幼馴染転生 - ルディと一緒に本気だす -   作:文頼

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第二十話「帰郷」

 キシリカから魔眼を得た翌朝。

 

 私は宿で予見眼の制御をしていた。

 

《立ち上がって杖を持つ》

《何もしない》

《立ち上がれず倒れる》

 

 一つの動作をしようとするだけで複数の未来が視える。

 私は立ち上がって、倒れた。

 どうやら三番の未来にいきついてしまったらしい。

 

 立ち上がることすらまともに出来ないのは、私の視覚が関係している。

 私は両目とも予見眼にした結果、現在を視る事が出来なくなった。

 

 視えるのは未来の視界で、現実の少し先の映像だ。

 ルディは片目だけなので現実を視ることができた。

 だが私は両目、現実を視る眼を持っていないのだ。

 

 まあ、肉眼の視覚に頼らなければ案外普通に行動できるのだ。

 解析魔術で周囲の空間を視覚化して視ることもできる。

 実際これで昨日宿まで帰ってきた。

 

 しかし、これを使えこなせなければ、魔眼を得た意味が無い。

 私は、予見眼で普通に生活できなければならない。

 

 

---

 

 

 私は船に揺られ、0,1秒先の未来の離れ往く魔大陸を眺めていた。

 

 今日は普段より風が緩やかで、旅立ちにぴったりの日だ。

 暖かな太陽に照らされて、欠伸を一つ漏らす。

 

 私が予見眼の能力を実用レベルにするには、丸三日を要した。

 

 とはいえ、問題は初日で解決した。

 大体0,1秒後の未来を視る事で、現実との誤差を限りなく減らしたのだ。

 元々私達が視ている視界の映像は、現実に近い過去である。

 その分未来を視る事で視覚情報のタイムラグを減らし、限りなく現実に近い未来なので分岐も殆どなく普通に生活できるようになった。

 残りの二日は、その状態に慣れるのに要した時間だ。

 

 さて、そうして魔眼を手に入れたので、私が魔大陸に居る必要もなくなったわけだ。

 なので私は一度、ブエナ村に帰ってみる事にした。

 私があれだけ溜め込んだ魔力をぶち込んだのだ。

 多分残っている、と思う。

 

 一日と少しでザントポートに到着した。

 

 丁度雨季が過ぎ、聖剣街道が通れるようになっていた。

 前世でよくテレビを観ながら一度はやってみたいと憧れた旅。

 まさが今世ですることになろうとは思いもしなかった。

 

 馬車に乗り換え、大森林を満喫、する。

 

 ……そして、二週間で踏破した。

 

 初めは楽しく旅をしていた。

 様々な種族が次々と現れ、それぞれ村にも特色があった。

 が、いつまで経っても周りは木、木、木。

 確かに楽しいけど、ずっと同じ景色じゃ旅してる気がしないんだよね……。

 

 森を抜けると青竜山脈に入った。

 私は久し振りの森以外の景色に歓喜し、馬車の屋根に浮き出る。

 

 透き通る空、聳え立つ山々、空を飛ぶ青竜。

 

 あ、あれ、あの青い竜こっちに突っ込んでくるんだけど?

 

《青竜が口から水弾を飛ばす》

 

 片方の数秒先を視る眼に面倒な未来が映る。

 

 ――少し、間が悪すぎじゃない?

 

 魔術無効化魔術を飛ばし、原因となる青竜の翼の風魔術を無効化。

 青竜はパニックになりながら落ちていった。

 

「……はぁ」

 

 私が居なかったらこの馬車が吹き飛んでいた所だ。

 

「おぉ、青竜何で落ちてやがんだ?」

 

 馬車の御者が落ちていく青竜を見ながらそう呟く。

 未来を知らない人は呑気なものだ。

 

「普段青竜が襲ってきたときどうしてるんですか?」

「お、おぉ? はっはっは、青竜は襲ってこないんだぜ? 山に踏み入れば襲われるかもしれんが、山道を走っていれば滅多に襲われねぇ。偶にイラついてんのか水弾を打ってきたりするけどな! しっかし嬢ちゃん空飛べんのかよ! 最近の魔術師すげえな」

「ふふ、これでもすごい魔術師なので」

 

 こうしてふとした瞬間に褒められると嬉しいな。

 それにしても、青竜襲ってこないのか、はっはっは、そういえばそんなこと聞いた気がする。

 だから護衛が一人もついていないのかー。

 

 ……そのイラつきで吹き飛ばされたらどうするつもりなのか問いただしたい。

 

---

 

 

 ミリス神聖国に到着した。

 

 ここはミリシオン、世界で最も美しい都市とされている場所だ。

 白と銀で創造された街並みは静謐さを感じさせる。

 

 そういえばゼニスはミリス教徒だった。

 確かにこの光景を観れば信仰する気持ちも分かるかもしれない。

 私は日本によくいる適当な信仰者なので、取り敢えず信仰しておく。

 

 魔大陸のお金が使えなかったので、また宝石店に向かった。

 リュックから迷宮の最深部で得た財宝を取り出す。

 

 

---

 

 

「ま、またのご来店お待ちしておりますぅぅ」

 

 私を子供とみて安く買い叩こうとした店主を魔術で説得()した。

 店主は魔術に精通していたようで、私の魔術を視ると即座に通常以上の値段で売ってくれた。

 まあ相場は分からないので、あくまで店主の言っていた限りでは、だが。

 

