど、これしか考えられないんだ」
ヘスティアはゆっくりと立ちあがり、ユリスに瞳を合わせる。
一秒か一分か。永遠とも感じられる、一瞬とも思える様な時を感じながらヘスティアはユリスに向けて言った。
「ユリス君。君はもしかしたら君が居た所とは遥か遠い……いや、遠いなんてもんじゃない。この世界は君が居た世界とは違う……」
異世界に飛ばされた、のかも知れないね
のんびり更新