幼馴染転生 - ルディと一緒に本気だす -   作:文頼

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第十八話「魔眼」

 メデューサ討伐から十日が経った。

 

 太陽が顔を出し始めた頃、私はようやく迷宮を脱した。

 潜った時間よりも短縮できたが、それでも長い。

 もう一生分の迷宮を堪能した気がする。

 

 此処がリングス海の中心と仮定すると、どの方角にも大陸があるということになる。

 どちらが北かも分からない私は、適当に目視した場所を起点に転移を繰り返していく。

 

 二時間くらい経つと、大陸が見えてきた。

 

 赤茶けた乾いた大地に枯れた木々。

 その特徴的な大陸は、この世界に一つしかない。

 

 ……魔大陸だ。

 

 一番行きたくない四分の一の確率が当たるのか。

 まあ、いい。

 キシリカはこの大陸に必ずいる。

 魔眼を貰うために探そう。

 

 原作を思い出しながら、特に急ぐ用も無いので、ゆっくりと大陸に渡った。

 

 

---

 

 

 待ち往く人達は、角が生えていたり翼が生えていたりする人達が多く見られた。

 

 当初の予定では冒険者ギルドに行き、旅の資金を集めながらキシリカを探そうと考えていた。

 だが、それを実行する上である致命的な問題が浮上した。

 

 ――私、魔神語覚えてないじゃん。

 

 使う機会などないと勝手に思っていたので、ロキシーにも習っていなかった。

 ルディはロキシーから貰った本で覚えたかもしれないが、私はそんな本を貰っていない。

 あんな地方の村ではロキシー以外に魔神語を使う人間なんて居るはずもなく。

 

「……まあ覚えるしかないんだけど」

 

 私はまず宝石の看板を掲げている店に立ち寄った。

 そして以前寝ていて生まれた高純度の大きな魔力結晶を売り払った。

 勿論籠っていた魔力は外部に移動している。

 

 言葉が分からなかったので詐欺られた可能性もあるが、黄金の杖と私の体から漏れ出る黄金の威光で脅しておいたので多分大丈夫だ。

 鉱石のような銭がびっしり詰まった袋に魔術で結界を張り、スリ対策も施しておく。

 

 冒険者のがっちりした装備の男たちについていくと、冒険者ギルドのような所に辿り着いた。

 絡まれると面倒なので、光学迷彩魔術と、消音・消臭魔術で完全に姿を消す。

 あとはギルド職員さんの直ぐ傍で文字を読み、言葉を聞き、言語を組み合わせていく。

 陽がくれたら宿へ行って眠る。

 

 そんな毎日を、延々と繰り返した。

 

 

---

 

 

 この二ヶ月、ただ長かった。

 

 殆ど分からない言葉を理解できるように、朝から晩まで聞き続けるのは中々に苦痛だった。

 しかし前世で言語の勉強をしていたお蔭で、なんとか二ヶ月で魔神語をある程度話せるようになった。

 魔力結晶を売った時のお金はまだ随分残っている。

 それだけ私産の魔力結晶は価値が高かったようだ。

 決して脅したから高く売れたわけでは無いと思う。

 

 

 一応、冒険者登録をした。

 旅の資金はあるが、取り敢えず持っておこうと思ったからだ。

 職業は自分で書いたものが表示されるので、大魔術師と記入しておいた。

 ギルドに居た冒険者や職員さん達から暖かい眼で見られた。

 解せない。

 

 その日、占命魔術でキシリカの居場所を占う。

 

 脳裏に浮かんだのは、知っている町の裏路地で知らない男についていくキシリカの姿。

 それを偶々発見した私が浮かんだ。

 場所は、この町の大通りの脇道に反れた場所だ。

 というかこれ数分後の未来じゃ?

 

 走って行くと、そこには浮かんだイメージの少し前の光景がそこにはあった。

 

「ぐへへ。お嬢ちゃん、礼は要らねえ。良い飯を奢ってやるよ」

「本当か! うむ、では案内せい!」

 

 いや絶対いかがわしい事させるつもりでしょ。

 

 睡眠魔術で下品な男を昏倒させる。

 私が来なかったらしっかり魔眼で抗えたのだろうか、この幼女は。

 

「あの、飯なら私が幾らでも奢らせていただきますよ。魔眼大帝様」

「お、おお? その年で妾の事を知っておるとは小娘の割にやりおるのう」

「そうですか? 十二の魔眼を操り配下に授ける偉人を知らない方はこの大陸には居ないと思いますが」

 

 まあ本当の姿を見たこと無い人にはこの幼女が魔眼大帝だとは思わないだろうけど。

 

「ん? 小娘その鎧、というかどうなっておるのだその魔力!

