第1話 始まりの歌
ある土曜日、この日は有名アーティストである《ツヴァイウィング》のライブの日である。悟代は出発する準備をしながらも嫌な予感に頭を悩まされていた。
(せっかくのライブだってのになんだ、この嫌な感じは。まるでじっちゃんが死んだ時みてぇだ)
嫌な考えを払うように机の引き出しを開け大事に保管していたある物を取り出す。それはポケットにすっぽり入ってしまうような棒で悟代の祖父の形見である。
(なんでこの小さい棒がお守りなのかは考えてもわからねぇけど、今回は持って行った方が良い気がする)
そう思い悟代はポケットに仕舞い、準備を終えた悟代は一階に降り仏壇に向かう。彼の祖父にも友人の晴れ舞台を知ってもらいたく仏壇に置いてある宝玉を手に取り、一緒に行くかと宝玉に向かって言いかばんに入れ、準備を終え出発する。ライブ会場へ行く道中見慣れた後ろ姿があった。それは響で心なしか少し気落ちしているように見える。
「おす、今日は起きれたか響」
「あ、悟代君おはよう……」
「どうした?なんかあったのか?」
「へいきへっちゃらだよ、心配性だな悟代君はー」
「いいから言ってみろって。そんな辛気臭い顔されて平気とか信じられねぇぞ、相談に乗るから、な?」
そう言うと響は少し考え込んだ顔をする。そこまで考える事なのかとしっかりとした答えを返してやらないとな、と思い響の言いたいことを聞いた。
「………実は」
「実は?」
「………ライブを楽しめるか心配なの」
「………うん?」
何言ってんだ響はと思った。楽しめるか不安?未来が進めてきたんだしそこは信用できるだろうと響に言った。だが響はツヴァイウィングの事をよく知らないし、進めてくれた未来に迷惑をかけるかもと考えているそうだ。こういったことで悩む響はやっぱり友達思いだなと思い悟代自身の答えを響に言った。
「心配すんなって響、俺もライブに行くのは初めてだしな。響もこれが初めていくライブなんだろ?」
「うん……」
「なら楽しめなかったら仕方ねぇんじゃねぇか?」
「仕方ない?」
そう、実際のところ仕方ないことだと思う。響はライブへ行った事がないし、ツヴァイウィングの事をよく知らないというのが現状である。ツヴァイウィングと響自身の相性もあるだろう。どんなことにも相性はあるものだ。実際のところ行って感じてみないと分からないと言うのが悟代としての答えである。
「そうだ。実際はよ響、お前ぇ自身はツヴァイウィングの事よく分かってないのと情報は未来から聞いた程度だろ?」
うん、と響は頷く
「ならこのライブを切っ掛けにツヴァイウィングを知ってそこから考えりゃいいんじゃねぇか?」
「でも未来がせっかく誘ったのに悲しませたりしないかな……」
「それはさっきも言った相性が良くなかっただけだ。自分の好みを人に左右されて一応好きになってもそれは自分の好きとは違ったものになるんじゃねぇか?」
まぁそれが本気で好きになったらそれはそれでいいと思うけどなと補足を入れる。ようは切っ掛けを掴み自分の気持ちで決めればいいと悟代は言う。
「自分の気持ちに嘘をついたら駄目だ響、自分の気持ちをちゃんと俺や未来に言ってくれよ。相談に乗るからさ」
「………うん、ありがと悟代君」
「気にすんなって、俺や未来はお前ぇの友達だからな。それとさっき言った迷惑かけるかもしれないって言ってっけども朝の寝坊とかは迷惑かけてないってことか?」
「うぇ!?そ、それはー、あっ、あはははー」
「笑っても誤魔化されねぇぞー」
「うっ!…うぅ、それは卑怯だと思うよ悟代君」
「だからよぉ響、もう未来とかに迷惑かけちまってんだから気にすんなって、助けてやっからさ」
「うん分かった!そういうなら迷惑いっぱいかけちゃうよー?悟代君」
「つっても限度があるからな?響」
そんな会話をしながらライブ会場に向かって歩き続け、それから数十分後ツヴァイウィングのライブが開催される大きな会場に悟代と響の二人は到着した。到着した頃には大勢の人が長蛇の列を作っている。そして悟代たちは列に並ぶ。
「うわー、いっぱい人がいるねー」
「そうだな、これだけの人が来てんだからやっぱり人気なんだなあの二人は」
「あれ?未来の姿が見えないよ?」
と響が言うので未来の気を感知してみたところ未来はこの会場にはまだ来ていなかった。響に未来に連絡を取ってみろと言った直後に目的である未来自身が響の携帯に連絡をしてきた。未来が言うには盛岡の親戚が怪我をしたらしく未来の家族が見舞いに行くというので今日は来られないとのこと。響は落ち込んでいたが俺と楽しんでくると未来に伝えた。そして響から未来が悟代君にって携帯を渡してきた。
