ストパンのVRゲームでウィッチになる話   作:通天閣スパイス

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 窓一つない、閉塞感漂う薄暗い一室。大きな四角いテーブルが中央に置かれ、その回りを幾人もの男女が取り囲んでいた。

 

 テーブルの上には大きな地図が広げられており、ガリア北部――とりわけパ・ド・カレー地方を細かく記したその地図は、カールスラントが狩我戦争時に作成し、第一次大戦後に密かに更新したものである。

 更新の際にガリア側が協力を拒否したため――当たり前ではあるが、他国に自国の正確な地理を知らせるなど本来は自殺行為である――カールスラントが独自で調べて作り上げたものではあるが、それでも出来としてはかなり良いものだった。

 勿論正確無比とはいかないし、細かな計算をしてしまえば実際とズレは出てしまうだろうが、この状況下では及第点を優に越える代物である。カールスラント軍はこの地図を用いて戦略を立て、このガリア北部における作戦行動を決定していた。

 

 地図の上、カレー港や近郊の基地等に複数の白い石が置かれていて、その他の地域に多数の黒い石が置かれている。白は味方である人類の戦力を表し、黒は敵のネウロイを表していた。

 黒に比べて数が心もとない白は、その数の差ゆえに黒による半包囲を許してしまっている。ベルギカ、そしてピカルディー地方――海を背にして白を閉じ込めるように、幾つかの黒が配置されていた。

 

「――昨日(さくじつ)。ベルギカとの国境付近に駐留していた陸軍第1装甲集団が、これ以上の戦線の維持は不可能と判断し撤退。遅滞戦術を行いつつダンケルクへと後退しています」

 

 コツリ、と。指し棒でベルギカの黒石を指しながら、テーブルを囲む内の一人がそう話を始めた。

 

 眼鏡を掛け、鋭い眼差しを浮かべて知的な雰囲気を漂わせているその男は、中将の階級章を着けている。

 ガリア戦線における作戦行動のために組織されたA軍集団、それを率いるルントシュテット上級大将の参謀長を務める彼は、カールスラント軍内部でも一目置かれているほどの知恵者として名高い。

 彼が作成した作戦プランが、当初に用意されていた作戦に代わって採用された、というのは有名な話だ。彼の名前をとって呼ばれているそのプランは、カールスラントが現在進めている撤退作戦、その戦略の基礎になっている。

 

「また、撤退を開始していたピカルディー地方の残存ガリア軍ですが、昨日に当基地への収容が完了致しました。途中ネウロイの中規模集団との戦闘が発生したため、JG3の二個中隊が救出任務に赴き、ヴェルヌ大尉以下十一名のウィッチを無事保護しています」

「損害は?」

「軽傷を負った者が数人、骨折で右腕を使えなくなった者が一人。JG3の戦力の一割がすぐには動かせません」

 

 むぅ、と。上級大将の階級章を襟に着けた、しかし大佐の制服に身を包んでいる老人が、彼の話を聞いて苦々しげに顔を歪めた。

 ゲルト・フォン・ルントシュテット――カールスラントの作戦の中核を担うこの男は、貴重な航空ウィッチが一時的にとはいえ減ったことに忌々しさを隠せない。

 

 対ネウロイ戦術においての主力と言える航空ウィッチは、全世界合わせて一万にも届かない、数千程の数しかいない。陸上ウィッチを含めれば軽く万単位を数えるものの、決して戦力が潤沢なわけではなかった。

 何せ、ウィッチというのは十代の少女がなるものだ。さらに一部の例外を除いて、処女を散らしたり、あるいは二十代に届いてアガリ(・・・)を迎えたりしてしまうと、彼女達は魔力を失ったりシールドが張れなくなったりで、戦力化が難しくなる。

 処女で、十代で、魔力のある少女。そんな人間を選んで徴兵しているのだから、数が集まるはずもない。特に戦力の補充もろくに行えない現状では、数人のウィッチの損失さえ痛手と言ってよかった。

 

 戦力の遣り繰りに思考を飛ばしていたルントシュテットは、「また」と男が続けた言葉に我に帰って。まだ悪い報告があるのかと、思わず眉をしかめていた。

 

