幼馴染転生 - ルディと一緒に本気だす -   作:文頼

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第二十一話「再会」- 裏 -

 一年が経った。

 

 半年前に、天候の操作が出来る様に戻った。

 魔力結晶から魔力を抜いて外部に溜め込み続けた結果だ。

 魔力体に入れることはできなかったので、結局外部に置いておくことにした。

 これで戦闘時に行使したい魔術が使えなくてムズムズすることもなくなった。

 ……本体がどれほど強くなったか気になるなぁ。

 

 そして最近、オルステッドが会いに来た。

 私が研究室を重力魔術で無重力状態にして浮いていると、興味津々な顔で突然部屋に入ってきたのだ。

 女性の部屋に、研究室とはいえ無断で入って来るのは良くない。

 私オルステッドに注意ばかりしているなと思いながら忠告してやると、鼻で笑われた。

 

 曰く、私は女とは思えないとのことらしい。

 何て失礼な男なのだろうか。

 取り敢えず無言で重力で押し潰した。

 ……相当なGを掛けたはずなのに何で平然としていられるのか。

 せめて謝らせたかったのだが、床がメキメキ音をたて始めたので止めた。

 部屋が壊れて修理するのは私だ。

 

 

 本当に突然の事だったので、何かあったのかと聞いた。

 彼は人神関連で近くに来たので、予定が狂わないようにしてから態々立ち寄ったそうだ。 

 話を聞いてみれば、大陸を何周かしたが本体には会わなかったという。

 繋がりを確認してみると、南にいる事が分かった。

 フィットア領に被害の様子を見に帰ってきたという感じだろうか。

 

 それを伝えると、丁度その辺りにも用があるので探してみるそうだ。

 帰り際、次いつ会えるか分からないからと、腕輪の通信機を貰った。

 これで態々会いに来なくても話すことができるようになったという。

 本体ではなく私と話してどうなるのかという話なのだが。

 まあ気にしない事にした。

 

 そして今日は新入生が入学する日だ。

 物語の登場キャラの誰かが来るのかな~と呑気に考えていると、研究室の扉をコンコンッとノックする音が。

 

「どうぞー」

「失礼します」

 

 そう言って入ってきたのは、何処か見覚えのある面影の少年。

 髪は白色だし眼も隠されているが、そのサングラスを掛けた姿に思い至る。

 

「わぉっ、シルフィ? 久し振りだね」

「ひ、人違いじゃないですか? ボクはフィッツですよ。先輩」

「あはは、それならそういうことにしておこうか。それで、新入生のフィッツ君が何の用なの?」

 

 そういうと、シルフィはスッと姿勢を正して真剣な雰囲気に変わった。

 私の知るシルフィは4年以上も前のものだが、これ程成長しているとは。

 嬉しくもあり寂しくもある。

 もう昔の様に甘えてくれたりしないのかな。

 

「アリエル・アネモイ・アスラ様がSランク冒険者『妖精サラスヴァティ』である貴女に是非、お会いしたいと仰っておりますので、今夜時間がおありでしたら、アリエル様の寮のお部屋に訪ねて来てください」

 

 アリエル・アネモイ・アスラは、アスラ王国第二王女で王位継承権第三位くらいだったか。

 シルフィが転移直後に助けた女の子だろう。

 流石にSランクはやりすぎたかな。

 有名になって魔法大学に入るつもりだったからなったんだけど。

 

「また会おうね」

「…うん」

 

 フィッツ、もといシルフィは、私の言葉に少しだけ頷くと、研究室を後にした。

 少し照れたように言う感じが可愛すぎる。

 彼女は天使だったか。

 

 そこで魔石の解析に戻ろうとした私は、ある事実に思い至る。

 

 もしアリエルが私の過去を調べているとしたら、シルフィとの関係で私が同時期に二つの場所にいることが丸分かり?

 

 お、おお。落ち着くんだ私、別にオルステッドの時のように分身と言えばいいではないか。

 いや分身体でSランク冒険者の実力とか思われると更に厄介なことになる。

 それにシルフィに私が本体と記憶の共有をしていないことがバレると拒絶されるかも。

 いやシルフィはそんな子ではないか。

 

 だが、そもそも分身体を生み出す魔術なんて聞いた事も無い。

 オルステッドですら知らないと言っていた。

 そんな魔術存在しないと考えた方がいい。

 私は基本独学だからイメージで存在しない魔術でも何でも使えるんだけど。

 それは常識的ではない。

 

 私は原作にあまり関わりたくないんだけど、仕方ない。

 本体の為に一肌脱ぐとしよう。

 

 

--- シルフィエット視点 ---

 

 

 入学式が始まる少し前、アリエル様とルークで話をしていた。

 

「シルフィ、本当に『妖精サラスヴァティ』と面識があるのかしら?」

「ある、と思う。サラスヴァティって珍しい名前だし、グレイラット家だし」

「だが、転移事件の三年前からこの王国で目撃情報があるぞ。別人じゃないのか」

 