 今更だが、実は私の背負っているこのリュック。

 ダンジョンの最深部にあった魔道具の一つだったりする。

 効果は空間の拡張で、簡単に言えばアイテムボックスのような役割だ。

 どれくらい入るかは分からないが、宝箱の中身を全て入れても大丈夫だったので結構入ると思っておけばいいだろう。

 

 ミリス神聖国に冒険者ギルドの本部があった。

 

 中央大陸北部や魔大陸に本部があると思っていたけど、まさかミリス大陸とは。

 やはり安全で魔物が弱い大陸に本部を置くのだろうか。

 

 私の冒険者カードには、未だにFの文字が輝いている。

 フィットア領の様子を見てきたら、一度冒険者をしてみるのもいいかもしれない。

 

 

---

 

 

 半年が経った。

 

 ロアの町に着いた。

 

 町は、消失していた。

 

 何がいけなかったのだろうか。

 私の魔力が足りなかったのか?

 いや、魔法陣の払い戻しの結果、人の転移事件が起きた。

 魔力が足りた場合、町も払い戻しの対象になり、結局無くなってしまうのか。

 

 愕然とした。

 人が魔力に変換されるのを防ぐためにやったこととはいえ、町は残ると思っていた。

 無駄とはいえないが、良かったとも思えない。

 

 臨時に建てられた冒険者ギルドに来た。

 本来依頼が貼り付けられている掲示板に、死亡者行方不明者の名前がずらりと並んでいた。

 ノルンとパウロは大丈夫だ。

 ゼニスは、ダンジョンにいるが、私の結界で精神は守られているはず。

 リーリャとアイシャは、ルディがどうにかする。

 私は、元気だ。

 

 伝言板に移動すると、パウロの伝言を発見した。

 

『ルーデウスへ。

 ゼニスとリーリャ、アイシャ、サラスヴァティが行方不明だ。

 ノルンは俺が保護している。

 

 お前が現在どこにいるかはわからん。

 だが、お前なら一人でもここに辿り着けると考えている。

 よって、お前の捜索は後回しにする。

 

 オレはミリス大陸へと行く。

 そこがゼニスの生まれ故郷だからだ。

 リーリャの故郷・実家にも伝言を残しておく。

 お前は中央大陸の北部を探せ。

 見つけたら下記まで連絡を。

 ゼニス、リーリャ、サラスヴァティも同様に連絡を。

 

 また、オレや家族のことを知る人物、あるいは元『黒狼の牙』メンバーへ。

 捜索を手伝って欲しい。

 『黒狼の牙』の元メンバーは俺に思う所もあるだろう。

 水に流せとは言わない。罵ってくれてもいい。

 靴をなめろというなら舐めよう。

 財産は全て消えたので報酬は出せないが、頼む。

 オレの家族を探してくれ。

 

 - 連絡先 -

 ミリス大陸ミリス神聖国首都ミリシオン冒険者ギルド

 パーティ名『ブエナ村民捜索隊』

 クラン名『フィットア領捜索団』

 

 パウロ・グレイラットより』

 

 あ、完全にすれ違ってる。

 ロキシーとも会わなかったし、またミリス大陸まで戻らなければならないのか。

 こういっては何だが、めんどくさい。

 

 半年も掛けて戻ってきたのにまた半年も掛けて戻らなければいけないなんて。

 もうちょっと学習しよう私。

 転移の起点になるものを置いてこれば一瞬だったのに。

 取り敢えずロアの町に魔力結晶を埋めていつでも来れる様にしておこう。

 

 あとは、ブエナ村だ。

 

 

 魔術で飛び、数十分でブエナ村に着いた。

 

 一年振りに見る景色。

 村は、消えていなかった。

 安堵と、何故という疑問が浮かび上がる。

 何も分からないまま、自宅へと進んでいく。

 

 自宅が見えた。

 庭は草がぼうぼうで、無法地帯のような有様だ。

 風魔術で草を刈り、敷地の外で燃やす。

 

 屋敷の扉を開けた。

 

 玄関に入ると同時、むわっとした埃の臭いが鼻を刺激する。

 リーリャが居ないので、屋敷の中は埃でコーティングされていた。

 埃も風魔術で家の外に掃き出す。

 

 家中を歩き回る。

 全て転移する直前の状態のままで、時間が巻き戻ったような違和感を感じる。

 

 結局、何も見つからないまま、時間が過ぎて行った。

 

 村と草原の境界を歩いていく。

 そこを辿れば、何かが分かるかもしれない。

 

 村の外れを境に、何もない『草原』になっていた。

 その境には、見覚えがある。

 

「……私が、最後に居た場所」

 

 転移する直前、私は村の外れで魔術イメージの限界を調べていた。

 その場所から、後ろのブエナ村は、転移の被害に逢っていなかった。

 

 そう、か。

 被害は赤い珠を中心に広がっていたんだ。

 だからロアの町は消えて、私の背後にある村は残った。

 私が巻き込まれると同時、足りなかった魔力が足りて、被害範囲がそこでストップした。

 

 そういうことなら、転移事件の時にロアの町に居れば、被害は限りなくゼロにできたかもしれない。

 でも物語を沿うなら、ルディやシルフィには転移してもらわなければいけない。

 ……知らなかったのだから、罪ではない。

 転移事件の被害は、物語を知っていても、止めることができないものだったのだ。

 地方の村を、幾つか救ったのだ、それで十分だ。

 

 そう思わないと、やっていけない。

 

 

 私は一年ぶりの屋敷で、一夜を過ごした。

 

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