幼馴染転生 - ルディと一緒に本気だす -   作:文頼

12 / 24
第十一話「冒険者ギルド」- 裏 -

 七歳になった。

 

 身長も伸び、体つきも幼児体型から段々と女性らしい体型になってきた。……魔力体だが。

 多分この体は本体に合わせて成長するのだろう。

 私のこの半年の運動量は本体の比ではない。

 

 朝から晩まで魔術を駆使して土方仕事。

 合間の休憩と睡眠時間は剣術の鍛錬。

 

 私を基準に成長しているとしたら、今頃ムキムキ幼女が誕生していてもおかしくない。

 まあ、パウロやゼニスはスマートな筋肉を持っていたから、それほどにはならなかったと思うけど。

 

 私は現在、ラノア王国に向かっている。

 

 お金が勿体なかったが、トラウマがあるので馬車に乗る事にした。

 乗合馬車で三週間揺られ、ドナーティ領へ渡った。

 ドナーティ領は北方大地に武器を輸出しているだけはあり、素人の私から見ても良い剣が多く並んでいた。

 いつまでも護身用の剣をメイン武器にするわけにはいかないので、安くて丈夫な短剣を買おうかと見て回った。

 道中、私を見て何か言ってちょっかいを掛けてくる冒険者が居たが、そういう輩に限って弱いので、軽くあしらってやった。

 

 どうやら、私を魔力体だと気づいているようだ。

 一般人でも魔力眼を保有している人が居るのか。

 これは本体に聞かせてやらないとまずいんじゃないか?

 ……今更教えに行くのは面倒だ、忘れたことにしよう。

 

 ドーナティ領から剣の聖地まで一ヶ月、短剣を買ってお金が心もとなくなったので魔術で身体強化して徒歩で移動した。

 ラノア王国に着いたら冒険者をして稼がないといけないな。

 

 赤竜の上顎で、普段居ない筈の赤竜に会う――なんて主人公特性も無く、無事辿り着いた。

 景色は見渡す限り白銀へと変わり、人が生きるには厳しい環境だと体感した。

 ただ今回はこの場所に用は無いので、一日と待たずに移動を開始した。

 

 ラノア王国までの道は険しく、雪原という事もあって中々前に進めなかった。

 これなら無理してでも馬車に乗っていけばよかった。

 そう思いながら森沿いの雪道を進行していると、森の茂みがガサガサと揺れる。

 茂みから私に向かって飛び出してきたのは、

 

「――ラスターグリズリーか!」

 

 牙が私に届く前に、距離をとるために風魔術で上空に体を飛ばす。

 慣性の法則で落ちる前に、重力魔術で重力をゼロにする。

 

 私の足元で、3頭の熊達が必死にグアグアと体を伸ばしている。

 はあ、危なかった。

 精神的に疲れていたせいで、生物探知魔術が上手く作動していなかったらしい。

 流石にこんな魔物と接近戦をしたら私は死ぬ。

 

 三次元立体駆動が最低限使えてよかった。

 あぁ、でも重力魔術を行使した状態だと初級魔術くらいしか使えない。

 適当に火炙りにでもして追い払えばいいか。

 

 足元から弱火でじっくり炙ってやると、ゴロゴロと転がりながら森に逃げて行った。

 今思ったが、中々に危険なことを私はしていたようだ。

 頭が回っていなかった。

 休養をしっかり取った方がいいのかもしれない。

 

 重力魔術を解除しようとして、ある事実に気が付く。

 

「このまま飛んでいけばすぐじゃん……」

 

 私は馬鹿だった。

 

 

---

 

 

 夜、ラノア王国に着いた。

 

 流石に魔法大国なだけあって至るところに魔術が施されていて、夜でも照明で明るくなっている。

 店を点々と回りながら、どんな魔道具あるかを見た。

 

 魔道具とは、内部の魔法陣に魔力を送って使う特殊な道具だ。

 