「ガリア軍に同行していた難民ですが、現在カレーの周囲の町に分散して待機させております。規模は一万二千弱を数え、皆ブリタニアへの渡航を望んでいる模様です」

「……ガリア難民か……」

 

 頭を抱えながら、ルントシュテットは一つ溜め息を吐く。

 カールスラントの民を脱出させ、それから出来る限り被害を出さずに軍の撤退を完遂する、という当初の目的だけでも半ば無茶に近いというのに。どうしてガリアの面倒まで見なくてはならないのか――。そう呟きたくなるのを、ルントシュテットは上に立つ人間としての矜持によってなんとか堪えた。

 

 ガリア。カールスラントにとって、この国は様々な意味で忌々しい存在である。

 そもそもこの二国の関係は、決して良いものではない。元々が潜在的、あるいは実際に剣を交えた敵国同士であり、歴史上において何度も戦争を起こしていた。

 

 かつてナポレオンによる侵攻が起きた際、カールスラントはティルジット条約という屈辱的な講和条約を結ばされた。この条約によって領土を大幅に削られたカールスラントは、シュタイン、ハルゼンベルグ等の改革者達によって、ガリアに対抗するための近代化政策が推し進められたのである。

 そしてその半世紀程の後、今度は狩我戦争によってガリアが甚大な打撃を受けた。ビスマルクが富国強兵を推進したカールスラントは、ナポレオン三世が率いるガリア軍をセダンにおいて撃破。鉱業地帯と莫大な賠償金を獲得するという、ガリアにとっては屈辱的な条件で講和を行ったのだ。

 

 そんな歴史があるわけだから、二国の関係が良い筈もない。ネウロイという人類共通の敵が現れるまで、次の戦争はこの二国が再び起こすものであろう、とさえ言われていたほどである。

 第一次ネウロイ大戦後は多少友好的になった――と言うより、人類同士でいがみ合っている場合じゃないと、感情論をある程度棚上げせざるを得なかった――ものの、全ての人間がそう簡単に割り切れるわけもなく。表面的には友好関係を築いてはいるが、潜在的な、そして部分的な対立は未だに続いていた。

 

「ガリアめ……。いったいどこまで、我々の足を引っ張れば気が済むのだ……!」

 

 同席していた将軍の一人が、苛立った感情を隠そうともせずに毒を吐く。

 他の人間も不機嫌な表情を見せる者は決して少なくなく、口にすることはないが、ルントシュテットも似たような感情をガリアに対して抱いていた。

 

 自分が任された作戦が、ガリアの予想外の失態で雲行きが怪しくなりつつある、という個人的な感情もあるものの、ガリアのせいでカールスラントが余計な出血を強いられていることも事実だった。

 個人的な関係はともかく、ガリアという国家に対して悪感情を持つカールスラント軍人は少なくない。それでもガリアを見捨ててしまえ、という結論にならない辺り、流石は騎士道と貴族の国といったところだろうか。……政治的な問題も大きいのだろうが。

 

「ガリア難民を全て渡航させる場合、作戦日程の延長を行わなければなりません。多目に見積もって二週間、短くて五日といったところでしょう」

 

 参謀長の言葉に、部屋に集まっていた人々は一瞬ざわついた。

 

 二週間、短くて五日、より長く戦線を維持してこの地に留まれ――。現状を認識している人間にとって、その言葉はとても受け入れられるものではない。

 陸軍少将の制服を着た男などは、その言葉を聞いた直後、慌てたように参謀長の方を向いて。右腕を肘を曲げて軽く前に出す、『待て』のようなポーズを取りながら、彼に食って掛かった。

 

「お待ちを、参謀長! ピカルディー方面のネウロイがこの地に迫っている話、まさかお忘れでは……!」

「私は事実を申し上げたまでです、少将殿。我々の撤退は遅らせねばなりません」

「しかしっ」

「――止めよ。言い争いに使う時間などなかろう」

 

 ズン、と。意図的に重みを増したルントシュテットの声が、二人の間に割って入る。

 上級大将まで上り詰めた男は、熱くなりかけた雰囲気を冷やすのに十分な威厳を持っていた。参謀長等の数人を除いた、部屋に集まっていた面々も、ルントシュテットの迫力に押されて、開きかけていたその口を閉じる。

