幼馴染転生 - ルディと一緒に本気だす -   作:文頼

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第二十三話「安堵」- 裏 -

 陽が沈み数刻が経った頃。

 

 私は冒険者として一狩りして、露店で食事を摂った。

 魔物のソーセージをパンの生地に挟んだだけの簡単なホットドックだが、中々いける。

 肉質的に、ホワイトグリズリーの肉だろうか。

 こうして露店で街の人と触れ合いながら食べるのは楽しい。

 たまに顔見知りと会って話をしたりとか、この町に住んで四年になるので私の顔は広かったりする。

 

 食事を終えると、女子寮に向かった。

 アリエル様の部屋に向かわなければならない。

 

 一体何の目的で呼んだのだろうか。

 原作知識でいうと、強力な助っ人という形で私を仲間に取り込みたいという感じか。

 私が同時期に二人いる問題を指摘されたら、正直に話しておこう。

 変に嘘をつくとアリエル様に敵対される可能性がある。

 

「サラスヴァティ・グレイラットです。フィッツ殿に呼ばれ、只今参りました」

「――入れ」

 

 部屋に入ると、少しだけピリッとした空気に緊張してしまう。

 初対面は重要だな。

 

「アリエル・アネモイ・アスラ殿下、お初にお目にかかります。私はサラスヴァティ・グレイラットと申します」

「いかにも、私はアスラ王国王女アリエル・アネモイ・アスラよ。今日は貴女に色々と聞きたい事があって呼んだの」

「はっ、殿下のご質問であれば何でもお答えいたしましょう」

 

 前世の知識を引っ張り出して、最高位の目上の方に対する礼儀をする。

 っく、リーリャに聞いておけばよかった。

 何か最近後悔ばかりしてるような気がするな。

 

「ふぅん。流石ね。若くして家を出ている割には、最低限の礼儀はできるようね。どこで習ったのかしら」

「はっ、実家で習いました」

 

 やはり、情報は知られているようだ。

 できないふりをした方が良かったかな?

 まあいいや。腹の探り合いは嫌いだし。

 

「あなたの経歴を教えて貰えるかしら」

「畏まりました。そうですね、まず、六歳まで実家で育ち、その後ロアの町に一人引っ越しいたしました」

「――何をっ「フィッツ!」……」

 

 シルフィが異議を唱えようとして、騎士の少年に抑えられた。

 まあ、事実なんだよねこれ。

 

「普通その年で家を出るなんてあり得ないと思うのだけど?」

「はい、私が六歳に家を出なくてはいけなくなったのには訳があります。

 その頃私は、新たな魔術を習得しようと庭で魔術の練習をしていました」

「ろ、六歳で?」

「はい」

「……それが家出と何の関係があるのかしら」

「その新たな魔術とは、転移魔術でした」

 

 皆が驚愕に目を見開いているなか、私は話を続ける。

 

「当然そんな魔術は使えませんでした。そして失敗を何度か重ねた時、幸か不幸か、魔術が中途半端な形で発動してしまったのです」

「……それでどうなったの?」

「私の目の前にはもう一人の私がいました。私はすぐに転移魔術に失敗に気づきました。その時から私は、二人になったのです。……これが、アリエル様がお聞きしたかった真実でしょう」

「ぇ、え?」

「そして私は、生み出された方でした。本来、魔力の塊として生まれた私は、すぐに消えてしまう程の脆弱な存在でしたが、本体としての記憶も受け継いでいた私は、その魔力の体をなんとか固定しました」

 

 心の中で煮詰まっていたものが放出されていく。

 最高に心地が良い。

 今まで誰にも言えなかった苦しい真実を、こうして打ち明けることができる。

 シルフィに、知ってもらうことができる。

 

「まあ、詳しい話は置いておいて、その後、家に居られなくなった私は、数週間村の外れにある森に滞在した後、ロアの町に向かいました。七歳となり、ラノア魔法大学の存在を知った私は、半年程かけてラノア王国に赴き、そこからラノア魔法大学から推薦が来るまで冒険者として成り上りました。その実が成り、一年前この大学に入学することができました。これが私の経歴です」

 

 言い切った。

 スッキリした!

 今までオルステッド以外に誰にもいう事ができなかった事をぶちまけてやった。

 今私は満面の笑みを浮かべているに違いない。

 

「……ありがとう。あなたの経歴については分かったわ。

 中々に過酷な人生を送ってきたようね……。そこで一つ提案なのだけど、私の騎士にならないかしら」

「は、はい?」

「私はアスラ王国国王になるために今此処で優秀な人材を集めているの。

 あなたみたいな最高の人材を見逃す気は無いわ」

 

 やはりそう来たか。

 私の予想は当たっていたようだ。

 アリエル様の騎士かー。

 カッコいいし、なってみたい気もするけどね。

 

「お断りします」

「……理由を聞かせて貰えるかしら」

「私は自由に研究して冒険者をする今の生活が気に入っています。それに、例えアリエル様の騎士にならなくとも、アスラ王国一国民として一貴族として、協力致します。ですので、騎士になろうとは思えません」

「そう、それなら良かったわ。あなたが協力してくれるなら、私も無理に騎士にしようとは思わない。これからよろしくね、サラスヴァティ」

「殿下の期待に応えられるよう、精一杯協力致しましょう」

 

 アリエルの差し出した手を、両手で握り返す。

 

 思った以上に真面な判断ができる人で良かった。

 まあ、シルフィが使えてる方だし聡明なのは分かり切ってたけど。

 

「フィッツ、もう正体を明かしても良いわよ」

「あ、ぅん……」

 

 アリエルの言葉に不安げな表情で私を見るシルフィ。

 

「ボク、シルフィエットだけど、サラは、サラだよね?」

 

 シルフィは不安なのか。

 私が分身で、転移前まで一緒に居た本体じゃないから。

 

「私は私だよ。私からしたら5年振りに会うけど、ね。シルフィ覚えてる? 森の近くで剣を振ってた私の事」

「勿論! あの時はよく魔術を教えてくれて、そのお蔭でボクは混合魔術が使えるようになったんだよ」

「あの時突然来なくなったでしょ? その時、私はブエナ村から去ったの」

「じゃあ、魔術を教えてくれたのはこっちのサラで、裁縫を教えてくれたのは、向こうのサラ?」

「そう。……久し振りっ」

「久し振りだよぉ!」

 

 胸に飛び込んできたシルフィを抱きとめ、その柔らかな感触に身を委ねる。

 ああ、こんなに大きくなって。

 今思えば、シルフィの事を子供だと思って見ていたのかもしれない。

 一緒に居れた時間は少しだったけど、立派に成長してくれて凄く嬉しい。

 肩に無意識に入っていた力が抜けた。

 頭ではわかっていても、拒絶されるかもしれないと怖かったんだ。

 ああ、良かった……。

 

 暫くシルフィ成分を補充していると、咳払いが聞こえやむなく離れる。

 

「それでは、何かあれば私に言って下さい。できる限りは協力します」

「ええ、その時は宜しく頼むわ」

 

 部屋を出ると、深く息を吐く。

 

 ――今日は、ぐっすり眠れそうだ。

 

 私はスキップをし出しそうな足取りで、自室へ戻るのであった。

 


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