緋弾のアリア〜黒鉄の拳闘士〜   作:零崎極識

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燃え上がるWhite Snow 6

 日も暮れてすっかりと暗闇が深くなった午後8時、俺と遥姉さんは強襲科の訓練場に刀を持って正対していた。

 

「いい?その刀……ちょっとばかり訳ありなの。だから……立ち回りも教えるようなノリで説明するからね」

「……別に実戦形式でなくても……」

 

 遥姉さんの口調は軽いものだが、その一方で隙は全くなく突破する糸口が見えなかった。

 

「まず、その刀は……『高周波ブレード』よ。柄のところにスイッチがあるでしょ?それを入れてみなさい」

「スイッチ……これか」

 

 教えられた通りスイッチを押すと刃の方が振動を始めた。

 

「そのスイッチで刃に伝える電子の量を調節できるわ?電子を増やせば増やすほど刀を振った時の重さは軽くなるからね」

「なるほど……」

 

 試しに振ってみるとヒュンヒュンという音が鳴り響く。

 

「これは……かなり使いやすい……!」

「でしょ?じゃあ……行くわよ?」

 

 遥姉さんはそう言うと俺の意識の隙をついて歩みを進め、刀の届くリーチまで近づいていた。咄嗟に刀を振り上げて防御する。

 

「くっ……!」

「そんな腕じゃまだまだね?」

 

 対する遥姉さんは刀の重みを感じさせない表情で俺を押し込もうと力を加える。俺はその力をあえて受け、回転扉の要領で背後からの一撃を入れようとする。

 

「よっと」

 

 俺の一撃を遥姉さんは振り向きざまの一振りで上にはね上げると空いた胴に鋭い突きを入れる。鳩尾に突きを食らった俺は衝撃を殺すように後ろに飛ぶが完全には殺せずえづくように呼吸を整える。

 

「京介、読まれる攻撃は意味が無いわよ?」

「げほっ……はぁ……遥姉さんが……強すぎるだけだって……」

 

 何度か深呼吸をして再び剣を構えると、今度は大きく踏み込み上段から刀を振り下ろす。当然ながら遥姉さんは受け止めようと刀を持ち上げる。

 

「そこだ……!」

 

 刀を振り上げた所に合わせて右足を軸に回転し、遥姉さんの横側から回し蹴りを繰り出す。遥姉さんはその蹴りを左腕で内側から崩し、俺の体勢を崩すと刀の刃を俺の首に突きつける。

 

「うーん、今の攻撃も良かったけどまだまだ詰めが甘いわね」

「遥姉さんから1本を取るのは……無理だよ……」

「あら?別に1本をとる必要はないのよ?私が納得するまでやるだけだし」

「……勘弁してくれよ」

 

 その後も訓練を続けて解放されたのは午後10時をすぎるくらいだった。すっかりヘトヘトになった俺は部屋に戻ると風呂に入り、ベッドへと飛び込むのだった。

 

 翌朝、体の節々が痛むのを我慢して何とか起き上がりいつものように学校に向かうと、やけに人が多いことに気づく。

 

「よう、京介」

「おっ、武藤、おはよう」

「おうおはようだな、今日からアドシアードだからな!可愛い女の子を狙わなきゃ!」

「……そういうもんか……」

「それはそうと……京介の背中の刀、どうしたんだ?」

「これか?これは俺の新しい武器さ……ちょっと色々あってな」

 

 背中の刀に手を触れながら武藤に言うと、どことなく分かったような分からなかったような反応をしていた。

そして、自分の席に着くと後ろにはいつも以上に暗い顔のキンジが座っていた。

 

「……何かあったのか?」

「あぁ……実はな……」

 

 それから語られる事の顛末の一部始終を聞くと確かにキンジが気落ちするのも分かった。

 

「まぁ……アリアと喧嘩して白雪ともギクシャクしたらそりゃな……」

 

 キンジに同情しながら話を聞いてやり、なんだかんだでHRの時間が来る。

 

「えーというわけで皆さんには係の仕事についてもらいますーそれでは各人事にかかってくださいー」

 

 天ヶ原先生がそう言うとクラスの面々は三々五々に散っていく。

 

「それじゃ、俺も仕事あるから」

 

 キンジも仕事に出ていき、俺はただ1人教室に残っている。本来なら仕事があったのだが、蛭子のやつとの戦いで負った重症が係から外される要因となっていたのだ。

 

「暇だし……アドシアードでも見てみるか」

 

 暇つぶしも兼ねて武偵校の中で行われている競技を見に行くのだった。

 

 流石に世界を競うレベルというだけあってどの競技でもプロの技が次々と披露される。どれも見ていて飽きることがない。

 

「しかしまぁ……ここまで何も無いとなると……拍子抜けか……」

 

 平和なこの時間を楽しんでいると遠くの方から白雪がこっちに歩いてくるのが見えた。

 

「おーい白雪ーこんなところで何してんだ?」

「えっと……ちょっと色々とね?」

「なるほど……でもこの先は何もないぜ?」

 

 この先にあるのは精々、武偵校三大危険地帯の火薬庫(アーセナル)ぐらいだ。

 

「とにかく……私はあそこに用があるから、じゃあね?」

「おう、またな」

 

 白雪を見送ってから俺はアリアに電話をかける。幸いなことにツーコールで出てくれたアリアは、どこかイライラが募ってるみたいだ。

 

「何よ京介?」

「あー白雪が火薬庫に向かった」

「えっ!?予想通りね……分かったわ、すぐに現場に向かう!」

 

 そう言うとアリアは電話を切ってしまった。これは何やらただ事では無さそうだと思い、踵を返して火薬庫に向かう。

 

 

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