 

 彼らが沈黙したことを確認したルントシュテットは、傍らで冷静な表情を浮かべたままの参謀長にチラリと視線を向けて。「話を続けよ」、と一言だけ口にした。

 

「はっ。では、今話した日数ですが、これは事実です。船の本数や護衛に割く海上戦力を考えると、どうしても期間の方を伸ばさざるを得ません。

 ……当初の予定通り、カールスラントの民だけを脱出させるなら話は別ですが……」

「……不可能だ。政治的に問題が大きいし、何より皇帝陛下は人情家の気がある。溺れる者の手を払うことを良しとはするまい」

 

 ルントシュテットの返答に、参謀長は無言で頷いた。

 

 そもそもが意味のない仮定であり、彼が口にしたのも、一応という部分が大きい。いくら関係は良くないとはいえ、現状は人類対ネウロイという構図が出来上がっている。助けられる人間を見捨ててしまえば、カールスラントの国際的地位は確実に悪化してしまうだろう。

 つまり、彼らを見捨てる、という選択肢は元より存在しないのだ。だからこそカールスラントが貧乏くじを引かされた形になり、ガリアに対するヘイトが溜まっていくわけではあるが。

 

「故に、我々が取るべき手段は一つしかありません。撤退が完了するまでの戦線の維持であり、この地における徹底抗戦です。――何としてでもネウロイの侵攻を阻む必要があります」

 

 地図に視線を下ろしながら、彼は言葉を続ける。

 指し棒でピカルディー地方の黒石を指し、続いてピカルディー地方とパ・ド・カレーに挟まれる、一本の川を指した。

 

「ネウロイの侵攻を遅らせるため、一度大打撃を与える必要がある、と参謀の間で結論が出ました。この地にネウロイを誘導し、川を挟んでの半包囲戦を仕掛けることを具申致します」

 

 ネウロイは、何故か水に触れることを嫌がる。そのため海や川など、自然が古代と同じように防波堤となり――航空型ネウロイは、水の上でも気にせず飛んでくるが――ネウロイの侵攻を戦略的に妨げる、そして戦術的に利用出来る壁として機能していた。

 

 今回参謀長が出した作戦案は、その川を利用してネウロイを包囲する、言わば包囲戦を提案するものである。

 羊の群れを追う犬のように各地に分散するネウロイを追い立て、作戦地点へと誘導する。作戦地点には予め川の向こうに大規模な戦力を用意しておき、地雷原等のトラップ、そして戦車やアハトアハトの砲撃を中心とした遠距離戦を主に挑ませ、可能な限りの損害を与える。追い立て役の部隊も結集させてネウロイの背後に回らせ、その場で同時に攻撃を加えて挟み撃ちする。

 被害を可能な限り避けるために無理な殲滅は狙わず、包囲にわざと穴を開けておくことでネウロイの逆撃を防ぐ。ネウロイの全滅は難しいにしても、三割、上手く行って五割の敵戦力を削ることが出来るだろう――。簡単に纏めると、作戦案はおおよそこのような感じだった。

 

 ルントシュテットが考える限り、然程無理はないように思えた。奇策というわけではない、むしろオーソドックスな戦術であり、通常戦力を効率的に用いるこの作戦は、ウィッチの損耗を抑えたい彼の望みにも叶ったものである。

 部屋に集まった他の人間達も、殆どはこの作戦案に対して好意的な雰囲気を見せている。ならば、とこの作戦案を用いることを決めたルントシュテットは、案を煮詰めていこうと口を開きかけて――――

 

「――お言葉ですが。我々としましては、その作戦案に反対致しますわ」

 

 その場に似つかわしくない、鈴を転がしたような女性の声によって、それは遮られた。

 

 部屋中の視線が、その言葉を発した女性――少将の階級章を着けた女性と、その脇に立つ数人の女性達に向けられる。

 作戦会議が始まってから今まで、何も喋ろうとしなかった彼女達は、正直に行ってあまりルントシュテット達上層部に好まれている存在ではない。第一次ネウロイ大戦で活躍したエースの一人であり、空軍元帥を父に持つ彼女は少将の地位まで出世しているものの、決して将校としての器量があるとは言えなかった。

 

