幼馴染転生 - ルディと一緒に本気だす -   作:文頼

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第十三話「推薦状」- 裏 -

 甲龍歴416年。

 ここは中央大陸北西部にある、ラノア王国。

 ラノア王国は魔法三大国と呼ばれる、北方大地でも指折りの大国の一つである。

 そんな国の魔法都市シャリーア。

 

 その町に滞在しているのが、

 今回密着する対象となる冒険者……。

 

 巷で『妖精』と呼ばれている少女である。

 

 彼女は五年前、アスラ王国から一人で徒歩でこの地までやってきたという。

 普通の冒険者であれば、忽ち魔物に食い殺されてしまうだろう。

 そんな話が信じられているのは、ひとえに、彼女の強さにある。

 

 魔術で空を飛び、上級魔術で魔物を封殺する技量を持ち。

 地上で戦えば水神流の剣術と三次元的な動きで敵を圧倒する万能性。

 詠唱も無ければ油断も隙も無い。

 

 これだけ強ければ、妬む者も出てくるのが冒険者だ。

 しかし彼女は多くの冒険者達に慕われている。

 それは彼女の普段の行いが影響しているのは間違いないだろう。

 その一端を、今から見て行こう。

 

 

 

 妖精の朝は早い。

 謙虚で真面目な彼女は、太陽が顔を出す前に起き出し、宿の空き地で鍛錬を開始する。

 鍛錬内容は、魔術を使った剣術の応用と三次元移動を主とするもの。

 この国は一年中雪が積もっていて、とても寒い。

 常人ではすぐに風邪をひき、日課にするのは困難だろう。

 しかし、彼女はこの町に来てから欠かさず行っているという。

 

 太陽が昇り始め、他の冒険者が起き始めた頃、彼女は鍛錬を終え冒険者ギルドへ赴く。

 ギルド職員も欠伸をしているような時間に、彼女は更新されたばかりの最新の依頼を受けて行く。

 今日選んだ依頼は、ラノアの王勅令の依頼であるSランクのホワイトサーペントとSランクのスノーゴーレム。

 どちらも討伐するにはSランク相当の実力を持つ者がパーティで討伐するものだ。

 

「大丈夫ですよ。趣向を凝らせば一人でも案外簡単に倒せたりしますから」

 

 そう言いながら、彼女は優しく微笑む。

 

 彼女は軽い朝食を摂ると、依頼現場に向かった。

 現場までは距離があったが、魔術で空を飛んで行った。

 私は見逃す訳にはいかないと馬に乗って、現場に急行した。

 

 現場に着くと、白い大蛇と妖精の戦いはもう始まっていた。

 全長五十メートルはあろうかという大蛇は宙を舞う妖精に、猛毒のある牙で襲い掛かる。

 その速さは、遠くから見ていた私でも認識することができなかった。

 しかし妖精はその素早い猛毒の牙をひらりと躱すと、大蛇の口の開いた一瞬を狙い、豪炎をその中に叩きこむ。

 

 一瞬で肺まで焼き尽くされたホワイトサーペントは、のたうち回り最後の悪足掻きを妖精に仕掛けようとする。

 しかし、妖精は遥か上空まで退避していた。

 

 ――三分程もがき苦しんだのち、その大きな蛇は息の根を止めた。

 

「見ていたんですか、記者さん。どうですか?

 少し蛇の弱点を理解するだけでこうして一人でも倒せるんです。まあそれなりの技量は必要としますけどね」

 

 蛇の体から上手く魔石だけを剥ぎ取り、彼女は言う。

 

 彼女は相手の弱点を理解して、的確な対処ができるのだ。

 とても初めてホワイトサーペントを倒した者とは思えない、完璧な戦いを私に見せてくれた。

 

 次の現場へ着いた。

 スノーゴーレムは周囲の雪を巻き込みながらどんどん巨大になる規格外の魔物だ。

 雪の妖精が突然変異で魔物になったものと推測されている。

 故に前例がなく、当初はBランクで討伐依頼がされていた。

 しかし、討伐に向かったAランクの冒険者パーティが二人を残して全滅したので。

 現在はSランクにまで上がっている。

 

 スノーゴーレムの体長は三十メートルくらいで、今も少しずつ大きくなっていっている。

 妖精は上空に躍り出ると、魔術を生成し始めた。

 

 気が付くと、そこには魔術があるだけで妖精の姿が無かった。

 しかし魔術は膨大な熱量の灼熱の弾をもって完成し、射出された。

 スノーゴーレムは両腕をクロスさせ守りの体勢に入るが、灼熱の弾はその両腕を一瞬で水に溶かし、気体に蒸発させ、ゴーレムの体の中心部を貫通して大穴を開けた。

 

 スノーゴーレムは体を修復する間もなく瓦解が始まり、魔石を残して消える。

 急所を一発で射抜いたのだろうか。

 彼女は魔術を放った場所と反対の場所、ゴーレムの背後を飛んでいた。

 

 一瞬で背後に移動したのは一体どういう技なのかと聞いてみた。

 

「あれは私が上級以上の魔術を行使すると起こる副次結果ですよ」

 

 と彼女は苦笑いしながらも答えてくれた。

 私は魔術師では無いので詳しくは分からないが、そういう風に言っていたとだけ記しておく。

 

 

 その後、無事依頼を完遂した彼女は、冒険者ギルドに戻った。

 冒険者たちは、戻ってきた彼女を気にしながらソワソワとしている。

 

「冒険者の皆さん、今日はホワイトサーペントを狩ってきました。これはその魔石です」

 

 その言葉と片手におさまりきらない魔石を見た冒険者からは歓声が上がる。

 

「私ではあの魔物をこの町に持ってくることができないので、

 素材が欲しい方はご自由に剥ぎ取っていってください!

