ストパンのVRゲームでウィッチになる話   作:通天閣スパイス

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※間隔調整しました


イントロダクション3

 第二次世界大戦当時、馬は軍でも普通に使われていた。

 

 さすがに騎兵という兵種はポーランド等の一部の国を除いて絶滅していたものの、輸送手段としては馬はどこの国でも、それこそドイツやフランスといった列強国でさえも未だに用いられていたのだ。

 当時、完全に軍の自動車化を出来ていたのは、国力があり余っていたアメリカ合衆国だけだった。自動車を揃える費用、燃料代や整備費用といったランニングコスト諸々の問題で、各国は自動車の有用性に気がつきつつも――フランスの某将軍なぞは、『これからは軍馬の有用性を見直さなければならない』と完全に時代錯誤なことを言っていたが――完全な自動車化を見送らざるを得なかったのである。

 

 そして、ストライクウィッチーズは第二次世界大戦頃をモデルとした世界だ。史実との違いは様々な部分であるももの、大まかな部分では非常に似通っていると言っていい。

 俺が所属するカールスラントは、現実におけるドイツを元ネタとした国家である。神聖ローマ帝国の色が強いドイツ帝国、と言い表せば良いだろうか。共和制ではない、つまりナチスが政権をとるようなこともなかったこの国では、それでも史実と同じように軍備の増強が行われていた。

 史実のヴェルサイユ条約もロカルノ条約もない、ネウロイという敵に対して人類が一応団結している状況下であるがゆえに、史実よりはよほど簡単に軍拡を行えた。にも関わらず、装備の更新や自動車化等を、カールスラント軍は完全には行えていない。この世界であっても、馬車は現役の輸送手段としてその命脈を保っているのだ。

 

「おら、さっさと乗せてやれ! ネウロイは待っちゃくれんぞーーー!」

 

 あれから三日後、突然与えられた休みを終えた後。ざわざわと騒がしい格納庫内に、整備班長の大声が響き渡る。その言葉に返事をしながら、整備兵の男達はひぃこらと、ストライカーユニットを装着したウィッチ達が馬車に乗る作業を手伝っていた。

 

 今回の作戦予定地は、少し遠い。基地からでも飛んでいけないことはないものの、そこで行われる戦闘がこれまでで一番の大規模戦闘であることを考えると、出来る限り継戦能力を高めるために、ウィッチ達はある程度の距離までを馬車で進むことになっていた。

 当然ではあるが、馬車を降りたらすぐに空に上がる以上、ユニットを穿いた状態で馬車に乗らなければならない。脚の関節が使えない状態で一人で乗車する、というのはほぼ不可能なため、ユニットの装着を手伝った整備員達がそのまま乗車も手伝ってくれる。

 元がアニメ作品であるためか、美少女ばかりのウィッチに合法的に触れるということが嬉しいのか、整備員達の表情に多少の喜色が浮かんでいる。が、馬車に乗せるためにウィッチの体を持ち上げる段階まで来ると、皆ユニットの重さに歯を食い縛っていて。言わば重量挙げを何度も繰り返している彼らはさぞかし疲れているだろうに、多少の下心はあるにせよ、文句の一つも言わずに仕事を行っているのは立派に思えた。

 

「次の方、お願いしまーす!」

 

 そんな彼らの姿を観察しているうちに、俺の番がやってきた。ストライカーユニットを装着するための列の先頭にいた俺は、整備員の言葉に従いユニットの装着場所へと歩いて行く。

 ユニットの装着作業は、本来なら少し大がかりな機械が自動的にやってくれるものらしい。しかし急いで設営されたこの基地にその機械を用意出来る余裕など、今のカールスラント軍にはない。故に現状でのユニットの装着は、整備員による人力と小型の機械を使った手作業により行われている。

 

 こういう時にはいつも、そういえばアニメは戦線が安定してからの話だった、と思い出す。501の基地は後背地のブリタニアで、最前線の、しかも急拵えのこの基地に比べればかなり恵まれているのだ。

 別に男に触られるのが嫌というわけではないが、どうせなら楽な方がいい――。いつかはあの機械で装着するような身分になりたいものだと、装着するために整備員達が触れてくる手の感触を感じながら、内心で溜め息を吐いた。

 

「……あ、あの……」

 