 ヘンリエッタ・ゲーリング。ウィッチとして活躍していた頃のコネクションや父の権力を使い、空軍の上層部に潜り込んだ女性である。

 ウィッチ至上主義を掲げている彼女は、常日頃からウィッチの立場向上と重用、軍内部における発言力の増加を求め、上層部の一部と対立を繰り返していた。特に地上攻撃ウィッチ――戦闘機で言えば爆撃機のような兵科を彼女は好み、偏愛とも呼べるほどの重用を見せている。

 彼女が地上攻撃ウィッチであったがためか、それともまた別の理由があるのかは他人には分からないが、彼女は地上攻撃ウィッチによる急降下攻撃戦術に妄信的な信頼を寄せている気があった。通常戦力を軽視する傾向も強く、この点において彼女は多くの軍人と、軍の上層に登りかけている元ウィッチの将校達とさえも対立していた。

 

 彼女が空軍の上層部としてA軍集団に加えられ、この作戦会議に一応とはいえ招かれていたのは、正直に言って彼女の父親の後押しの結果という側面が大きい。軍全体で見れば彼女に賛同する人間は決して少なくないが、マトモ(・・・)な将校が多く集まるこの場は、彼女にとってのアウェーである。

 ルントシュテットは彼女とその取り巻きに、半ば睨むような鋭い目を向けて。どういうことだ、と言外に発言を命じた。

 

「ネウロイに打撃を与え、侵攻に歯止めをかける、その点に異論はありません。しかし我々と致しましては、その重大な一戦に通常戦力を主軸として置くのは、些か……」

「御託はいい。何が言いたいのかね、少将」

 

 ふん、と苛立たしげに鼻を鳴らしながら、同席している一人の陸軍中将が彼女に話を急かす。

 それに彼女は気を悪くした様子も見せず、女性的な魅力を漂わせた薄い笑みを浮かべながら、その話を続けて。自身に否定的な視線が集まる中、彼女は作戦案に対する代案を口にした。

 

「まず敵航空戦力を航空ウィッチによって殲滅し、露になった敵の頭上から地上攻撃ウィッチによる攻撃を加えて殲滅。通常戦力は全てウィッチの支援に回し、ウィッチを主軸とした作戦を行うことを意見致しますわ」

 

 ……はぁ、と。その代案を聞いて、大半の人間は呆れた表情を隠さなかった。

 内容が予想の範囲内だったということもあるし、何より、彼女のウィッチ優位論が色濃く現れた作戦案である。怒りを覚える以前に、このような状況下でもその持論に拘るのかと、大半の将官は彼女の指揮官としての見識の欠如に蔑みに近い感情を抱いた。

 ルントシュテットもその一人であり、教師が出来の悪い生徒を見るような視線を彼女に向けると、諭すような口調で語りかける。

 

「……いいかね、少将。ウィッチは重要な戦力であり、その損失は人類にとっての損失でもある。そのようなウィッチに多大な負担と危険を負わせる作戦は、決して認められるものではないのだ」

「お言葉ですが閣下、剣とは振るわれてこそ意味があるものです! 我々カールスラントのウィッチはかのドイツ騎士団の流れを汲む精鋭であり、ネウロイが相手であろうと鎧袖一触、一騎当千の活躍をお見せ致しましょう!」

 

 ルントシュテットの言葉に、彼女を取り巻く一人の大佐の階級章を着けた女性が、きびきびとした敬礼を行いながら反論をした。

 彼女の顔を、ルントシュテットは見たことがある。かつてゲーリングの部下として第一次ネウロイ大戦に従軍し、今では彼女直属のウィッチ部隊の司令を務めている女性だ。

 本人は実直なカールスラント軍人であり、個人的な人格はマトモと言っていいものの、ゲーリングに心酔しウィッチ至上主義に染まってしまっている。良く言って威勢のいい、悪く言って大言壮語が目立つようになってきた彼女もまた、上層部に目を付けられ始めていた。

 

「ボーデンシャッツ大佐、最早精神論が入り込める状況ではない。何より我々は皇帝陛下より兵をお預かりした立場であり、陛下が『一兵も見捨ててはならぬ』と仰せられた以上、損害を抑えることを第一とせねばならぬ。

