幻想に生きる魔法少女   作:紅風車

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純粋な少女

私と夜々は遠く長い石段を一段一段と昇っていく。

この世界は私に大きな効果を齎すのと同時に、私の心象が変わればこの世界も変わっていく。

だけどこの世界、この風景だけは絶対に忘れない。

 

「お姉ちゃん、綺麗だね」

 

「風景?それとも私?」

 

「ん~・・・全部!」

 

「ふふ、ありがとね」

 

褒められる事は普通だけれどこうして素直に言ってくれる人は嬉しいし、夜々ならなおさら。

夜々の頭を撫でてあげると嬉しそうに声を漏らす。

 

「えへへ~」

 

「この一番上にはね、昔私が住んでた神社があるの。今は・・・もう無いけれどこの世界ならずっと・・・ね」

 

「お姉ちゃんは神様だもんね」

 

「・・・まぁ・・・ね。人間が勝手に私を信仰して神に仕立て上げただけよ?今となっては上位の神になっちゃったけれどね」

 

「どんな神様なの?」

 

「桜神。日本の四大季節の内の一つの神様。私がこうして居なかったら春は無かったかな」

 

「凄いなぁ・・・お姉ちゃんは」

 

「・・・夜々もあまり人のこと言えないのよ?人の身では有り余る力があるんだもの。最も私に黙って人外へと変わっているみたいだけれど」

 

その言葉を口にした瞬間、夜々の体が止まった。

まさかばれてないとでも思ってたのかしら。

 

「ど、どうして分かったの・・・?」

 

「夜々の魂自体が変化しているもの。人間の頃から純粋な魂だったけれど今でも変わらないわね。純粋でありながら人間以外になっていることしか分からない・・・ってだけね」

 

「・・・うん、お姉ちゃんの正解・・・黙っててごめんなさい」

 

「大丈夫。夜々ならそうしそうだもの、お姉ちゃん好きだものね?」

 

そういって私は夜々の唇に人差し指を当てる。

昔から夜々はお姉ちゃんっ子でよく私に甘えてきたからか、シスコンだもの・・・まぁ嫌じゃないけれどね。

 

「うう~・・・」

 

「夜々の種族・・・当ててあげようか?」

 

「・・・うん」

 

「それじゃ・・・解析開始(トレース・オン)

 

夜々に解析魔術をかけると身体から魂まで隅々解析する。

本来ならばここまで出来ないけれど私の能力も使ってるからね。

さて・・・これは・・・吸血種ではないわね、かといって幻想種でもない。

だけれど私と同じ様な感覚がするってことは・・・。

 

「・・・なるほどね。解析終了(トレース・オフ)。私に似ている感覚がしているということは狐ね」

 

「うん、正解。お姉ちゃんと同じになりたかったから・・・」

 

「はぁ・・・私はね、神狐っていう言わば狐の神様よ?全ての狐達の祖が二人なんて狐の歴史が壊れちゃうわ」

 

「・・・うん」

 

「解析魔術で隅々まで見たけれど特に身体に異常は無いわ。魔術回路も人間の時より増えている事から魂も順応してる。だけれど私に黙ってやったのは見過ごせないけどね」

 

「はーい・・・」

 

反省しているようだし怒りはしないけれど、夜々のやった事は危険なこと。

自分の種族を歪めて変えてしまうのは今までの人生を捨てる事だし、人間は自分達より強いものを排除しようとする。

もしそれで夜々が悲しむ姿は見たくない。

 

「さて・・・石段を昇りきったね」

 

夜々と話しているといつの間にか一番上にたどり着いており、鳥居の奥には神社が建っていた。

手前には賽銭箱もあったのだけれど・・・。

 

「やっときたのね。待ちくたびれちゃったわ」

 

「・・・どうして」

 

「お姉ちゃん?」

 

「お久しぶりかしら?陽華」

 

真っ白なドレスを着た銀髪の少女であるイリヤが立っていた。

 

「・・・貴女は死んだはず。どうやってここに」

 

「分からないわ。気がついたらこの神社にいたの」

 

「・・・そう」

 

「・・・お姉ちゃん、あの人・・・誰?」

 

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ、よろしくね?夜々」

 

イリヤはドレスの裾を持って小さく礼をする。

貴族がやる作法で、イリヤはお嬢様育ちだからか。

 

「それで、この世界は一体何なの?」

 