 ふと。ユニットに足を通した後の細かいチェックが行われていた時、若い男の声が耳に届いた。

 

 その声の方に視線を向けてみると、何やら見覚えのある顔が一人、銃と弾薬を抱えてこちらを見つめている。はて、誰だったかと記憶を掘り起こせば、俺が初めて帰還した時に敬礼して出迎えてくれたあの少年だと思い出した。

 実際彼にそのことを尋ねてみると、「覚えてくれていたんですか」と感激した様子で彼は話して。アイドルに会ったファンのように舞い上がった様子を見せたかと思えば、ごほん、という整備班長の咳払いによって慌てて我に帰っていた。

 

「え、ええと……。申し遅れました、メックリンガー整備兵であります。軍曹殿の装備をお持ちいたしました」

 

 名乗ると同時に、彼は抱えていた銃――俺が使っているKar98kとサイドアーム、そしてその弾薬をこちらに差し出してきた。

 ありがとう、と笑顔を浮かべて礼を言いながら、俺はそれを受け取ろうとして。運悪くその瞬間に、装着作業を終えた証の小さい振動が俺の体を襲う。

 あ、と呟く間もなく、受け取りかけていた弾薬の幾つかが俺の手から溢れてしまった。それで壊れてしまうわけではないし、別に落下させても問題ないと言えば問題ないのだが、不味いと思ったのだろう、彼はそれを受け止めようと手を伸ばしてきた。

 

 ここで問題になるのは、彼と俺との距離である。銃の受け渡しを手で行おうとした距離にいた俺達は、非常に近い位置にいた。間隔はおそらく1メートルもない、手を伸ばせば触れられる距離だった。

 そんな距離にいた彼が、慌てた様子で、こちらに倒れ込むようにして手を伸ばしてきたら、どうなるか。……その想像は、難くない。

 

「――へっ?」

 

 ふにょん、と。唐突に感じたその感触を、最初は何がなんだか理解出来なかった。

 視線を下に向け、その感触の原因を確かめてみる。胸元に感じる何か生暖かい違和感の正体は、パッと見た限りでは、金色のわさわさした何かだと思った。

 

 まずはそれが彼の頭だと気づくのに、数秒。彼が俺の胸元に顔を埋めているというこの状況に気がつくまでに、更に一呼吸。ふがふが、と胸に埋まったまま呼吸する彼の息の熱を感じて、ようやく俺の脳は思考を再開した。

 

「は、あ、え――うわっ!? ご、ごめんなさい軍曹、申し訳ありま――」

 

 俺と同じように思考停止していたのか、彼は数秒経ってから慌てて体を離した。

 彼は少ししどろもどろになりながら、必死に謝ろうとして――一部始終を見ていた整備班長に、勢いよく肩を掴まれていた。

 

「――え?」

「おう。……ちょっと面貸せや」

 

 彼が弁明しようと口を開きかけたものの、整備班長は知ったことではないとばかりに体を強引に引きずって行く。

 BGMにドナドナがかかっていそうなその光景を見ながら、俺はそっと、自分の頬に手を当てた。熱を感じたその肌は、頬が赤くなっているであろうことを雄弁に語っていた。

 

 ……しまった。女の体を誰かに触られることなどなかったから、つい慌てすぎてしまった。

 ドキドキした、ということはない。体は女でも心は男なのだ、男に恋愛的な感情を抱くことなど考えられなかった。

 ただ、何て言おうか。他人に胸に顔を埋められて平常心でいられるほど、俺はピュアすぎも汚れすぎもしていない。

 

 恥ずかしさで赤くなった顔をパタパタと手で扇ぎながら、俺は気を取り直して結局床に転がった弾薬を拾い直す。銃を肩に掛け、サイドアームを腰に差し、弾薬を腰の鞄に詰め込んでいった。

 用意を終えた俺は、何か言いたげな視線を送る他の整備員達を睨み付けて黙らせながら、何事もなかったかのように馬車に乗り込んだ。

 

「……」

「……何ですか」

「いやいや、何と言うか、まぁ……。本当に面白い奴だよな、お前」

 

 乗り込むと同時に、先に乗って他の隊員を待っていた隊長が、ニヤニヤとした笑みを向けてくる。

 確かに他人から見ればあれはコメディかもしれないが、当事者の身としては堪ったものじゃない。ラブコメディは端から見るから面白いのであって、当事者に――しかも女の方になりたいとは決して思わなかった。

