幻想に生きる魔法少女   作:紅風車

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やる気が出た作者によって書かれました、何でもありになりそうなリリカルなのは小説です。
期待せず読んでいただければ幸いです。


プロローグ

人は人に非ず。

それは人という皮を被った化け物だろう。

 

 

かつて世界で神話として語られた英雄も存在を同じく。

人間というのは自分達と違う者を排除しようとする。

自分達が生きながらえる為に。

 

 

自分達とは違う物を持つ者。

自分達とは考え、思考が異なる者。

それだけで普通からは弾き出されてしまうのだから人間というのは賢くも恐ろしい。

 

 

かつて人間の為、正義の味方になるために世界中に飛び回った一人の青年は言った。

 

「正義の味方という理想は叶えることは叶わなかった。私は抑止力と契約し、死後を売り渡した。しかし蓋を開けてみればあれはただの『掃除屋』だよ」

 

私が唯一信用に値する青年は言った。

確かに死後を売り渡した彼が望んだ理想は偽善者と言われても仕方が無かったのだろう。

 

彼はただ、自分の周りにいる大切な者を守れれば。

それだけで良かったんだから。

しかし抑止力はその願いを異なる形で叶えた。

意思を剥奪し、ただ霊長を生きながらえさせる為に殺し、殺し、殺し尽くした。

 

 

しかしそんな彼の過去の存在とも言える人物が会ってしまった。

第五次聖杯戦争。

その戦いで過去の彼と未来の彼が出会う。

二人はお互い、戦い、最終的には過去の彼が勝った。

私はそれを耳に挟んだ程度の事しか聞かなかった。

あまり彼等の事を盗み聞きはよくないだろうと思い、本人から聞こうと。

 

だが、彼の義理の姉が人工的に生み出された体故かあまり長くは持たなかった。

彼は私を呼び、私も彼女の最期を見送る事にした。

 

「ねぇ・・・二人とも・・・」

 

「・・・なんだ?」

 

「・・・」

 

「私の・・・我が儘・・・聞いて・・・欲しいな・・・」

 

彼女はもうすぐ自分が死ぬことをわかっているのだろう。

しかし力を振り絞ってでも伝えようとした。

 

「ぜぇ・・・ったい・・・に。せかい・・・と、結んだら・・・ダメ・・・だから・・・ね」

 

「・・・ああ」

 

「ん」

 

彼女はただ私と彼の為に言ったのだろう。

意思を剥奪され、ただ道具として扱われた守護者のようにはならないでほしかったからか。

私はそんな気などない。

必要に応じて呼び出されて、殺戮を行わされるのはごめんだ。

 

「ん・・・ありがとね・・・」

 

彼女はそのあと、数日後に亡くなった。

その頃には私と彼は封印指定に指定されており、逃げ回る必要があった。

だが世界から声がかかる。

契約すれば亡くなった彼女を生き返らせれると。

だがそれを断った。

頷けば彼女の我が儘というお願いを踏みにじる事になるから。

 

「・・・私は・・・どうすれば良いのだろうな」

 

「・・・弱気だね。まぁ・・・当てがなくもないよ」

 

当てというのは、封印指定にされる原因になった忌ま忌ましい異能。

それを使ってどこか異なる世界へと存在を移動するというもの。

この世界から違う平行世界か異世界・・・など。

 

「・・・なるほどな。確かに逃げれはする・・・が・・・」

 

私の提案に彼はどこか後ろめたい感じを出していた。

彼に好意を、手を出してくれた人物に何も言わず消えてしまうのだから。

 

「・・・仕方ないね。私が何とかしてあげる」

 

「・・・本当か?」

 

「私を誰だと思ってるの?これでも現代の英雄様よ?自称だけどね」

 

「君は英霊と同等の力を持っている。自称ではないだろう」

 

「そう思うのはご自由に。さて、待ってなさい、士郎。連れて来てあげる」

 

私は彼の返答を聞かずに能力で姿を消した。

 

「ただの移動程度ならば代償がない事がこんな時に役立つとはね」

 

考え事をするのは後にして私は彼を探し回る人物の所へ移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、凜」

 

「!?」

 

凜。

そう呼ばれた彼女はとても驚いた様子だった。

そしてその隣には大師父と呼ばれる『キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ』がいた。

 

「ほう・・・まさか自分から姿を現すとは」

 

「何の用かわかっているのでしょう?」

 

「・・・何となくね。それで、私達を連れていく気?あんた達を捕まえようとしているのに」

 

「凜ならそんなことする前に考えがあるでしょ?大師父がいるのは都合が良かったわ」

 

「へえ・・・」

 

「大師父。私の・・・お願いを聞いてくださいますか?」

 

大師父はいきなりの言葉に一瞬びっくりしていた。

しかし私のお願いという言葉に真剣な表情になった。

 

「私・・・遠明寺陽華と衛宮士郎を違う世界に飛ばしてください」

 

「・・・良いだろう。あの若造と君は私の興味をそそられた。存在は似ている様に見えて考えは全く異なった時などな」

 

「大師父が言うんだし・・・私も付き合ってあげるわ」

 

「ありがとう・・・」

 

いきなり現れてお願いを聞いてくれた二人に私は自然と笑みが零れた。

二人は私と彼を捕縛しなければならないのに逃がすも同然の行動をしてくれる。

私はすぐに二人の手を掴むと、彼の元に急いだ。

 

「お主の能力は凄まじいな・・・」

 

「ホントね。瞬間移動だもの」

 

「士郎、連れて来たわよ」

 

「あ、ああ・・・」

 

疲労困憊といった感じの士郎に凛と大師父はすぐに駆け寄った。

私はその間に三人に秘密であることを想像する。

 

士郎が封印指定されない結末を。

 

私の能力はそれを叶えようとする。

本来の運命そのものを捩曲げようとするからか、魔力が代償に無くなっていく。

魔力は別に回復出来るけれどこれじゃ・・・。

 

「士郎、凜、大師父」

 

私が三人を呼ぶと表情が一気に変わった。

恐らく私の姿が光っているのと魔力残量が殆ど空だからかな。

 

「・・・!・・・・・・!」

 

もう意識がはっきりしないや。

早いなぁ・・・。

士郎、凜、大師父。

ありがとう。

こんな私を気にかけてくれて。

 

 

だから私は恩返し・・・って言っても怒られちゃうかな。

だけど士郎は幸せになってね。

 

私が・・・手に出来なかった事だから・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ある少女の力により衛宮士郎の封印指定は存在しなくなった。

しかし少女を知る人物は泣き崩れたという。

少女に仕えた者も同じく悲しみ、塞ぎ込む者まで。

 

少女は世界から姿を消し、その後の消息を知るものはいなかった。

 

 




リリなのに入るのは次回からです。
今回のは理由付け・・・ですね。
更新は不定期です、

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