 少しだけ具体的に言えば、

 魔法陣に使用者が魔力を送って使うタイプと、

 魔法陣と魔力結晶が内蔵されているタイプがある。

 

 ざっと見て回った感じ、日常生活で使う物から、戦闘中に使える物まで多種多様だった。

 その道具の用途によって、上の二種類は使い分けられているようだ。

 

 私がへたに使用して魔力体の魔力総量が減ったりなんかしたら大変なので、買う気は無い。

 ルディの様に魔術を効率化させてくれる杖も欲しいが、その実験も本体に任せるしかないだろう。

 ……目の前にあるのに実験ができないなんて、拷問だ。泣きたい。

 

 魔法都市シャリーアまではまだまだ距離があるので、一度安価の宿で眠る事にした。

 安価といっても部屋のグレードが少し下がるだけで、普通の宿だ。

 泊まる分には申し分ない。

 

 窓から漏れる淡い光をカーテンで遮り、意識を落とした。

 

 

---

 

 

 翌朝、まだ早い時間に目が覚めた。

 いや、正確には意識を戻した、か。

 

 私は睡眠を必要としない。

 だからか眠ろうとしても眠ることができない。

 なので意識レベルを極限まで下げて、その状態を維持するのだ。

 

 久し振りに、思考がクリーンな状態になったのを感じる。

 それと同時に、意識を落とす前の私がどれだけ狭い視野で物事を考えていたのかが分かった。

 

 懐にある残金は銀貨三枚。

 日本円で三万円ほどしかない。

 これは今日からでも冒険者を始めてお金を得ないといけない。

 宿も食事も無くてもどうにでもなってしまうこの体だが、流石に宿無しは人間性をすり減らす。

 それに推薦を貰うには、冒険者になって名を売るのが王道だ。

 

 問題は、魔力量的に上級を使うには難しいという点だ。

 

 私の魔力総量はルディの初級魔術に使われる魔力量と同等。

 更にその中の八割は体の構成に必要だ。

 だから残りの二割の魔力で、魔術を発動しないといけないのだ。

 

 いくら磨きぬいた魔術制御能力をもってしても、そんな魔力量じゃ上級魔術を発動する事は出来ない。

 

 誰だこんなハリボテみたいな魔力量で生み出した奴はっ!

 

 

 自分でしたね。

 はい、ごめんなさい。

 しかも転移魔術で失敗して生まれた。

 魔力の残りかすに『私』の記憶がくっついているだけの欠陥体。

 もし私がしっかりと制御できるだけの技術を持っていなかったら。

 私はロアの町に辿り着く前に消え失せていただろう。

 

 幸か不幸か維持できるだけの制御能力を持っていた結果、一年以上も存在しているわけだが。

 

 まあ、そんな感じな私なので、ルディの様に推薦を貰えるだけの活躍をできるか怪しい。

 赤竜がやってきたら大人しく魔力に還って本体に戻るしかない。

 

 うん? 魔力に還る?

 

「それだ!!」

 

 私の声で、街を歩いていた歩行者の視線が一身に集まる。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 だがこの方法を使えば上級魔術もなんとか使えるだろう。

 

 私は人の眼を避けるように冒険者ギルドに入っていった。

 

 

---

 

 

 早朝にも関わらず、ギルド内は多くの冒険者で溢れていた。

 いや、早朝だからこそこれだけ集まるのだろう。

 巨大な掲示板には我先にとばかりに群がる冒険者の姿があった。

 

 私は冒険者が私に目をつけない内に受付へと向かう。

 受付は女性の人だった。

 

「おはようございます。冒険者ギルドに登録しに来ました」

「は、はい?……お嬢ちゃん、お父さんかお母さんに許可貰ってる?」

 

 苦笑いしながら訊いてくる受付のお姉さん。

 

 ははは、これは完全に子供扱いですわ。

 まあ体は七歳だからそりゃそうなりますわな。

 ……許可貰って無いけど、本体は私じゃないしいいよね。

 

