私の世界から戻り、目が覚めると時間は朝方だった。
私の固有結界は元の世界とは完全に隔てられ時間の概念が無くなるため、朝方に発動した瞬間から時が止まった状態だった。
「・・・忘れてた・・・」
自分で発動しておいてこれを忘れるとはね・・・。
まぁ良いのだけれど、学校も今日は無いし。
「どうやって作り出そう・・・」
夜々は何か方法があるのだろうけれど私には思いつかない。
少し前まで違う道を歩いていたか、全く思いつかない。
私がそうやってうんうんと唸っていると夜々が起きはじめた。
「ん・・・おはよぉ・・・」
「おはよう、夜々」
「どしたの~・・・」
マイペースな夜々は寝起きものんびりとしているが恐らく・・・多分・・・覚えてるはず。
そういえばこの子はどうやって作り出そうと考えたのだろう。
「夜々・・・イリヤの事だけど・・・」
「ん~・・・イリヤさんの身体だよね?待ってて」
「
見たことも無いけれど・・・多分これが夜々の宝具なんだろうね。
「これが私の宝具・・・
魔導書というのは色々あるけれど中には宗教などの魔導書もあったりする。
大体そういうのは何かしら代償を求められるのだけれど・・・夜々のはオリジナルかな?
「・・・見ても良い?」
「ん・・・陽華お姉ちゃんなら」
「
早速私は夜々の魔導書を解析した。
当然解析魔術だけれどね。
基本的には世界からの修正力は受けていない・・・つまりは現存している魔導書ってことかな。
だけれど恐らくこの魔導書は星一つを消し飛ばせれる程の力は秘めてる。
それだけ神秘性が強くて溢れ出ている魔力量も多いんだ。
解析を終えると夜々に魔導書を返した。
私には扱えようが無いし、持っていても宝の持ち腐れだからね。
「それで、これを使って作るの?」
「うん・・・イリヤさんの魂情報から出来るかぎり肉体情報は解析したから。修正力に関しては能力で出来るかぎり抑えるつもり」
「はぁ・・・それはやってあげるけれどね・・・イリヤの魔術回路とか再現できるの?」
「ぅ・・・それはわかんない・・・」
「一応言ってあげる。イリヤはね、元々聖杯として作られているから魔術回路が存在しないわ。願望の機能で魔術行使をしていたからあの子には魔術回路という物が存在しないの」
これは昔、イリヤの身体を解析したときに分かったこと。
元々聖杯として作られたイリヤは聖杯の機能で魔術回路の行程を飛ばして結果を作っていたからね。
「・・・じゃあ・・・どうしよう?」
「魔術限定で行程を飛ばして結果を作れるようにすれば良いでしょう?体質にしては強すぎて身体に負担がかかっちゃうもの」
「ん・・・何となく分かった・・・かな」
「それで、今からするの?」
「うん。忘れてしまわない内に頭の中で理論を組み上げちゃいたいから」
「はいはい」
「一応人払いはしておきましょうか。桜天結界」
桜神たる私だからこそ出来る芸当。
人払いに加え物理的、魔術的なものに対する絶対的な耐性を付与してある最強の結界。
宝具級じゃないとヒビすら入らないから大体はこれで済むかな。
「・・・
「理論・・・構築完了」
その瞬間夜々の身体から大量に魔力が放出された。
人の身では悲鳴をあげるかもしれないけれど夜々は既に人から変え狐人へと変わっていた。
「幻想魔術・・・開始」
古代魔術の一つなのかもしれない幻想魔術は私の知らない物だった。
失われた魔術だからか聞き取れない言語で詠唱を続ける夜々に私は自分でやることを決めていた。
私の固有結界に迷い込んだイリヤの魂をどうやって現実世界へと移動させるか。
そんなもの、私の魔術じゃ無理だから能力行使に決まってる。
「・・・お姉ちゃん」
夜々が私を呼ぶ頃には目の前には寸分狂わず創り出されたイリヤの身体があった。
その身体に手を当てると能力を使った。
イメージするのはイリヤの魂。
それを今私の目の前にある身体へと入れ込む感じ。
置換をするような感じをイメージをする。
