幼馴染転生 - ルディと一緒に本気だす -   作:文頼

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第2章 少年期 入学編
第十話「伸び悩み」


 パウロとゼニスの間に子供ができた。

 

 皆喜んだ。

 私はあまり喜べなかった。

 

 そして、その一ヶ月後。

 

 リーリャとパウロの間にも子供ができた。

 

 皆凍り付いた。

 私は溜息をついた。

 

 物語として知っていたとはいえ、自分の父親が浮気するとなると話は別だ。

 今まで仲良くしてきたリーリャが、屋敷を居なくなってしまうかもしれない。

 

 私は家族会議で無言を貫いた。

 パウロの援護をしてやる気は全くないが、リーリャが居なくなるのは嫌なので、結果無言だった。

 

 結局ルディがパウロに全責任を押し付けて、上手く話しをまとめてくれた。

 ちょっと、話纏めるの上手すぎない? と思った。

 まあルディは、前世から口先は上手かったし……。

 

 決して、魔術ばかりしていて精神年齢40になっても上手く立ち回れなかったわけでは無い。

 

 

---

 

 

 ゼニスの出産は大変だった。

 

 逆子だったのだ。

 産婆が死ぬとかふざけたことを言っていたが、リーリャが必死に働いてくれた。

 私はこれぞとばかりに治癒魔術を母子ともに掛けた。

 こういう時に使わなければ何の為に覚えたのか。

 

 治癒魔術は対象の体に直接作用するので魔術消費がゼロにできない。

 勿論自分に対してやるならゼロにする方法はある、が、それは魔術使用者だからこその技だ。

 自分以外を対象とした場合、使用した魔力は癒す時に対象に定着してしまう。

 その時点でそれは私の魔力では無く、対象者の魔力だ。

 当然操れない。

 

 私の外部魔力一万分の一にも満たない魔力を使用した頃、なんとか出産した。

 

 赤子は元気に泣いた。

 妹だ。

 前世で兄は居たが妹は居なかったので、とても嬉しい。

 

 直後、リーリャが産気づいた。

 

 ここら辺は曖昧だったが、予想はできていた私は上手く立ち回った、と思う。

 前世の私は早産だったので、その時の記憶を思い出しながら、テキパキと働いた。

 産婆も経験はあったようなので、とても助かった。

 

 無事生まれた。

 こちらも妹。

 どっちがアイシャでどっちがノルンだろうか。

 

 

 その後、よく手伝ってくれたと産婆に褒められた。

 

 6歳が出産を手伝ったのだ、それは褒めるか。

 精神年齢40のおばさんでなければ素直に喜べたんだが。

 私からしたら、自分の母親と異母なのだから、手伝うのは当然だという気持ちが強い。

 

 ここまで気を張ったのは何年振りだろうか。

 下手したら、いや、下手しなくとも前世振りかもしれない。

 

 今日は二人の妹が産まれた良き日だ。

 二人の服でも裁縫と魔術で作ってあげようっと。

 

 

 

 

 ゼニスの娘は、ノルン。

 リーリャの娘は、アイシャ。

 

 そう名付けられた。

 

 

---

 

 

 翌日、私が魔術を併用しながら裁縫で赤子の服を作っていると、シルフィがやって来た。

 

「シルフィ、ルディはさっき丘に行ったわよ?」

「サラに会いに来たの! この前まで森の方に来てたのに、来なくなっちゃったから……」

 

 ――はて、この前まで?

 シルフィと会って以来、森には近づかないジョギングルートに変えたから森には一度も行っていないのだが。

 

「ふふ、ごめんなさい? 私の妹が生まれたから色々忙しかったのよ」

「あ! そういえばルディが弟か妹ができるって言ってた」

 

 取り敢えず、話の中で聞くしかないか。

 

「この前森に来た時、私何してたかしら?」

「え? 私に魔術を教えてくれたり、ペンダントに変形するカッコいい剣をずっと振ってたり?」

 

 それもう一人の私!!

 一体、森で何やってるの!?

 世界中で情報収集するとか言ってなかったっけ!?

 

 ……いや、冷静に考えよう。

 私は効率重視だから、無駄なことはしないはず。

 シルフィに魔術を教えていたのは、村から出て行くときに会って、無下には出来なかったから?

 それとも護身用の剣を振るっていたということは、剣を使えないとならなかったってこと?

 

 ……もう一人の私は魔術を使えない、もしくは使えない状態?

 

 それならすべてが納得いく。

 

 お金も持っていない私は、当然馬車でロアの町に向かう事ができない。

 それなら徒歩で行くしかない、でも魔術がまともに使えないか、心細い。

 そうだ、剣術をある程度鍛えて、少しの魔術で補強すれば何とかなるんじゃ?

 剣の鍛錬に森を使っていたら、シルフィに出会ってしまった。

 仕方ないから魔術教えながら、剣の練習をするか。

 ある程度モノになったからロアの町に行ってきます。後は本体よろしく。

 

 ……同一人物だからか、容易に想像できてしまった。

 

「……?」

「あー、そういえばそうだったわね。それじゃあシルフィも、裁縫、やってみる?」

「う、うんっ教えてくれる?」

「勿論よ。隣に座ってよく見ててね……」

 

 何か騙しているみたいで、後ろめたかった。

 『私』は私だけど、シルフィがわざわざ家に来るほど信頼されたのは、私じゃないのに。

 けどま、これからは私が信頼を築いていけばいい。

 勿論、原作が崩壊しないよう、ルディに依存させないといけないのだが。

 

 ……『私』は今頃、しっかりロアの町に辿り着いただろうか。

 

 

---

 

 

 七歳になった。

 

 私はある事を思い出し、膨大すぎる外部魔力に悩まされていた。

 