「はい。それに、魔術も大抵上級使えるので大丈夫です」

「じょ、上級? う、嘘よね? ま、まあいいです。そういうことなら、この用紙に記入をお願いします」

 

 全く信じていないお姉さんは置いておき、渡された用紙に目を落とす。

 名前と職業を書く欄があり、その下のには注意事項と規約が書いてある。

 一応注意事項と規約に目を通し、問題ない事を確認して記入する。

 

「記入終わりました」

「では、紙をお預かりしますね。こちらに手を乗せて頂けますか?」

 

 透明な魔法陣が描かれた板に言われた通り手を乗せる。

 

「名前・サラスヴァティ・グレイラット。

 職業・魔術師。

 ランク・F」

 

 お姉さんは私の家名を読み読み上げながらも驚いている。

 まあ知っててもおかしくはない。

 アスラ王国でも普通に有名だし。

 

「どうぞ、こちらが貴女様の冒険者カードになります」

 

 そういって渡された何の変哲もない鉄の板。

 そこには、ボンヤリと光る文字で、

 

 

------------------------------

名前:サラスヴァティ・グレイラット

性別:女

種族:人族

年齢:7

職業:魔術師

ランク:F

------------------------------

 

 そう書かれていた。

 

 良かった。種族も性別も普通だ。

 もしかしたら魔力体だから変な風になるかもしれないと思ったけど。

 どうやら杞憂だったようだ。

 

「ありがとうございます。早速依頼を受けて良いんですよね?」

「はい。自由にお受け下さい。それと、パーティの説明はよろしいでしょうか」

「あ、大丈夫です」

 

 私はラノア魔法大学に行くまでの間しか冒険者しないだろうし。

 もしパーティを組む必要が出てきたら改めて聞けばいい話だ。

 

 

 依頼書の争奪戦は終わったようで、巨大な掲示板に居た大勢の冒険者はまばらになっていた。

 掲示板に貼られた依頼書を一つ一つ見ていく。

 

 よし、これでいいか。

 全ての依頼を読んだ上で手に取ったのは、

 Bランクのスノウタイガーと、同じくBランクのラスターグリズリーの討伐依頼だ。

 

「お願いします」

「あの、失礼ですが、もう少しランクを落とした方がよろしいのでは……?」

 

 まったく、上級魔術が使えるようになったんだから、あんな魔物ぼっこぼこにできるわ。

 

「大丈夫です。私はアスラ王国から徒歩でラノア王国にやって来ました。

 ラスターグリズリーなんかも道中出会いましたが、あれくらいなら可愛いもんですよ」

 

 そうそう、今の私なら赤竜でも撃退できる、と思う。

 使用できる魔力が少し増えただけだが、その少しで戦術の幅が百倍くらい広がった。

 

「あ、ミケーネさん! 今日もラスターグリズリーの討伐依頼受けますよね?」

「うん? 受けるが、それがどうかしたのか?」

 

 私と話していた受付の女性が、近くに居たミケーネとかいう冒険者を引き留める。

 そしてコソコソと何かを冒険者に伝えていた。

 

「そういうことか。

 ――やあ、お嬢ちゃんは強いみたいだね。

 だけど、ギルド側としては少し心配みたいなんだ。

 そこで提案なんだが、僕たちのパーティもラスターグリズリーの依頼を受けるから、一緒に行かないか?」

 

 受付の女性がわざわざコソコソと話したのが一瞬で無駄になったな。

 まあ、それで一緒に行けば、ギルドの人にも実力は信用してもらえるだろう。

 これはチャンスだ。

 ミケーネさんのパーティに私の強さをドドンと見せつけて、周りの人に話してくれれば一気に有名になるだろう。

 まあそれをしなくても数日もすれば有名になりそうなものだが。

 

「分かりました。私がしっかり戦えるところをお見せしましょう」

 

 私はそういって、ニコッと笑った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告