 貴官らの腕を疑っておるわけではないが、もしウィッチに多大な損害が出たら如何する。戦いの後はどのように守るというのだね」

「これはこれは、ルントシュテット上級大将閣下ともあろうお方が、まさか悲観論に囚われるとは……! ご心配なさらずとも結構、我らが精鋭は必ずやネウロイ共を駆逐致しましょうや。敵を葬り去った後に、悠々とこの地を去ればよろしいでしょう」

「――口を慎め大佐! 貴様の妄想にどれだけの兵を道連れにする気だ、ドン・キホーテ(自惚れ野郎)が!」

 

 ドン、と。出席者の一人である空軍少将が、拳をテーブルに叩きつけながら怒りを露にした。

 

 彼はゲーリング達一派とは異なる派閥であり、彼女の父親たるヘルマン・ゲーリング空軍元帥に然程影響を受けていない人間である。故にゲーリングに遠慮することもなく、良識派の一人として、彼女達とは敵対関係すら築いていた。

 彼はブリタニアのマロニー将軍のような、所謂ウィッチ不要論者ではない。ウィッチの有用性と個人としての人権をある程度認めた上で、ウィッチにばかり依存することに反対しているのである。

 ゲーリング達の主張など、彼にとっては愚劣もいいところだった。美味しいからといって特定の動物ばかり乱獲していては、すぐにその動物は絶滅してしまうのは自明の理と言っていい。彼はその事を良く理解していた。

 

「そう声を荒げるものではありませんわ、少将。女相手に熱くなるなど、騎士道にもとる行為ですわよ」

「貴様らは軍人だろう、将官だろうが……ッ! 女であることが免罪符になるものか、将官ならばそれ相応の振る舞いを心がけろゲーリング少将!」

「……私の父はゲーリング元帥ですわ、少将」

「それがどうした小娘。私はカールスラント空軍少将ハインリヒ・フォン・フェルナーだ、何か言いたいことでもあるのかね」

 

 ギリ、と。ゲーリングは浮かべていた笑顔を崩して、歯軋りの音を部屋に響かせた。

 明らかに不機嫌な様子に変わった彼女は、しかし何かを思い出したように、一瞬でその感情を引っ込める。再び笑顔を浮かべ出した彼女は、少将を見下すような目で見つめていた。

 

 何を、と少将が問い詰めようとした瞬間、ノックの音が聞こえて。作戦会議中だ、との参謀長の声に、青年の声がその用件を伝える。

 

「緊急で届いた、参謀本部からの通達です。ルントシュテット閣下にお渡しするよう命ぜられました」

 

 入れ、とルントシュテットが入室を許可した直後、一通の電報を携えた青年が部屋に姿を表す。電報をルントシュテットに渡した青年は、恭しく礼をとるとすぐに部屋を後にした。

 

 部屋中の視線が、その電報と受け取ったルントシュテットに集まる。

 ふむ、と一言呟いた彼は、電報が書かれた紙を開け、その内容に視線を走らせる。……読み終えた彼は、一瞬驚愕したように目を見開くと、ゲーリングに『やってくれたな』と言わんばかりの視線を向けた。

 

「……参謀本部からの伝達だ。ゲーリング少将の案を元に防衛を行うように、とのことである」

 

 ルントシュテットがそう言った瞬間、部屋中に一際大きなざわめきが生まれた。

 まさか、どういうことだ、あり得ない――。一通りの言葉が溢されると、自然と皆の視線がゲーリングへと向かう。

 

 誰の目にも、犯人は明らかだった。

 先程よりも格段に敵意が増した視線を受けながら、彼女はニコニコと――我儘が叶った子供のように、笑っていた。

 

 

 

 

 

 




こういう話を書いてると凄い楽しい(こなみ)
フェルナー少将はオリキャラですが、WW2の有名人を絡ませるのは浪漫がありますね。牟田口さんを早く出したい。

Q.陸上ウィッチで銃剣突撃をしよう

A.オラーシャなら銃剣どころか二人に一人は素手で突撃させてくれるんじゃないっすかね

Q.ステータス表示したらどうよ

A.各章ごとに、という形で考えてみます

Q.十八禁と聞いて

A.そういやネウロイって洗脳能力ありましたよね。……ふむ

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