たったそれだけの事で私の魔力がごっそりと持って行かれた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
想像具現化の能力はあまりにも強力だから代償があるのだけれど・・・ここまで持って行かれるとはね・・・。
「・・・
ただ置換しただけの私に何も言わず、夜々はイリヤの身体に解析魔術をかけた。
うまくいっていればイリヤの魂が解析魔術に引っ掛かるはず・・・。
「うん、上手くいってるよ。脈動するように魔力が溢れ出てる」
「そ・・・っか・・・」
「お姉ちゃん・・・だいぶ魔力持って行かれたでしょ?休憩してていいから・・・」
「うん・・・ありがと・・・」
「定着すれば身体も動かせるようになるから、それまではベッドで寝かせておいたのがいいかな」
イリヤの身体を軽々と夜々は持ち上げるとベッドに寝かせる。
いきなり身体が動くわけじゃないからあのまましばらく置いとく事になるのかな。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なに・・・?」
「私ね、お姉ちゃんに会うまで生きた心地がしなかったの」
「・・・?」
「・・・私が本当に小さい頃・・・お姉ちゃんが家に来たとき凄く嬉しかったの」
「それと同時に、私は思ったんだ」
「私はお姉ちゃんがもしあの時来なかったら、自殺してたと思う」
「・・・それはどうして?」
「だって・・・」
「聖杯として生まれてきた子ってね、生まれたときから自分がどういう存在かある程度だけれど分かるんだ」
「・・・そう」
「最終的には自分は死ぬ事が分かってるのならね、いっそ利用されて死ぬより自分から死んだ方がマシだと思ったから」
私は聖杯として作り出されたわけじゃないから夜々がどういう気持ちだったかなんてわからない。
でも、自分の運命が最終的には死ぬ事が決まってるのをただ従うだけ。
そんなの・・・ただの人形だもの。
「でもね・・・お姉ちゃんと出会ってから世界が変わったんだ」
「毎日が楽しくて、一人っ子だったからかな、義理でもお姉ちゃんがいることが嬉しかったの」
「・・・そっか」
「甘えすぎちゃ駄目だと分かってても・・・お姉ちゃんにずっと甘えたかったから。我が儘だよね、私」
「ううん、妹なんて姉に甘えてれば良いの。私からすれば夜々なんて赤ちゃんよ、赤ちゃん」
「えへへ・・・」
「それに我が儘だからって言われても私も夜々に依存してる節があるもの。お互い様よ?」
「・・・うん」
「なんなら私に服従するような魔導具でも使ってあげましょうか?」
「え、あ・・・」
「しないわよ、束縛は好きじゃないもの。それに夜々が楽しくはしゃいでる姿が昔から好きなんだから」
「うん・・・」
「まぁ・・・でも、夜々にもしお兄ちゃんが最初からいたら変わってたかもね」
「へ?」
「・・・こっちの話。さ、朝ごはん食べましょうか。桃子お母さんはお仕事で私と夜々の朝ごはんは私が作るって言っておいてあるから」
「うん!えへへ~久しぶりだな~」
夜々に食べたいものを聞くと「シチューが良い!」と言われちゃったけど・・・どうしよう、晩御飯に出来るかお母さんに聞こうかな。
とりあえず・・・朝ごはんは軽めに作ろう、うん。
「シチューは晩御飯に出来るか聞いてみるね。朝ごはんは・・・サンドイッチにしましょうか」
「はーい!」
イリヤの事は気になるけれど何重にも守護結界をかけてあるし一枚一枚が古の城壁同等だから大丈夫かな。
さて、気合い入れて作りましょうか!
久々に夜々に作るんだもの、とびきり美味しいのを作りましょ!
ということで夜々の宝具は魔導書でした。
正直ネーミングセンスは無いの自覚してるので気にしないでください・・・。
イリヤを守るために張られた結界、あれは陽華の守護結界の一つである『桜天結界』を何重にも展開しています。
どうあがいても破るのは不可能なのですが過保護な一面・・・だったり。