 おまえ、めっちゃくちゃじゃのう!」

 

 いきなり大声を出したと思えば、キシリカはぐるりと青色に変化した瞳で驚愕している。

 それが魔力眼なのか。

 どう見えるのか気になるな。

 

「私の魔力って、魔力眼だとどう見えるんですか?」

「うぅむ、魔力の塊が小娘を中心にもっさりくっついておる。

 魔力量はラプラスのそれとは比べ物にならん。

 それを体外で維持するとか、危険すぎじゃろ!」

「そ、そうですか。それじゃあ、食べに行きましょうか」

「……うむ。――久々に腹一杯になるまで食べるぞ!」

 

 キシリカが頭あまり良くなくて助かった。

 でも鎧の事知ってそうな雰囲気だったな。

 食べ終わったら聞いてみようか。

 

 

---

 

 

「くはぁ。久し振りにたらふく食ったわ」

「……そうですか。それは良かったです」

 

 私の一週間分の食費があっという間に消えてしまった。

 魔眼を得る必要経費だと思えば安いものだが銭がポンポン消えていくのは虚しい。

 

「小娘、そういえば名前を聞いておらんかったのう。名を名乗れ」

「あ、申し遅れました。サラスヴァティ・グレイラットです」

「グレイラット……? おお! 小娘、ルーデウスという名を知っておるか?」

 

 ああ、ルディはもう魔眼大帝に会っていたのか。

 

「ルーデウスは双子の兄ですよ」

「双子揃ってイカレタ魔力とは、親の顔が見てみたいわい。

 ――それで、それ程の強さをもってしても、妾の魔眼が欲しいのか?」

 

 あ、普通に魔眼目当てってバレてたわ。

 まあ、人間がそれ以外に自ら無償で飯を食わせる理由なんて無いだろうし当然か。

 

「はい。私は魔術を極めたいので、魔眼で少しでも強くなれれば本望です」

「そうか。それが理由なら妾の魔眼が欲しいじゃろうな。何の魔眼が欲しい?」

 

 それは此処二ヶ月でもう考えてある。

 私が選ぶのは、

 

「予見眼を二つ下さい」

「――確かに両目同じ魔眼にすれば能力は向上するが、上手く制御できねば頭がおかしくなるぞ?」

「……因みに、放出した魔力を常時操るのとどっちが難しいですか?」

「どっちも同じくらい難しいじゃろ、まあえーわ。

 そんな魔力制御できるんじゃし大丈夫じゃ大丈夫っ、ほれすぶしゅー」

 

 考え込んでいた所をキシリカが突然両目に指を突っ込んだ。

 脳が完全に思考停止して、何も考えられなくなった。

 

「あの、今どうなってます?」

「右目が取れたぞ、あ、左目も取れた」

「分かりましたけど、もうちょっとオブラートに包んで下さい」

「おぶらーと? なんじゃそれ。……ほい、完成じゃ」

 

 神経が麻痺している間に魔眼が入れ替え終わったようだ。

 痛みが無くて良かったけど。

 目を開けると、何重にもブレたキシリカの姿が。

 魔眼に循環する魔力を抑える。

 ブレが少しだけ収まった。

 

「……ありがとうございます。それと、この鎧について教えて貰えませんか?」

「持ち直し早いのう。その鎧か? それは闘神鎧というやつじゃ。正式名称は忘れたが、妾の現フィアンセのバーディガーディがラプラス戦役の時着ておったな」

 

 バーディガーディって闘神だよね。

 何か分からないけど原作で重要になりそうなアイテムをとってきてしまったかもしれない。

 

「そうなんですか」

「――そうじゃっ、妾はバーディガーディを探しておったのじゃ! サラスヴァティよ感謝するぞ!フハハハハハ、フワァハハハハゲホゲホッ」

 

 ……。

 まあいいや、魔眼も手に入れたし。

 頑張って慣らしておこう。

 

 

 その後、なんとか人にぶつからないよう空を飛んで宿に帰り着いた。

 

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