ひとまず家を出た俺はすぐさま遥姉さんに連絡した。
「そう……それじゃあ、今日の夜に強襲科の訓練場に来て?」
「……わかった、それじゃあな」
電話を切ると男子寮の部屋に戻った。
「あっ、お兄さんおかえりなさい」
「ただいまティナ」
部屋に帰るとティナが出迎えてくれたのだが……何故かエプロンを身にまとっていた。……ピザしか作れないはずの彼女がなぜ……?
「えっと……その、お兄さんに……手料理を作って食べてもらいたくて……」
もじもじと恥ずかしそうにするティナに微笑ましくなりながら頭を撫でる。
「ティナありがとな、この前も助けてくれて」
「……だってお兄さんが心配だったから……!」
ティナは涙ぐみながら俺の胸にぎゅっとしがみついて離れなかった。その姿に頭を撫で黙って受け入れるのだった。
そしてしばらくして復活したティナは得意料理のピザを振るうと、ひとつのチラシを俺に差し出してきた。
「実は……これを見に行きたいのですけど……」
そこに書いてあったのは幼女向けのアニメのショーが近くのショッピングモールに来るということだった。時間は午後3時……あと2時間はある。
「そうだな……一緒に行くか」
「はいっ!」
ティナは太陽のような輝きの笑顔を浮かべて準備をするのだった。
そして1時間後、俺とティナは例のショッピングモールに来ていた。ティナはかなり気合を入れているらしく可愛らしい格好をしている。
「ふふっ……こうしてるとデートみたいですね……♪」
「……まったく、誰からそんな入れ知恵をされたんだか……」
やれやれと肩を竦めながらショッピングモールへと入っていく。中は都会に位置するというだけあってかなり広く、休日のためか人も多い。
「ティナ、はぐれるとまずいから手を繋ぐぞ?」
「は、はい……」
何故か頬を赤くしたティナは差し出した手をそっと握ると動かなくなった。手に伝わる体温はどんどん高くなってくる。
「……ティナ?」
「は、はひぃ!だ、大丈夫れすよっ!!」
「……一気に不安になったんだが……」
突如変わったティナに不安を覚えながらもショーが始まるまでの時間を買い物に当てて楽しんだ。
そして、午後3時。既にたくさんの子供たちと親御さんがひしめき合う会場に俺とティナも紛れていた。だが、少しばかり遅かったらしく前の席は埋まっており今の位置からだとなかなか見づらい。
「……うー見えないです……」
ティナの身長じゃ尚更に難しいらしくさっきから唸りながらもどうにか見ようとしている状況だった。
「ティナ、少し我慢しろよ」
見かねた俺はティナをひょいと抱き抱えて肩車をする。
「ひょえっ!??」
突然の事で反応出来なかったティナが変な声を上げるがあえて無視する。ティナも最初は驚いていたが、いつの間にかショーに夢中になっているのだった。
しばらくしてショーが終わると、興奮さめやらぬティナがそのアニメについて話してくれるのを聞きながら寮に帰るのだった。
そして男子寮が見えてくるとその入口正面に1台の車が止まっているのが見えた。止まっている車から降りてきたのは遥姉さんだった。
「あら京介、それにティナちゃんも」
「おつかれさま」
「こんにちは、遥さん」
「……まさか京介……ティナちゃんにちょっかい出した?」
「あらぬ誤解だよ!?」
変な疑惑を押し付けてくる遥姉さんに反射的にツッコミを入れながらも浮かんだ疑問を聞いてみた。
「なんでまたここに?特訓の件は電話で話がついたよね?」
「まぁそれとは別件で……明日、魔剣が動き出すみたい」
その情報に俺は驚きを隠せなかった。
「……そうか……アドシアード……!」
怪我をしたため係から外されてそれ以来気にはしていなかったのだが、明日からアドシアードが始まり学園島への人の出入りが激しくなる。どうやらそれを狙ってくるみたいだ。
「そういうわけだから……夜の特訓、しっかりと刀を使いこなせるようにね?」
「……分かったよ……」
これは夜の特訓はハードなものになりそうだな……
胸の内で深い溜息をつきながら覚悟を決めるのだった。