 素材の場所はこの紙に書かれている通りです!

 これで最後ですが、喧嘩は止めて下さいねっ!」

 

 紙の置かれたテーブルにこぞって集まる冒険者達。

 その顔はまるで獲物を見つけた獣のようであった。

 

 

 そう、彼女は素材を独り占めしようとしないのだ。

 だからこそ、高難易度の報酬の高い依頼を彼女に奪われたSランク冒険者達も、彼女を嫌う事はない。

 

 そうして付いた二つ名は『妖精』。

 人々に潤いを与え謙虚で強い彼女の二つ名は、こうして広まっていくのだ――。

 

 

--- サラスヴァティ視点 ---

 

 ラノア王国に住み着いて、約三年が経った。

 今は初めてラノア王国に来た時と同じ、雪の降る季節だ。

 

 本体はそろそろ転移事件に巻き込まれる頃だろうか。

 私はラノア魔法大学に推薦入学する為に名を上げてきた。

 今ではSランク冒険者となって強い魔物をぽんぽこ倒している。

 正直途中で魔法大学に入学する為の額は稼げたのだが、ここまで来たら意地だと推薦を貰うまで頑張ってきた。

 

 今日もホワイトサーペントなるSランクの魔物とスノーゴーレムとかいうただデカいだけのSランクの魔物を倒してきた。

 魔石以外は他の冒険者達にあげたが、別に深い意味があるわけではない。

 あんな大きさの魔物は、私の魔力総量じゃ持ち運べないのだ。

 本体程の魔力があれば鼻歌交じりにでも重力魔術で持ち上げられるのだが。

 

 それでも魔物の部位で一番高価な魔石は毎回しっかり取っているし、依頼の報酬でもう既に一財産稼いでいる。

 どのくらいかと言えば、一生遊んで暮らせるほどの金額だ。

 

 

 宿に帰ると、すっかり顔見知りとなった店番の人が手紙を渡してきた。

 どうやら私宛らしい。

 

 表面には『ラノア魔法大学』と書かれていた。

 遂に特待生になれるのだろうか。

 

 宿の自分の部屋へ戻ってくると、腰の短剣とポーチを外しながら、重力魔術で封を開け、紙を取り出す。

 依頼後で疲れているのでベッドに倒れ込むと、書かれている内容を見る。

 

『サラスヴァティ・グレイラット様。

 

 はじめまして。

 『ラノア魔法大学』で教頭をしておりますジーナスと申します。

 ここ数年に渡り、サラスヴァティ様の雷名『妖精サラスヴァティ』は、ラノア王国で轟いております。

 空を飛ぶ魔術を主として多種多様な魔術を使う天才冒険者とお聞きいたしました。

 本来ならもう少し早くにお招きしたいところでしたが、年齢が10歳になるまで待たせていただきました。

 

 その素晴らしい魔法技術をさらに磨くおつもりはありませんか?

 ラノア魔法大学は、あなたを特別生として招く用意があります。

 特別生とは授業免除かつ学費免除。

 本校の蔵書や設備を使い、好きに研究等をなさっていただく立場の生徒です。

 そして、現時点であなたはラノア王国に多くの益をもたらしています。

 そんなあなたには特例として、月一の朝礼も免除、専用の研究室も一部屋お貸しいたします。

 

 7年以内(卒業まで)に一つの研究を完成させ、

 それを本校あるいは魔術ギルドに譲渡していただければ、

 無条件で魔術ギルドのC級ギルド員への推薦も可能です。

 もし仮に何の研究成果も出せずとも、他卒業生と同じくD級ギルド員に登録いただけます。

 

 ぜひ一度ご挨拶させて頂く機会をいただけませんでしょうか。

 

 突然のご依頼で恐縮ですが、ご検討いただけたらと存じます。

 何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 ラノア魔法大学教頭 ジーナス・ハルファス』 

 

 

 と書いてあった。

 

 やったー、ぱちぱちぱち。

 

 有名になっても全然送られてこないから無理じゃなんじゃないかと内心諦めかけてたけど。

 そうか、年齢が十歳になるまで待ってくれたのか。

 ただ、十歳で入学しても結局同学年から何か言われそうだな。

 ラノア王国内で私の二つ名を知らない人はいないと思うけど。

 いやそれは流石に盛ったな。

 でも、五人に一人は知ってくれてるとは思う。

 それだけここ三年、頑張ってきたのだから。

 

 何だか今までの苦労が肯定されたようで嬉しい。

 そうだ。私は頑張ったんだ。

 

 入学したら大学の蔵書を全部読み漁って、本体に情報提供してやろう。

 上手くやれば私が消えずに情報だけを渡すことができるかもしれない。

 いや、それならちょっと剣術にぶれた私でもできそうだ。

 魔術一筋の私になら絶対にできるだろう。

 

 明日、魔法大学へ行ってみようか……。

 

 私はそんなことを考えながら、意識を落とした。

 

 

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