幼馴染転生 - ルディと一緒に本気だす -   作:文頼

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第七話「友達」

 午前中、いつものように庭の隅っこで、

 延々と夜に思いついた魔術の放出を行っていると、家に女性が近づいてきた。

 

 きつそうな顔立ちの女性だ。

 いや、怒っているからきつそうに見えるのか。

 ぷんすかといかにも私怒っていますといった風で家に向かって歩いてくる。

 と、後ろに子供もついて来ているようだ。

 子供の目尻は青く痣ができていた。

 

 こっそりと子供を魔力で包み、解析魔術で青痣を解析する。

 結果は殴られてできた怪我とだけ分かった。

 そしてそれが真実だろう。

 

 今日は珍しくというか卒業試験を終えて初めてルディが外に出かけているから、おそらくこの親子はルディが追い払ったいじめっ子の母親と、青痣を痛そうにしている子供がイジメていた張本人だろう。

 このままだとパウロが恥を掻くことになるので、子供の青痣を治癒魔術で綺麗に治してやった。

 もちろん治癒魔術特有の暖かな光は隠蔽魔術で隠したので治った事に気づいていない。

 

 母親は家に訪問しパウロが出るなり、ソマルという可愛い我が子がルディにそれはもう一方的に怪我をさせられたという話を語った。

 母親はそれが真実だと思っているのだろう。

 とても演技でできる怒りの表情では無かった。

 もし演技だとしたら、演者として何処へでもやっていけるだろう。

 

 しかし子供の顔には青痣が無いので、信憑性に欠ける形となった。

 パウロが子供に怪我がないことを指摘すると、母親は息子の顔を見て、先程まで痣があったのだと更にキレだした。

 子供は青痣が治っていることに困惑しているようだった。

 

 しかしエトという母親と元々面識があるパウロは、その言葉を信じ、子供に、そして母親に謝罪した。

 

 しばらくして、母親とその子供は帰っていった。

 パウロは何とも言えない表情で、玄関に立ち尽くしている。

 殴られたという証拠が証言だけではルディがやったとは言い切れないからだろう。

 

 私はパウロに正面から近づくが、全然反応しない。

 どうしたのだろうか。

 

 と思ったら、さっきの魔術ぶっ放しの時に使用した隠密魔術を解いていなかったからのようだ。

 魔術を解くと、驚いたようにパウロが仰け反る。

 

「父様、さっきの親子の話信じるの?」

「……サラ、聞いていたのか。信じたくはないがな、あの表情が嘘とは思えない」

 

 一応、パウロは母親の話を信用しているようだ。

 

「叱るならルディの話をしっかり聞いてからでも間に合うと思うの」

「――何?」

「ソマルっていう子、悪い子でしょ?」

 

 パウロは私の言葉に頷く。

 パウロはあの子供が悪さをする事を知っているようだ。

 

「そんな子なら、朝出て行ったルディと何かあって、

 仕返しに嘘話をでっち上げたとしてもおかしくない」

「……まあ、そうだな。だがそれは飽くまで推測だろ?」

 

 まあ子供である私の話を信じてくれるわけもないか。

 

「それが推測かどうか、もうすぐ帰ってくるルディに聞いてみれば分かるんじゃない? ――間違っても決めつけないようにっ!」

「あ、あぁ……」

 

 それだけ言うと、私は魔術放出の定位置に戻り、魔術のぶっ放しを再開した。

 ……だからルディが帰ってくるまでの間、玄関から私をじぃっと見るのはやめてほしい。

 

 

---

 

 

 陽が落ちて夕陽が地面を照らす頃、ルディが帰ってきた。

 

「父様。只今帰りました」

「おかえりルディ。ちょっといいか?」

「はい、何ですか?」

 

 パウロは穏やかな口調で、怒っているようには見えない。

 子供の青痣が無かったのと、私の話で嘘の可能性が高いと思ったからだろう。

 

「さっき、エトの所の奥さんがきてな、お前、エトの所のソマル坊を殴ったという話を聞いた」

「今日の話ですか?」

「そうだ」

 

 ルディはやがて思い至ったのか、納得のいった表情をした。

 

「殴ってはいません。泥を投げつけただけです」

「やはり、殴ってないのか。……何故泥を投げたのか教えてくれ」

「はい、実は丘の上に登ろうとしていると声が聞こえたので……」

 

 原作通り、シルフィが歩いている所、3人の子供が泥でぶつけて遊んでいたらしい。

 そこをルディが泥で応戦して助けたと。

 

 全く、その三人には後でお仕置きが必要だな。

 そんな事を考えていると、パウロがこんなことを言い出した。

 