 そのある事とは、ギレーヌが魔力視を持っている事である。

 以前私は、ギレーヌやキシリカが私を見れば、魔力の霧で見えないだろうと呑気な事を考えていた。

 その時はまだ良かったのだ。

 

 しかし、年を連ねる毎に魔力回復速度が上昇し、延々と使わなかった結果、魔力は測り切れない量になってしまった。

 もし魔力眼で見られたら、即魔神扱いだ。

 というか見た人は、気絶するんじゃなかろうか。

 私がもし見れたとしても、絶対に自分の周囲は見たくない。

 

 最近頑張って魔力の濃度を上げて、なんとか半径1メートルまで魔力を縮められた。

 これで何とかなっただろう、と思い眠った。

 

 翌朝、部屋内で物音がして目が覚めた。

 

 何事かと周りを見回した。

 

 私の眠っていたベッドの周りには、魔力結晶がゴロゴロと転がっていた。

 

 乾いた声が口から零れ落ちた。

 

 遂にダンジョンと同じ現象が私の周囲で起こり始めたのだ。

 ダンジョン≒私という方式が、頭の中に浮かぶ。

 

 昨日、ルディはシルフィとラノア魔法大学に行きたいとパウロに言っていた。

 あとどれだけ時間があるか分からないが、パウロがギレーヌを呼ぶのも時間の問題だ。

 

 

 取り敢えず、急いで魔力結晶を魔力に分解……できなかった。

 簡易の置き場所として、部屋の押し入れに入っている服のポケットに詰め込んでおく。

 リーリャがちょくちょく掃除に来るので、それまでにどうにかしないとばれてしまう。

 

 一定以上同じ場所にいると、魔力結晶が生成されてしまうらしい。

 目が覚めてからは、一度も生成されていない。

 

 部屋の中をぐるぐると歩き回りながら、どうすればいいか考える。

 そうだ。外部魔力を常にかき混ぜていればいいのではないか。

 

「……よし」

 

 かき混ぜた結果、立ち止まっても魔力結晶は生成されなくなった。

 しかしもう一つの問題、ギレーヌが来た時、魔を凝縮させた存在みたいにしか見えないという問題がある。

 

 ……魔力眼の遮断?

 

 そんな天才魔術師が一生掛けて研究するような対策方法を私が思いつくわけがない。

 そもそも私には魔術での対処の仕方しか知らない。

 魔力眼を魔術で対策してもその対策が見られたら意味がない。

 

「いや、ちょっと待って?」

 

 ルディは私に比べたらアリと虎の差だが、魔神クラスの魔力を持っているのだ。

 ギレーヌはルディを見て、何も思わなかったのか?

 キシリカはルディを見て、気持ち悪いとか何とか言っていた気がする。

 

 覚えていない……。

 

 現状で私の周囲に漂っている魔力量はルディ千人分強といったところか。

 たまにルディの魔術鍛錬を見学しているので、魔力量は把握済みだ。

 私の方がルディよりも魔力回復速度において圧倒的に速いので、これだけの魔力差が発生している。

 

 記憶上、ルディの魔力=魔神の魔力なので、私は魔神千人分の魔力を保有していることになる。

 五歳から今日までの約二年間、魔力が貯まり続けるとこうなるのは予想していた。

 そしてその魔力を全て使い切れるだけの魔力制御能力が私にはある。

 

 

 

 

 いや、今はそんな話はどうでもいいんだ。

 今大切なのは、魔力眼対策だ。

 

 ――何故今更になって気づいたのか、もう少し早ければ何か案が浮かんだものを……。

 

 両親の寝室から物音がした、起きてきたのだろう。

 パウロが手紙を出してまだ一日。

 流石に一日二日で決めてやってくる事はないはず。

 

 それまでに対策を考えなくては……。

 

 

--- パウロ視点 ---

 

 

 ――朝起きたら娘が色々とやばい。

 

 俺はいつものように皆で揃って朝食をとっていた。

 新たにできた娘二人の泣き声でノイローゼ気味だが。

 以前まで感じていた魔力の流れも感じなかったので、気楽に食べられた。

 

 サラが珍しく険しい表情で黙々と食事をとっていた。

 普段は明るくよく笑っているので、皆で顔を見合わせてしまった。

 

 ルディの件で、何か思う所があったのか。

 

 サラはルディと同じ歳の誕生日だ。

 昨日ルディが魔法大学に行きたいと言ったのを聞いて、サラは何も言わなかった。

 普通の子なら、自分も行きたい、ルディだけずるい。と駄々をこねるだろう。

 

 勿論サラがそういったなら、ルディの様に条件付きだが行かせてやるのも吝かではない。

 ここは父親として相談にのってやるか。

 朝食をとり終え、部屋から出て行こうとしているサラに近づいた。

 

――ゾワッ

 

「……っ!?」

 

 渦巻く魔力の奔流に、思わず体が硬直した。

 近づくまでは今までと同じ、いや今までよりも魔力の流れは感じなかった。

 だが、一定距離まで近づいた瞬間、胸が押し潰されるような魔力の奔流を感じた。

 昔行った迷宮の最下層でもこれほど濃密な魔力を感じたことはない。

 

 サラが毎日、朝から晩までずっと魔術の鍛錬をしているのは知っている。

 以前寝る前に裁縫をやっていたのを見たことがあるが、それも複雑怪奇な魔術を併用していて、ずっと魔術を使っていなければ死ぬのか我が娘は、と呆れていた。

 ルディも行き急いでいると思う。が、

 どちらかと言えば、サラの方が何倍も行き急いでいるように思った。

 

 お前は一体、どこに向かおうとしているんだ?

 

 

 

 魔術を使い外へ飛び出して行った娘の背中を、俺はただ眺めていた。

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