「もしもし?」
『悟代君本当にごめんね?』
「気にすんなって、それより俺になにか伝えたいことがあるって?」
『うんそのことなんだけど、響をちゃんとエスコートしてあげて。あの子迷いそうだから』
「なんだそんなことか、わかった。ちゃんと手綱握っとくよ」
と言うと響がなにそれー!と文句を言ってきたが軽くあしらう
『なら安心だね。じゃあ悟代君も楽しんできてね』
「おう、そっちも気を付けてなー」
と返事した後、通話が切れた携帯を響に返す
「私って呪われてるかも、ハァ」
「仕方ねぇさ響。未来には悪いけどよ、楽しんで未来に自慢してやるぐらいの気持ちで行こうぜ?」
というが響きは少し落ち込んでいる。仕方ねぇなと思いポケットからあの日二人から渡された二枚のチケットの内の一枚を響に渡した。
「悟代君、私チケット持ってるよ?」
「実はその席は特別な席らしくてな響にやるよ」
「えぇ!?でも悟代君はどうするの?」
というので小さい声で響に訳を伝えた。
「大丈夫だ、ここだけの話チケットを二枚貰っててな?もう一枚どうすっかなって思っててさ、丁度いいから響にやるよ」
「そんな、悪いよ」
「いいからそのチケット使って楽しめって?使ってやらないとあいつが文句言ってきそうだしな」
「あいつ?」
「あぁ知り合いの事だ、それより行くぞー」
「あっ、待ってよー悟代くーん!」
ライブ会場に入り受付を済ましチケットに書かれている席に腰を下ろす。外から見ていたら中々の大きさだったが中の大きさも相当である。
「いやー大きな会場だね。うぅ緊張してきた」
「なんで響が緊張するんだよ、緊張するのは響じゃなくてツヴァイウィングの二人だろ?」
正確に言えば翼が一番緊張しているのではないかと悟代は考える。翼は分かるが奏は緊張っていう言葉なぞ知らんといったサバサバしたイメージがあるなと。
「ん?」
「どうしたの?奏」
「いや、誰かあたしの噂してるなーって思ってね」
「?」
直感とは恐ろしいものである。
雑談などでライブが始まるまで待っていると横からあれ?君たちは?と誰かが声をかけてきた。声をかけてきた方を見ると悟代たちが通っている中学のサッカー部のキャプテンの栗田凜であった。
「やっぱり!悟代と立花だったか」
「おぉ、凜か奇遇だな」
「こんにちは栗田君」
「珍しいな、お前たちがこういった所に来るなんて小日向にでも誘われたか?」
「まぁそんなとこだな」
と軽く挨拶を交わす。
「それにしても初めて来るライブなのによく良い席取れたな?」
「知り合いから貰ったんだよ」
「本当かよ、良いやつ過ぎないか?その知り合い」
「確かにな良い奴らだよ」
「ならその知り合いに感謝だな、今日はお互い楽しもうぜ!」
「俺も響もそのつもりだ」
と軽く話し俺は向こうの席だから行くわと告げて別れた。そして会場が暗闇に包まれカウントダウンが始まる。
♪~♪~♪~♪~
曲のイントロが流れ始め観客たちが歓声を上げる。各々手に持っているペンライトの明かりを付きライブ会場がペンライトの明かりで染まる。響も悟代もそのうちの一人だ。そして
多くの歓声、多くの羽が舞う中、奏と翼の二人がステージに舞い降りた。その舞う姿はまさしく「
彼女たちが登場したことにより観客たちはもっと大きな歓声を上げた。
そして彼女たちは歌う。この世界のすべての人間に歌を、夢を届けるように。
彼女たちが歌い紡ぐその歌の名は――
《逆光のフリューゲル》
悟代は言葉では言い表せない気持ちだった。それと同時にワクワクしていた。歌で心が震え上がるとは、悟代は思ってもいなかった。彼女たちが歌にかける想いが悟代にとって予想以上のものだった。そして周りの観客たちを見た。彼女たちの歌で観客たちの心は一つとなって精一杯応援をしている。
一瞬、奏と視線を交わす。
(どうだい悟代、あたし達ツヴァイウィングの歌は)
(あぁ、ありがちな事しか言えねぇけどよ。やっぱりスゲェよお前ぇ達二人は)
と目と心で会話しお互いに笑う。まだまだ始まったばかりだぞと言わんばかりに奏は士気を高め歌う。翼もここにいる観客も負けじと士気を高める。
歌も佳境に差し掛かり観客たちもまだまだと言わんばかりに歓声を高める。その様子を見て悟代は何か不安を感じた。
(やっぱり嫌な予感がする。歌が進むにつれてステージの地下にある気のようなものがどんどん膨れ上がっていく。このまま何もなければいいけどな)
だが直ぐにその考えを放棄する。まだ彼女たちが歌っているんだと。最後まで聞き届けなければと。
だが悟代がその考えを放棄しなければあのような事態にならなかったと分かるのはこの場には誰もいない。