「……お前の話を聞いておいて良かった。サラには頭があがらないな……」

「サラが、何か言ったんですか?」

「ああ、エトの奥方が来た後にな。

 俺はその話を聞いててっきりお前が殴ったもんだと思ってたんだが……」

 

 うん、ちょっと黙ろうか。

 

「お父様っ! 泥遊びって楽しいと思うの!」

「なにっ? うぉっ」

「それ! それ!」

「ちょ、サラ、急にどうしたんだ?」

「急に何するっうぁ!?」

 

 最初はルディとパウロは避けるだけだったが、

 途中から楽しくなったのか、三人で泥を投げ合って遊び、

 ルディと私が魔術を使い、パウロを的に泥を投げ出した頃、

 買い物から帰ってきたリーリャとゼニスに怒られました。

 ごめんなさい。でも、楽しかったです。

 

 

--- パウロ視点 ---

 

 

 俺の子供達が、二人して魔術まで使って俺に泥を投げてくる。

 どうしてこうなったのだろうか。

 

 事の起こりは昼下がり、凄い剣幕でエトの奥方が家に怒鳴り込んできた。

 話を聞くと、どうやらルディがソマル坊を殴ったらしい。

 しかし顔に青痣ができたという話だが、見る限りどこにもそんなものはない。

 それを指摘すると、奥方は更に怒りだした。

 

 傷が無いとはいえ、ルディが殴ったという話は本当なのだろう。

 あの怒りは決して演技でできるものではなかった。

 

 そう判断して、俺は安心した。

 ルディは大人びた所もあるが、まだまだ子供だ。

 大方ソマル坊達が遊んでいる所を見かけ、仲間に入れてもらおうとして喧嘩になったのだろう。

 父親として、説教の一つでもしてやるか。

 

 そんな風に考えていると、突然目の前にサラが現れた。

 こんなに接近されるまで気づかない程、俺は考え込んでいたのか?

 

 サラはあの話を聞いていたらしい。

 

 そりゃそうか、あんな大声で話していたら聞こえるだろう。

 

 すると、叱るのはルディの話を聞いた後にしろと、何度も忠告するように言って離れて行った。

 

 娘はルディとは似ても似つかずに育った。

 ルディと違い、生まれた頃は泣いてばかりだったし、

 俺やゼニス、リーリャによく甘えている。

 ルディと似ている所は、5歳にしては異様なほどしっかりしている事だろうか。

 双子なのに、どうしてこうも違うのか。

 

 自慢ではないが、俺は水神流上級を扱える。

 だから、魔力の流れはある程度感覚で読み取れる。

 

 ルディの魔力の流れは普通に読み取ることができた。

 

 しかし、サラの魔力の流れだけはどうしても読み取ることができない。

 というか、サラに近づくだけで常にモヤモヤした魔力の奔流を感じて、読み取るどころの話ではない。仮に魔術を仕掛けられても、まったく反応できないだろう。

 

 ――それに、あれだけ魔術生成して、まだ魔力切れないのかよ。

 

 庭でかれこれ3時間ずっと魔術を放出し続ける規格外な我が娘を見て、思う。

 

 

 しばらくすると、ルディが家に帰ってきた。

 俺が先の話をルディにすると、どこか思い至った表情をした。

 話を聞くと、息子はただ悪ガキ三人からロールズさんのとこの娘を助けただけらしい。

 

 殴った云々はソマル坊の嘘だったわけだ。

 サラの忠告を聞いておいて良かった。

 あのままだったら碌に話も聞かずに父親面してルディを叱っていただろう。

 

 その話をルディに話しているとサラが泥を投げつけてきた。

 

 最初は何故こんなことをするのか困惑した。

 だがだんだんと精度が上がっていく泥玉をよけることが楽しくなってきた頃、

 サラとルディが魔術を使い、まだ一度も泥玉に当たっていない俺に集中砲火し出した。

 

 くそっ、サラの魔力の流れが邪魔してルディの魔力流れも読めん!

 

「それはズルいぞ!」

「何がズルいのかしら」

「……何やってるんですか」

 

 振り返ると、目が笑っていないゼニスと呆れた表情のリーリャが居た。

 

 庭が泥だらけになっている事を問いただされた。

 

「いや、あれは最初にサラが――」

「最初はサラだったとしても、あなたも一緒になって遊んでたでしょう?」

 

 言い逃れは、できない。

 ここは大人しく謝っておくのが吉だ。

 下手に言葉を重ねても相手を刺激するだけ。

 

「「「ごめんなさい」」」

 

 

 ゼニスに庭の掃除を言い渡されたが、ルディとサラの魔術で一瞬で終わった。

 俺は何もできなかった。

 俺も簡単な魔術くらい習得しておこうか。

 父親の威厳がまずい。

 

 

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