「ここは、私の世界。心象風景を現実世界に具現化させてこうなってる」

 

「・・・固有結界ね。まさか貴女が出来るとはね」

 

「・・・これでも魔術師だから」

 

私はイリヤとあまり話そうとはしなかった。

それが良くないこともわかっているけれど・・・。

 

「士郎は・・・元気?」

 

「・・・うん。凛と一緒にいると思う・・・よ」

 

「そっか。安心したわ」

 

「・・・イリヤ、夜々。神社入ろう?疲れちゃった」

 

「・・・ええ」

 

「うん、分かった」

 

私が神社の扉を開くとそこから奥に進んで客室へと案内する。

もうこの神社を離れて数百年経つけれど構造は忘れることは無いかな。

私たちが座り込むと、イリヤを見つめた。

怪訝そうに見てくるけれど・・・普通はイリヤは根源に帰っていなければならないはず。

 

「どうしたの?」

 

「・・・死ぬとき、何かに吸い寄せられる感覚はあった?」

 

「・・・ええ。凄く暖かくてね。吸い寄せられるというよりは自分から向かっていったわ」

 

「それは私の固有結界・・・つまりはこの世界。私の世界は純粋な魂だけが入り込める。イリヤは・・・士郎に救われてたからかな」

 

「・・・そうね」

 

「・・・会いたい?士郎に」

 

「ええ。でも無理よ。今の私は魂だけの存在よ?陽華の世界だからこそこうやって身体を動かせれるけれど・・・」

 

「・・・肉体・・・か」

 

恐らくイリヤの肉体はもう無い。

焼却されて灰になっているだろうからイリヤが現実世界へと戻るためには新しい肉体がいるのだけれど・・・。

 

「・・・お姉ちゃん、肉体がいるの?」

 

「・・・出来ることならイリヤ本体かな。戻るときの適合も考えたら」

 

「えっと・・・イリヤさん、少し良いですか?」

 

「・・・いいわ?」

 

「・・・解析開始(トレース・オン)

 

夜々が何か思いついたようでイリヤに触れる。

解析魔術ということはイリヤの身体情報なのだろうけれど・・・どうするのかな。

 

「うん、分かった・・・かも」

 

「どうやって?」

 

「作っちゃえば良いんだよ。解析魔術でこの世界で形作られたイリヤの情報を元に現実世界で」

 

「・・・素体は?普通の方法は無理」

 

「・・・能力は・・・」

 

「・・・はぁ」

 

確実に世界から圧力を喰らう。

作り出すのにはかなり苦労するけれど・・・仕方ないなぁ。

 

「イリヤ、また現実世界で生きれるかもしれない」

 

「・・・ほんと?」

 

「うん。私と夜々でイリヤの身体を作る。ちゃんと成長するようにもするし」

 

「・・・」

 

「大丈夫。ただ準備が出来ないと無理だし、イリヤが手早く動かないと肉体が滅んじゃう。他にも色々危険性はあるけれど・・・それを承知の上なら私たちはその可能性を作る」

 

「・・・いいわ、やる。士郎達にもう一度・・・あなたたちに現実世界で会うためにもね」

 

「・・・分かった。夜々もそれで良い?」

 

「うん!」

 

「じゃぁこれでこの話はおしまい。それじゃ・・・おやすみ」

 

「「へっ?」」

 

私が話を終えると一気に眠気が来たのでそのまま寝付く。

固有結界は本来世界の異物として認識されるけれど能力行使で作り出したから数日は展開できる。

魔力ががっつり減るけれどね。

 

「私も・・・寝るー」

 

「ちょ、ちょっと・・・」

 

「イリヤさんも・・・一緒に寝よう?」

 

「え、あ・・・い、良いわ・・・よ」

 

恥ずかしそうにしつつもイリヤはもう寝はじめている陽華の隣に寝転ぶとイリヤを挟むようにして夜々が寝転んだ。

 

「もう寂しくないですよ。これからはずっと誰かがいてくれます。でも・・・少しの間は一人になってしまいます」

 

「大丈夫・・・よ。生まれたときからそうだったもの」

 

「早く・・・頑張りますから・・・」

 

「・・・ええ」

 

三人が寝付いて、数時間ほどすれば固有結界は自然と消えていった。

イリヤは幸せそうに寝ており、陽華と夜々がいなくなっても動物達がイリヤを囲んで寝ていたという。

 

 

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