 そういうのはルーク。

 まあ普通に考えたら別人に決まっている。

 ボクだってそう思う。

 転移事件の数日前もサラと一緒に裁縫をして遊んだのだ。

 その頃にラノア王国で冒険者をしているのだから、別人だろう。

 でもグレイラットを名乗っているし。

 記事で書かれている容姿もサラとぴったり合う。

 一人で朝早くから魔術の鍛錬をしているのもまったく同じだ。

 

「……アリエル様はこの人を味方につけたいんでしょ?」

「できればそうしたいのだけどね。彼女は三年前から一度もラノア王国から出ていないという話だし。政敵である可能性は低い。ただ、彼女が何を考えて行動しているのか分からないのよ。お金はもう散々稼いているし、知名度は冒険者の中でも魔法三大国随一。発言権を強めているかと思えば政治的な方面はノータッチ。去年ラノア魔法大学に入学したけど、それも推薦がきたから。訳が分からないわ」

「それなら、一度会って話をしてみてはいかがでしょう。実際に話してみれば何か分かるかと思います」

 

 確かに、ルークの言う通りだ。

 一度顔を見合わせて話をすれば、大抵どんな人物か分かるものだ。

 ボクもこの人がサラかどうか分かるだろう。

 

「……そうね。Sランクの魔物をバンバン倒すSランク冒険者相手にあなた達二人だと護衛が心もとないけど、噂を聞く限り突然襲ってきたりはしないでしょうし。シルフィ、あなた今から今夜用がなければ寮の私の部屋に来るように伝えて来なさい」

「えぇ!? 今から?」

「そうよ! こういうのは早めに行った方が良いわ! 入学式まで時間が無いから早く行ってきなさい!」

「わかったよぅ。いってきます」

 

 泊まっていた宿屋から駆け脚で出ると、そのままラノア魔法大学に走った。

 

 門番に止められたけど、名前と此処に来た理由を言うと、普通に通してくれた。

 今日から入学する予定だったので入れたのだろう。

 

 歩いている職員にサラスヴァティ・グレイラットが何処に居るのかを聞くと、すぐに答えが返ってきた。

 ついさっき、中庭での朝の鍛錬を終えて研究所に歩いて行く姿を見たらしい。

 場所を聞いて短く感謝を述べると、その場所に向かった。

 

 僅かに緊張しながら、意を決して研究所の扉を叩く。

 

「どうぞー」

「失礼します」

 

 扉の先に居た人を見て、すぐにサラだと気づいた。

 

 健康的で程よく引き締まった体つきに、力に満ちた優しい眼をしていて、サラのお母さんによく似て美人な顔立ち。

 そして、部屋全体の重力を操作しているのか天井に座りながら魔石を弄っているその魔術技能。

 

 転移前でもおかしいとは思っていたが、相変わらず常識を凌駕した私の親友が、そこに居た。

 

「わぉっ、シルフィ? 久し振りだね」

 

 あ、あれ? なんか軽くない?

 というか、ボク今男装してるのに、一瞬でバレたんだけど。

 気づいてもらえて嬉しいけど、男装しても髪の色が変わっても気づかれるボクの変装能力が悲しい。

 ってそうじゃない、バレちゃいけないんだった。

 

「ひ、人違いじゃないですか? ボクはフィッツですよ。先輩」

「あはは、それならそういうことにしておこうか。それで、新入生のフィッツ君が何の用なの?」

 

 そうだ、時間が無いんだった。

 要件を伝えて、早く入学式が始まるまでに戻らないと。

 

 

---

 

 

「どうだったかしら」

「あ、うん。否定してなかったから多分来ると思うよ」

「……同一人物だったか? 転移事件前のそいつと」

「うん。ボクの姿を見て一瞬でシルフィだって気づいたし、昔から重力魔術が得意で当たり前のように浮いてたのも同じだった」

 

 あれで別人っていうのならもう誰にも見破れないんじゃないかな。

 

「重力魔術ってちょくちょく聞くがそんな魔術あるのか?」

「私も聞いた事ないわね。噂でも普通に空飛んだりして戦うらしいし。シルフィは使えないの?」

「使えないよ。原理が良く理解できないと無理みたい。でもルディは使えるよ。サラの双子の兄の」

「またルーデウス。しかも双子だったのねサラスヴァティと」

 

 ルディは今頃どこで何をしてるんだろう。

 ルディの事だから生きているだろうけど。

 カッコいいし強いから、もう他の女の子とくっついていてもおかしくない。

 ――そうだ。サラならルディが何処に居るか知っているかも。

 

「サラが安全と分かったら、ボクの正体を伝えてもいいかな。親友だし秘密にしてくれると思う」

「……仲間に取り込むなら正体を伝えた方が効果的だしいいんじゃない? まあ、今夜彼女がどう出るかで決まるわね」

 

 そうして、ボクらはラノア魔法大学の入学式へ向かったのだった。

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