一曲目が最高潮で終わり観客たちも興奮が収まらない。見惚れていた響もまだ興奮して二人を見ている。
「凄いね!!悟代君!」
「あぁ、やっぱりスゲェな」
「?どうしたの悟代君」
「いやちょっとな、警戒してたんだよ」
「警戒?なんの?」
と聞いてくるので響がテンションあがって怪我しないかの警戒だと答えるとそんなことないと言って肩を叩いた。
実際には地下にある気が爆発しないか警戒していたがどうにか大丈夫そうだと悟代は考えていた。
「まだまだいくぞぉ!」
と奏が観客たちに声をかけ次の曲のイントロが流れる。だがその瞬間
(不味い!このままじゃ気が爆発しちまうぞ!あれが爆発でもしたら……)
悟代はそう思ったが次の瞬間、地下とステージの中央が爆発する。観客たちは歓声ではなく悲鳴を上げた。
それと同時に悟代は嫌な気を持った複数の存在を感じた。
人類が決して勝てるモノではない脅威の存在
「ノイズだぁーーー!」
ノイズの気を
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観客たちは逃げ惑う。それもそうだ、どんな攻撃もノイズには通じない。触れればその身は炭素の塊になってしまう。観客たちは自分だけでも生きてやるといったように他人を押しのけて我こそはと、逃亡を図る。その中には友人を犠牲にしたり、恋人を犠牲にしてまで生きてやるといったさまざまである。その会場に逃げ遅れた人間がおりその中に奏と翼もいる。助けに行こうとする悟代を響が止める。
「悟代君!逃げよう!」
「響は先に行け!俺は逃げ遅れた人がいないか見てくる!」
「だめだよ!一緒に逃げようよ!悟代君にはどうすることもできないんだよ!?」
と響は一緒に逃げようと説得をしてきたが悟代は
「大丈夫、俺は死なないさ。すぐに戻る」
「でも………」
「心配すんなって、何とかなるさ」
そう言うと響は黙る。悟代は響にそんな悲しい顔をさせて申し訳ない気持ちでいっぱいになるが逃げ遅れた人を見過ごすわけにはいかない。
「わかった……私は先に行くよ。必ず戻ってきてね」
「あぁ、約束する」
約束を交わすと響は避難した。響と約束したからには絶対に戻ってやると誓いながら、逃げ遅れた人の気を感知し救出に向かった。
(ノイズが現れた時に聞こえた歌声は間違いなく奏と翼の二人だ。あの二人は大丈夫だと信じたい。だけどあの二人で逃げ遅れた人を全員助けられるとは思えない)
そう思い悟代は逃げ遅れた人を救出・避難誘導を続けた。そして最後の一人である人物を見つけた。
「おい!大丈夫か!」
「その声は……悟代か?」
最後に見つけたのは栗田だった。足に衝撃で崩れたであろう瓦礫が被さっており簡単には救出できないようになっていた。
「俺はいいから、お前は………」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!誰が見捨てるかよ!」
「俺はもう駄目だ。足の感覚がないんだ……」
「諦めんな!絶対に助ける!」
そう栗田に言い全身の気をコントロールし瓦礫をどかし救出する、が足は血だらけで見るも無残になっていた。
悟代は悔しい顔をする。もう少し早ければこんなことにはならなかったと考えてしまう。その時栗田の声で意識が戻る。
「悟代!ノイズが来るぞ!」
目の前には大量のノイズがおり直ぐにでも襲ってくる気配だ。
「悟代!俺を置いて逃げろ!」
「それはしねぇって言ったろ!」
「じゃあどうするんだ!相手はノイズだぞ!」
今の悟代の手にはポケットにある短い棒と形見の宝玉である。悟代はポケットに手を入れ棒を取り出す。悟代自身にも何故この小さい棒を取り出したのかわからない。だが取り出さなければならないと悟代の直感が告げていた。
悟代たちにノイズが迫る。
凜は叫ぶ。悟代を救ってくれと
奏と翼は振り向く。叫び声がした方向に
その瞬間である。形見である宝玉が光り輝き悟代の体へ吸い込まれ悟代の体が光る。その時一瞬だが夢で見たあの戦いが脳裏をよぎる。
悟代は叫ぶ。記憶の通りに、この棒の名前を
「伸びろ!
手元にあった小さな棒が伸びノイズを貫き煤に変える。
ノイズの煤がはれ悟代は姿を現した。その姿は山吹色の胴着を身にまとい背中には棒を収める筒を背負っていた。
その姿は夢で見たあの戦士と同じものである。
この世界に一人のZ戦士が誕生した。
どうも作者です。遅くなって申し訳ありませんでした!まだ書き始めたばかりなので文章がめちゃくちゃだと思いますがどうか見守っていてください。
誤字などがありましたら報告していただけるとありがたいです。