目が覚めるとそこはこの前まで入院していた病院だった。どうやら、ブラドとの戦いのあとにここに運び込まれたらしい。
「うっ……いてぇ……」
なんとか身体を起こすが激痛に顔を顰めながら周りを見る。すると、椅子でうたた寝していたティナが起きて俺に駆け寄る。
「お兄さん……!心配したんですよ!」
「ティ、ティナ……痛いからちょっと……」
ティナの頭を優しく撫でるが身体を動かす度に節々や全体に痛みが走る。ティナもそれに気づきそっと体を離した。
「あれからのどのくらい経った……?」
「えっと、1日ぐらいです」
そんなことを話していると病室のドアが開き担当の看護師さんが入ってきた。
「あら、目が覚めたのね体調はどう?」
「……すみません」
「謝らないといけないことが分かっていてやったのかしら?」
看護師さんはにこやかに微笑むも目が笑っておらず内心で冷や冷やしていた。その後、こっぴどく叱られること1時間、俺は既に気力を使い果たしてベッドに横たわっていた。
「お兄さんお疲れ様でした」
ティナが苦笑しながらそう声をかけてくれた。
「それにしても……傷が開いたとはいえ、1週間入院で済むとは……」
運ばれた時はかなり傷が深く治療に時間ががかるようだったのだが、持ち前の回復力でどんどん傷が癒えているようでここまで短くなった。と、その時コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「はいどうぞ」
「やっほーケー君!」
ドアを開けたのは理子だった。その手にはフルーツが握られていてそれをティナへと渡す。ティナはそれを受け取って冷蔵庫へと入れる。
「ケー君身体大丈夫?」
「まぁなんとかな」
理子が心配そうに顔を覗き込んでくるが如何せん距離が近い。俺はもちろんドギマギするし、それを見たティナも頬を膨らませながら咳払いをする。
「あーえっと……その、ありがとね?助けてくれて」
「当然のことをしただけだしな」
「……ほんとはね、あの時アリアとキー君を裏切って倒そうとしてたの。でも、ブラドが来て……それなのに2人も私を助けてくれて、なんて言っていいかわからないんだ」
「そういう時はお礼を言えばいいんだ」
「……感謝の気持ち」
「そうだ、それならこれからあの二人とも仲良くなれるだろ?」
理子は少し考え込み、そして笑顔を浮かべた。
「ありがと!ケー君!」
そういうと、俺の頬にキスをしてきた。突然の事で誰も動くことが出来なかった。
「くふふふ、私は泥棒ですので!バイバイキン!!」
嵐のように病室を去った理子をただ見送ることしか出来なかった。
「……お兄さん?」
ティナの方を向くとそこには修羅の顔を浮かべていた。その後、再び傷が開いたのは言うまでもない。
そして、それから1週間。アリアやキンジもお見舞いに来てくれて正直嬉しく、その度に色々とアクシデントがあったが、遂に退院する日が来た。
「貴方は……久しぶりに手のかかる患者だったわ?」
「……すみませんでした」
世話をしてくれた看護師さんに頭を下げてそして病院を出るのだった。ティナと2人で久しぶりに寮の部屋に戻るとやはり、1週間も開けてたためか埃が少し溜まっていた。
「まずは部屋の掃除だな」
「そうですね」
そして、俺たちは部屋の掃除を始める。とは言ってもそこまで汚くはなく小一時間で終わった。
「私、お昼ご飯作りますね」
ティナがそう言うとキッチンへと向かった。きっとピザを作るのだろう。でも、野菜とかあったか……?