 そんな感情を込めて睨んでみても、彼女はそれを涼しい顔で受け流して。俺をからかうような雰囲気を収めるどころか、腰を動かして俺の隣に座ってきた彼女は、肩を組んで顔を近づけてきた。

 

 ニヤリ、と頬を上げる彼女に何か嫌な予感がして、反射的に顔を明後日の方向に背ける。

 だが、それが不味かったのか。――ガシリ、と勢いよく胸を掴んできた隊長の手に、俺は全く対応出来なかった。

 

「え、ひゃっ……。うにゃああああああーーーっ!?」

「ははは、胸に顔を埋められたぐらいで恥ずかしがるとは、案外うぶ(・・)な奴め。別に胸くらいなんだ、気にするな。こんなにでかいんだから気前よく揉ませてやれ」

 

 もにゅもにゅと俺の右胸を勢いよく揉みしだきながら、隊長はそんな滅茶苦茶なことを言っていた。無論本気で言っているわけではないだろうが、胸を揉む手の動きはからかいというには少し激しすぎる。

 止めてください、と両手で彼女を引き剥がそうとすれば、今度は左胸の方も揉まれ始めてしまって。体のバランスも崩れてしまい、すわ押し倒されるかというその瞬間。エスカレートし過ぎるその前に、彼女は俺へのおふざけを止めた。

 

 はぁ、はぁと様々な意味で息を吐く俺を見て、彼女は愉快そうにクスクスと笑っていた。が、睨み付ける俺の目に気がつくと、彼女はすまんすまんと軽く謝罪をする。

 その様子がとても悪いと思っているようには見えなくて、嫌みの一つでも言ってやろうかと俺が口を開きかけた、その瞬間。新たな人影が馬車の中に入ってきたことにより、ついそのタイミングを逃してしまった。

 

「すまない、邪魔をする――と。どうしたヴェラ軍曹、大丈夫か?」

 

 馬車の中に入ってきた少女は、顔を真っ赤にして胸を腕で隠すようにしている俺の姿を見て、思わずといったようにそんな言葉を漏らしていた。

 視線を向けてみると、何やら見覚えのある茶髪の少女がこちらに心配そうな目を向けている。中尉の階級にある彼女は、数日前に出会ったばかりの人物で。何でもない、と少し乱れた服装を直しながら答えた俺に、彼女――ゲルトルート・バルクホルンはチラリと視線を隊長に移して、理解したと言わんばかりに溜め息を吐いていた。

 

「……全く。任務の前に何をやっているんだ、お前は」

「ははは、いいじゃないか。部下の緊張を解してやるのも上司の務めだろう、そういうのにはこれ(・・)が一番いいんだよ」

 

 手をワキワキと、何かを掴むようなジェスチャーをしながらそう言った隊長に、バルクホルンは引いたような視線を向ける。

 頬をピクピクとひきつらせ、隊長から離れた場所に腰かけた彼女を見て、隊長は悪戯っぽい笑みを浮かべながら近づこうとした、が。それを察した彼女はさらに遠ざかって行き、しっしと手で追い払う仕草を隊長に見せたのだった。

 

「……やめろ。おい、それ以上近づくな。私にそっちの気はない」

「おいおい、なーに言ってるんだシスコン。第一、ちょっと出撃前の緊張を解してやろうかとマッサージするだけだ。別に変なことはしない」

「じゃあその手の動きは何だ……! ええい、騙されん、騙されんぞ! 士官学校で貴様に何度煮え湯を飲まされたと思ってる!」

 

 胸を腕で隠すように守りながら、威嚇するように隊長を睨み付けるバルクホルン。ウィッチの証でもある、使い魔の耳――彼女の場合はジャーマンポインターの耳が獣耳少女のごとく頭に現れていることも合わさって、その姿はまるで怯えた犬が必死に威嚇しているようにも思えた。

 

 ……と、いうか。隊長とバルクホルンが妙に親しげな様子だと思ったら、彼女の言葉から察するに、二人は士官学校の同期だったらしい。確かに二人は階級も近いし、見た目の年齢も離れているようには見えないからおかしくはないが、原作キャラとの縁は身近なところにも転がっていたのかと、少し驚きを覚えた。