「ティナ、食材とか残ってるか?」
「……あんまり無いですけどなんとか行けそうです」
ティナのその声に少し不安になるもとりあえず食事は任せて俺はとある場所に電話をかける。
『もしもしー!平賀なのだー!!』
「平賀さん、久しぶりだな」
「おお!京介くんなのだ!どうしたのだ?」
「義手のカートリッジを補充したくてな」
「それならおまかせなのだ!いつにするのだ?」
「明日とか大丈夫か?」
「構わないのだ!」
約束を取り付けてひとまず電話を切った。そのタイミングでちょうどティナがピザを持ってリビングに来た。
「出来ましたよっ」
「おっ、ありがとうな」
マルゲリータが出てきてとても美味しそうな香りが部屋に広がる。思わず腹の虫が鳴ってしまう。
「食べようか」
「そうですねっ」
2人で合掌してピザを食べるのだった。
翌日、久しぶりに登校するとクラスの連中からは案の定色々と質問攻めにあった。それを適当に流しているとあっという間に朝のHRが始まった。
「それでは、夏休みも近いというところで皆さん単位は足りてますか?」
先生のその言葉に何人かの生徒がビクッと身体を震わせる。俺はもちろん、既に単位に問題はないがキンジはどうやらそうでもないらしく、脂汗までかいていた。
「キンジ……お前……」
俺はその様子を見て深々とため息をつく。そして、午前中の授業が終わり昼休みになると遥姉さんに呼び出しをくらった。
「……なんかあったの?」
「ごめんね、京介、また依頼よ」
そう言いながら1枚のペーパーを俺に差し出してくる。それを受け取って中身をみるとそこには今度新しく開くカジノの広告だった。
「……言いたいことがよく分からないんだけど」
「これに使われてる建物。これの調査とカジノの警備をして欲しいの」
「これって確か……何年か前に東京湾に漂着したピラミッドの頂上を使っているんだったか……」
「そうなの。でも、ピラミッドって普通漂着する?」
遥姉さんの疑問は最もだ。だが、調査隊の発表は特に特筆するものは無かったと記憶しているが。
「そこで、私たちが調査をすることになったの。これは私が主催で行うものなんだけど、名目はカジノの警備だからね」
「……警備をしながら調査をしろと?」
「そうなのよ、そしてこの警備の依頼は武偵校の生徒にもオープンにしてるからね」
「わかった、それで協力すればいいんだよね?」
「その通りよ」
その後、遥姉さんと打ち合わせをしてから開放されたのだが、その時には昼休み終了の5分前だった。
そして放課後俺は平賀さんの所を尋ねた。
「平賀さん、今大丈夫か?」
「大丈夫なのだー!!」
返事が帰ってきて扉があく。するとそこにはにこやかな表情を浮かべる平賀さんの姿が。
「すまんが、今回もよろしく頼む」
「あややにおまかせなのだ!」
中に案内してもらい、カートリッジの現物を見せてもらう。やはり、作りがしっかりしていて信頼性が高いな。
「それじゃ装填するのだ」
「わかった」
そして、俺はベッドに横になり右腕と左足の感覚を切る。その間に平賀さんが専用の機械を持ってきて準備を進めていた。痛覚が切れる頃には機材も準備が完了して大きなカートリッジが用意されている。
そして、装置を使って義手の中に一発一発カートリッジを挿入していく。痛覚を切っているおかげで痛みは感じないがそれでも何かが入ってくる違和感は覚える。
「いつ見ても京介くんは不思議なのだー」
「……まぁ色々とあったわけだし、平賀さんのお父さんに助けて貰ったわけだし。それに、平賀さん自身にも色々とお世話になってるからな」
「京介くんは、特に重要な顧客なのだ!」
平賀さんはにへぇと笑いながら作業を続ける。そして作業を続けること1時間。日もすっかり傾く中やっとのことで装填作業が終わった。
「こんな時間まですまないな」
「どうってことないのだ!」
しっかりと作業料金とそれに少し上乗せしてお金を渡すと平賀さんはニコニコと嬉しそうにした。
「これだから天童君の依頼はやめられないのだ!」
「あはは……現金だな」
そして、俺は研究室を後にして自分の家に戻るのだった。