 ゲーム的に考えるなら、あの朝食で偶然同席したのはラッキーイベントで、発生確率はそう高くはない、というような感じか。本来は隊長に紹介されてバルクホルンやエーリカと会う、というのが正規のルート……ということかもしれない。

 ということは、他の原作キャラに会うためには、周りの人間と何かしらのイベントを起こしたりする必要があったりするのだろうか。501ことストライクウィッチーズ、あるいはアフリカのストームウィッチーズ等に配属されれば原作キャラとは間違いなく出会えるとはいえ、確実にそうなる確証などない。そもそも統合戦闘航空団はエース中のエースが集まる精鋭であり、部隊も幾つも存在することを考えれば、例え大エース級の戦果を挙げたとしても、希望通りの所に配置される可能性はそう高くないのだ。

 

 統合戦闘航空団。各国のエースを集めて結成された、人類が手を取り合った――少なくとも表面的には――正にドリームチームと言える。

 そもそもの発端は、1939年にスオムスで結成された『スオムス義勇独立飛行中隊』が多大な戦果を叩き出したことにある。通称『いらん子中隊』とも呼ばれる通り、実際は各国の問題児や扱いに困っていた人間を押し付けた部隊ではあったものの、様々な国家や人種が集まった混成部隊は各国上層部の予想を遥かに越える活躍を見せた。

 各国のエースを集める、つまりエースの集中運用による戦局の打開はそれ以前にも声が上がっていたものの、エースの流出を嫌う各国によって実現されることはなかった。しかしいらん子中隊の活躍、ダイナモ作戦によるブリタニアへの戦力集中、そしてブリタニア空軍大将ヒューゴ・ダウィングの働き掛けが一助となって、とうとう最初のエース集団である第501戦闘航空団――通称『ストライクウィッチーズ』が発足したのだ。

 

 作品のタイトルにもなっているその部隊は、主人公である宮藤芳佳が所属するということもあり、後に伝説の部隊として歴史に名を残すほどの戦果を挙げることになる。当初は様々な問題を抱え、隊員も十一名中二名が新兵という当初の目的すら掠れつつあった集団ではあったが、最終的にはその新兵も押しも押されもせぬエースとなり、エース集団としての面目も十分に果たしていた。

 そんな彼女達に自分も入れると考えるのは、現実的に考えれば楽観的に過ぎる。ゲーム的に考えても、501ルートに入るための条件なんて初見プレイでは正直分かりようがないのだから、現時点ではルート分岐も運に任せる他ないのだ。

 もしかしたら501に行けるかもしれないし、アフリカに行ってマルセイユ達と仲良く地獄の砂漠戦と洒落込むのかもしれないし、スオムスのいらん子達への増員として派遣されたりするかもしれない。可能性だけなら幾らでもあるが、それが叶うかどうかは別問題だし、希望と違うルートに入ったとしても軍人という身分ではそれに逆らうことも不可能だ。俺がエーリカやバルクホルン達とブリタニア撤退後も肩を並べて戦う可能性は、決して大きくはない。

 

「――うあああああーーーーーっ!?」

 

 と。そんなことを考えていたら、急に耳に届いた叫び声によって、思考の海から引き戻されてしまった。

 見ると、俺が視線を外していた間に大分状況は動いていたらしい、バルクホルンの背後に回った隊長が彼女の胸を鷲掴みにしている光景が視界に映った。先程の叫び声はバルクホルンのものなのだろう、彼女の表情は驚きと羞恥で赤く染まっている。

 もみ、もみもみ。もみもみむにゅむにゅ丸書いてチョン。悪戯っ子のような表情で彼女の胸を弄ぶ隊長の姿は、端から見る限りでは最高に輝いているような気がした。どこぞの淫獣のように性欲にまみれてはいないから、隊長はおそらく女性同士のスキンシップの枠を出ない範囲の行為として行っているのだろうが、その実に楽しげな表情を見るとその推測も少し自信がなくなってくる。

 

 ふと、バルクホルンと視線が合った。恥ずかしいのだろう、少し涙目になりつつある彼女の目は、『助けてくれ』という彼女の言葉を口にせずとも雄弁に語っていて。……俺がそっと顔を背ければ、「裏切り者」という彼女の叫び声が馬車の中に響き渡った。

 

「トゥルーデ、お待た――――うわ何この状況」

 

 若干カオスな様相を呈してきた馬車に、今度はエーリカが姿を現した。

 朗らかな笑みを浮かべて入ってきた彼女は、上司が別の隊の上官に胸を揉まれているという謎の光景に思わず思考を停止させて。唖然とした表情を浮かべた後、頬をひきつらせながらこちらに視線をやった。

 説明しろということなのだろうが、生憎と俺もこの状況を上手く説明するには少しばかり語彙が足りない。黙って首を振った俺を見た彼女は、もう一度バルクホルンと隊長に目をやると、気を取り直すように頭を振って。再び表情を笑みに変えると、俺の隣に腰かけてきた。

 

「やほ。えっと……。ヴェラ、だったよね?」

「はい。あの時の朝食以来ですね、少尉」

 

 階級的には上官である彼女に対し、俺は少し畏まった態度で返答をした。が、彼女はそんな俺の態度に少々嫌そうな顔をすると、軽く手を左右に振りながら「フランクでいいよ」と口にする。

 

「別に公の席でも何でもないんだし、年だって多分私の方が下なんだからさ。もっと仲良くいこうよ、ほら」

 

 そう言うと同時に、彼女は俺の手を取った。握手のような形で右手同士で握り合い、ニコリ、と天使のような笑みを俺に向ける。

 するとその瞬間、ドキン、と俺の胸が高鳴るのを感じて。先程とは違う意味で顔を赤らめた俺は、つい顔を隠すように背けてしまった。

 

 ……ヤバい。この子、可愛すぎる。個人的にはエイラ派だったのに、ゲームとはいえ実際に目にしたエーリカの笑顔に、思わずときめいてしまった。

 画面越しじゃない、ちゃんと自分に向けられた彼女の笑顔は、どうにも破壊力が強すぎる。EMT、EMTとアニメを見ながら儀式の呪文のように連呼していた友人の気持ちが、少しだけ理解出来るような気がした。

 

「……えっと。じゃあよろしくお願いします、エーリカさん」

「はーいよろしく。隊長同士も仲良いみたいだからさ、こっちもよろしく――」

 

 

 

 

 

「やっ、やめっ、やめろ……! ちょっと、これ以上は洒落に、ならな、んぅ……っ!?」

「ははは。……ううん、いかん、少しいけない気持ちになってきたな。私も真正なわけじゃないんだが」

 

 

 

 

 

「――適度によろしく、度を超さない範囲で仲良くやっていこうか、うん」

「あ、はい」

 

 段々とエスカレートしてきた隊長のセクハラを背景に、俺達は友人としての握手を交わしていた。……友人として、である。念のため。

 

 

 

 

 

「――中尉。貴女は、任務前に、何をしているの?」

「い、いや、ほら、緊張を解すための冗談をな、するつもりだったんだが……。その、やっている内に止まらなくなったというか……」

「……」

「その、ですね、ミーナ少佐……」

「……」

「……申し訳ありませんでした……」

 

 ちなみに。隊長の悪戯は、騒ぎを聞き付けたミーナが怒鳴り込んでくるまで続いていた。しおらしい隊長と、胃を押さえながら静かに怒るミーナの姿を、珍しいものを見たと、後から来た隊員達――俺が所属する隊と、バルクホルンの隊の人達――と共に眺めていたのはいい思い出である。

 ……馬車の隅で、火照った頬を必死に冷やしながら乱れた衣服を整えているバルクホルンには、誰もが見ない振りをして。俺とエーリカもまた、少し恨みのこもった視線を背後に感じたものの、彼女に視線を向けようとはしなかった。

 

「……ハルトマン、ヴェラ軍曹、お前達覚えていろ……」

 

 怖くて向けようにも向けられなかった、と言う方が正しいかもしれないが。

 

 

 

 

 




後の展開のプロットをとりあえず盛っているうちに、段々主人公がジェームズ•ボンドみたいになってきた。ストパンなのになんで対ネウロイより対人間の方がネタ湧くんだろうね。不思議だね。

Q.ライサンダー二丁持ちという可能性

A.え?蜘蛛の吐く糸に触れただけで即死するぐらいの難易度がお望みだって?(難聴)

Q.いつ百合するのか?

A.今でしょ!

Q.タグから漂う地雷臭

A.えっ

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